大学のレポートに生成AIを使えるかどうかは、大学と授業で決まります。6 校の公式の方針を読み比べると、「使ってはいけない」と一律に決めている所はなく、「授業の担当教員の指示に従う」が土台でした。そのうえで、AI が書いた文をそのまま出すことは、確かめた範囲で 3 校が不正またはだめと書いています。

文部科学省は 2023 年 7 月 13 日に、大学と高専へ「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて(周知)」を出しています(文部科学省高等教育局)。各大学が学生に方針を示すときの参考にする資料で、いまの大学の方針はこの考え方に近い形です。

文部科学省の周知は何と言っているか

周知は、大学ごとの教育に合わせて各大学が決めることを前提にしています。そのうえで、使うと有効と考えられる場面として「ブレインストーミング、論点の洗い出し、情報収集、文章校正、翻訳やプログラミングの補助」を挙げています。

一方で、「生成 AI の出力をそのまま用いるなど学生自らの手によらずにレポート等の成果物を作成すること」は「一般に不適切」としています。評価の工夫としては、使った旨や種類・箇所を明記させること、小テストや口述試験を併用することを挙げ、AI が書いた文かを判定するツールは結果を「過信しない」よう求めています。使ってはいけない場面でこれに反したときの措置も、大学が学生に示すことが望ましいとしています(文部科学省、2023 年 7 月 13 日)。

6 校の方針を 4 つに分ける

国立 2 校、公立 2 校、私立 2 校の学生向けの公式の文を読みました。方針の日付と版は、大学の文に書かれていたものです。

大学区分方針の日付・版原文から
東京大学国立2023 年 5 月 26 日(ver. 1.0)「一律に禁止することはせず」。可否は担当教員の判断
熊本大学国立2023 年 9 月 28 日授業での可否は「担当教員の指示に従う必要」。丸写しは「点数は 0 点」
横浜市立大学公立2025 年 9 月 22 日更新「利用自体は制限するものではありません」。「正しく」利用する指針を示す
公立はこだて未来大学公立2024 年 3 月 29 日のお知らせ筆記試験は「明示的に許可された場合を除き」禁止。剽窃・盗用・捏造にあたる使い方はしない
早稲田大学教育学部私立2024 年 4 月 10 日使った部分・ツール・プロンプトを「必ず明記」
同志社大学私立2026 年 2 月期末試験として実施するレポートは担当者の指示に従う(2026 年 4 月から)

(各大学の公式ページ。2026 年 10 月 21 日に確認。早稲田大学は学部ごとに方針が出ており、ここでは教育学部の文を読みました。横浜市立大学は、学生向けの通知文までは読めていません)

分け方ごとに見ていきます。

使ってよい(条件つき)は、東京大学と横浜市立大学の書き方です。東京大学は学ぶ過程が大事だとして、AI が書いた文をそのまま課題の回答にすることは認めない、としています。使うこと自体を禁じる方針ではなく、学びになる使い方を求める形です。

授業ごとに先生の指示に従うは、横浜市立大学を除く 5 校の文に出てきます。同じ大学でも、授業によって使ってよい範囲が変わるということです。シラバスや授業の最初の説明で確かめるのが近道です。

申告・出典の明記を求めるのは、早稲田大学教育学部(使った部分・ツール・プロンプトを明記)、東京大学(ツール名の記載を求められることがある)、熊本大学(適切に引用)です。

使ってはいけないのは、AI が書いた文をそのまま出すこと(東京大学・熊本大学・早稲田大学教育学部)と、公立はこだて未来大学の筆記試験(教員の明示的な許可がない場合)です。

使ってよい・条件つき・だめの線引きを、アイデア出し・下調べ・文の手直し・本文を書かせる・試験の場面ごとに並べた図。条件つきで使える場面、使う前に確かめること、だめな場面の 3 区画と、方針の言い方を 4 つに分けた表

図: レポートの生成AI 線引きの早見図(作成: 大学カタログ編集部 / もとの資料: 文部科学省の周知と各大学の公式の方針)

バレるかどうかより、何が不正になるか

「バレる」かどうかを心配する前に、大学が何を不正と見ているかを知っておくほうが確かです。公式の文に書かれていた範囲では、見られているのは「提出物が自分の手で作られたか」と「指示を守ったか」の 2 点です。

早稲田大学教育学部は、生成 AI が作ったレポートを「そのまま、または若干書き換えたのみで」出すことは代作にあたり不正行為だとしています。AI 自体が剽窃や捏造をした場合も、その成果物を使った本人が懲戒処分の対象になります。熊本大学は、丸写しの課題は 0 点になるとしています。同志社大学は、期末試験として実施するレポートで担当者の指示に従わなかった場合、教授会が不正行為と認定し、学部の内規に従って処分の対象とすることがある、としています。

見破る道具については、文部科学省が判定ツールを「過信しない」よう求める一方、利用の明記や小テスト、口述試験を組み合わせる評価を挙げています。レポートを出したあとに、中身を口頭で聞かれる授業もありうる、ということです。処分の重さは各大学の規程で決まるので、自分の大学の学則や学生の懲戒の規程で確かめてください。

次にすること

  1. 授業のシラバスと最初の説明で、生成 AI の可否が書かれているか見る。
  2. 書かれていなければ、使う前に担当教員へ聞く。
  3. 使ってよい授業では、使った場所と使い方をレポートに書き、出た内容は自分で裏づけを取る。個人情報や、まだ公表されていない研究の内容は入力しない。

自分の大学の方針は、大学一覧から大学のページを開き、公式サイトのリンクから探せます。AI の仕組みや限界を知りたい人は、情報学のページも参考になります。

よくある迷い

自分で書いた文を直してもらうだけなら使ってよいですか

文章校正や翻訳の補助は、文部科学省が有効な場面の例に挙げています。ただし授業の指示が先です。使うときは、早稲田大学教育学部のように使った部分の明記を求める大学があります。直してもらった結果が「若干書き換えたのみ」の代作になっていないかも見てください。

授業の説明に何も書かれていないときは

東京大学は授業ごとの条件設定を担当教員に委ねており、熊本大学も授業での可否は担当教員の指示に従うとしています。書かれていないときは聞くのが確実です。

AI の出した内容が間違っていたら誰の責任ですか

同志社大学は、生成 AI を使っても、提出した人と署名した人が責任を負うとしています。早稲田大学教育学部も、内容の正誤は自分の責任で判断するよう求めています。

大学の方針は変わりますか

変わります。東京大学の文は 2023 年 5 月時点のもので、今後更新するとしており、横浜市立大学も最新の指針を確認するよう案内しています。同志社大学のように 2026 年 2 月に示し直した大学もあります。レポートを書く前に、その時点の方針を見てください。