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図 4 学ぶために必要な科目・学問学ぶために必要な科目 3

英語

新しい治療法や研究の成果の多くは、英語の論文で世界に発表されます。高校の「英語コミュニケーション」で身につける読む力と、「論理・表現」で身につける伝える力は、医学部の授業から海外での実習まで、6 年間のあちこちで生きます。

大学の図書館で英語の医学書を広げる学生、タブレットで論文を読む学生、海外から来た医学生と身ぶりを交えて話す学生たち

ひとことで言うと

世界中の医師が集まる、1 つの大きな勉強会

毎日、世界のどこかで新しい治療法や研究の成果が発表されています。その勉強会で共通に使われている言葉が英語です。英語が読めると、日本にいながら世界の最新の知識に手が届きます。

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カルテはドイツ語、論文は英語: 医学と外国語の歴史

医学部で英語が大切にされるのは、医学の新しい知識の多くが英語で発表されるからです。文部科学省の医学教育モデル・コア・カリキュラムには、「医学論文(英語)を読んで概要を理解する」という学修目標があります。

ただ、日本の医学がいつも英語とともにあったわけではありません。明治のはじめ、政府はどの国の医学を手本にするかを話し合いました。医学者の相良知安と岩佐純がドイツ医学の採用を強く勧め、反対の声もある中、1871 年にドイツ人の教師が来日します。1876 年には、のちに東京大学医学部となる学校の教師として、ドイツの医師ベルツも来日しました。ベルツは 1905 年に帰国するまでの約 30 年、日本で医学を教えながら、感染症や寄生虫の病気を研究しています。

病院で使う「カルテ」という言葉は、ドイツ語の Karte から来ています。一方で、今の医学の論文はほとんどが英語です。アメリカ国立医学図書館は、医学の論文のデータベース MEDLINE をつくっています。その集計では、英語の論文は 1950〜1954 年には約 46% で、半分以上は英語以外の言葉でした。それが 2020〜2023 年の論文では、約 97% にまで増えています。

医学の外国語は、時代とともにドイツ語から英語へと移ってきました。

図解日本の医学と外国語

  1. 1明治のはじめドイツ医学を手本にすると決める
  2. 21876 年ドイツの医師ベルツが来日する
  3. 31950〜54 年MEDLINE の英語の論文は約 46%
  4. 42020〜23 年MEDLINE の英語の論文は約 97%
石造りのアーチの前に、2 人の男性の銅の胸像が、それぞれ台の上に並んで置かれている
東京大学の本郷キャンパスにある、ベルツとスクリバの胸像(1907 年)。2 人とも明治時代に招かれ、日本の近代医学の発展に力を尽くしたドイツの医師です。写真: あばさー(Public domain・Wikimedia Commons)

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医学用語は、部品を組み合わせてできている

医学の英語には、長くて難しそうな単語がたくさん出てきます。でもその多くは、意味をもつ短い部品の組み合わせです。アメリカ国立医学図書館の健康情報サイト MedlinePlus も、部品の一覧とその意味を公開しています。

例えば、-itis は「炎症」を表す部品です。肝臓を表す hepat- につくと hepatitis(肝炎)です。腎臓を表す nephr- につくと nephritis(腎炎)になります。leuk- は「白」、-cyte は「細胞」なので、leukocyte は白い細胞、つまり白血球です。

部品の数はかぎられているので、少しずつ覚えると、初めて見る単語でも意味の見当がつくようになります。心臓を表す cardi-、血液を表す hem- のように、からだの部位や物質を表す部品から覚えるのが近道です。「取り除くこと」を表す -ectomy のように、手術の名前によく使われる部品もあります。

杏林大学医学部の 1 年生の「英語・医学英語 I」には、英語で医学を学ぶクラスがあります。細胞生物学や発生学について英語で話し合い、腕や脚、頭の骨の名前も英語で学びます。生物の授業で習う内容を、英語でもう一度学ぶ形です。

部品の意味を知ると、初めて見る医学の単語も読めるようになります。

図解leukocyte を部品に分けて読む

入力英語の教科書で、leukocyte という単語に出会った
  1. 1leuk(o)- は「白」を表す部品
  2. 2-cyte は「細胞」を表す部品
  3. 3合わせると「白い細胞」になる
結果leukocyte は白血球。erythr(o)- は「赤」なので、erythrocyte は赤血球

03

論文: 世界の新しい知識は、英語で毎日届く

医学の論文を探すとき、世界中の医師や研究者が使うのが PubMed です。アメリカ国立医学図書館の国立生物工学情報センターがつくるデータベースで、1996 年からだれでも無料で使えます。収められた論文などの記録は、4,000 万件を超えています。検索は英語で行うので、調べたいことを英語の医学用語に置きかえる力も必要です。

論文には、要旨(Abstract)という短いまとめがついています。同じ集計では、2020〜2023 年の MEDLINE の論文の 88% に要旨があります。要旨を読むだけでも、何を調べてどんな結果が出たのかの見当がつきます。

坂口志文さんは、2025 年のノーベル生理学・医学賞を受けました。坂口さんが 1995 年に制御性 T 細胞を報告した論文も、アメリカの免疫学の学術誌に英語で発表されています。医学の「生物」のページで紹介した発見の原点を、PubMed で題名と要旨から読むことができます。

医学部では、英語の論文を読む授業を置く大学があります。杏林大学医学部では、1 年から 4 年まで英語・医学英語の授業が続きます。研究室や病院では、英語の論文を読んで内容を紹介し合う抄読会も開かれます。

英語の論文が読めると、世界の最新の知識に直接ふれられます。

クイズ英語と医学のクイズ

答えを選ぶと、正解と解説が表示されます。

  1. Q1病院で使う「カルテ」という言葉は、もとは何語?

  2. Q2英語の医学用語 hepatitis。hepat- が表す臓器は?

  3. Q3MEDLINE に収められた 2020〜2023 年の論文のうち、英語の論文の割合は?

0 / 3 問に回答
青空の下、広い芝生の向こうに、横に長い低い建物と、その左に立つ細長い高層の建物が見える
アメリカ国立医学図書館の建物(メリーランド州ベセスダ)。PubMed や MedlinePlus は、この図書館がつくっています。写真: Chris Spielmann(Public domain・Wikimedia Commons)

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世界で学ぶ: 海外での臨床実習と USMLE

医学生のうちに、海外の病院で実習する道もあります。医学生の国際団体 IFMSA の日本の組織 IFMSA-Japan は、学生の手で交換留学を運営しています。海外の病院で 4 週間実習するプログラムの行き先は、90 か国以上です。参加するには、留学までに共用試験の CBT と OSCE に合格している必要があります。海外の大学の研究室で研究に加わるプログラムや、日本に来る留学生を受け入れる活動もあります。

大学の授業でも、海外での実習に備えられます。杏林大学医学部は、選択科目の「英語・医学英語 V」を置いています。6 年で海外でのクリニカルクラークシップ(診療に参加する実習)を希望する学生などに向けた授業です。

アメリカで医師になるための試験が、USMLE(米国医師国家試験)です。Step 1・Step 2 CK・Step 3 の 3 段階があり、問題はすべて英語です。基礎医学の理解を問う Step 1 は、1 日 8 時間の試験です。アメリカ以外の医学部の学生も、条件を満たせば在学中から受けられます。

日本の病院でも、外国から来た患者を英語で診察する場面があります。IFMSA-Japan は、日本にいながらオンラインで英語を練習する企画や、海外の学生との交流イベントも開いています。読む力だけでなく、伝える力も、医師の仕事で生きてきます。

英語の力があると、学生のうちから世界の病院や研究室とつながれます。

図解日本の医師国家試験と USMLE

日本の医師国家試験

  • 医師法にもとづき国が行う
  • 第 121 回は 2027 年 2 月の 2 日間
  • 問題は日本語

USMLE(アメリカ)

  • Step 1・2 CK・3 の 3 段階
  • Step 1 は 1 日 8 時間
  • 問題はすべて英語

05

苦手でも大丈夫: 高校の英語から医学の英語へ

医学の英語は、特別な英語ではありません。論文の文も、高校で学ぶ文法と、医学の専門用語の組み合わせでできています。まず「英語コミュニケーション」で、説明文や記事を読んで要点をつかむ練習を重ねることが土台になります。

「論理・表現」で学ぶ、理由を挙げて意見を組み立てる力や発表する力は、学会での発表や英語の論文を書くときに生きます。専門用語は、このページで紹介した部品の考え方を使うと、まとめて覚えられます。

翻訳ツールも上手に使えます。ただし医療の現場では、患者の名前や病気など、個人の情報を外部のサービスに入れないことが大切です。訳を読んだら元の英語と見比べ、数字や否定の言葉が正しく訳されているかを確かめる習慣をつけておくと安心です。

このサイトの高校の「英語」のページと、大学の「外国語学」のページもあわせて読むと、高校の英語がどの学問につながるかが分かります。入試の英語の配点や試験の形式は大学によって異なるので、志望校の募集要項で確かめてください。

高校の英語の読む力と伝える力が、医学の英語の土台になります。

図解高校の英語から医学の英語へ

  1. 1英語コミュニケーション説明文や記事の要点をつかむ
  2. 2論理・表現理由を挙げて意見を書き、発表する
  3. 3医学英語の授業医学用語を部品から覚える
  4. 4論文と海外の実習英語の論文を読み、世界で学ぶ

高校生のうちに試せること

  • 医学の単語を部品から学ぶ

    アメリカ国立医学図書館の MedlinePlus には、医学の単語を部品に分けて学べる無料のチュートリアルがあります。短いクイズもついているので、-itis や -ectomy などの部品を 10 個覚えるところから始めましょう。

    MedlinePlus「Understanding Medical Words Tutorial」
  • ライフサイエンス辞書で医学の単語を引く

    ライフサイエンス辞書は、生命科学や医学の英単語を無料で引ける英和・和英の辞書です。教科書の「白血球」「赤血球」を和英で引き、英語の部品がどう組み合わさっているかを確かめましょう。

    ライフサイエンス辞書
  • USMLE の例題を 1 問読む

    USMLE の公式サイトでは、Step 1 の例題が無料で公開されています。1 問選び、問題文の中で知っている単語に印をつけてみましょう。全部は分からなくても、高校の生物や化学で学んだ言葉がいくつも見つかります。

    USMLE「Step 1 Sample Test Questions」

「英語」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 33 件から探せます。

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よくある質問

英語が苦手でも、医学部でやっていけますか?

やっていけます。医学の英語は、高校で学ぶ文法と専門用語の組み合わせです。専門用語は部品を組み合わせてできているので、授業で少しずつ覚えていけます。入学前は、教科書の説明文を正確に読む練習を続けておくと安心です。

医師になったら、英語を話す機会はありますか?

診療科や働く場所によって異なります。国際学会で発表したり、海外の医師と共同で研究したり、外国から来た患者を診察したりする場面で英語を話すことがあります。読む力だけでなく、伝える力も役に立ちます。

USMLE は、日本の医学生もみんな受けるのですか?

みんなが受けるわけではありません。日本で医師になるために必要なのは、日本の医師国家試験です。USMLE は、アメリカで研修や診療をしたい人などが受ける試験で、日本の医学部の学生も条件を満たせば在学中から受けられます。