図 4 この科目が生きる大学の学問この科目が生きる大学の学問 3
経済学・経営学
売上の 8 割を生む 2 割の商品、急に伸びるレジの待ち時間、1 回に仕入れる数。経済学・経営学では、高校の情報 I で学ぶ表計算・データの分析・シミュレーションが、数字で根拠をもって決めるための道具になります。

ひとことで言うと
部活の合宿の買い出し係
合宿の買い出しでは、よく使う物から確かめ、レジの空いた時間を選び、まとめ買いと何度も行く手間を比べます。お店や会社も、同じ判断を毎日、桁違いの量でしています。その判断を数字で支えるのが、表計算とシミュレーションです。

01
表計算 → マーケティング: 売上の 8 割を生む 2 割の商品
表計算ソフトの始まりは、経営を学ぶ大学院生のアイデアでした。1978 年の春、ハーバード大学の経営大学院の学生だったブリックリンは、教室で、もっと楽に計算できる道具を思い描きます。このアイデアから生まれた VisiCalc は、行と列のマスに数と式を入れる、今の表計算の形をしていました。
表計算でよく使う分析に、ABC 分析があります。ある文房具店の 10 の商品について、1 か月の売上を多い順に並べ替えます。上から順に売上を足していき、全体に占める割合(累積比率)を出すと、上位 2 つの商品だけで 80% になりました(説明のための例)。
例えば、累積比率が 80% までを A、95% までを B、残りを C に分けます。A の商品は品切れしないよう毎日在庫を確かめ、C の商品は置き方を見直します。限られた手間を、売上を大きく左右する商品に集中させるための分析です。
大学の経営学では、こうした分析をマーケティングや流通、生産管理の授業で使います。情報 I で学ぶ並べ替えと集計、グラフの作り方が、そのまま出発点になります。
並べ替えて累積比率を出すと、どの商品に手間をかけるべきかが見えます。
図解表計算で ABC 分析をする(例)
- 1売上の多い順に並べ替える
- 2上から足して、累積比率を出す
- 3上位 2 つ(15 万円と 9 万円)で 80%
- 480% までを A、95% までを B、残りを C

02
シミュレーション → 経営工学: レジの待ち時間は急に伸びる
情報 I の研修用教材は、時間とともに変わるモデルの例に、レジの待ち行列を挙げています。待ち行列の研究は、100 年以上前の電話会社で始まりました。デンマークのコペンハーゲン電話会社に勤めたアーランが、1909 年に最初の論文を書いています。
レジが 1 台の店で考えます。会計は平均 1 分で、お客さんは平均で 1 分に 0.8 人来るとします。到着の間隔も会計の長さもばらばらなとき、並んでから会計が始まるまでの平均は 4 分です。0.9 人に増えると 9 分、0.95 人なら 19 分。少し混むだけで、待ち時間は急に伸びます。
では、レジを 2 台にして、お客さんが 1 分に 1.6 人来るとします。2 つの列に半分ずつ並ぶと、平均の待ち時間は 4 分のままです。1 列に並んで空いたレジへ進む形にすると、約 1.8 分に縮みます。お客さんがいるのに空いているレジが、できにくくなるからです。
式で解けない複雑な店でも、乱数でお客さんの到着を作れば、表計算やプログラムで試せます。大学の経営工学やオペレーションズ・リサーチの授業では、こうしたシミュレーションで、レジや窓口の数、働く人の配置を決める方法を学びます。
混み具合が少し上がるだけで、待ち時間は何倍にも伸びます。
図解来る人数と平均の待ち時間(レジ 1 台・会計は平均 1 分)
1 分に 0.8 人
- レジが働く時間 80%
- 平均の待ち 4 分
1 分に 0.9 人
- レジが働く時間 90%
- 平均の待ち 9 分
1 分に 0.95 人
- レジが働く時間 95%
- 平均の待ち 19 分

03
表計算 → 生産管理: 1 回に何冊ずつ仕入れるか
A の商品のノートが、年に 2,000 冊売れるとします。1 回の注文には、送料や手間で 1,000 円かかります。一度にたくさん仕入れれば注文は減りますが、置き場所の費用や、売れるまで眠るお金が増えます。1 冊を 1 年置くと 100 円かかるとします(説明のための例)。
表計算で、1 回に仕入れる数を変えて、1 年の費用を比べます。100 冊ずつなら注文は年 20 回で 2 万円、置いておく費用は平均 50 冊分で 5,000 円、合計 2 万 5,000 円です。200 冊ずつなら 1 万円と 1 万円で 2 万円。400 冊ずつなら 5,000 円と 2 万円で、また 2 万 5,000 円です。
いちばん安いのは、注文の費用と置いておく費用が等しくなる 200 冊のときです。この数は「2 × 年に売れる数 × 1 回の注文の費用 ÷ 1 冊を 1 年置く費用」の平方根で求められ、経済的発注量と呼ばれます。この例では √40,000 = 200 です。
この式は 1913 年、アメリカの技術者ハリスが雑誌に発表しました。ハリスは高校より先の学校には進まず、技術者・発明家・特許の専門家として活躍した人です。大学の生産管理や経営工学の授業では、売れ方がばらつく場合の在庫の持ち方まで、表計算やシミュレーションで考えます。
注文の費用と置く費用がつり合う数で、1 年の費用が最も安くなります。
図解1 回に仕入れる数と 1 年の費用(例)
100 冊ずつ
- 注文 20 回: 2 万円
- 置く費用: 5,000 円
- 合計 2 万 5,000 円
200 冊ずつ
- 注文 10 回: 1 万円
- 置く費用: 1 万円
- 合計 2 万円(最も安い)
400 冊ずつ
- 注文 5 回: 5,000 円
- 置く費用: 2 万円
- 合計 2 万 5,000 円

04
経済学・経営学に進むなら: 高校で選んでおきたい科目と入試
経済学部や経営学部は文系の学部に置かれることが多いものの、大学ではデータを扱う授業が欠かせません。高校では、数学 I の「データの分析」と数学 B の「統計的な推測」を学んでおくと、統計学や計量経済学に進みやすくなります。情報 II を開いている学校なら、データサイエンスの単元が大学の分析の授業に直結します。
共通テストの「情報」の扱いは、大学や学部によって違います。例えば一橋大学の 2026 年度の前期日程では、共通テストの「情報」の配点は、経済学部が 35 点、商学部が 50 点でした。総点はどちらも 1,000 点で、残りは共通テストのほかの教科と個別試験です。
同じ一橋大学のソーシャル・データサイエンス学部では、個別試験に「総合問題」(90 点)があります。数理的な考え方を社会で応用する力や、情報技術の活用に自ら取り組む姿勢を確かめる科目です。志望校の募集要項は、早めに確かめておくと安心です。
経済学・経営学の面白さは、身近なお店や会社の判断を、データと計算で確かめながら考えられることです。大学の経済学と経営学の分野は、このサイトの大学の学問「経済学」「経営学」のページで紹介しています。
データの分析・統計的な推測・情報 II が、大学の分析の授業の土台になります。
高校生のうちに試せること
表計算で ABC 分析をする
10 個の数を売上として B2 から B11 に入れ、多い順に並べ替えましょう。C2 に「=SUM($B$2:B2)/SUM($B$2:$B$11)」と入れて下へコピーすると、累積比率が出ます。棒グラフと折れ線グラフを重ねると、品質管理でも使うパレート図になります。
表計算でレジの列を動かす
到着の間隔を「=-LN(RAND())/0.8」、会計の長さを「=-LN(RAND())」で作りましょう。会計を始める時刻は、到着した時刻と前の人の会計が終わる時刻の遅いほう(MAX 関数)です。1 万人分の待ち時間を平均すると、4 分前後になります。
学食や購買の列を数える
学食や購買で、5 分間に列に加わった人数と、1 人の会計にかかった時間を測りましょう。「1 分に来る人数 × 1 人の会計の分数」が 1 に近いほど、列は急に長くなりやすくなります。
「経済学・経営学」に関連するコミュニティ
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よくある質問
経済学部や経営学部で、プログラミングは必要ですか?
授業は表計算から始まることが多く、入学前にプログラミングができなくても大丈夫です。統計の授業やゼミでは、R や Python などで大きなデータを分析することもあります(大学によって異なります)。情報 I で書いた短いプログラムが、その出発点になります。
経済学と経営学は、どう違いますか?
経済学は、物価や景気、市場のしくみなど、社会全体のお金とものの動きを調べます。経営学は、1 つの会社やお店が、何をどう作って売り、組織をどう動かすかを考えます。このページの在庫やレジの話は経営学に近いものですが、どちらでもデータの分析は欠かせません。







