大学カタログ

図 4 学ぶために必要な科目・学問学ぶために必要な科目 1

国語

先生の仕事の多くは、言葉でできています。高校の「現代の国語」「論理国語」で学ぶ説明・要約・論証の力は、大学の教育学で文献を読み、発問をつくり、指導案を書くときの土台になります。

大学の模擬授業の教室で、黒板の前で図を指しながら説明する学生、手を挙げて答える子ども役の学生たち、後ろで指導案を見ながらメモを取る学生

ひとことで言うと

弟や妹に宿題を教えるとき

自分は分かっていても、うまく説明できないことがあります。相手がどこでつまずいているかを聞き、言葉を選び、例を変えて伝え直します。先生の仕事は、この「伝わる言葉を探す」ことのくり返しです。

01

先生の仕事は、言葉でできている

授業の説明、子どもへの問いかけ、黒板の文字、家庭へのお便り。先生の仕事の多くは、話す・聞く・書く・読むで成り立っています。小学校学習指導要領の総則も、国語科を要として、各教科で子どもの言語活動を充実させるよう求めています。

授業の時間にも、それが表れています。小学校 6 年間の国語の授業は、合わせて 1,461 時間と決められています。算数の 1,011 時間より多く、全部の授業時数のおよそ 4 分の 1 にあたります。

大学の教育学では、この言葉の力を 2 つの方向で使います。1 つは、教育学の本や論文を読み、レポートを書くこと。もう 1 つは、授業をつくることです。文部科学省の教職課程コアカリキュラムも、学習指導案を作成できることを、全国の教職課程で共通の目標にしています。

どの教科の授業も、言葉で組み立てます。

図解高校の国語と教育学のつながり

高校の国語
  • 主張と論拠教育学の文献を読んで論点をつかむ
  • 比喩・例示・言い換え子どもに伝わる説明を考える
  • 話合いの進め方多様な考えを引き出す発問をつくる
  • 手順書・報告書指導案や実習の記録を書く
  • 敬語と言葉遣い保護者や地域の人に伝える
  • 論証卒業論文で問いに答える

02

発問: 「ごんぎつね」で問いをつくる

授業で先生が子どもに投げかける問いを、発問といいます。答えが 1 つに決まる問いもあれば、読む人によって答えが分かれる問いもあります。どんな発問をするかで、子どもの考える深さが変わります。

例として、新美南吉の「ごんぎつね」を見てみます。小学校の国語の教科書に、半世紀以上載り続けている物語です。南吉が元になった「権狐」を書いたのは 1931 年、18 歳のときでした。その年の春から夏まで、南吉は母校の小学校で代用教員として子どもに教えています。

物語の最後で、兵十はごんを火縄銃でうち、栗を届けていたのがごんだったと気づきます。ここで「兵十は何でごんをうったか」と聞けば、答えは 1 つです。では、最後の 1 文「青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。」は、なぜあるのでしょう。こう聞くと答えが分かれ、本文に戻って話し合う授業になります。

大学の各教科の指導法の授業では、こうした発問をいくつも考え、どの順番で聞くかまで組み立てます。高校の現代の国語で学ぶ、話合いで多様な考えを引き出す力が、ここで生きます。

よい発問は、子どもが本文に戻って考えたくなる問いです。

図解2 種類の発問

答えが 1 つの問い

  • 例: ごんが届けた物は何?
  • 本文を読めば確かめられる
  • 読み取れているかを確かめる

考えが分かれる問い

  • 例: 最後の 1 文はなぜある?
  • 本文を根拠に考えを話し合う
  • 読みを深め、考えを広げる
青空の下、川の土手の斜面一面に赤い彼岸花が咲き、上の道を人が歩いている
新美南吉が生まれ育った愛知県半田市の矢勝川。秋には土手が彼岸花で赤く染まります。「ごんぎつね」にも、墓地に彼岸花が「赤い布のように」咲く場面があります。写真: nobu3withfoxy(CC BY 2.0・Wikimedia Commons)

03

書く: 子どもが読める漢字と言葉を選ぶ

先生が黒板やプリントに書く文字は、子どもが読める文字でなければなりません。小学校で学ぶ漢字は、学習指導要領の「学年別漢字配当表」で学年ごとに決まっています。1 年は 80 字で、6 年間で合わせて 1,026 字です。

例えば「説明」の「説」は 4 年で学ぶ漢字です。2 年生に配るお便りなら、ふりがなを付けたり、ひらがなで書いたりする工夫がいります。今の学習指導要領では、「岐」「阜」「茨」など都道府県の名前に使う漢字 20 字も 4 年で学びます。前の学習指導要領から加わった字です。

漢字だけでなく、言葉の選び方も同じです。高校の現代の国語では、比喩・例示・言い換えなどの表現を学びます。難しい言葉を、子どもの知っている言葉に言い換える力は、どの学年の先生にも欠かせません。

書く前に、読み手がどの字を読めるかを考えます。

図解2 年生へのお知らせを書き直す(例)

入力「明日の遠足には、水筒を持参してください。」
  1. 12 年までに習わない漢字を探す(筒・持・参)
  2. 2「持参して」を「もってきて」と言い換える
  3. 3読み方が難しい「明日」は「あした」と書く
結果「あしたの 遠足には、水とうを もってきて ください。」
マス目のノートに鉛筆で「味」「練」などの漢字がくり返し書かれ、余白に赤ペンのコメントとうさぎのはんこが押されている
小学 3 年生の漢字の練習帳。先生が赤ペンで「よくかけています。」と書き添え、「そのちょーし」のはんこを押しています。子どもに返す短い言葉も、先生が選ぶ言葉です。写真: Kanko*(CC BY 2.0・Wikimedia Commons)

04

講読演習: 確かな言明とそうでない言明を分ける

教育学部には、教育の歴史や思想、制度についての本や論文を読む授業もあります。日本学術会議の参照基準は、この講読演習で学ぶこととして、文献が書かれた時代や著者の考えの背景をふまえて読むことを挙げています。

参照基準は、「確実な言明とそうでない言明とを区別しつつ批判的に解読すること」も求めています。例えば「この勉強法で成績が上がった」と書いてあれば、何人をどう比べた結果なのかを確かめます。論理国語で学ぶ、主張と根拠の関係を読み取る力が土台になります。

ゼミでは、担当した章の要点をまとめた資料(レジュメ)を作って発表し、質問に答えます。読んだ内容を短くまとめ、自分の考えと分けて話す練習は、教室で子どもに説明する力にもつながります。

文献を読むことは、確かな根拠を見分ける練習です。

図解講読演習の発表を準備する(例)

入力教育学の本の 1 章(約 30 ページ)を担当する
  1. 1章の主張と、それを支える根拠を書き出す
  2. 2要点を A4 で 2 枚ほどのレジュメにまとめる
  3. 3確かな根拠がある所と、ない所に印を付ける
  4. 4疑問を 2 つ挙げて、ゼミで話し合う
結果章の要点と自分の問いを、15 分ほどで伝えられる

05

苦手でも大丈夫: 人に説明することから始める

国語が得意でなくても、教育学部で学べます。大切なのは、難しい言葉よりも、相手に伝わる言葉を選ぶことです。多くの大学では、1 年生の演習でレポートの書き方や発表の仕方から学びます。

学び直すなら、現代の国語の教科書で、比喩・例示・言い換えや、話合いの進め方の単元を見直すのが近道です。次に、知っている物語で、答えが 1 つの問いと、考えが分かれる問いを 3 つずつ作ってみてください。問いを作ると、読み方が変わります。

高校の国語の科目のページや、文学の学問のページもあわせて読むと、読む力と書く力が大学でどう深まるかが見えてきます。

相手に合わせて言葉を選ぶ練習が、いちばんの近道です。

クイズ先生と言葉のクイズ

答えを選ぶと、正解と解説が表示されます。

  1. Q1「ごんぎつね」の元になった「権狐」。新美南吉が書いたのは何歳のとき?

  2. Q2小学校の 6 年間で学ぶ漢字は、全部で何字と決められている?

  3. Q3小学校 6 年間で、授業時数がいちばん多い教科は?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 物語で 2 種類の発問をつくる

    中学校までの国語の教科書から、好きな物語を 1 つ選びましょう。答えが 1 つの問いと、考えが分かれる問いを 3 つずつ作り、家族や友だちに答えてもらいます。どの問いで話が広がったかを比べると、発問の力が見えてきます。

  • 青空文庫で「ごん狐」を読み直す

    小学校で読んだ「ごんぎつね」は、青空文庫でも「ごん狐」として無料で読めます。最後の 1 文があるときとないときで、読み終えた気持ちがどう変わるかを、自分の言葉で説明してみましょう。

    青空文庫「ごん狐」
  • 小学生に 3 分で説明する

    数学の公式や理科の現象を 1 つ選び、小学生にも分かるように 3 分で説明してみましょう。録音して聞き直し、たとえや言い換えを足すと、伝わり方が変わることが分かります。

  • 授業で使う教材をのぞく

    新美南吉記念館のサイトから、「ごんぎつね」の学習に使えるデジタル教材「ごんぎつねものしり図鑑」を見られます。先生が授業の準備にどんな資料を使うのかを、のぞいてみましょう。

    ごんぎつねものしり図鑑(新美南吉記念館)

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よくある質問

国語が苦手でも教育学部に入れますか?

入れます。入試で課す科目は、大学や入試の方式によって異なります。入学後は、多くの大学で 1 年生からレポートの書き方や発表の仕方を学びます。人に伝わるように話す練習を、高校生のうちから少しずつ重ねておくと役立ちます。

国語の先生をめざす人以外にも、国語の力は必要ですか?

必要です。どの教科の授業も、説明と発問、板書で組み立てます。小学校学習指導要領も、国語科を要として、各教科で子どもの言語活動を充実させるよう求めています。

古文や漢文は、教育学で使いますか?

国語の先生をめざす人は使います。中学校や高校の国語の免許を取るには、大学で国文学や漢文学の科目を学ぶ必要があります。教育史の研究で、昔の教科書や資料を読むこともあります。