図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 3
3 年: 設計して試す
2 年までの力学を使って、動く機械を設計し、作り、実験で確かめる 1 年です。選べる専門科目が増え、工場実習や研究室選びで、卒業後の進路も見え始めます。

ひとことで言うと
手作りの棚は、なぜか扉が閉まらない
寸法を測って棚を手作りすると、図面では合っていたのに、板の厚みを忘れて扉が閉まらないことがあります。3 年の設計製図と実験は、計算どおりにいかない所を見つけて直す経験を積む時期です。

01
3 年の科目: 選んで深める
3 年になると、選べる専門科目が大きく増えます。東京理科大学の機械工学科では、3 年の全員の必修は、機械製図 2 と機械工学実験 1・2 の 2 科目だけです。そのほかの科目は、自分の将来を考えて選びます。
選べる科目には、伝熱工学・自動車工学・航空宇宙工学・ロボット工学・工作機械・機械計測学などが並びます。2 年に学んだ自動制御 1 の続きとして、自動制御 2 や演習もあります。興味のある分野を深めることが、研究室選びにつながります。
図解3 年で選べる科目(例)
- 自動車工学車が走る・曲がる・止まるしくみ
- 航空宇宙工学飛行機やロケットの設計の基礎
- ロボット工学ロボットの動かし方と設計
- 伝熱工学熱の伝わり方と冷やし方
- 工作機械部品を削る機械のしくみ
- 自動制御測って直し、思いどおりに動かす

02
設計製図: 動くエンジンを班で作る
3 年の設計製図では、機械を 1 台まとめて設計する課題に取り組むことがあります。東京大学の機械工学科・機械情報工学科では、3 年生が 4 人ずつの班に分かれます。班ごとにオリジナルのスターリングエンジンを設計し、製作します。
スターリングエンジンは、外から加えた熱で動くエンジンです。約 2 週間分の午後の演習の時間で、構想・製図・加工・組立・計測までを行います。2 年までに学んだ力学と、設計・生産の知識を、実際の設計に応用する練習です。
2019 年度の演習では、最も大きな出力を出した班に「最大出力賞」が贈られました。重さのわりに出力の大きい班には「パワーウエイトレシオ賞」が贈られています。計算どおりに動かない部分をどう直すかを考えることが、設計の大事な勉強になります。
図解1 台の機械ができるまで(例)
- 1構想何をどう動かすかを決める
- 2計算力学で寸法や材料を決める
- 3製図部品図と組立図を描く
- 4加工・組立工作機械で削り、組み立てる
- 5計測・改良性能を測り、直す所を探す


03
機械工学実験: 予想と測定のずれを考える
機械工学実験では、班に分かれて、いくつかのテーマの実験を順番に回ります。テーマは大学によって異なり、金属を引っ張って壊す試験、はりのたわみ、振動、風洞の中の流れ、エンジンの性能などがあります。
教科書の式で予想した値と、実際に測った値は、ぴったりとは合いません。測り方の誤差なのか、式の前提が実際と違うのかを考えるのが、実験の大事なところです。
実験のあとは、テーマごとにレポートを書きます。目的・方法・結果・考察の順にまとめ、結果をグラフと表で示します。ずれを正直に書き、理由を考えることが、4 年の卒業論文の練習にもなります。
図解実験のくり返し
- 1予想する教科書の式で値を見積もる
- 2測る装置を動かしてデータをとる
- 3比べる予想と測定のずれを見る
- 4考えるずれの理由を探す
- 5まとめるレポートにして提出する

04
工場実習と研究室選び: 現場と研究の入口
3 年の夏休みには、企業の工場や研究所で実習をする学生もいます。日本大学の生産工学部では、3 年の生産実習が必修です。多くの実習は、夏休みの 10 日間(70 時間)か 20 日間(140 時間)です。実習先は、約 800 の企業や機関にのぼります。
実習先は、大手企業や官公庁から個人の事務所までさまざまです。オフィスで実習することもあれば、工場や研究所の現場で実習することもあります。東京理科大学のように、工場実習を選択の科目として置く大学もあります。
3 年は、研究室を選ぶ準備の時期でもあります。3 年から卒業研究が始まる大学もあり、時期は大学によって異なります。研究室の公開や先輩の話を手がかりに、4 年で取り組みたい分野を考えます。
図解工場実習の 1 日(例)
- 8:30朝礼その日の作業と安全の注意を聞く
- 9:00現場の作業部品の検査や組み立てを手伝う
- 12:00昼休み社員の人に仕事の話を聞く
- 13:00設計の補助CAD で図面の修正を手伝う
- 16:30日誌その日の気づきを記録する
- 17:30帰宅報告書と発表の材料をまとめる

05
学生フォーミュラ: 学生の手で 1 台の車を作る
3 年で学ぶ設計・製作・実験を、まるごと使う課外活動が学生フォーミュラです。自動車技術会が開く大会で、学生が自ら小型のレーシングカーを企画・設計・製作し、ものづくりの総合力を競います。
審査は 1,000 点満点です。走る前に、コスト(100 点)・プレゼンテーション(75 点)・設計(150 点)の審査があります。走る種目には、0〜75 m の加速や、8 の字のコースでの走りがあります。約 800 m のコースを 2 周するオートクロスや、約 20 km を走るエンデュランス(275 点)もあります。
2026 年の第 24 回大会は、8 月 2〜7 日に愛知県常滑市の Aichi Sky Expo で開かれました。大会前の発表では、国内外から 80 チームが参加する予定でした。速さだけでなく、コストや説明の力も点数になるのが、この大会の特徴です。

高校生のうちに試せること
工場見学に参加する
地域の工場の中には、見学を受け付けているところがあります。部品が組み立てられ、検査されて製品になる流れを見ておくと、3 年の工場実習の様子を想像しやすくなります。申し込みの方法は、それぞれの工場の案内で確かめましょう。
ゴム動力の車を設計して改良する
輪ゴムの力で走る車を作り、走った距離を測りましょう。車輪の大きさや車体の重さを 1 つずつ変えて記録すると、「設計 → 製作 → 計測 → 改良」の流れを体験できます。
大学の研究室のページを読む
志望する大学の機械系の学科のサイトには、研究室の一覧が載っています。気になる研究室を 3 つ選び、何を研究しているかを 1 文ずつまとめてみましょう。研究室を選ぶときの練習になります。
「3 年: 設計して試す」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 49 件から探せます。

エンジンシステム研究室
九州大学(福岡県)
機械工学・森上 修 教授

機械設計学
岡山大学(岡山県)
工学部 機械システム系 機械工学コース・機械要素・トライボロジー・脇元 修一 教授
森吉・窪山研究室
千葉大学(千葉県)
工学部 総合工学科 機械工学コース・熱流体・エンジン・森吉 泰生 教授
自動車のエネルギー消費の最小化と、有害物質やCO2の排出ゼロの実現をめざす研究を行う。

自動車安全工学研究グループ
名古屋大学(愛知県)
機械工学・水野 幸治 教授
機械設計システム
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 機械工学プログラム・機械工学・茨木 創一 教授
工作機械、産業用ロボット、3次元計測などを研究している。
車両運動・制御 研究室
神奈川工科大学(神奈川県)
よくある質問
工場実習には、必ず行くのですか?
大学によって異なります。日本大学の生産工学部のように 3 年の必修にしている大学もあれば、東京理科大学のように選択の科目にしている大学もあります。
設計の課題は、1 人で取り組みますか?
課題によって異なります。1 人で 1 枚の図面を仕上げる課題もあります。東京大学のスターリングエンジンの演習のように、4 人の班で 1 台を設計・製作する課題もあります。



