図 4 学ぶために必要な科目・学問学ぶために必要な科目 3
国語
社会学の研究は、文献を読み、人の話を聞き、それを文章にまとめる作業の積み重ねです。高校の「現代の国語」「論理国語」で学ぶ要約・引用・論証は、大学の文献の講読やインタビューの記録、卒業論文の土台になります。

ひとことで言うと
部活の先輩の話を、後輩に伝えるとき
聞いた話をそのまま全部伝えても、要点は伝わりません。大事なところを選び、先輩の言葉は言葉どおりに残し、自分の考えとは分けて伝えます。社会学の文章の書き方も、これと同じです。

01
社会学は「読む・聞く・書く」の学問
日本学術会議の参照基準は、社会学の質的調査として、インタビュー調査、参与観察、ドキュメント分析、計量テキスト分析などを挙げています。どれも、言葉を集めて読み解く方法です。数字を使う調査でも、結果は文章で報告します。
高校の国語には、これに直結する内容があります。現代の国語では、主張と論拠の関係、話し言葉と書き言葉の違い、引用の仕方や出典の示し方を学びます。論理国語では、仮説を立てて考察した内容を意見文にまとめたり、資料をもとに短い論文を書いたりします。
大学では、これがゼミでの文献の講読、インタビューの記録、レポートや卒業論文につながります。このページでは、新聞記事を読む研究、話を文字にする方法、引用のルールの 3 つを見ていきます。
社会学のデータの多くは、言葉でできています。
図解高校の国語と社会学のつながり
- 主張と論拠文献を読んで論点をつかむ
- 要約ゼミの発表資料(レジュメ)を作る
- 話し言葉インタビューを文字にする
- 引用と出典レポートで他人の文章を使う
- 論証卒業論文で問いに答える

02
文献を読む: 新聞の身の上相談から社会を読む
1914 年(大正 3 年)5 月 2 日、読売新聞の婦人向けの欄に、悩みの相談に応じるという予告が載りました。予告には、結婚や離婚、家庭の悩み、女性の職業の問題など、「凡(すべ)て思案に余った事」の相談相手になるとあります。日本で初めての、新聞の身の上相談の欄の予告とされています。
この欄は戦争中に中断したあと、1949 年に「人生案内」として再開し、今も続いています。100 年あまりの相談の記事は、それぞれの時代の人が何に悩んでいたかを伝える資料にもなります。
社会学者の太郎丸博は、この欄の 1934 年・1964 年・1994 年の記事から 300 本あまりを選びました。そして「罪」「恥」などの言葉を決め、コンピュータで数えました。すると、罪や恥、親子や夫婦の関係にふれる相談の割合が減り、孤独や性格など自分自身についての相談が増えていました。太郎丸はこれを、戦後の日本で個人主義化が進んだしるしと考えました。
記事を 1 本ずつ丁寧に読み、言葉の使われ方の変化に気づく力は、国語の読解そのものです。数える言葉を選ぶときも、文章の意味を正しく読み取れることが前提になります。
新聞や雑誌の記事も、社会を読み解くための大切な資料です。
図解記事を読んで社会の変化を調べる
- 1記事を集める年代ごとに同じ方法で記事を選ぶ
- 2言葉を決める「罪」「恥」など数える言葉を選ぶ
- 3数えて比べる年代ごとに出てくる割合を出す
- 4読んで解釈するなぜ変わったのかを文脈から考える


03
話を聞いて書く: 一字一句の書き起こしから
インタビューでは、相手の了解を得て録音し、あとで文字にします。これを書き起こし(文字起こし)といいます。話し言葉には「えーと」や言い直し、主語の省略が多く、そのままでは読みにくい文章になります。現代の国語で学ぶ、話し言葉と書き言葉の違いがここで生きます。
高校生がこの方法を本格的に体験できるのが、「聞き書き甲子園」です。高校生が森・川・海の名人を一人で訪ねて話を聞き、録音を一字一句書き起こします。不要な部分を削って並べかえ、名人の語り口を生かした一人語りの作品に仕上げます。2026 年度で 25 回目を迎えました。
大学の調査でも、書き起こした記録に小見出しを付け、似た話をまとめて分析します。論文では、相手の言葉をかぎかっこで引用し、自分の解釈とはっきり分けて書きます。誰の言葉なのかを取り違えない丁寧さが、聞き取りの記録への信頼を支えます。
相手の言葉を正確に残すことが、聞き取りの記録の出発点です。
図解話し言葉を読みやすく整える(例)
- 1「えーと」「あの」などの言いよどみを除く
- 2あいづちの「うん」を除く
- 3「〜かな」「親父」などの語り口は残す

04
レポートと論文: 引用のルールを守って書く
レポートや卒業論文では、先行研究や資料を引用しながら、自分の考えを述べます。文化庁の資料によると、許可を得ずに引用できるのは、条件を満たすときです。公表された作品であること、引用する必然性があること、自分の文章が「主」で引用が「従」であることです。さらに、引用した部分をかぎかっこなどで区別し、出所を示します。
社会学の論文では、出所の書き方にも型があります。日本社会学会の『社会学評論スタイルガイド』第 3 版(2019 年)では、本文中に(著者名 出版年)の形で示します。文章を引用したときは、(見田 1979: 128)のようにページも書き、論文の最後に文献の一覧を付けます。
感想文とレポートの違いは、根拠を示して論じるかどうかです。論理国語で学ぶ、主張を支える根拠をそろえ、批判的に読まれることを想定して組み立てる書き方は、そのまま大学のレポートの書き方になります。
引用は、他人の言葉と自分の言葉を分けて示すための決まりです。
図解感想文とレポート
感想文
- 感じたことを中心に書く
- 根拠は自分の経験が多い
- 出典を書かないことも多い
レポート
- 問いと答え(主張)をはっきり書く
- 資料やデータを根拠にする
- 引用と出典を決まった型で示す

05
苦手でも大丈夫: 新書 1 冊と 200 字の要約から
国語が得意でなくても、社会学部で学べます。多くの大学では、1 年生の演習でレポートの書き方や発表の仕方を教えます。大切なのは、うまい文章より、根拠と主張がつながった分かりやすい文章です。
学び直すなら、社会学の新書を 1 冊選び、章ごとに 200 字で要約することから始めるのが近道です。要約の最後に「自分ならここを調べたい」と 1 文足すと、問いを立てる練習にもなります。現代の国語の教科書の、主張と論拠、引用の単元も見直しておくと役立ちます。
高校の国語の科目のページや、文学の学問のページもあわせて読むと、読む力と書く力が大学でどう深まるかが見えてきます。
要約と引用ができれば、レポートの半分はできています。
高校生のうちに試せること
聞き書き甲子園に応募する
森・川・海の名人を訪ねて話を聞き、作品にまとめる高校生の活動です。聞き書きをする高校生の旅費などは、主催する実行委員会が負担します。次の第 26 回は、2027 年 5 月上旬に高校生の募集が始まる予定です。
聞き書き甲子園インタビューを 3 分だけ書き起こす
ラジオや動画のインタビューから 3 分を選び、一字一句書き起こしましょう。次に、言いよどみを除いて読みやすく整えた文章を作って並べると、話し言葉と書き言葉の違いがはっきり分かります。
新聞の人生相談を読み比べる
図書館で、新聞の人生相談の欄を、昔の紙面と今の紙面から 5 本ずつ選んで読みましょう。家族・仕事・自分自身など、悩みの種類ごとに数えて比べると、社会の変化が見えてきます。
スタイルガイドで出典の書き方を直す
日本社会学会の『社会学評論スタイルガイド』は、無料で読めます。探究の授業のレポートの出典を、(著者名 出版年: ページ)の形と文献の一覧に書き直してみましょう。
社会学評論スタイルガイド 第 3 版(日本社会学会・PDF)
「国語」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 293 件から探せます。
よくある質問
国語が苦手でも社会学部に入れますか?
入れます。多くの大学では、1 年生の演習でレポートの書き方を一から教えます。現代の国語で学ぶ、主張と論拠、引用の仕方を見直しておくと、レポートの課題に取り組みやすくなります。
古文や漢文は社会学で使いますか?
使う場面は多くありません。ただし、歴史社会学のように昔の資料を読む研究では、古い文章を読む力が役立ちます。大正時代の新聞のように、今とは違う言い回しの資料を読むこともあります。
インタビューの書き起こしは、ツールに任せられますか?
文字にする作業は、ツールで速くなっています。それでも、聞き間違いを確かめたり、話の意味をくみ取ったりする作業は人が行います。録音や記録の扱いは、相手との約束と大学の決まりに従います。




