大学カタログ

図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 1

アプリ・Web サービスの開発

スマートフォンのアプリや予約サイトなど、毎日使うサービスを企画してつくり、公開したあとも改良を続ける仕事です。

付箋が並ぶボードとスマートフォンの画面の下書きを囲み、アプリの改良を相談する学生のチーム

ひとことで言うと

文化祭の模擬店を、毎週つくり直していく

文化祭の模擬店では、メニューを決めて準備し、当日のお客さんの反応を見て次に生かします。アプリや Web サービスの開発では、この「考える、つくる、反応を見る」を、公開したあとも数週間ごとにくり返します。

01

どんな仕事?: 画面の裏側まで、サービス全体をつくる

飲食店の予約サイトで考えてみます。お客さんが日時を選んで「予約する」を押すと、画面からサーバーに問い合わせが届きます。サーバーはデータベースで空席を調べ、結果を画面に返します。このしくみ全体をつくるのが、この仕事です。

担当は大きく 2 つに分かれます。画面の見た目や操作を受け持つのがフロントエンド、サーバーやデータベースを受け持つのがバックエンドです。ほかに、スマートフォンのアプリをつくる人や、ゲームの動きと画面を描く処理をつくるゲームプログラマーもいます。

ゲームでは、とくに速さが大切です。1 秒間に 60 回画面を描き直すゲームなら、1 回分の計算を約 16.7 ミリ秒で終えなければなりません。キャラクターを回したり動かしたりする計算には、高校の数学 C で学ぶベクトルや、大学の線形代数で学ぶ行列が使われます。

見えている画面は、サービス全体のほんの入り口です。

図解予約サイトの裏側

  1. 画面日時を選んで予約ボタンを押す
  2. サーバー空席を調べ、予約を受け付ける
  3. データベース予約と空席の記録をしまう
  4. クラウドサーバーを動かす計算機と回線
丸い画面に宇宙船と星が光る、1960 年代のコンピュータ PDP-1 の表示装置
1961〜62 年にマサチューセッツ工科大学(MIT)でスティーブ・ラッセルらがつくった対戦ゲーム「スペースウォー!」。アメリカのコンピュータ歴史博物館で復元された PDP-1 で動いている様子です。写真: Joi Ito from Inbamura, Japan(CC BY 2.0・Wikimedia Commons)

02

企画から公開、そして改良へ

開発は、何をつくるかを決める企画から始まります。使う人の困りごとを聞いて必要な機能を書き出し(要件定義)、画面とデータの形を設計してから、プログラムを書きます。書いたプログラムはテストで確かめてから公開(リリース)します。

公開してからが本番です。どのボタンがよく押されたか、どこで操作をやめた人が多いかを記録から読み取り、次の改良を決めます。完成品を一度に出すより、小さな改良を短い間隔で出し続けるやり方が広く使われています。

代表的な進め方の一つがスクラムです。公式のガイドでは、1 か月以内の決まった期間(スプリント)ごとに成果を出し、毎日 15 分の打ち合わせで進み具合を確かめるとしています。チームは通常 10 人以下です。

一度で完成させるより、小さく出して直し続けるのがいまのつくり方です。

図解アプリができるまで

  1. 1企画使う人の困りごとを聞く
  2. 2要件定義必要な機能を書き出す
  3. 3設計画面とデータの形を決める
  4. 4実装プログラムを書く
  5. 5テスト思いどおりに動くか確かめる
  6. 6公開・改良使われ方を見て次を決める
英語で「やること」「作業中」「テスト中」などと書かれた列に分かれたボードに、作業を書いた付箋が並んでいる
開発チームが使うタスクボードの例。作業を 1 枚ずつ付箋に書き、「やること」から「完了」へ動かして、進み具合をチーム全員に見えるようにします。写真: Logan Ingalls(CC BY 2.0・Wikimedia Commons)

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Web エンジニアの 1 日(例)

働き方は会社やチームによって違います。ここでは、予約サイトをつくる Web エンジニアの 1 日の例を紹介します。オフィスに出る日と、自宅からオンラインで参加する日を組み合わせる会社もあります。

1 日の中心はプログラムを書く時間ですが、それだけではありません。仲間が書いたプログラムを読み、まちがいや分かりにくい所を指摘し合うコードレビューや、デザイナー・営業の人との打ち合わせも大切な仕事です。

思いどおりに動かないときは、エラーの内容を調べたり、チームの人に聞いたりして原因を探します。分からないことを調べて解決する力は、どの職場でも求められます。

プログラムを書く時間と同じくらい、読む時間と話す時間があります。

図解ある Web エンジニアの 1 日

  1. 9:30朝会昨日の進み具合と今日の予定を共有
  2. 10:00プログラムを書く予約の変更機能をつくる
  3. 12:00昼休み
  4. 13:00コードレビュー仲間のプログラムを読んで意見する
  5. 14:30打ち合わせデザイナーと新しい画面を相談
  6. 16:00テストスマートフォンと PC で動きを確認
  7. 17:30振り返り明日の作業を整理して終える

04

大学で学ぶことと、向いている人

大学の授業は、この仕事の土台に直結しています。1 年のプログラミング入門に始まり、アルゴリズムとデータ構造、データベース、ネットワーク、ソフトウェア工学へと進みます。多くの大学では、3 年ごろにチームで 1 つのソフトをつくる演習があり、仕事の進め方を体験できます。

向いているのは、身のまわりの「不便」に気づき、どう直せるかを考えるのが好きな人です。動かないプログラムの原因を一つずつ確かめて直す場面も多いので、粘り強さも生きます。

最初から得意である必要はありません。エラーが出るのは、経験を積んだエンジニアでも毎日のことです。

大学の科目の多くが、そのまま仕事の道具になります。

図解仕事と大学の科目のつながり

アプリ・Web 開発
  • プログラミング動くものをつくる基本
  • アルゴリズム速く動く手順を選ぶ
  • データベース予約や会員の記録を扱う
  • ネットワーク画面とサーバーをつなぐ
  • ソフトウェア工学チームで品質を保つ
  • 線形代数ゲームの 3D の動きを計算する

05

入り方と、その先のキャリア

多くの人は、大学や大学院を出て、IT の会社、Web サービスを運営する会社、ゲーム会社などに就職します。銀行や鉄道会社、メーカーなどで、自社のアプリを社内のエンジニアがつくる例もあります。

資格がないと就けない仕事ではありません。ただ、IPA(情報処理推進機構)の国家試験である基本情報技術者試験は、知識の目安としてよく知られています。年齢の制限はなく、コンピュータを使う CBT 方式で、都合のよい日に受験できます。

経験を積むと、技術でチームを引っぱるリーダーや、開発全体の計画を受け持つプロジェクトマネージャーへ進む道があります。何をつくるかを決めるプロダクトマネージャーになる人もいます。IPA の 2026 年 7 月の調査では、国内企業の 85.5% が、デジタル技術で事業を変える人材が不足していると答えました。

つくる力に、計画する力や決める力を足して、仕事の幅を広げていけます。

高校生のうちに試せること

  • IT パスポート試験や基本情報技術者試験を受ける

    どちらも IPA が行う国家試験で、年齢の制限はありません。全国の会場でコンピュータを使って受験でき、日程を選べます。2027 年度から試験の区分が見直される予定なので、最新の情報は公式サイトで確かめましょう。

    基本情報技術者試験(IPA)
  • パソコン甲子園のモバイル部門に挑戦する

    会津大学などが開く、高校生・高専生のための全国大会です。モバイル部門では、1〜3 人のチームで Android アプリか Web アプリをつくります。初心者向けの学習サイトも用意されています。

    パソコン甲子園
  • 未踏ジュニアに応募する

    小中高生のクリエータを支えるプログラムです。採択されると、第一線のエンジニアの助言と、1 グループ 50 万円までの開発資金の支援を受けられます。

    未踏ジュニア
  • 身近な不便を直す小さなアプリをつくる

    部活の出欠表や時間割など、身のまわりの小さな不便を題材に、Web ページやアプリをつくってみましょう。完成させて、友だちに使ってもらうところまでが練習です。

「アプリ・Web サービスの開発」に関連するコミュニティ

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よくある質問

プログラミングの経験がなくても目指せますか?

目指せます。多くの大学では 1 年の入門の授業から始め、会社によっては入社後の研修で基礎から教えるところもあります。高校の「情報 I」で学ぶプログラミングが最初の一歩になります。

AI がプログラムを書くようになっても、仕事はありますか?

AI がプログラムの下書きを手伝う道具は、すでに開発の現場で使われています。それでも、何をつくるかを決め、書かれたプログラムが正しく安全かを確かめるのは人の役目です。こうした判断に、大学で学ぶアルゴリズムやソフトウェア工学の知識が生きます。

ゲームプログラマーになるには、何を学べばよいですか?

プログラミングとアルゴリズムに加えて、3D の動きを計算する線形代数や、物の動きを表す物理の考え方が役立ちます。情報系の学科のほか、ゲームの制作を学べる学科を持つ大学もあります。