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図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 2

2 年: 4 つの柱を学ぶ

量子化学・化学熱力学、有機化学、無機化学、分析化学と、化学の 4 本の柱が出そろう 1 年です。学生実験では、同じ試料をいくつもの方法で測り比べ、正確に測るための手間の意味を、手を動かして覚えます。

暗くした実験室で色とりどりの炎を見つめる学生と、ビュレットから液を 1 滴ずつ落として色の変わる瞬間を待つ学生たち

ひとことで言うと

4 つの楽器を、同じ楽譜で習い始める

2 年の化学は、ピアノ・ギター・ドラム・ベースを同時に習い始めるようなものです。最初は別々に練習しますが、どれも「電子とエネルギー」という同じ楽譜を読んでいます。3 年になると、4 つの楽器で 1 曲を合わせられるようになります。

01

2 年の科目と 1 週間: 4 本の柱が出そろう

2 年では、化学の柱になる専門科目が一気に始まります。千葉大学の化学科では、2 年に化学統計熱力学・量子化学・無機化学・分析化学・有機化学と、蛋白質・核酸化学などの生化学の科目が並びます。実験も、物理化学・無機・分析化学・有機化学・生化学の 4 つに分かれます。

東京理科大学の化学科では、2 年前期の有機化学 2 が週 2 回の授業です。シラバスには、授業の進み方が 1 年の有機化学 1 の 2〜4 倍の速さになると書かれています。予習と復習に、それぞれ授業と同じくらいの時間をかけることが求められます。

下の図は、2 年生の前期の 1 週間の例です。科目の名前や曜日は大学によって異なります。講義の数が増えるうえ、午後いっぱいの学生実験も続くので、時間の使い方がいっそう大切になります。

2 年は、化学の 4 本の柱を同時に学び、つながりが見え始める時期です。

図解2 年生の 1 週間(例)

  1. 月有機化学・英語芳香族やアルコールの反応を学ぶ
  2. 火量子化学・学生実験午後は 3 コマ続きの実験
  3. 水無機化学・分析化学錯体や滴定の原理を学ぶ
  4. 木化学熱力学・生化学平衡や酵素のはたらきを式で扱う
  5. 金有機化学・演習週 2 回目の有機化学で問題を解く
  6. 土・日レポート・予習実験の考察と次の週の準備

02

有機化学: 電子の流れで反応を読む

高校の有機化学では、エステルができる反応やベンゼンの置換反応を、反応ごとに覚えてきました。大学では、電子の多い所から少ない所へ曲がった矢印を引き、反応の筋道を説明します。東京理科大学の有機化学 2 も、「電子の流れ」と分子の軌道から反応のしくみを理解することを目標にしています。

この見方が身につくと、初めて見る反応でも、どこで何が起こるかを予想できます。同じ大学の化学科の 4 年生は、大学案内で 3 年の有機化学の授業を振り返っています。反応を覚えるだけでなく、新しい反応に知識を応用して理解する力が求められたそうです。

有機化学 2 では、分子の形を調べる道具の原理も学びます。質量分析・赤外分光・紫外分光・核磁気共鳴(NMR)のスペクトルから、化合物の構造を読み解く練習をします。分子を「見る」道具は、3 年の実験で実際に使います。

電子の流れで考えると、覚える量が減り、予想できる反応が増えます。

図解高校と大学 2 年の有機化学

高校の有機化学

  • 反応ごとに、できる物を覚える
  • 官能基の性質を表で整理する
  • 構造は試薬との反応で確かめる

大学 2 年

  • 電子の流れを矢印で書いて説明する
  • 初めての反応も筋道から予想する
  • スペクトルから構造を読み解く

03

量子化学: 炎の色からエネルギーを計算する

高校の化学基礎では、炎色反応で、ナトリウムは黄色、リチウムは赤、銅は青緑と覚えました。2 年の量子化学では、なぜ元素ごとに決まった色になるのかを説明します。

原子の中の電子は、決まったエネルギーの段(エネルギー準位)にしかいられません。炎で熱せられた電子は上の段に上がり、下の段に戻るときに、段の差の分のエネルギーを光として出します。段の差は元素ごとに決まっているので、光の色(波長)も決まります。

東京理科大学の物理化学 2A でも、水素原子の発光スペクトルとエネルギー準位の関係を理解することが目標の 1 つです。ナトリウムの黄色い光の波長は約 589 nm で、下の図のように計算すると、光の粒 1 個のエネルギーは約 3.4 × 10⁻¹⁹ J です。目に見える色から、原子の中のエネルギーの差が分かるのです。

この考え方は、物質に光を当てて正体や量を調べる分光分析の土台です。量子化学は、3 年の機器分析や、分子の性質を計算で予測する研究にもつながります。

光の色は、原子の中の電子のエネルギーの差を映しています。

図解ナトリウムの黄色い光のエネルギー

入力ナトリウムの炎の光: 波長 λ ≒ 589 nm(5.89 × 10⁻⁷ m)
  1. 1光の粒 1 個のエネルギー E = hc ÷ λ
  2. 2h(プランク定数)= 6.63 × 10⁻³⁴ J·s、c(光の速さ)= 3.00 × 10⁸ m/s
  3. 3E = 6.63 × 10⁻³⁴ × 3.00 × 10⁸ ÷ (5.89 × 10⁻⁷)
  4. 41 mol(6.02 × 10²³ 個)分にすると約 203 kJ
結果E ≒ 3.4 × 10⁻¹⁹ J。電子が下の段に戻るときのエネルギーの差
暗い中で横一列に並んだ 9 つの炎が、赤・オレンジ・黄・緑・青・紫と、それぞれ違う色に燃えている
金属などの化合物をとかした液を燃やした炎。左からリチウム・ストロンチウム・カルシウム・ナトリウムなどの化合物で、元素ごとに決まった色になります。写真: Hegelrast(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

04

学生実験: 同じ試料を 4 つの方法で測る

2 年の学生実験は、分野ごとに専門的になります。東京理科大学の化学科では、前期に一般化学実験があります。有機化合物の合成と蒸留、3 種類のコバルト錯体の合成、反応熱の測定など、基本の実験を幅広く行います。

後期の無機及分析化学実験では、塩化銅(II) の溶液 1 つを、4 種類の滴定で調べます。塩化物イオンを沈殿の反応で、銅(II) イオンを酸化還元・キレート・中和の反応で、それぞれ量を求めます。続けて、銅とニッケルの合金を、沈殿の重さ・光の吸収・電気分解・原子吸光で分析します。

シラバスには、初心者が不必要と考えがちな手の込んだ操作を、あえて各所に入れてあると書かれています。面倒な操作が正確な分析値に欠かせないことを、実際に手を動かして学ぶためです。同じ答えに、違う道から何度もたどり着くことで、測った値をどこまで信じてよいかが分かってきます。

レポートは、自分の文で自分の考えを書くことが求められます。他人のレポートを写すと、単位が取り消される場合もあります。

1 つの値を何通りもの方法で確かめるのが、分析化学の基本の姿勢です。

図解無機及分析化学実験の流れ(東京理科大学の例)

  1. 1試料の準備塩化銅(II) の溶液を調製する
  2. 24 つの滴定沈殿・酸化還元・キレート・中和
  3. 3合金の分析重さ・光の吸収・電気分解で測る
  4. 4無機合成磁性材料のフェライトを合成する

05

つまずきやすい点と乗り越え方

2 年でつまずきやすいのは、科目の数と情報量が一度に増えることです。東京理科大学の有機化学 2 のシラバスは、1 年と同じ姿勢で臨むと内容についていくのが難しいと、はっきり書いています。授業の前に教科書を読み、分からない所に印をつけてから授業に出ると、理解が速くなります。

量子化学では、複素数や微分方程式など、数学の道具がほぼ毎回出てきます。物理化学 2A のシラバスも、高校物理の波動や静電気、高校数学の複素数を復習しておくことを勧めています。つまずいたら、高校の教科書に戻るのも近道です。

学生実験では、ほかの班と値がずれることがよくあります。ずれの理由を操作や器具から考え、次の実験で確かめることが、分析の力を育てます。

クイズ2 年の学びクイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q1ナトリウムの炎の黄色い光の波長は、およそ何 nm?

  2. Q2光の波長が短くなると、光の粒 1 個のエネルギーはどうなる?

  3. Q3東京理科大学の無機及分析化学実験で、塩化銅(II) の溶液を調べる滴定は何種類?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 炎の色のエネルギーを計算する

    ナトリウムの黄色(約 589 nm)と、リチウムの赤(約 671 nm)の光について、E = hc ÷ λ で光の粒 1 個のエネルギーを計算しましょう。どちらが大きいかを比べると、色とエネルギーの関係が見えてきます。

  • 英語の無料の教科書で化学を読む

    OpenStax は、アメリカのライス大学の非営利の教育事業です。そこが公開する『Chemistry 2e』は、無料で読める大学の入門向けの化学の教科書です。原子の構造など、知っている単元を英語で読んでみましょう。式と図が多いので、英語に自信がなくても内容を追えます。

    OpenStax「Chemistry 2e」
  • 学校の中和滴定を 3 回くり返す

    学校で中和滴定をするときは、先生と相談して、同じ測定を 3 回くり返しましょう。3 回の値の平均と、いちばん大きい値と小さい値の差を出すと、測定のばらつきが数字で分かります。大学の分析化学の実験でも、何度も測って値を確かめます。

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よくある質問

4 本の柱は、全部同じくらい勉強しないといけませんか?

多くの大学では、2 年に 4 本の柱の講義と実験がそろって並びます。どれも原子や分子の中の電子とエネルギーを扱うので、1 つが分かると、ほかの分野の理解も進みます。得意な分野が見えてくるのも 2 年で、それが 4 年の研究室選びの手がかりになります。

量子化学は物理のようで難しそうです。

量子化学では、数学や物理の道具を使って、原子や分子の中の電子のふるまいを考えます。最初は水素原子のような簡単な例から始めます。炎色反応や物質の色など、目に見える現象と結びつけると、式の意味がつかみやすくなります。

学生実験は何人で行いますか?

大学や実験によって異なります。東京理科大学の一般化学実験は、何人かの班に分かれて行いますが、シラバスは他人任せにせず、各自が積極的に取り組むよう求めています。レポートは、自分の文で自分の考えを書きます。