図 4 学ぶために必要な科目・学問学ぶために必要な科目 2
数学(データの分析)
「大学進学率 58.6%」は、何人のうちの何人なのか。社会学では、高校の数学 I の「データの分析」と数学 B の「統計的な推測」を使って、調査や統計の数字を正しく読み、確かめます。

ひとことで言うと
SNS で回ってきたグラフを見たとき
「〇〇が急増!」というグラフを見たら、縦軸の目盛りや、何を数えた数字なのかを確かめたくなります。社会学で学ぶ数学は、数字にだまされず、数字で社会を語るための道具です。

01
社会学で数学が出てくる場所
社会学部は文系の学部ですが、授業では数字をよく使います。日本学術会議の参照基準は、調査票を使う量的調査の手順として、仮説の設計、サンプリング、調査票の作成、データの整理を挙げています。分析には、重回帰分析や因子分析などの方法を使ってきたとも書いています。
その入口が、高校の数学 I の「データの分析」です。学習指導要領では、分散・標準偏差・散布図・相関係数と、仮説検定の考え方を学びます。外れ値という用語もここで出てきます。数学 B の「統計的な推測」では、標本調査や区間推定、仮説検定の方法を学びます。
大学では、こうした考え方を社会統計学や調査データの分析の授業で使います。このページでは、割合の分母、相関係数、グラフの目盛りの 3 つを、国勢調査や学校基本調査の実際の数字で見ていきます。
社会学の数学は、社会の数字を正しく読むための道具です。
図解社会学で数学が出てくる場所
- 割合と比何のうちの何かを確かめる
- 散布図2 つの数字の関係を点で見る
- 相関係数関係の強さを −1〜1 で表す
- 外れ値極端な値が結論を変えないか見る
- グラフ目盛りや形で印象が変わる
- 標本調査一部の人から全体を推し量る

02
割合の分母: 「大学進学率」は何人のうちの何人?
文部科学省の学校基本調査によると、2025 年度の大学(学部)進学率は 58.6% でした。この割合の分母は、その春の高校の卒業者ではありません。3 年前に中学校を卒業した人の数です。分子には、浪人してから入学した人も含まれます。
同じ「進学率」でも、数え方が変われば数字が変わります。その春の高校などの卒業者を分母にすると、大学(学部)に進んだ人の割合は 58.3% です。分子に短大・専門学校・高専 4 年も入れた「高等教育機関への進学率」は 85.4% になります。割合を見たら、分母と分子が何かを確かめます。
分母は、全体と内訳を比べるときにも大切です。1973 年の、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校の大学院の出願を見てみます。大きな 6 つの学科を合わせると、男性の合格率は 44.5%、女性は 30.4% でした。ところが学科ごとに見ると、6 学科のうち 4 学科で、女性の合格率のほうが高かったのです。
女性の出願の多くが、合格率の低い学科に集まっていたためです。全体の割合だけでは見落とす違いが、内訳に隠れていることがあります。では、なぜ出願先が分かれたのか。数字が示した次の問いを考えるのが、社会学の仕事です。
割合を見たら、まず分母が何かを確かめます。
図解バークレーの合格率(1973 年・6 学科)
合格率の高い 2 学科
- 男性 62.5%(1,385 人が出願)
- 女性 79.7%(133 人が出願)
- 女性のほうが高い
合格率の低い 4 学科
- 男性 25.5%(1,306 人が出願)
- 女性 26.5%(1,702 人が出願)
- 女性のほうが少し高い
6 学科の合計
- 男性 44.5%(2,691 人が出願)
- 女性 30.4%(1,835 人が出願)
- 男性のほうが高く見える


03
相関係数: 47 都道府県の数字で読む
2 つの数字の関係の強さを、−1 から 1 までの数で表すのが相関係数です。1 に近いほど「一方が大きいと、もう一方も大きい」関係です。−1 に近いほど「一方が大きいと、もう一方は小さい」関係になり、0 に近ければ直線的な関係はほとんどありません。
2025 年の国勢調査の結果の概要にある、都道府県別の表で計算してみます。65 歳以上の人の割合と、2020 年からの 5 年間の世帯数の増減率の相関係数は、約 −0.91 です。秋田県(40.0%・−1.7%)のように高齢化が進んだ県ほど、世帯数が減る強い傾向があります。
ただし、高齢化が世帯を減らしたとまでは言えません。若い世代が進学や就職で都市へ移ると、高齢化と世帯の減少が同時に起きるとも考えられます。相関係数は関係の強さを示しますが、原因までは教えてくれません。
外れ値にも注意します。1 世帯あたりの人数と 65 歳以上の割合の相関係数は、約 0.28 です。ところが、どちらも全国でいちばん低い東京都(1.85 人・22.8%)を除くと、約 0.14 と半分ほどになります。1 つの値で結論が変わらないかを確かめるのも、データの分析の基本です。
相関係数は関係の強さを示す数で、原因を示す数ではありません。
図解都道府県の数字で相関係数を出す
- 1表計算ソフトに 2 列で入力する
- 2散布図を描いて点の並びを見る
- 3CORREL 関数で相関係数を出す
- 4外れ値を除いて計算し直す

04
グラフの目盛り: 縦軸ひとつで印象が変わる
グラフは、縦軸の始まりや縦横の比率を変えるだけで、見る人に与える印象が大きく変わります。目盛りの一部を波形で省略したグラフも、差が大きく見えやすくなります。大学の社会統計学やゼミの発表では、グラフを読む側だけでなく、作る側にも回ります。
例えば、一般世帯の 1 世帯あたりの人数は、2020 年の 2.21 人から 2025 年の 2.10 人に減りました。減り方は約 5% です。ところが縦軸を 2.0 人から始めた棒グラフにすると、2025 年の棒は 2020 年の半分ほどの高さになります。まるで人数が半分になったように見えてしまうのです。
ニュースや SNS のグラフを見たら、縦軸がどこから始まっているか、単位は何か、出典はどこかを確かめます。自分でグラフを作るときは、目的に合った形を選び、誤解を生まない目盛りにします。
グラフを見たら、縦軸の始まりと単位、出典を確かめます。

05
苦手でも大丈夫: どこから学び直すか
数学を使わずに受験できる社会学部も多くあります。多くの大学では、入学後に統計の入門から学べます。社会調査士の標準カリキュラムにも、公的統計や調査報告を読むための「基本的な資料とデータの分析」の科目があり、グラフの読み方から学びます。
学び直すなら、小学校の割合と中学の度数分布から始めるのが近道です。次に数学 I の「データの分析」で散布図と相関係数、数学 B の「統計的な推測」で標本調査と推定へ進みます。このページの国勢調査の数字を表計算ソフトに入れ、自分で計算すると身につきやすくなります。
高校の数学の科目のページや、数学の学問のページもあわせて読むと、統計の考え方が大学のどこで深まるかが見えてきます。
割合と相関係数が分かれば、社会統計学の入口に立てます。
図解学び直しのおすすめの順番
- 1小学校・中学割合、度数分布、箱ひげ図
- 2数学 I散布図・相関係数・外れ値
- 3数学 B標本調査、区間推定と仮説検定
- 4大学社会統計学、多変量解析
高校生のうちに試せること
縦軸を変えて 2 つのグラフを作る
表計算ソフトで、2020 年の 2.21 人と 2025 年の 2.10 人の棒グラフを作りましょう。縦軸を 0 から始めたものと 2.0 から始めたものを並べると、同じ数字でも印象が大きく変わることが分かります。
都道府県の数字で相関係数を出す
国勢調査の結果の概要にある都道府県別の表から、気になる 2 つの数字を表計算ソフトに写しましょう。散布図を描き、CORREL 関数で相関係数を出します。東京都などの外れ値を除いて、値が変わるかも確かめてみましょう。
令和 7 年国勢調査 調査の結果(総務省統計局)ニュースのグラフを点検する
新聞やニュースサイト、SNS からグラフを 3 枚集め、縦軸の始まり、単位、出典、縦横の比率を確かめましょう。総務省統計局の「グラフ作成の基本」を読んでから点検すると、見るべきところが分かります。
グラフ作成の基本(なるほど統計学園)
「数学(データの分析)」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 10 件から探せます。
よくある質問
数学が苦手でも社会学部に入れますか?
入れます。数学を使わずに受験できる社会学部も多くあります。ただし入学後は統計の授業があるので、数学 I の「データの分析」を中心に学び直しておくと、授業についていきやすくなります。
数学 III や数学 C は必要ですか?
社会学の授業で中心になるのは、割合・相関係数・推定・検定などの統計の考え方です。入試で必要な科目は大学と入試の方式によって異なるので、志望校の募集要項で確かめてください。
インタビュー中心の研究なら、数学は使いませんか?
使う量は少なくなります。それでも、先行研究の統計を読んだり、調べる地域の人口や世帯の数字を確かめたりする場面があります。表やグラフを正しく読む力は、どの方法を選んでも役立ちます。
出典
- 日本学術会議「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 社会学分野」(2014 年 9 月)
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)」
- 総務省統計局「令和 7 年国勢調査 人口等基本集計 結果の概要」(2026 年 9 月)
- The R Datasets Package「UCBAdmissions」(Bickel ほか「Sex Bias in Graduate Admissions: Data from Berkeley」Science 187(1975 年)のデータ)
- 文部科学省「令和 7 年度学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値について公表します」(2025 年 12 月 26 日)

