図 4 学ぶために必要な科目・学問学ぶために必要な科目 3
数学(データの分析)
学力調査の「平均正答率」は、どう読めばよいのか。教育学では、高校の数学 I の「データの分析」と数学 B の「統計的な推測」を使って、テストの結果や子どもの学び方を調べます。

ひとことで言うと
部活の記録会の結果を見るとき
チームの平均タイムだけでは、誰が伸びて、誰がつまずいているかは分かりません。一人ひとりの記録の散らばりを見て、初めて次の練習が決まります。テストの結果も同じで、平均と散らばりの両方を見るのが教育学の数学です。

01
教育学で数学が出てくる場所
教育学部は文系とされることも多いのですが、授業では数字も扱います。日本学術会議の参照基準は、統計的な処理を伴う量的研究の例として、心理学実験や質問紙調査を挙げています。仮説を立て、調査を設計し、データを分析して確かめる方法です。
先生の仕事でも、数字は身近にあります。テストの採点や成績の評価、学力調査の結果の読み取りなどです。中学校や高校の数学の先生になるには、大学で「確率論、統計学」の科目を必ず学びます。
その入口が、数学 I の「データの分析」と数学 B の「統計的な推測」です。このページでは、全国学力・学習状況調査、偏差値、国際的な学力調査 PISA の 3 つを、実際の数字で見ていきます。
教育学の数学は、子どもの学びを数字で確かめる道具です。
図解教育学で数学が出てくる場所
- 箱ひげ図学力調査の得点の分布を見る
- 標準偏差得点の散らばりを 1 つの数で表す
- 偏差値平均の違うテストの点を比べる
- 区間推定標本から全体の平均の幅を出す
- 仮説検定教え方による違いを確かめる
- 相関学習習慣と正答率の関係を見る

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平均だけで比べない: 学力調査の箱ひげ図を読む
全国学力・学習状況調査は、小学 6 年と中学 3 年の全員を対象に、春に行われる調査です。2026 年度は、公立の小学 6 年の国語の平均正答率が 60.9% でした。都道府県の平均正答率は、小数点以下を四捨五入した整数で公表されています。
都道府県の平均正答率は、高い所で 65%、低い所で 56% で、差は 9 ポイントでした。一方、一人ひとりの散らばりを表す標準偏差は、どの都道府県でも 22〜24 ポイントほどあります。県どうしの差より、同じ県の中の差のほうがずっと大きいのです。
結果の資料には、平均のほかに中央値や四分位数、箱ひげ図も載っています。平均正答率が 65% の東京都でも、下から 4 分の 1 の位置(第 1 四分位)は 46.2% で、全国と同じでした。13 問中 6 問の正答にあたります。
文部科学省も、平均正答率だけでなく、問題ごとの結果から課題をつかむよう求めています。調査で測れるのは学力の特定の一部分だとして、序列化や過度な競争が起きないよう配慮することも通知しています。
平均の差を見たら、散らばりと分布も確かめます。
図解2026 年度 小学 6 年の国語(公立)
平均 65%(東京都)
- 中央値(真ん中の子) 69.2%
- 下から 4 分の 1 の位置 46.2%
- 標準偏差 23.3 ポイント
平均 56% の県の例
- 上から 4 分の 1 の位置 69.2%
- 中央値(真ん中の子) 53.8%
- 標準偏差 22.4 ポイント

03
標準偏差と偏差値: 平均の違うテストを比べる
国語が 70 点で、数学も 70 点。同じ点でも、テストの平均や散らばりが違えば、意味は変わります。そこで使われてきたのが偏差値です。得点から平均を引き、標準偏差で割って 10 倍し、50 を足して求めます。
国語は平均 60 点で標準偏差 5 点、数学は平均 50 点で標準偏差 20 点だったとします。国語の偏差値は 70、数学は 60 です。散らばりの小さいテストでの 10 点差は、それだけ目立つ差なのです。
得点が正規分布に近い形に広がるとき、偏差値 60 以上の人は全体の約 16%、70 以上は約 2% です。正規分布は、数学 B の「統計的な推測」で学びます。偏差値は 1970 年代から、入試の合否の予測に広く使われるようになりました。
一方、学校の成績のつけ方は変わりました。2001 年の指導要録の改善で、評定は、集団の中の位置で決める相対評価から、目標に照らして決める評価に改められました。少子化で学級の人数が減り、相対評価では客観性を保ちにくくなったことも理由の 1 つです。
偏差値は、平均と散らばりをそろえて点を比べる物差しです。
図解偏差値を計算する(例)
- 1得点から平均を引く: 70 − 50 = 20
- 2標準偏差で割る: 20 ÷ 20 = 1
- 310 倍して 50 を足す: 10 + 50 = 60

04
標本と幅: PISA の「1 位」は「1〜8 位」
OECD の PISA は、15 歳の生徒の読解力・数学的リテラシー・科学の力を国際的に比べる調査です。2025 年の調査には、91 の国・地域から約 76 万人が参加しました。日本では、抽出された 183 校の高校 1 年生など約 6,500 人が受けています。
2026 年 9 月に公表された結果で、日本は 3 つの分野すべてで、OECD 加盟 38 か国中の 1 位でした。読解力の平均得点は 503 点です。
ただし資料では、得点に「495〜510」、順位に「1〜8 位」と幅が付いています。PISA は、全員ではなく一部の生徒が受ける標本調査です。そのため、生徒全員の本当の平均がありそうな範囲を、幅をもって考える必要があります。この範囲を信頼区間といいます。
数学 B の「統計的な推測」では、標本から全体の平均を区間で推し量る方法を学びます。文部科学省と国立教育政策研究所も、平均得点の比べ方に注意を促しています。数値の差だけでなく、統計的に意味のある差(有意差)があるかが重要だというのです。
標本調査の数字は、点ではなく幅で読みます。
図解PISA の得点の読み方(読解力)
- 1標本を選ぶ183 校・約 6,500 人が受ける
- 2平均を出す日本の平均得点は 503 点
- 3幅をつける信頼区間は 495〜510 点
- 4順位も幅で見るOECD 38 か国中 1〜8 位


05
苦手でも大丈夫: 箱ひげ図と標準偏差から
数学を使わずに受験できる教育学部や学科もあります。入学後は、教育統計や心理統計の入門の授業から学べる大学が多くあります。大切なのは、難しい計算より、数字が何を表しているかを言葉で説明できることです。
学び直すなら、中学で学んだ四分位数と箱ひげ図から始めるのが近道です。次に数学 I の分散と標準偏差、数学 B の正規分布と区間推定へ進みます。このページの学力調査の数字を使い、自分で計算してみると身につきやすくなります。
高校の数学の科目のページや、心理学の学問のページもあわせて読むと、統計の考え方が大学のどこで深まるかが見えてきます。
箱ひげ図と標準偏差が読めれば、教育統計の入口に立てます。
高校生のうちに試せること
自分の都道府県の箱ひげ図を見る
国立教育政策研究所のサイトでは、全国学力・学習状況調査の都道府県別の結果が公開されています。自分の都道府県の箱ひげ図を全国と並べて、平均の差と箱の長さを比べてみましょう。
令和 8 年度 調査結果資料【都道府県別】(国立教育政策研究所)小テストで偏差値を出す
友だちと 10 問の小テストを作って解き合い、表計算ソフトに点数を入れましょう。AVERAGE 関数で平均、STDEV.P 関数で標準偏差を出し、(得点 − 平均) ÷ 標準偏差 × 10 + 50 で偏差値を計算します。
玉を落として正規分布を作る
コロラド大学の PhET は、無料で使える理科と数学のシミュレーションです。「確率分布を作る」では、釘の並んだ板に玉を落とし、山の形ができていく様子を見られます。玉の数を増やすと形がどう変わるかを確かめましょう。
PhET「確率分布を作る」
「数学(データの分析)」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 14 件から探せます。
よくある質問
数学が苦手でも教育学部に入れますか?
入れます。数学を使わずに受験できる学部や学科もあります。入試で必要な科目は大学によって異なるので、募集要項で確かめてください。入学後に統計を使う授業もあるので、数学 I の「データの分析」を見直しておくと安心です。
小学校の先生になるにも、統計は必要ですか?
テストの結果を読み取ったり、学力調査の資料から学級の課題を考えたりする場面があります。算数でも、小学 6 年で代表値やドットプロットを教えます。数字を正しく読む力は、どの学校の先生にも役立ちます。
偏差値が高い学校ほど、よい教育をしているのですか?
偏差値は、試験の得点が集団の中でどの位置にあるかを表す数で、教育の中身を直接表すものではありません。教育学では、入学後の学びの伸びや、授業や学校の取り組みを、さまざまなデータで調べます。


