図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 1
建物を設計する
住宅・学校・病院などの建物を、使う人の話を聞きながら図面と模型で形にしていく仕事です。見た目と使いやすさ、構造、設備の専門家がチームを組み、1 つの建物を完成まで導きます。

ひとことで言うと
文化祭の教室づくりを、本物の建物で
文化祭で教室をカフェにするときは、受付や席の配置、通路の幅、電気が足りるかまで考えます。設計は、それを何百人もの人が何十年も使う建物で行う仕事です。楽しさや美しさと、安全で使いやすいことを両方かなえるのが腕の見せどころです。

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どんな仕事?: 3 つの専門で 1 つの建物をつくる
建物の設計は、大きく 3 つの専門に分かれます。間取りや外観、素材を決めて全体をまとめるのが意匠設計です。柱や梁の太さを計算し、地震や台風に耐えられるようにするのが構造設計です。空調や照明、給排水のしくみを考えるのが設備設計です。
3 つの担当は、同じ建物の図面を前に何度も調整をくり返します。大きな窓を開けたい意匠と、そこに壁がほしい構造の意見がぶつかることもあります。その話し合いから、どちらの条件も満たす新しい形が生まれます。
1964 年の東京オリンピックで水泳の会場になった国立代々木競技場は、その代表例です。丹下健三の代表作で、当時一流の技術者が集まり、前例のない技術や工法を開発しました。屋根と観客席をつり下げて支える「吊り構造」で、中央が高く伸びあがる大きな空間を生み出しています。
意匠・構造・設備の専門家が力を合わせて、1 つの建物ができあがります。
図解設計の 3 つの担当
意匠設計
- 間取りと外観を決める
- 素材や色を選ぶ
- 設計チーム全体をまとめる
構造設計
- 柱や梁の太さを計算する
- 地震や台風への強さを確かめる
- 基礎の形を決める
設備設計
- 空調と換気を計画する
- 照明やコンセントを配置する
- 水道や排水の管を通す


02
設計から完成まで: 図面が建物になる日
設計は、建て主(施主)の話を聞くところから始まります。だれが何人でどう使うのか、予算はいくらで、いつまでに完成させたいのか。敷地にも足を運び、日当たりや道路、まわりの建物を確かめます。
まず基本設計で、スケッチや模型を使っていくつかの案を比べ、建物の大まかな形を決めます。次の実施設計では、工事に必要な寸法や材料を図面と仕様書にまとめます。建物が法律に合っているかの審査(建築確認)を受けてから、工事が始まります。
工事中も設計者の仕事は続きます。工事が設計図書のとおりに行われているかを確かめる工事監理です。一定の建物の設計と工事監理は、建築士でなければ行えないと建築士法で決められています。足場が外れ、図面の中にしかなかった建物が姿を現す日は、設計者にとって特別な瞬間です。
設計者は、最初の相談から完成の日まで建物に寄り添います。
図解設計から完成までの流れ(例)
- 1話を聞く使い方・予算・敷地を確かめる
- 2基本設計模型やスケッチで案を比べる
- 3実施設計工事に必要な図面をそろえる
- 4建築確認法律に合っているか審査を受ける
- 5工事監理図面どおりか現場で確かめる
- 6完成検査を終えて施主に引き渡す

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建築学が生きる場面: 試験の科目は大学の授業そのもの
建築士には、一級建築士・二級建築士・木造建築士の 3 種類があります。一級はすべての建物、二級と木造はより小さな建物の設計と工事監理ができます。どれも、1950 年にできた建築士法にもとづく国家資格です。
一級建築士の試験は 2 段階です。学科の試験では、計画、環境・設備、法規、構造、施工の 5 つの科目が出題されます。合格すると、前もって公表された課題の建物を 6 時間 30 分で設計し、図面に仕上げる設計製図の試験に進みます。
試験の科目は、大学で学ぶ建築計画、建築環境工学、構造力学、施工などとそのまま重なります。設計製図の課題は、2025 年が「庁舎」、2024 年が「大学」、2023 年が「図書館」でした。大学の設計製図の授業でも、こうした身近な公共の建物を課題にすることがあります。
大学の授業で学ぶことが、そのまま建築士の試験と仕事の土台になります。

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設計事務所で働く意匠設計者の 1 日(例)
ここでは、設計事務所で図書館や学校などの設計を受け持つ、若手の意匠設計者の 1 日の例を紹介します。
図面は、コンピュータの CAD や BIM で描きます。BIM は、建物を立体のデータで組み立て、壁や窓に材料や性能の情報まで持たせる方法です。柱を 1 本動かすと、部屋の広さや空調のダクトの通り道まで変わります。そのため、構造や設備の担当とこまめに相談します。
午後は、施主との打ち合わせや、工事現場での工事監理に出かけます。模型や立体の画像を使うと、図面を読み慣れていない人にも完成の姿が伝わります。締め切りの前は忙しくなりますが、働き方は事務所や時期によって異なります。
机の上の図面と、現場や人との対話を行き来するのが設計の毎日です。
図解意匠設計者の 1 日(例)
- 9:00予定の確認メールと今日の打ち合わせを確かめる
- 9:30図面を描くBIM で平面図と断面図を直す
- 11:00社内の打ち合わせ構造・設備の担当と柱の位置を調整
- 12:00昼休み
- 13:30施主と打ち合わせ模型で部屋の広さと窓を説明する
- 15:30工事監理現場で鉄筋や仕上げを確かめる
- 17:30模型づくり次の打ち合わせに向けて案を形にする

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向いている人と入り方・その先
設計者の多くは、建築学科で学んだあと、設計事務所や、建設会社・住宅メーカーの設計部に入ります。2025 年に一級建築士の設計製図の試験に合格した人の職場を見ると、建設業が 34.9%、建築士事務所が 29.6% でした。住宅メーカーも 14.3% います。役所で公共の建物にかかわる人もいます。
職場で実務を積みながら一級建築士の免許を取り、設計の責任者として図面に名前を記すようになります。さらに、一級建築士として 5 年以上構造設計の経験を積み、講習を修めると構造設計一級建築士になれます。高度な構造計算が必要な建物の構造設計には、この資格を持つ人がかかわることが義務づけられています。
図を描いて人に伝えるのが好きな人、まちの建物を見て「なぜこの形なのか」と考える人に向いています。経験を積むと、大きな建物の設計チームを率いたり、自分の設計事務所を開いたりする道もあります。
資格と経験を重ねるほど、任される建物が大きくなっていきます。
図解設計の仕事への道(例)
- 1建築学科で学ぶ設計製図・構造・環境など
- 2設計の職場へ設計事務所や建設会社の設計部
- 3一級建築士試験に合格し、実務を積んで登録
- 4専門を深める構造・設備の一級建築士など
- 5チームを率いる大きな建物の設計や独立も
高校生のうちに試せること
一級建築士の試験問題をのぞいてみる
建築技術教育普及センターは、一級建築士試験の過去の問題を公開しています。計画や構造の問題を何問か読んでみましょう。分からない言葉を調べ、大学のどの授業で学ぶ内容かを考えると、4 年間の学びが見えてきます。
過去の試験問題等(建築技術教育普及センター)気になる建物の設計者を調べる
通学路や駅前で気になる建物を 1 つ選び、いつ、だれが設計したのかを調べましょう。公共の建物は、自治体のサイトや図書館の資料に設計者が載っていることがあります。同じ設計者のほかの建物と比べると、その人らしさが見えてきます。
名建築を 3 つの距離からスケッチする
近くの名建築や、駅・図書館などの公共の建物を訪ね、遠くから・正面から・入口のそばからスケッチしましょう。屋根を何が支えているのか、人がどこから入るのかを考えながら描くと、設計者の工夫に気づけます。
「建物を設計する」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 51 件から探せます。

建築構造学
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 建築学プログラム・建築学・田川 浩 教授
鋼構造建築物、耐震設計、制振システムなどを研究している。
都市・建築計画学
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 建築学プログラム・建築学・田中 貴宏 教授
都市環境、GIS、福祉施設などを研究している。
建築設計学分野
京都大学(京都府)
工学研究科建築学専攻・建築設計学
藤本研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 土木建築学科 建築学教育プログラム・建築意匠・建築設計・藤本 章子 助教

建築都市空間デザイン専攻 建築構造工学研究室
北海道大学(北海道)
建築都市
大西研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 土木建築学科 建築学教育プログラム・建築情報・建築設計・大西 康伸 教授
BIMやVR、自動設計などデジタル技術を使った設計の方法を研究する。
よくある質問
建築家と建築士は違うのですか?
建築士は、建築士法にもとづく国家資格の名前です。建築士でない人が建築士と名乗ることは、法律で禁じられています。建築家は、建物の設計を仕事にする人の一般的な呼び名です。
設計事務所と建設会社の設計部では、仕事が違いますか?
どちらも建物を設計し、工事監理も行います。設計事務所は、設計と工事監理を専門に受け持ちます。建設会社の設計部は、同じ会社で設計から工事まで進めることが多く、つくり方の工夫を設計に生かしやすいのが特徴です。
一級建築士の試験に合格する女性は、どのくらいいますか?
2025 年の設計製図の試験の合格者 3,988 人のうち、女性は 32.2% でした。2026 年の学科の試験の合格者でも、女性が 30.0% を占めています(建築技術教育普及センター)。
