図 4 学ぶために必要な科目・学問学ぶために必要な科目 1
数学・情報
アンケートの集計、売上の予測、キャンペーンの費用の見積もり。経営学では、高校の数学 I・A・B で学ぶデータの分析や確率と、情報 I で学ぶ表計算を、会社の判断に使います。

ひとことで言うと
部活の新しいユニフォームを選ぶとき
部員全員の意見を聞けないときは、何人かに聞いて全体を推し量ります。票が大きく割れたのか、みんなが「まあまあ」なのかでも、決め方は変わります。会社も同じように、数字から人の好みや先の売上を読み取ります。

01
アンケートの集計: 平均が同じでも中身は違う
新しいお菓子の試食会で、2 つの味を 5 段階で評価してもらったとします。どちらも平均は 3.0 点でした。では、2 つの味の人気は同じなのでしょうか。
味 A は全員が 3 点、味 B は半分の人が 5 点、残りが 1 点でした。B は、好きな人と苦手な人に大きく分かれる味です。この散らばりを表すのが、数学 I の「データの分析」で学ぶ分散と標準偏差です。A の標準偏差は 0、B は 2 になります。
B のように評価が割れる商品は、少ない人数でも熱心なファンをつかめるかもしれません。年代別や男女別に分けて数えるクロス集計をすると、どんな人に好かれているかが見えてきます。
日本学術会議の参照基準は、顧客の購買のデータを統計の方法で分析すると、マーケティング計画のよしあしを数字で評価できると述べています。平均だけでなく、散らばりや割合まで見るのが経営学の集計です。
平均と散らばりの両方を見ると、数字の中身が分かります。
図解平均はどちらも 3.0 点の 2 つの味
味 A
- 全員が 3 点
- 標準偏差は 0
- みんなが「まあまあ」と感じた
味 B
- 半分が 5 点、半分が 1 点
- 標準偏差は 2
- 好き嫌いが大きく分かれた

02
標本調査: 何人に聞けば足りるのか
全国の高校生全員にアンケートをとるのは、時間も費用もかかりすぎます。そこで、一部の人を選んで調べ、全体のようすを推し量ります。数学 B の「統計的な推測」で学ぶ標本調査です。
400 人に聞いて、50% が「買いたい」と答えたとします。信頼度 95% で区間推定すると、全体の割合はおよそ 45〜55% と見積もれます。この ±5 ポイントほどの幅が、調査の誤差の目安です。
1,600 人に聞くと、幅はおよそ ±2.5 ポイントに縮みます。人数を 4 倍にしても、誤差は半分にしかなりません。誤差の幅は、人数の平方根に反比例するからです。何人に聞くかは、ほしい正確さと費用のつり合いで決めます。
人数より大切なこともあります。店に来たお客さんだけに聞けば、店を知らない人の意見は入りません。誰に聞くかを決める段階で、結果が偏ることもあるのです。
一部の人の答えから全体を推し量る道具が、統計的な推測です。
図解「買いたい」人の割合を見積もる
- 1信頼度 95% で区間推定をする
- 2誤差の幅は 1.96 × √(0.5 × 0.5 ÷ 400) ≒ 0.049
- 31,600 人に聞けば、幅は約 0.025 に縮む

03
期待値: 福引きの景品は、いくらまで出せる?
商店街の歳末セールでは、買い物 1,000 円ごとに福引きを 1 回引ける、といった催しがあります。景品にいくらかけるかは、店にとって大事な判断です。ここで役立つのが、数学 A で学ぶ期待値です。
例えば、1,000 本のくじに、3,000 円の商品券を 2 本、500 円を 10 本、100 円を 140 本入れるとします。景品の合計は 2 万 5,000 円なので、1 回あたりの期待値は 25 円です。1,000 円の買い物に対する 2.5% 引きと、ほぼ同じ負担になります。
景品の額には法律の決まりもあります。景品表示法では、商店街などが共同で行う懸賞の景品は、1 つ 30 万円まで、総額は対象の売上の見込みの 3% までです。「全員に 5% 引き」と福引きのどちらが店の負担が軽いかも、期待値で比べられます。
期待値は、新しい商品を出すかどうかの判断にも使います。うまくいった場合と、いかなかった場合の利益に、それぞれの確率をかけて足します。学習指導要領も、数学 A で期待値を意思決定に生かすことを挙げています。
期待値を使うと、運に任せる企画の費用も前もって見積もれます。
図解福引き 1 回あたりの期待値
- 13,000 円 × 2 本 + 500 円 × 10 本 = 11,000 円
- 2100 円 × 140 本 = 14,000 円。合計 25,000 円
- 325,000 円 ÷ 1,000 本 = 1 回あたり 25 円
- 41,000 円の買い物に対して 2.5%


04
売上の予測と表計算: 散布図を関数とみなす
新しい店をどこに出すかを決めるとき、候補地の前を通る人の数を数えることがあります。今ある店の「通る人の数」と「売上」を散布図にすると、点が右上がりに並ぶことがあります。
点の並びに直線を当てはめると、通る人の数から売上を見積もる式ができます。学習指導要領は、数学 B の「数学と社会生活」で、散布図のデータを関数とみなして処理することを扱うとしています。大学の統計学では、回帰分析として学びます。
この計算は、表計算ソフトを使えば数秒で終わります。情報 I では、データを集めて整理・分析する方法や、モデル化とシミュレーションを学びます。仕入れの量を変えると売れ残りがどう変わるかも、表の上で試せます。
予測はいつも当たるわけではありません。近くに新しい店ができるなど、データにない出来事も起こります。予測と実際の差を記録して式を直していくことも、経営学で学ぶ大切な作業です。
散布図と表計算で、勘に頼っていた見積もりを数字にできます。
図解出店の前に売上を予測する(例)
- 1人を数える候補地の前を通る人の数を数える
- 2散布図にする今ある店の通行量と売上を点で表す
- 3直線を当てはめる表計算ソフトで売上を見積もる式を作る
- 4予測と比べる開店後の売上と比べて式を直す


05
苦手でも大丈夫: どこから学び直すか
経営学部は文系の学部に置かれることが多く、入試で数学を選ばずに入学する人もいます。多くの大学では、1 年生の統計学の入門で、平均や散らばりの考え方から学べます。入試の科目は大学や方式によって異なるので、志望校の募集要項で確かめてください。
学び直すなら、中学で学ぶ割合と平均から始めるのが近道です。次に数学 I の「データの分析」、数学 A の確率と期待値、数学 B の「統計的な推測」へ進みます。このページの試食会や福引きの例を表計算ソフトに入力して確かめると、式の意味がつかみやすくなります。
高校の数学と情報の科目のページ、数学の学問のページもあわせて読むと、高校から大学までの学びのつながりが見えてきます。
割合と平均から順に積み上げれば、経営学の数字は読めるようになります。
高校生のうちに試せること
試食会のアンケートを集計する
家族や友だちに、お菓子 2 種類を 5 段階で評価してもらいましょう。表計算ソフトで平均と標準偏差を出し、平均が近くても散らばりが違うかどうかを確かめてみてください。
福引きの期待値を計算する
賞ごとの本数と景品が分かる福引きを見つけたら、景品の合計をくじの本数で割ってみましょう。1 回あたりの期待値が出ます。景品の上限の決まりは、消費者庁のページで確かめられます。
景品規制の概要(消費者庁)なるほど統計学園で推測を学ぶ
総務省統計局の学習サイトです。上級のコーナーの「特性の推測」では、一部のデータから全体を推し量る考え方を学べます。グラフの作り方や、データの特徴の捉え方のページもあります。
なるほど統計学園(総務省統計局)
「数学・情報」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 19 件から探せます。

熊坂研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻・遺伝統計学・応用統計学・熊坂 夏彦 教授
駒木研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科数理情報学専攻・統計学・予測理論・ベイズ理論・駒木 文保 教授
鈴木研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科数理情報学専攻・機械学習・数理統計学・学習理論・鈴木 大慈 教授

時空間統計科学
岡山大学(岡山県)
工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 数理データサイエンスコース・空間統計学・石岡 文生 教授
エシェロン解析で疾病などのホットスポットを統計的に検出し、医学・環境分野に応用する。

計算機統計学
岡山大学(岡山県)
環境生命自然科学研究科 数理情報科学 数理データ科学・統計学・飯塚 誠也 教授
多変量データや質的データ、テキスト・画像など多様なデータを計算機で分析する統計手法を開発する。
統計科学
熊本大学(熊本県)
工学部 機械数理工学科 数理工学教育プログラム・数理統計学・岩佐学 准教授
データサイエンスの土台となる統計手法の理論と応用を研究する。
よくある質問
経営学部の入試に数学は必要ですか?
大学や入試の方式によって異なります。数学を使わずに受けられる入試も多くあります。入学後は統計学の授業があるので、数学 I の「データの分析」を学び直しておくと、授業についていきやすくなります。
数学 III は必要ですか?
経営学部の授業で多く使うのは、統計・確率・関数の基本です。数学 III が必要かどうかは、大学や入試の方式によって異なります。経営工学などを深く学ぶ人は、大学で微分積分や線形代数も学びます。
表計算ソフトは、いつ覚えればよいですか?
高校の情報 I で基本を学びます。多くの大学では、1 年生の情報や統計の授業でも使い方を学べます。部活の会計や家の買い物の記録を表にしてみると、早く慣れます。

