図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 3
教材・学習サービス
教科書や問題集、通信教育、学習アプリ、塾などで、「分かりやすい」「続けたくなる」教材やサービスを企画してつくる仕事です。何百万人もの子どもが開く 1 ページを、自分の手でつくれます。

ひとことで言うと
ゲームの攻略本は、迷う場所から書く
よい攻略本は、多くの人が迷う場所や苦戦する場面の前で、ちょうどよいヒントをくれます。教材づくりも同じです。子どもがどこで迷うかを先に知り、その場所に説明や図、練習問題を置いていく仕事です。

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どんな仕事?: 教科書から学習アプリまで
学びの道具をつくる仕事には、いろいろな形があります。学校で使う教科書や副教材、家で取り組む通信教育や問題集、タブレットで使う学習アプリ、塾や予備校の授業などです。
日本の教科書は、国ではなく民間の発行者がつくっています。2026 年度用の教科書の発行者は 50 者で、そのうち 30 者が小・中学校などの教科書を出しています。義務教育の教科書を出す発行者は、教科書の編集を専門に担当する人を、原則 5 人以上置くことになっています。
どの仕事でも、中心にあるのは「この 1 ページで、子どもは何ができるようになるか」という問いです。学ぶ人の側から教材を考える力は、教育学で学ぶ授業づくりの考え方そのものです。
教材づくりの出発点は、学ぶ人がどこで迷うかを知ることです。
図解学びの道具をつくる仕事
- 教科書の編集検定を受ける教科書をつくる
- 副教材・問題集授業の理解を深める教材
- 通信教育家で続けられる学びを届ける
- 学習アプリつまずきに合わせて問題を出す
- 塾・予備校授業で学力や受験を支える


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教科書ができるまで: つくる人と確かめる人
教科書は、学習指導要領と検定の基準をもとに、発行者が著作・編集します。できあがった原稿は、文部科学大臣に検定を申請します。文部科学省の教科書調査官が調べ、大学の先生や学校の先生などでつくる審議会が審議します。
直したほうがよい点があると、検定意見が文書で伝えられ、発行者は修正して出し直します。合格した教科書の中から、公立学校で使う 1 種類を選ぶのは教育委員会です(採択)。小・中学校では、原則として 4 年間、同じ教科書を使います。
教科書調査官は、文部科学省の常勤の職員です。大学で教えた経験のある人などから採用され、専門の立場から教科書の内容を調べます。教材をつくる側だけでなく、確かめる側にも教育の専門家の仕事があります。
採択の前には、毎年 6〜7 月ごろ、都道府県が教科書展示会を開きます。会場になる教科書センターは全国に 962 か所あり(2025 年 5 月)、先生だけでなく地域の人も教科書を見比べられます。
1 冊の教科書の裏には、つくる人と確かめる人の両方の仕事があります。
図解教科書が子どもに届くまで
- 1著作・編集発行者が学習指導要領をもとにつくる
- 2検定調査官の調査と審議会の審議
- 3修正検定意見をもとに直して出し直す
- 4採択公立は教育委員会が 1 種類を選ぶ
- 5発行・供給義務教育は国の負担で無償で届く

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デジタルの学び: 教科書もアプリも変わる
教科書の形も変わり始めています。2024 年度からは、すべての小・中学校などで、小学 5 年から中学 3 年の子どもに英語のデジタル教科書が届けられています。算数・数学なども、学校の環境を見ながら順に広げる計画です。
2025 年 9 月には、中央教育審議会の作業部会が考えをまとめました。紙だけでなくデジタルの教科書も正式に認め、学校が選べるようにするという内容です。文部科学省は、そのための制度の改正を進めています。
学習アプリづくりでも、教育学の知識が生きます。アメリカの教育工学者ジョン・ケラーは、ARCS(アークス)モデルを提案しました。学ぶ意欲を「注意」「関連性」「自信」「満足感」の 4 つの面から考える方法です。最初に興味を引き、自分に役立つと感じてもらい、できそうだと思わせ、できた喜びを返す。この流れで画面や問題を組み立てます。
アプリには、子どもの解答のデータが集まります。多くの子が同じところでまちがえていると分かれば、ヒントの出し方を変えられます。データと教育学を組み合わせて、教材を育てていく仕事です。
子どものつまずきのデータは、教材をよくするいちばんの材料です。
図解学習アプリの新しい機能をつくる(例)
- 1解答のデータから、まちがいの型と人数を調べる
- 2教育心理学の研究で、なぜそう考えるのかを確かめる
- 3まちがいの型ごとに、図を使ったヒントを用意する
- 4学校で試してもらい、正答率の変化を見る

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教材会社の編集者の 1 日(例)
ここでは、小・中学生向けの問題集や学習アプリの教材をつくる会社で、算数を担当する編集者の 1 日の例を紹介します。
編集者は、自分で問題を書くだけでなく、問題をつくる人やイラストを描く人、アプリを開発する人をつなぐ役目です。学習指導要領や教科書の順番と合っているか、答えにまちがいがないかを何度も確かめます。
試作した教材を、子どもに実際に使ってもらう機会もあります。子どもが手を止めた場所や、思わず声を上げた場面が、次の改善の材料になります。働き方は、会社や担当によって異なります。
子どもの反応を見て直すことのくり返しで、教材はよくなっていきます。
図解教材会社の編集者の 1 日(例)
- 9:30進み具合の確認今日の締め切りとチームの予定を見る
- 10:00原稿のチェック問題の答えと説明に誤りがないか確かめる
- 12:00昼休み
- 13:00開発チームと会議アプリのヒントの出し方を話し合う
- 15:00子どもの試用試作の教材を使う様子を観察する
- 17:00改善案づくり観察の結果から直す点をまとめる

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向いている人と入り方・その先
教材や学習サービスの会社には、教育学部のほか、文学部や理学部、情報系の学部などから新卒で入る人がいます。教員免許は必須ではありませんが、教育実習で授業をした経験は、教材を使う子どもの姿を思い描く力になります。
大学時代に塾の講師や学習支援のボランティアをして、教える面白さに気づく人もいます。学校の先生として経験を積んでから、教材をつくる側に移る人もいます。
これからは、学習データを読む力も求められます。どの問題で何人がまちがえたかを集計し、教え方の改善につなげるためです。大学で教育工学や教育統計を学んでおくと、仕事の幅が広がります。経験を積むと、教材全体の責任者や、新しい学習サービスを立ち上げる立場に進む道があります。
教えることが好きな人、人がつまずく理由に興味がある人、細かい確認をこつこつ続けられる人に向いています。
教育学に、データやデザインの力を組み合わせると、仕事の幅が広がります。
高校生のうちに試せること
教科書展示会で教科書を見比べる
毎年 6〜7 月ごろ、都道府県が教科書センターなどで教科書展示会を開きます。同じ教科の教科書を 2 つの発行者の分だけ見比べて、説明の順番や図の使い方の違いを探してみましょう。
教科書採択の方法(文部科学省)Scratch で 3 問のクイズを作る
無料のプログラミング環境 Scratch で、友だち向けの 3 問のクイズを作ってみましょう。まちがえたらヒントを出す、正解したらほめるなど、ARCS モデルの 4 つの面を意識すると、続けたくなるクイズになります。
ScratchNHK for School を作り手の目で見る
NHK for School の番組を 1 本選び、最初の 1 分でどう興味を引いているか、どこで問いを出しているかをメモしましょう。教材を設計する目が育ちます。
NHK for School
「教材・学習サービス」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 17 件から探せます。
よくある質問
教材の会社に入るには、教員免許が必要ですか?
必須ではありません。ただ、教職課程で学ぶ授業づくりや教育実習の経験は、教材を考えるときに役立ちます。採用の条件は会社によって違うので、募集要項で確かめてください。
プログラミングができないと、学習アプリの仕事はできませんか?
アプリの開発は技術者が担当し、編集者や企画の担当は、学ぶ内容や問題の流れを考えます。とはいえ、基本的なしくみを知っていると、技術者と話し合いやすくなります。
塾の講師と学校の先生は、どう違いますか?
塾の講師になるのに、教員免許は求められていません。学校の先生が生活全体を通して子どもを育てるのに対し、塾は教科の学力や受験など、目的をしぼって教えるのが特徴です。

