図 4 学ぶために必要な科目・学問学ぶために必要な科目 2
公共・政治経済
物価が上がったら値上げできるのか、法律が変わると仕事はどう変わるのか。高校の「公共」と「政治・経済」で学ぶ景気・労働・取引のルールは、大学の経営学で会社の判断を考える土台になります。

ひとことで言うと
天気予報を見てから試合の作戦を立てる
雨の日と晴れの日では、同じチームでも戦い方を変えます。会社にとっての天気にあたるのが、景気や法律の変化です。公民で社会のしくみを知っておくと、会社がなぜ作戦を変えたのかが読み取れます。

01
「公共」と「政治・経済」で学ぶ会社のテーマ
公民の科目は 2022 年度の入学生から新しくなり、全員が「公共」を学び、選んで「政治・経済」を学びます。どちらの科目にも、会社が登場する場面がたくさんあります。
学習指導要領によると、「公共」では職業選択、雇用と労働問題、金融の働きなどを学びます。職業選択では、産業構造の変化と、その中での起業について理解を深めるとしています。雇用と労働問題では、働く人を守る法律も扱います。
「政治・経済」では、企業を経済を動かす主体の一つとして学びます。金融の学習では、企業経営に果たす金融の役割にも触れます。日本の経済の課題を探る学習で「産業構造の変化と起業」を取り上げるときは、中小企業のあり方にも触れることになっています。
大学の経営学部では、これらが経済学の基礎、会社法、企業と社会といった授業につながります。公民で覚えた言葉が、会社の判断の理由を読み解く道具になります。
公民で学ぶしくみは、会社の外から来る変化を読むための地図です。
図解公民のテーマと大学の授業
- 市場と物価大学では経済学の基礎
- 雇用と労働大学では労働法・人的資源管理
- 金融の働き大学ではファイナンス
- 起業と中小企業大学では中小企業論・起業論
- 法と取引大学では会社法・経済法
- 企業と社会大学では企業倫理・CSR

02
物価と取引: コストが上がったら値上げできる?
パンを作る会社にとって、小麦粉や電気代、働く人の給料はコストです。コストが上がったのに値段を据え置けば、利益は減ります。上がった分を値段に反映することを、価格転嫁と呼びます。
ところが、大きな会社に部品や材料を納める中小企業は、取引先に値上げを言い出しにくいことがあります。そこで中小企業庁は、毎年 3 月と 9 月を「価格交渉促進月間」としています。4 月と 10 月に値段を改める会社が比較的多いため、その前の月に交渉を促すねらいです。
月間のあとには、中小企業 30 万社にアンケートを送っています。2026 年 3 月の調査には 69,625 社が答えました。コストの上昇分のうち値段に反映できた割合(価格転嫁率)は 54.2% でした。原材料費は 55.7%、働く人の給料などの労務費は 50.0% です。
コストが 100 円上がっても、平均では約 54 円分しか値段に反映できていないことになります。大学の経営学では、値段の決め方や取引先との交渉を、会社どうしの力関係もふまえて考えます。
物価の動きは、取引の力関係を通して会社の利益に響きます。
図解価格転嫁率 54.2% の意味
- 1平均では 54.2 円分を値段に反映できた
- 2残りの 45.8 円分は会社の負担になった
- 3負担した分だけ、1 個あたりの利益が減る

03
取引のルール: 「下請法」が「取適法」に変わった
大きな会社が小さな会社に仕事を頼む取引には、立場の弱い側を守る法律があります。長く「下請法」と呼ばれてきた法律です。2026 年 1 月 1 日に改正法が施行され、通称は「取適法(とりてきほう)」になりました。
改正で、法律の題名や言葉も変わりました。「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」になり、題名から「下請」という言葉がなくなりました。
中身も変わりました。代金を手形で払うことが禁止されました。中小企業から値段について話し合いを求められたのに応じず、一方的に代金を決めることも禁止です。製品の引き渡しに必要な運送の委託も、新たに対象に加わりました。
大学では、こうした法律を経済法などの授業で学びます。取引先との関係づくりは、経営学部の中小企業論や経営戦略でも大切なテーマです。
取引のルールが変わると、会社どうしのお金の流れも変わります。
図解下請法から取適法へ(2026 年 1 月)
これまで(下請法)
- 親事業者・下請事業者と呼んだ
- 手形での支払いも使われた
- 運送の委託の一部は対象外
いま(取適法)
- 委託事業者・中小受託事業者と呼ぶ
- 手形での支払いは禁止
- 話し合いに応じない値決めも禁止

04
働き方のルール: 物流の「2024 年問題」
2024 年 4 月から、トラック運転手の時間外労働に上限ができました。臨時に必要な場合でも、年 960 時間までです。運転手の働き方の基準も改められ、休憩を含めて仕事に縛られる時間は、原則として年 3,300 時間までになりました。
働きすぎを防ぐための大切な改正です。一方で、何も対策をしなければ、2024 年度に荷物を運ぶ力が約 14% 足りなくなるという試算がありました。これが物流の「2024 年問題」です。
会社は運び方を見直しました。トラックに荷物をまとめて積む、鉄道や船に切り替える、長い距離を途中で別の運転手に引き継ぐ中継輸送を使う、といった方法です。宅配便の再配達の割合も、2020 年度の約 10% から 2025 年度には約 9.5% に下がりました。
2026 年 3 月の国の総合物流施策大綱は、2024 年度の約 14% の不足を、官民の取り組みでおおむね乗り越えたとしています。ただし人手不足は今後さらに深刻になると見込まれ、取り組みは続いています。
働く人を守る法律は、会社の仕事の組み立て方を変えます。
図解法律の変化が仕事を変えるまで
- 1法律が変わる運転手の残業は年 960 時間まで
- 2課題が見える運ぶ力が約 14% 不足するおそれ
- 3会社が見直す積み方・中継輸送・鉄道や船へ
- 4結果を確かめる2024 年度の不足をおおむね克服


05
大学では: ニュースの「なぜ」を経営の目で考える
多くの大学の経営学部では、1・2 年生で経済学の基礎を学びます。景気や物価の動きが分かると、会社がいつ設備にお金をかけ、いつ人を増やすかという判断が読めるようになります。
会社法の授業では、株主・取締役・株主総会など、会社のしくみを法律の面から学びます。企業と社会の授業では、会社が環境や働く人、地域とどう向き合うかを考えます。企業の社会的責任(CSR)と呼ばれるテーマです。
公民を入試で使わなかった人も心配はいりません。多くの大学では入門の授業から始めます。ニュースで「値上げ」「人手不足」「法改正」といった言葉を見たら、会社にどんな影響があるかを考えてみると、授業の内容が身近になります。高校の公民の科目のページや、経済学・法学のページもあわせて読むと、つながりが見えてきます。
ニュースの変化を会社の判断に結びつけて考えるのが、経営学の見方です。
高校生のうちに試せること
値上げのニュースを分類する
新聞やニュースサイトで「値上げ」の記事を 3 つ選び、理由が原材料・人件費・エネルギーのどれにあたるかを分けてみましょう。会社が値上げを決めた背景が見えてきます。
RESAS で地元の産業を調べる
国の地域経済分析システム RESAS では、地域ごとの産業の構成や人口の動きを、地図やグラフで見られます。自分の市町村で多い産業を調べ、どんな会社が働く場所を支えているかを考えてみましょう。
RESAS 地域経済分析システム宅配便を 1 回で受け取る
家族がネットで買い物をするときに、受け取れる日時を指定したり、置き配や駅の宅配ロッカーを選んだりしてみましょう。国土交通省のページで、再配達を減らす工夫が紹介されています。
宅配便の再配達削減に向けて(国土交通省)
「公共・政治経済」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 15 件から探せます。
よくある質問
「政治・経済」を選んでいなくても経営学部に進めますか?
進めます。入試の科目は大学によって異なり、公民を使わずに受けられる入試も多くあります。入学後は、多くの大学で経済学や法律の入門の授業から学びます。
経営学部でも法律を学びますか?
多くの大学で、会社法や経済法などの授業を選べます。必修か選択かは大学によって異なります。取引や雇用のルールを知ることは、会社を動かすうえで欠かせません。
公民の勉強は、経営学のどこで役立ちますか?
景気・物価・労働・取引のルールは、会社の外から来る変化です。会社がなぜその判断をしたのかを考えるとき、その変化を読み取る土台になります。


