令和 9(2027)年度の若手研究の公募は、2026 年 9 月 17 日(木)午後 4 時 30 分に締め切られています(日本学術振興会「令和9(2027)年度基盤研究(A・B・C)、挑戦的研究、若手研究の公募について」2026 年 7 月)。博士課程の終わりにいる人、ポスドクや若手の教員、研究室の事務の人に向けて、公募要領から要件・金額・採択率・応募の流れを整理しました。

若手研究は、博士の学位を取ってから 8 年未満の研究者が一人で行う研究に、2〜5 年間で 500 万円以下を出す科研費の種目です。新規の採択率は令和 8(2026)年度で 40.1% でした。数字は日本学術振興会(JSPS)の公募要領と公表データのとおりです。次の年度の公募要領は、2026 年 10 月 21 日の時点でまだ出ていません。

若手研究とは 目的・応募資格・期間・金額

科研費は、人文・社会科学から自然科学まで全分野の学術研究を、ピアレビューを経て助成する制度です(文部科学省「科学研究費助成事業 科研費」)。そのなかで若手研究の目的を、公募要領は「経験の少ない研究者に研究費を得る機会を与え、研究者として良いスタートを切れるように支援すること」と書いています。

令和 9 年度の公募要領にある基本の内容は次のとおりです。

項目内容
対象令和 9(2027)年 4 月 1 日現在で博士の学位取得後 8 年未満の研究者が一人で行う研究
研究期間2〜5 年間
応募総額500 万円以下
審査区分と方式小区分・2 段階書面審査
資金の種類学術研究助成基金助成金(基金)
受給回数「若手研究」と「若手研究(S・A・B)」を通じて 2 回まで

(日本学術振興会「令和9(2027)年度科学研究費助成事業 公募要領(基盤研究(A・B・C)、挑戦的研究、若手研究)」2026 年 7 月。2026 年 10 月 21 日に確認)

学位取得後 8 年未満の数え方

要件が年齢でなく「博士の学位を取ってからの年数」なので、応募するときは次の 3 つのうち当てはまるものを電子申請システムで選びます。

  • 令和 9(2027)年 4 月 1 日現在で博士の学位取得後 8 年未満の人(平成 31(2019)年 4 月 2 日から応募時までに学位を取った人)
  • 応募時にはまだ学位を取っておらず、令和 9(2027)年 4 月 1 日までに取る予定の人
  • 学位取得後に産前産後の休暇を取った、または未就学児を養育していた期間を除くと、8 年未満になる人

3 つ目の「除く」期間は、取得期間と養育期間の合計を年度単位に繰り上げて数えます。公募要領の例では、1 か月の産前休暇を取り、1 歳 5 か月の子を養育している場合は 1 年 6 か月で、2 年度分になります。学位を複数取っている場合は、最初に取った学位の日を入れます。

1 つ目と 3 つ目の要件で応募する人は、応募の時点で e-Rad に「博士の学位取得日」が登録されている必要があります。登録は本人ではできず、研究機関の事務担当者の仕事なので、早めに依頼してください。

応募できる人の条件

学位の年数のほかに、応募資格そのものが要ります。応募の時点で、所属する研究機関から、研究活動を行うことを職務に含む者として所属し、その研究活動に実際に従事している(研究の補助だけは除く)大学院生などの学生ではない研究者と認められ、e-Rad に「科研費の応募資格有り」と登録されていることです。有給・無給、常勤・非常勤は問われません。

重複応募と受給の決まり

公募要領の別表 1「重複制限一覧表」では、若手研究(新規・受給 1 回目)は次のように決められています。

組み合わせる種目決まり
基盤研究(S・A・B・C)新規どうしは、どちらか一つにしか応募できない
挑戦的研究(萌芽)新規どうしは、どちらか一つにしか応募できない
挑戦的研究(開拓)受給 1 回目の若手研究とは、どちらか一つ。受給 2 回目の若手研究とは、両方に応募できる

もう一つ大きな決まりがあります。平成 22(2010)年度以降に基盤研究(S・A・B・C)を研究代表者として新規に受給した人は、令和 3(2021)年度公募から若手研究に応募できません。若手研究から基盤研究へ進む流れを後押しする決まりで、受け付けられても審査されません。若手研究を 2 回受給している人も、令和 9 年度は応募できません。

金額と使い道の決まり

応募総額の上限は 500 万円以下です。直接経費は、研究計画の遂行に必要な経費(研究成果の取りまとめに必要な経費を含む)に使います。対象にならない経費には、建物などの施設に関する経費、研究代表者や研究分担者の人件費・謝金などがあります。

間接経費は、研究機関の管理などに必要な経費で、直接経費の 30% に相当する額です。使うのは研究機関で、研究代表者が応募書類に書く必要はありません。

若手研究は基金分なので、採択後の研究期間全体が一つの事業として扱われます。受け取った年度と違う年度の支払いにも使え、最終年度を除く各年度末の未使用額は、手続きなしで翌年度に繰り越せます。最終年度は、事前に承認を得れば 1 年間延長できます。

採択率と審査 令和 5〜8 年度の新規応募

JSPS が公表している、若手研究の新規の応募件数・採択件数・採択率は次のとおりです。

年度応募件数採択件数採択率
令和 5(2023)年度13,060 件5,274 件40.4%
令和 6(2024)年度13,207 件5,290 件40.1%
令和 7(2025)年度13,883 件5,585 件40.2%
令和 8(2026)年度14,771 件5,928 件40.1%

(日本学術振興会「科研費データ」の「研究種目別配分状況一覧」令和 5〜8 年度 新規採択分。令和 8 年度は 2026 年 8 月現在。採択率は資料の表示どおり小数第 1 位。2026 年 10 月 21 日に確認)

若手研究の要件(学位取得後 8 年未満・研究期間 2〜5 年・応募総額 500 万円以下)、令和 9 年度の応募から送金までの流れ、令和 5〜8 年度の採択率の横棒グラフ、重複制限と使い道の決まりを 1 枚にまとめた図

図: 若手研究の要件・応募から採択までの流れ・採択率(作成: 大学カタログ編集部 / もとの資料: 日本学術振興会の令和 9 年度公募要領と科研費データ)

4 年度で応募は 1,711 件、採択は 654 件増えましたが、採択率は 40% 前後で動いていません。同じ令和 8 年度の基盤研究(C)は応募 47,969 件・採択 12,419 件で採択率 25.9% です。公募要領には、若手研究は「若手研究者に広く研究費を得る機会を与えるよう、採択率を重視した配分を行う予定」とあります。ただ、これは過去の公表値と JSPS の方針で、次の公募の採択率を約束するものではありません。

審査は小区分ごとに、3 名の審査委員が 2 段階にわたって書面で行い、合議審査はありません。小区分は「審査区分表」で選び、内容の例に載っていない内容でも応募できます。

応募の流れとスケジュール

応募は研究代表者が一人で行いますが、JSPS に書類を送るのは所属する研究機関です。研究者が機関に提出し、機関が確認して JSPS に送る二段階のため、機関ごとに設ける学内の締切は JSPS の期限より前になります。学内の日付は公募要領にはなく、事務担当者に聞く必要があります。

手順は、公募要領では次の順です。

  1. 応募資格の確認
  2. e-Rad(府省共通研究開発管理システム)の研究者情報登録の確認。登録は研究機関が行い、ID・パスワードが発行される
  3. 科研費電子申請システムで、研究計画調書の Web 入力項目を入力し、様式 S-21 を使った添付ファイルをアップロードする
  4. 所属する研究機関に提出し、機関が JSPS に提出する

e-Rad に研究インテグリティの誓約状況が登録されていないと、応募できません。e-Rad と電子申請システムの連携には通常 30〜60 分、混雑時は数時間かかるため、締切日の登録では間に合わないことがあると公募要領は注意しています。審査では researchmap と KAKEN の掲載情報を必要に応じて見るとされ、researchmap は「研究者番号」で検索するため、研究者番号の登録が求められています。

令和 9 年度の予定は次のとおりです。

日付できごと
2026 年 7 月 14 日(火)公募開始(電子申請システムは 7 月 22 日から)
機関ごとに設定学内の提出期限
2026 年 9 月 17 日(木)午後 4 時 30 分JSPS への提出期限(厳守・終了)
2026 年 10 月〜2027 年 1 月審査
2027 年 2 月 26 日審査結果通知
2027 年 4 月上旬交付内定
2027 年 4 月頃審査結果の開示
2027 年 6 月中旬交付決定
2027 年 7 月上旬送金(前期分)

(いずれも予定。公募要領は、予算成立の状況などで交付内定の時期が変わることがあるとしています)

次にすること

次の公募の日程は、JSPS の「スケジュール」のページで公表されます。2026 年 10 月 21 日の時点では、令和 9 年度と令和 8 年度の分だけが載っていました。それまでにできる準備は次の 4 つです。

  1. 学位を取った日(取る予定の日)を確かめ、2019 年 4 月 2 日以降かどうか、産前産後の休暇や育児の期間を除けるかを数える
  2. 所属する(予定の)研究機関の事務に、e-Rad の登録状況と学内の締切を聞く。学位取得日の登録も依頼する
  3. 令和 9 年度の様式 S-21 と記入要領を読み、研究計画調書の分量を知っておく
  4. 自分の分野の小区分で、過去に採択された課題をKAKEN(科学研究費助成事業データベース)で調べる

応募の時点で研究機関に所属していることが条件なので、次の所属先を探している人は、大学カタログの研究室の一覧で分野から大学を探し、科研費への応募の扱いを受け入れ先の事務に確かめておくと安心です。

よくある迷い

博士課程の学生は応募できますか?

大学院生などの学生は、応募資格を満たしません。研究活動を本務とする職(大学教員など)に就いていて学生の身分もある人は、学生に数えられません。学位取得見込みで応募できるのは、こうして研究機関から研究者と認められている人です。特別研究員(DC・PD)の扱いは別に決まっており、別の記事で扱う予定です。

学位を取ってから何年まででしょうか?

令和 9 年度の公募では、2027 年 4 月 1 日現在で 8 年未満、つまり 2019 年 4 月 2 日以降に学位を取った人です。産前産後の休暇や未就学児の養育の期間は除いて数えられます。

基盤研究(C)と同時に出せますか?

新規どうしは、どちらか一つしか応募できません。さらに、基盤研究(S・A・B・C)を研究代表者として受給したことがある人は、若手研究に応募できなくなります。

若手研究の応募に間に合わなかったときは?

令和 9 年度の若手研究の公募は終わっています。採用されたばかりの人や育児休業から復帰する人のための「研究活動スタート支援」は、2027 年 3 月に公募される予定です。公募要領の予定では、2026 年 9 月 18 日以降に応募資格を得て、今回の種目に応募していない人などが対象です。詳しくは 2027 年 3 月の公募要領で確かめます。

不採択だったとき、審査結果は見られますか?

採択されなかった人のうち希望した人に、1 段階目の審査結果として、小区分でのおおよその順位、審査委員の評定の素点(平均点)、定型所見が電子申請システムで開示されます。令和 9 年度の開示は 2027 年 4 月ごろの予定です。