図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 4
企業や地域で人を育てる
会社の研修で社員の成長を支えたり、公民館などで地域の人の「学びたい」を形にしたりする仕事です。相手は大人や地域の人。学校の外で、学びの場そのものをつくります。

ひとことで言うと
料理教室は、台所の様子を聞いてから
料理教室では、参加者がふだん何を作っていて、何に困っているかを聞いてから教えると、家で役立つ教室になります。大人の学びを支える仕事も同じで、相手の経験と目的を知ってから、学びの場を組み立てます。

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どんな仕事?: 会社の研修と、地域の学びの場
学びの場は、学校の中だけではありません。会社では、新入社員や管理職になる人の研修が行われています。厚生労働省の 2025 年度の調査では、職場を離れて行う研修(OFF-JT)を実施した事業所は 72.6% でした。対象は新入社員が 58.7%、中堅社員が 57.4%、管理職が 49.0% です。
研修や人材育成の担当者は、会社が社員に身につけてほしい力を整理し、研修の内容や講師、時期を決めます。新しく入った人が早く力を発揮できるよう、先輩が仕事の中で教える計画(計画的な OJT)を整えるのも仕事です。
地域では、市町村の生涯学習の担当や公民館の職員が、講座や学びのサークルを企画します。公民館で事業の企画や指導にあたる職員(公民館主事など)は 1 万 1,383 人です(2024 年 10 月)。教育委員会に置かれる社会教育主事も 1,482 人います。
相手は大人。経験や目的が一人ひとり違うことが、学校との大きな違いです。
図解人を育てる 2 つの場
会社の研修・人材育成
- 社員に必要な力を整理する
- 研修を企画し、講師を手配する
- 職場で教える計画を整える
地域の社会教育
- 住民の「学びたい」を聞く
- 公民館などで講座を企画する
- 学んだ人どうしをつなぐ

02
会社の人材育成: 大人の学びを設計する
大人に教えるときは、子どもとは違う工夫がいります。アメリカのマルカム・ノールズは、大人の学びを支える考え方を「アンドラゴジー」と呼んで広めました。大人は自分の経験を手がかりにして学び、仕事や暮らしの課題に役立つと分かると意欲が高まる、という考え方です。
そのため会社の研修では、講義を聞くだけでなく、実際の仕事の場面を使った演習や話し合いを組み合わせます。研修づくりでは、ADDIE(アディー)と呼ばれる手順がよく使われます。分析・設計・開発・実施・評価の 5 つの段階をくり返しながら、研修をよくしていきます。
一方で、人を育てる人は足りていません。同じ調査では、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所が 80.1% ありました。いちばん多い問題は「指導する人材が不足している」(59.5%)です。教え方を学んだ人が、会社でも求められています。
大人の学びは、本人の経験と仕事の課題から組み立てます。
図解新入社員研修をつくる(例)
- 1分析: 先輩と新人に話を聞き、つまずく場面を集める
- 2設計: 「3 分で商品を説明できる」を研修の目標にする
- 3開発: 実際の場面をもとに、ロールプレイの台本を作る
- 4実施と評価: 1 か月後、職場での変化を確かめる

03
地域の学び: 公民館で「やってみたい」を形にする
地域の学びの拠点の一つが公民館です。始まりは戦後間もない 1946 年 7 月、文部省(いまの文部科学省)が公民館の設置と運営の方法を示した通牒でした。3 年後の 1949 年には、社会教育法ができました。このとき、当時 1 万あまりあった市町村のうち、4,000 あまりがすでに公民館を置いていました。
物も資材も足りない時代で、建物を持たない「青空公民館」も多くありました。それでも、ふるさとを立て直したいという人々の思いで、各地に学びの場が広がりました。
いまも公民館では、地域の人が講座を開いたり、サークルで学び合ったりしています。2023 年度に全国の公民館で開かれた講座と集会は、あわせて約 50 万件です。一方で、事業を企画する公民館の職員は、2005 年度の 1 万 7,805 人から減っています。地域の学びを支える人をどう確保するかが課題です。
地域の学びの場は、そこに住む人の思いから生まれ、いまも続いています。


04
公民館の職員の 1 日(例)
ここでは、市の公民館で講座の企画や運営を受け持つ職員の 1 日の例を紹介します。公民館は夜や週末に開く講座も多く、勤務の時間帯は館や自治体によって異なります。
講座の企画は、地域の人の声を聞くことから始まります。たとえば「スマートフォンで災害の情報を確かめたい」という高齢の人の声が届いたとします。地元の高校生に教える役を頼めば、世代をこえて学び合う講座にできます。
講座が終わったら、参加した人の感想を集め、次の企画に生かします。講座で出会った人どうしがサークルを作り、自分たちで学びを続けていくことも、公民館の大きな成果です。
地域の人の声を聞き、学びの場をつなぎ続ける仕事です。
図解公民館の職員の 1 日(例)
- 9:00開館の準備部屋の予約と今日の講座を確かめる
- 10:00講座の運営高齢の人向けのスマホ講座を受け付ける
- 12:00昼休み
- 13:30地域の人と相談夏休みの子ども向け講座を考える
- 15:30広報づくり講座のチラシと市の広報の原稿を書く
- 18:30夜の講座働く人向けの防災講座を開く

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向いている人と入り方・資格
会社の研修や人材育成の担当になる人の多くは、会社に入ってから人事などの部署に配属されます。学部の決まりはなく、教育学で学ぶ学習の理論や授業の設計の考え方が、研修づくりにそのまま生きます。研修の企画や講師を専門にする会社で働く道もあります。
働く人の進路の相談にのる国家資格に、キャリアコンサルタントがあります。2016 年 4 月に国家資格になり、登録者は 8 万 6,370 人です(2026 年 3 月末)。2022 年度の調査では、活動の場は企業が 41.7% で最も多く、学校・教育機関が 20.6% で続きます。
地域の学びに関わるには、市町村などの職員として採用され、生涯学習の担当や公民館に配属される道があります。運営を任された団体(指定管理者)の職員として、公民館で働く人もいます。大学で社会教育主事の養成課程を修めると、社会教育士と名乗れます。
人の話を聞いて「それなら、こんな学びの場はどうだろう」と考えるのが好きな人、年代の違う人と話すのが楽しい人に向いています。
資格がなくても始められますが、学びを支える専門性を示す資格もあります。
図解人を育てる仕事に役立つ資格
キャリアコンサルタント
- 国家試験に合格して登録する
- 5 年ごとに更新がある
- 会社や学校で相談にのる
社会教育士
- 大学の養成課程などで学ぶ
- 発令がなくても名乗れる称号
- NPO や会社でも生かせる
社会教育主事
- 教育委員会に置かれる専門職
- 教育委員会の発令が必要
- 地域全体の学びを計画する
高校生のうちに試せること
講座の企画書を 1 枚書く
祖父母の世代にスマートフォンの使い方を教える講座など、自分が講師になれる講座を考えましょう。目的・対象・回数・ふり返りの方法を 1 枚にまとめると、公民館の職員の仕事を体験できます。
家の人に「仕事でどう学んだか」を聞く
家の人に、入社したときの研修や、仕事を覚えるときに役立った教わり方を聞いてみましょう。厚生労働省の調査の結果と比べると、会社の人材育成の姿が見えてきます。
令和 7 年度「能力開発基本調査」の結果(厚生労働省)job tag でキャリアコンサルタントを調べる
厚生労働省の職業情報提供サイト job tag で、キャリアコンサルタントの仕事の内容や働く場所、必要な資格を読んでみましょう。
キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント(job tag)
「企業や地域で人を育てる」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 17 件から探せます。
よくある質問
会社の研修担当になるには、どの学部がよいですか?
学部の決まりはありません。教育学で学ぶ学習の理論や授業の設計、心理学で学ぶやる気のしくみは、研修づくりに役立ちます。多くの人は、会社に入ってから人事などの部署で経験を積みます。
公民館で働くには、どうすればよいですか?
市町村の職員として採用され、公民館や生涯学習の部署に配属されるのが一つの道です。運営を任された団体(指定管理者)の職員として働く人もいます。まずは近くの公民館の講座やボランティアに参加してみると、仕事の様子が分かります。
キャリアコンサルタントには、どうすればなれますか?
厚生労働大臣が認定する養成講習を修了するなどして受験資格を得たうえで、国家試験に合格し、名簿に登録します。登録は 5 年ごとに更新します。