図 4 学ぶために必要な科目・学問学ぶために必要な科目 1
公民・地理歴史
100 年前と比べて、家族や町はどう変わったのか。高校の「公共」「歴史総合」「地理総合」で学ぶ社会のしくみ・年表・地図は、大学の社会学で社会の変化を読み解く土台になります。

ひとことで言うと
古いアルバムと地図帳を並べて見る
祖父母の若いころの写真と今の写真を比べると、服や家、家族の人数の違いに気づきます。地図帳で別の町と比べても発見があります。昔と比べ、よそと比べるという社会学の見方は、歴史と地理の授業の続きにあります。

01
社会学は「昔」と「よそ」と比べる学問
社会学は、ヨーロッパで近代社会が生まれるころに誕生しました。日本学術会議の参照基準は、フランス革命後の民主主義や、産業革命後の資本主義の広がりの中で、社会学が出発したと説明しています。高校の歴史総合で学ぶ「近代化」は、社会学が生まれた時代そのものです。
参照基準は、社会を見るための足場として「時間軸」と「空間軸」を挙げています。今の社会を 100 年前や 200 年前と比べることと、同じ時代の別の社会と比べることです。昔と比べ、よそと比べると、当たり前に見えていたことが当たり前ではなくなります。
歴史総合の「近代化への問い」では、産業と人口、学校教育、労働と家族、移民などの資料を読みます。どれも大学の社会学で、そのまま研究のテーマになるものです。地理総合の地図や GIS、公共で学ぶ法や制度も、社会を比べるための道具になります。
歴史は時間の物差し、地理は空間の物差しになります。
図解公民・地理歴史と社会学のつながり
- 歴史総合近代化と家族の変化 → 家族社会学
- 地理総合地図と GIS → 都市社会学・地域社会学
- 公共雇用と社会保障 → 労働や福祉の社会学
- 政治・経済格差や労働のデータ → 階層の研究
- 世界史探究近代ヨーロッパ → 社会学の理論の歴史
- 日本史探究高度経済成長 → 都市と地域の変化

02
歴史総合と統計: 1 世帯の人数は 100 年で半分以下に
日本で初めての国勢調査は、1920 年(大正 9 年)に行われました。国立社会保障・人口問題研究所の集計では、このときの普通世帯の 1 世帯あたりの人数は 4.89 人です。2025 年の国勢調査では、一般世帯の 1 世帯あたりの人数は 2.10 人でした。世帯の区分は少し違いますが、100 年あまりで半分以下になりました。
減り方は一定ではありません。普通世帯で比べると、1920 年から 1950 年までは 5 人前後で、ほとんど変わりませんでした。ところが一般世帯で見ると、1960 年から 1990 年までの 30 年間で、4.14 人から 2.99 人へと大きく減っています。
この 30 年は、歴史総合で学ぶ高度経済成長から、その後の安定成長の時代にあたります。数字の変化をつかんだら、年表と重ねて理由を考えます。「なぜ、この時期に世帯は小さくなったのか」という問いが立てば、それはもう社会学の研究の入口です。
統計の数字と年表を重ねると、変化の理由を考える問いが生まれます。
図解1 世帯あたりの人数の移り変わり
- 11920 年4.89 人(第 1 回国勢調査・普通世帯)
- 21960 年4.14 人(一般世帯)
- 31990 年2.99 人(一般世帯)
- 42025 年2.10 人(一般世帯)

03
地理総合と地図: 都市を同心円で描いたシカゴの社会学
地図は、社会を調べる大切な道具です。20 世紀のはじめ、アメリカのシカゴは都市化と工業化の中で、広がり続けていました。シカゴ学派の都市社会学をつくったパークは、この街を「都市研究の社会的実験室」と位置づけ、社会の問題と地域の関係を調べました。
パークの協力者だったバージェスは、シカゴが広がっていく様子を同心円で表しました。中心の都心ビジネス地区から外へ、遷移地区、労働者住宅地区、中産階級住宅地区、郊外の高級住宅地区の 5 つが並びます。この考え方は、同心円地帯理論と呼ばれます。
1960 年代からは、国勢調査の地区ごとの数字で、地域の特徴を分析する研究が広がりました。日本でも、東京を統計で描き分けた『東京の社会地図』(1986 年)が出ています。今は地理総合で学ぶ GIS(地理情報システム)を使えば、数字を地図に置くことが誰でもできます。高齢化が進む地区や子どもが多い地区が、一目で分かります。
数字や暮らしの様子を地図に置くと、地域の違いが見えてきます。
図解シカゴの同心円(中心から外へ)
- 1都心ビジネス地区
- 2遷移地区
- 3労働者住宅地区
- 4中産階級住宅地区
- 5郊外高級住宅地区


04
公共と統計: 「共働き」の増え方と中身を見る
公共では、雇用と労働、少子高齢社会と社会保障など、今の社会の課題を資料から考えます。社会学は、こうした制度や働き方の変化と、家族の暮らしの変化をデータで結びつけて考えます。
労働政策研究・研修機構が、総務省の労働力調査からまとめた数字を見てみます。夫が会社などに雇われて働く夫婦の世帯の数字です。1980 年は専業主婦の世帯が 1,114 万、共働きの世帯が 614 万でした。1992 年に初めて共働きの世帯が上回り、1997 年からは毎年多くなっています。2025 年は共働きが 1,333 万、専業主婦が 476 万です。
数字を見るときは、言葉の中身も確かめます。2025 年の共働き世帯のうち、妻の働く時間が週 35 時間未満の世帯は 695 万で、35 時間以上の 559 万より多くなっています。「共働き」の中にもいろいろな働き方があると分かると、次の問いが見えてきます。
なぜ増えたのかを考えるときも、理由を 1 つに決めつけません。産業の変化、進学のしかた、法律や制度、家計の事情など、いくつもの説明を並べて、データで確かめていきます。
制度と暮らしの変化を、データで結びつけて考えます。
図解専業主婦の世帯と共働きの世帯
1980 年
- 専業主婦の世帯 1,114 万
- 共働きの世帯 614 万
- 専業主婦の世帯が約 1.8 倍
2025 年
- 専業主婦の世帯 476 万
- 共働きの世帯 1,333 万
- 共働きの世帯が約 2.8 倍

05
苦手でも大丈夫: 年表と統計から始める
公民や地理歴史を入試で使わなかった人も、心配はいりません。歴史総合・地理総合・公共は全員が学ぶ科目なので、土台はすでにあります。大学では、覚えた用語の数より、資料を読んで「なぜ」と問う習慣が役立ちます。
学び直すなら、歴史総合の教科書の近代化・大衆化・グローバル化の章から始めるのが近道です。年表の横に、このページの世帯の人数や共働きの数字を書き込むと、歴史と統計がつながります。次に地理総合の地図と統計の読み方、公共の雇用や社会保障の単元へ進みます。
高校の「公共・政治経済」「日本史」「地理」の科目のページもあわせて読むと、どの単元が社会学のどこにつながるかが見えてきます。
年表と統計を並べることが、社会学への第一歩です。
高校生のうちに試せること
地理院地図で昔の町と比べる
国土地理院の地理院地図では、1960 年代などに撮った空中写真を、今の写真と 2 つの画面に並べて見られます。自分の町の田畑や住宅地、駅前がどう変わったかを確かめましょう。
街の移り変わりを知る(国土地理院)100 年分の世帯の人数をグラフにする
国立社会保障・人口問題研究所の人口統計資料集には、1920 年からの 1 世帯あたりの人数の表があります。折れ線グラフにして、歴史総合の年表の出来事を書き込みましょう。減り方が急な時期に、何が起きていたかが見えてきます。
人口統計資料集 表 7-4(国立社会保障・人口問題研究所)自分の町に同心円を描く
地図帳や地理院地図で、自分の町のいちばん大きな駅を中心に円をいくつか描きましょう。お店、マンション、一戸建て、畑や工場がどこに多いかを書き込み、シカゴの 5 つの地帯と比べると、似ているところと違うところが見えてきます。
「公民・地理歴史」に関連するコミュニティ
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よくある質問
日本史と世界史、どちらを選べばよいですか?
どちらを選んでも社会学は学べます。社会学が生まれた近代ヨーロッパの歴史は世界史が、日本の家族や地域の移り変わりは日本史が詳しく扱います。入試で使える科目は大学によって異なるので、募集要項で確かめてください。
地理を詳しく学んでいなくても大丈夫ですか?
大丈夫です。地理総合は全員が学ぶ科目なので、地図や GIS の基本には触れています。都市や地域の研究に進むなら、地理総合の教科書で地図と統計の読み方を見直しておくと役立ちます。
社会学は、歴史学とどう違うのですか?
歴史学は、過去の出来事を史料から明らかにすることに重点を置きます。社会学は、今の社会を知るために、過去や外国と比べることが多い学問です。歴史社会学のように、両方が重なる分野もあります。




