図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 2
2 年: しくみを知る
プログラムを「書ける」段階から、コンピュータが「なぜ動くのか」を説明できる段階へ進む 1 年です。アルゴリズム、回路、確率・統計に加えて、実験と演習が増えます。

ひとことで言うと
自転車に乗れる人が、分解してしくみを知る
自転車に乗れても、ギアやブレーキがどう力を伝えるかを説明できる人は多くありません。2 年では、1 年で「使えた」プログラムやコンピュータを分解して、中で何が起きているのかを確かめます。

01
アルゴリズムとデータ構造: 速く解く手順と、しまい方
アルゴリズムとデータ構造は、多くの大学で 2 年の中心になる科目です。データ構造は、データを「どんな形でしまうか」の工夫です。しまい方しだいで、同じ探しものでも速さが大きく変わります。
たとえば 100 万件の名簿から 1 人を探すとき、先頭から順に見ると、最悪で 100 万回の比較が必要です。名前順に並べておけば、真ん中と比べて範囲を半分にしていく二分探索で、20 回以内に見つかります。
ブラウザの「戻る」ボタンは、最後に入れたものから取り出すスタックで作れます。印刷の順番待ちは、先に入れたものから取り出すキューです。授業では、こうした形を自分でプログラムに書き、速さを測って比べます。
同じ問題でも、データのしまい方を変えるだけで何万倍も速くなることがあります。
図解身近な「データのしまい方」
- スタックブラウザの「戻る」
- キュー印刷やレジの順番待ち
- 木パソコンのフォルダの階層
- ハッシュ表見出し語からすぐに引く辞書
- グラフ路線図や SNS のつながり

02
論理回路: 0 と 1 で計算する
コンピュータの中では、すべての計算が電気の「ある・ない」、つまり 1 と 0 の組み合わせで行われています。1 と 0 を組み合わせる部品が論理ゲートで、基本は AND・OR・NOT の 3 つです。
AND は「両方 1 のときだけ 1」、OR は「どちらかが 1 なら 1」、NOT は「反対にする」部品です。これらを組み合わせると、2 進数の足し算をする回路が作れます。1 + 1 は 2 進数で 10 になり、桁上がりも回路で表せます。
授業では、回路を紙の上で設計し、入力と出力の組み合わせを全部並べた真理値表で確かめます。京都大学の情報学科の計算機科学コースのように、2 年の実験で論理素子を使って回路の基礎を学ぶ大学もあります。
スマートフォンの計算も、元をたどれば AND・OR・NOT の組み合わせです。

03
コンピュータアーキテクチャ: CPU が命令を実行するしくみ
コンピュータアーキテクチャは、CPU やメモリをどう組み合わせて、命令を速く実行するかを学ぶ科目です。CPU は「命令を取り出す → 解読する → 実行する」をくり返して動いています。
私たちが書いたプログラムは、最後は CPU が直接読める機械語の命令に変換されます。授業では、足し算やデータの読み書きといった命令が、回路の上でどう実行されるかを順にたどります。
世界初のマイクロプロセッサ Intel 4004 は、日本の電卓メーカー、ビジコンの依頼から生まれました。ビジコンの技術者だった嶋正利さんが CPU の論理設計を担当し、1971 年 3 月に完成しています。電卓のために作られた部品が、いまのパソコンやスマートフォンの CPU の祖先になりました。
図解プログラムから回路までの層
- アプリゲームや地図など、人が使うソフト
- プログラムPython や C 言語で書いた命令
- OSアプリに CPU とメモリを割り当てる
- 機械語CPU が直接読める 0 と 1 の命令
- CPU の回路命令を取り出し、解読し、実行する
- 論理ゲートAND・OR・NOT の組み合わせ

04
確率・統計: ばらつきを数字で読む
確率・統計は、データのばらつきや偶然の大きさを数字で扱う科目です。身近な例が天気予報の降水確率です。気象庁の説明では、18 時から 24 時の降水確率が 20% のとき、1 mm 以上の雨が降る可能性は 100 回中 20 回です。
情報系で確率・統計が欠かせないのは、AI やデータ分析の多くが「もっともらしい答え」を確率で選ぶしくみだからです。迷惑メールの判定や音声の聞き取りも、確率の計算で動いています。
授業では、平均や分散、正規分布から始めて、2 つの結果の差が偶然かどうかを確かめる検定まで学びます。Web サービスが 2 つの画面の案を比べる A/B テストも、この考え方を使っています。
確率・統計は、3 年で学ぶ機械学習とデータ分析の土台になります。
図解A/B テストの流れ(例)
- 1利用者を半分ずつ A 案と B 案に分ける
- 2それぞれ押された割合を数える
- 3差が偶然で出る大きさかを検定する

05
実験・演習とレポート
2 年からは、長い時間をかけて手を動かす実験・演習の授業が増えます。京都大学の情報学科の計算機科学コースでは、2 年の前期に C 言語でアルゴリズムとデータ構造の基礎を学びます。後期には、論理素子と論理回路の基礎を実験で確かめます。
実験のあとは、結果をレポートにまとめて提出します。レポートは「目的・方法・結果・考察」の順に書くのが基本で、特に大事なのが考察です。予想と違う結果が出たら、なぜそうなったかを自分の言葉で説明します。
最初は書き直しを求められることもあります。教員や大学院生の TA に質問しながら進められるので、1 人で抱え込まないことが大切です。ここで身につけた書き方は、4 年の卒業論文にそのままつながります。
図解実験レポートの組み立て
- 1目的何を確かめる実験か
- 2方法使った道具と手順
- 3結果表やグラフで事実だけを示す
- 4考察なぜそうなったかを説明する
- 5参考文献使った本や資料を書く

高校生のうちに試せること
ブラウザで論理回路を組む
CircuitVerse は、ブラウザ上で AND・OR・NOT などのゲートを並べて、回路を動かせる無料のサービスです。2 進数の 1 桁の足し算をする回路(半加算器)に挑戦してみましょう。
CircuitVerseNAND からコンピュータを作る教材に挑む
「nand2tetris」は、NAND という 1 種類のゲートから CPU を組み立て、その上で動くソフトまで作っていく公開の教材です。英語ですが、日本語訳の本も出ています。
nand2tetrisサイコロで確率を確かめる
サイコロを 60 回振って、それぞれの目が出た回数を記録しましょう。ぴったり 10 回ずつにはならないはずです。回数を増やすと割合がどう変わるかを表計算ソフトで調べると、統計の入口に立てます。
「2 年: しくみを知る」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 94 件から探せます。

統計生態学
岡山大学(岡山県)
工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 数理データサイエンスコース・統計生態学・大久保 祐作 講師
系統比較法を中心に、生態学の実データに統計手法を適用し新しい手法を開発・評価する。
集積回路工学
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 量子物質科学プログラム・集積回路工学・吉田 毅 教授
CMOS集積回路、ミックスドシグナル、バイオメディカルなどを研究している。
計算機システムアーキテクチャ研究室
九州大学(福岡県)
電子デバイス工学・川上 哲志 准教授
統計解析グループ
大阪大学(大阪府)
基礎工学研究科システム創成専攻・統計解析・寺田 吉壱 教授
確率統計グループ
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 数学プログラム・数学・岡本 葵 教授
確率論、確率過程、確率解析などを研究している。
EMC設計学/セキュアハードウェア設計学
岡山大学(岡山県)
工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 ネットワーク工学コース・電磁環境工学・豊田 啓孝 教授
電子回路基板の誤動作を防ぐなど、光や電磁波を制御する技術と設計手法を研究する。
よくある質問
電子回路やハードウェアが苦手でも大丈夫ですか?
論理回路は、電気の知識よりも 0 と 1 の組み合わせを考える科目なので、パズルに近い感覚で学べます。部品を使う実験も手順書に沿って進めるので、はじめて部品にさわる人も少なくありません。
2 年の実験はどれくらい大変ですか?
実験の日に加えて、レポートを書く時間がかかります。大学や科目によって異なりますが、毎週のようにレポートの締め切りがある時期もあります。早めに書き始め、分からない点は次の実験の前に聞いておくと進めやすくなります。
確率・統計は、高校のどの内容とつながりますか?
数学 I の「データの分析」、数学 A の「場合の数と確率」、数学 B の「統計的な推測」がそのまま土台になります。
