図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 1
1 年: 基礎をかためる
微分積分・線形代数と物理の力学を中心に、図面の描き方やプログラミングの入口も学ぶ 1 年です。授業やサークルで、入学してすぐに「作って動かす」経験もできます。

ひとことで言うと
料理の修業は、包丁とだしから
料理人の修業は、包丁の持ち方とだしの取り方から始まります。地味に見えても、どの料理にも使う基本です。機械工学の 1 年も、数学と力学という計算の道具と、図面という共通の言葉を身につける時期です。

01
数学と力学: 機械を計算する道具をそろえる
1 年の専門の科目は、数学と物理が中心です。東京理科大学の機械工学科では、微分積分学・一般力学・物理学実験などが 1 年の必修です。微分積分学と一般力学には、問題を解く演習の授業も付きます。芝浦工業大学の基幹機械コースでは、微分積分・線形代数・基礎力学が 1 年の必修です。
大学の力学は、高校の物理の続きです。ただし、公式を覚える代わりに、微分積分を使って式を自分で導きます。たとえば、高校で覚えた等加速度運動の位置の式は、一定の加速度を時間で 2 回積分すると出てきます。
線形代数で学ぶベクトルと行列は、いくつもの力がかかる部品の計算をまとめて扱う道具になります。芝浦工業大学では 1 年の秋に材料力学 1 が始まるなど、1 年の後半から専門の力学に入る大学もあります。
プログラミングも 1 年から始まります。東京理科大学では計算機工学 1、芝浦工業大学ではデータサイエンス演習が 1 年の必修です。3 年からの実験のデータ処理や、ロボットを動かすプログラムにつながります。
1 年の数学と力学は、2 年から学ぶ 4 つの力学の土台になります。
図解1 年で学ぶ専門の科目(例)
- 微分積分変化の速さと量を計算する
- 線形代数ベクトルと行列で力をまとめる
- 一般力学高校の力学を微分積分で学び直す
- 物理学実験測った値と誤差を考える
- 図学・製図立体を図面に表す決まりを学ぶ
- プログラミング計算をコンピュータに任せる

02
図学と製図: 形を正確に伝える練習
機械は、図面がなければ作れません。設計する人、加工する人、組み立てる人が、同じ図面を見て 1 つの機械を作るからです。東京理科大学では、1 年に「図学及び製図」、2 年に「機械製図」が置かれています。1 年で図学の基礎を学び、2 年から本格的な機械製図に進む流れです。
図学では、立体を正面・上・横から見た図に分けて描く方法や、立体を切ったときの断面の形を考えます。頭の中で立体を回して考える力が、ここで鍛えられます。
製図では、線の種類にそれぞれ意味があります。見える形を表す外形線は太い実線、隠れて見えない部分を表すかくれ線は破線、穴や丸い部品の中心を示す中心線は一点鎖線です。線 1 本で作る人に意味を伝えるので、決まりどおりに描くことが大切です。
図解1 つの部品を図面にするまで(例)
- 1形を考える手書きのスケッチで形を決める
- 23 方向から見る正面・上・横から見た図に分ける
- 3線を描き分ける外形線・かくれ線・中心線を使う
- 4寸法を入れる長さや穴の位置を書きこむ
- 5作る人に渡す図面どおりに加工してもらう


03
ものづくりの入口: 1 年生がロボットを作る
入学してすぐに、チームでものを作る授業を置く大学もあります。崇城大学の機械工学科では、2001 年から毎年、1 年生を対象にロボットコンテストを開いています。2019 年の第 19 回は、1 年生 95 人が 24 チームに分かれ、ラジコンで動くロボットを設計・製作・運転しました。
入学から約 3 か月で、チームごとに初めて作ったロボットを自分たちで操作し、教室のコースを走った周回数を競いました。ものづくりの面白さと難しさに、1 年のうちから触れるのがねらいです。
授業の外にも、ロボコン・人力飛行機・学生フォーミュラなどのサークルがあります。NHK 学生ロボコンは、ABU アジア・太平洋ロボコンの日本代表を選ぶ大会です。2027 年の大会は、6 月 13 日に東京の大田区総合体育館で開かれる予定です。

04
1 年生の 1 週間(例)
下の図は、機械系の学科の 1 年生の 1 週間の例です。実際の科目や曜日は大学によって異なりますが、数学と物理の講義に、演習・実験・製図が組み合わさる形が一般的です。
演習の時間には、講義で習った内容の問題を解いて提出します。物理学実験では、測った値をグラフにし、誤差の理由まで考えてレポートにまとめます。レポートを書くことは、4 年間ずっと続く基本の作業です。
空きコマや放課後は、課題やサークルの時間です。必修の科目を軸に選べる科目を足し、課題とサークルの時間を自分で配分するのが、高校との大きな違いです。
図解1 年生の 1 週間(例)
- 月微分積分・英語午前に講義、午後に演習の問題
- 火一般力学・演習運動の式を微分積分で解く
- 水図学・製図立体を 3 方向から描き分ける
- 木物理学実験測定とグラフ作り、夜にレポート
- 金プログラミング計算機室で数値計算の練習
- 土・日サークル・課題ロボットの部品作りに通う日も

05
つまずきやすい点と乗り越え方
1 年でつまずきやすいのは、数学と力学が同時に進むことです。力学の授業で、数学ではまだ習っていない微分方程式が出てくることもあります。分からない式が出たら、数学の教科書の該当する章を先に読むと、つながりが見えてきます。
高校で物理や数学 III を十分に学べていない人もいます。多くの大学では、演習の時間に大学院生の TA(ティーチング・アシスタント)が質問に答えてくれます。分からない点は、その週のうちに聞くのが近道です。
製図では、線の種類や寸法の書き方の決まりの多さに戸惑う人がいます。決まりは、作る人が迷わないためのものです。なぜその決まりがあるのかを考えながら描くと、早く覚えられます。
高校生のうちに試せること
身の回りの物を 3 方向から描く
消しゴムやペンケースを、正面・上・横から見た 3 つの図に描き分けましょう。見えない穴やくぼみは破線、中心は一点鎖線で描くと、製図の決まりを先取りできます。方眼紙を使うと、寸法も入れやすくなります。
公式を積分で導く
数学 III で積分を習ったら、加速度が一定のときの速度と位置の式を、積分で導いてみましょう。覚えていた公式が自分の手で出てくると、大学の力学の考え方がつかめます。
NHK 学生ロボコンの試合を見る
NHK 学生ロボコンは毎年 6 月ごろに開かれ、試合の様子は放送や配信で見られます。ロボットの動きを見て、自分ならどんなしくみで作るかを考えてみましょう。
NHK 学生ロボコン
「1 年: 基礎をかためる」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 185 件から探せます。

サイバーロボティクス研究グループ
名古屋大学(愛知県)
機械工学・青山 忠義 教授

メカトロニクスシステム学
岡山大学(岡山県)
工学部 機械システム系 ロボティクス・知能システムコース・メカトロニクス・真下 智昭 教授
圧電効果を使うセンサ・アクチュエータの駆動理論から、それを用いたロボット制御まで研究する。

猪股研究室
東北大学(宮城県)
工学研究科ロボティクス専攻・情報ナノシステム学
フィールドロボティクス研究室
筑波大学(茨城県)
知能ソフトウェア
知能ロボット学グループ
大阪大学(大阪府)
基礎工学研究科システム創成専攻・知能ロボット学・石黒 浩 教授
知能機械システム研究室
千葉大学(千葉県)
工学部 総合工学科 機械工学コース・知能ロボット・大川 一也 准教授
農業支援ロボット開発プロジェクト
金沢工業大学(石川県)
ロボット

神奈川大学ロボットプロジェクト
神奈川大学(神奈川県)
横浜キャンパス・ロボット
2023年創立。
ロボットエンジニア育成プロジェクト
金沢工業大学(石川県)
ロボット

ロボットプロジェクト
金沢工業大学(石川県)
ロボット
Team_Roboconは1996年、Team_RIDは2004年発足。
レスキューロボットプロジェクトSAZANKA
名古屋工業大学(愛知県)
ロボット
2020年結成。
ロボットプロジェクト
産業技術短期大学(兵庫県)
よくある質問
1 年から機械の専門の授業はありますか?
あります。東京理科大学では 1 年に一般力学とその演習、芝浦工業大学では 1 年の秋に材料力学 1 が必修です。数学や英語と並行して、少しずつ専門に入っていきます。
プログラミングは 1 年から使いますか?
多くの大学で 1 年から学びます。東京理科大学では計算機工学 1、芝浦工業大学ではデータサイエンス演習が 1 年の必修です。実験のデータの整理や、ロボットの制御に使います。
物理学実験のレポートには、何を書きますか?
多くの場合、目的・方法・結果・考察の順にまとめます。結果は表やグラフで示し、考察では予想とずれた理由を考えます。この書き方は、4 年の卒業論文まで続く基本です。
