図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 3
まちをつくる
駅前の再開発や住宅地の計画、古い建物の活用など、建物 1 つではなく、まち全体の使い方を考える仕事です。市役所や県庁の都市計画の担当や、まちを開発する会社(デベロッパー)で、何十年も先のまちの姿を描きます。

ひとことで言うと
まち全体の「間取り」を描く
家を設計するときは、台所の隣に食卓を置き、寝室は静かな奥に置きます。まちも同じで、駅のまわりには店や職場を集め、住宅地は静かな場所に、工場は少し離れた場所に配置します。道路は廊下、公園は庭のような役目を果たします。

01
どんな仕事?: 何十年も先のまちを描く
どこに家を建て、どこに店や工場を集めるか。道路や公園、駅前の広場をどこにつくるか。こうしたまちの使い方を決めるのが都市計画です。日本で最初の都市計画法は 1919 年にでき、1968 年に全面的につくり直されて、いまの法律になりました。
市役所や県庁では、建築や土木を学んだ技術系の職員が都市計画を受け持ちます。まちの将来像を示す「都市計画マスタープラン」をつくり、地区ごとに建物の高さや並び方のルールを決め、道路や公園の整備を進めます。建物が法律に合っているかを審査する部署もあります。
まちを開発する会社(デベロッパー)は、土地を集め、どんな建物を建てれば人が集まり、まちが元気になるかを考えて事業を進めます。役所と民間が、それぞれの立場から 1 つのまちをつくっていきます。
役所と民間が、それぞれの立場からまちの将来を形にします。
図解まちをつくる 2 つの立場
市役所・県庁
- まちの将来像と方針を示す
- 建物の高さや用途のルールを決める
- 道路・公園・広場を整える
デベロッパー
- 土地を集めて事業を考える
- 建物の使い方を企画する
- 完成後の運営まで考える

02
駅前を生まれ変わらせる: 再開発のしくみ
古い木造の建物が密集し、道が狭い駅前は、火事や地震のときに危なく、人も集まりにくくなります。こうした場所をまとめてつくり直すのが市街地再開発事業です。1969 年にできた都市再開発法にもとづいて進めます。
再開発の特徴は権利変換です。土地や建物を持つ人たちの権利を、新しく建てるビルの床の権利に置き換えます。小さな土地を 1 つにまとめて建物を高くすると、空いた地面に広場や広い道路をつくれます。元の店が新しいビルに入り、商売を続けることもできます。
大切なのは、そこで暮らし、働く人たちの合意です。土地を持つ人が多い地区では、話し合いに長い年月がかかることもあります。図面や模型で完成の姿を示し、一人ひとりの心配に答えていくのも、まちをつくる仕事の大事な部分です。
土地をまとめて使い方を変えると、広場や道路のある駅前が生まれます。
図解駅前の再開発(例)
- 1土地を持つ人たちとまちの将来を話し合う
- 2再開発の区域を都市計画で決める
- 3土地の権利を新しい建物の床に置き換える
- 4建物と広場・道路を一緒につくる

03
焼け野原からのまちづくり: 名古屋の 100m 道路
都市計画は、何十年も先のまちの姿を決めます。その例が名古屋です。第二次世界大戦中の空襲で、名古屋市は市域約 16,000ha のうち約 3,850ha を焼失しました。
1945 年 10 月、市の復興を担う技術者のトップ(技監)に田淵寿郎が就きました。幅 100m の道路を 2 本通し、市内の墓地を郊外に移すなど、当時としては想像を超える大胆な計画を打ち出しました。当時の市の人口は約 60 万人でしたが、計画は人口 200 万人のまちを見すえていました。
こうして生まれた久屋大通と若宮大通の中央には、公園がつくられました。いまでは名古屋まつりなどの会場として、市民に親しまれています。およそ 80 年前に引かれた線が、いまの名古屋の暮らしを支えています。
遠い将来を見すえて引いた線が、何十年後のまちの暮らしを形づくります。


04
市役所の都市計画課で働く職員の 1 日(例)
ここでは、市役所の都市計画課で働く、建築職の若手職員の 1 日の例を紹介します。
午前中は、「この土地にお店を建てられますか」といった問い合わせに、都市計画図をもとに答えます。人口や土地の使われ方のデータを地図に重ね、空き地が増えている地区や、歩く人が多い通りを探す作業もします。
都市計画を決めるときは、法律にもとづいて案を公告し、2 週間、住民が見られるようにして意見書を受け付けます。住民が参加しやすいように、仕事帰りの夜に説明会を開くこともあります。出された意見は都市計画審議会に示され、話し合いを経て計画が決まります。
地図とデータを読む力と、住民の声を聞く力の両方が求められます。
図解都市計画課の職員の 1 日(例)
- 8:30朝の打ち合わせ課の予定と案件の進み具合を共有
- 9:00窓口と電話建てられる建物の問い合わせに答える
- 10:30データの分析人口や土地の使われ方を地図に重ねる
- 12:00昼休み
- 13:30現地の調査駅前を歩き、人の流れを確かめる
- 15:30地権者との協議再開発の進め方を話し合う
- 19:00住民説明会計画の案を説明し、意見を聞く

05
向いている人と入り方・その先
公務員として都市計画にかかわるには、国や自治体の採用試験を受けます。国家公務員の一般職試験(大卒程度)には「建築」の区分があり、2026 年度は約 80 人の採用が予定されていました。都道府県や市町村でも、建築職や土木職の試験が行われています。
デベロッパーやまちづくりの会社では、建築のほか、土木、経済、法律など、いろいろな学部を卒業した人が一緒に働きます。地図やデータを読む力と、人の話を聞いてまとめる力が生きる仕事です。
経験を積むと、市の都市計画の責任者としてまちの方針をまとめたり、大きな再開発を最初から最後まで率いたりする立場になれます。歩いて楽しいまちが好きな人、「この駅前をこう変えたい」と想像するのが好きな人に向いています。
まちを歩く目とデータを読む目が、何十年先のまちを形にします。
図解まちをつくる仕事への道(例)
- 1大学で学ぶ都市計画・建築計画・土木など
- 2採用試験・就職建築職・土木職やデベロッパー
- 3現場を知る窓口・調査・協議を経験する
- 4まちの方針を担う大きな計画や再開発を率いる
高校生のうちに試せること
駅前の 1 日を観察する
朝・昼・夕方に同じ駅前を訪れ、人の数や向かう方向、座って休める場所を数えてみましょう。使う人の目で見ると、広場やベンチが足りない場所、歩きにくい場所が見えてきます。
自分の町の都市計画マスタープランを読む
多くの市町村は、まちの将来像を示す「都市計画マスタープラン」をサイトで公開しています。自分の家や学校のある地区が、将来どんなまちを目指すとされているかを読み、実際のまちと比べてみましょう。
名古屋の 100m 道路を航空写真で見る
地図アプリの航空写真で、名古屋の久屋大通と若宮大通を探してみましょう。まわりの道路と比べると、幅の広さがよく分かります。自分の町の駅前の道路の幅とも比べてみましょう。
「まちをつくる」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 44 件から探せます。

都市とデータサイエンス研究室
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 理工学融合プログラム・都市計画・FENG TAO 教授
都市、モビリティ、交通などを研究している。

交通と都市研究分野
横浜国立大学(神奈川県)
都市科学部 都市基盤学科・交通計画・都市計画・松行 美帆子 教授
誰もが使いやすい交通システムと都市のあり方を研究する。

都市再生マネジメント領域(武田研究室)
大阪大学(大阪府)
工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻・都市再生マネジメント・武田 裕之 准教授

都市再生マネジメント領域(加賀研究室)
大阪大学(大阪府)
工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻・都市再生マネジメント・加賀 有津子 教授
都市計画分野
新潟大学(新潟県)
工学部 工学科 建築学プログラム・都市計画・岡崎 篤行 教授
都市計画や景観計画、市民参加、都市デザインを研究する。

都市計画学研究室
九州大学(福岡県)
都市・建築学・ZHAO SHICHEN 教授
よくある質問
公務員の建築職は、どんな仕事をしますか?
都市計画のほか、建物が法律に合っているかの審査、学校や庁舎など公共の建物の工事の発注と監督、公営住宅の管理などを受け持ちます。部署を移りながら、いろいろな仕事を経験することが多くあります。
公務員とデベロッパーでは、まちとのかかわり方がどう違いますか?
公務員は、まち全体のルールや道路・公園などの公共の施設を、住民全体の立場から計画します。デベロッパーは、自社の事業として土地を開発し、建物をつくって運営します。再開発などでは、両者が協力して 1 つの計画を進めます。

