大学院の修士課程に進むと、国立大学なら授業料は年 535,800 円(文部科学省令の標準額)が基本で、入学料は 282,000 円です。私立大学は研究科によって、授業料だけで年 56 万円から 120 万円台まで開きます(2026 年度入学者の明治大学・立命館大学の例)。学費に加えて生活費がかかるため、JASSO(日本学生支援機構)の令和 6(2024)年度の調査では、修士課程の一般の学生の学費と生活費は年 1,737,400 円でした。この記事は、大学生とその保護者が、修士 2 年間にかかる額と使える支援を、国と大学の公式の資料で確かめたものです。

JASSO の調査と、記事の中の合計額については、次の 2 点を先にお伝えします。JASSO の大学院の調査は、令和 6 年度に調査の内容を見直した「試行」の結果で、有効回答は 11,368 人(回収率 22.6%)です。また、2 年間の合計は公式の数字ではなく、編集部が公式の数字から計算した例です。学部の授業料と大学ごとの額は国立大学の授業料値上げの記事にまとめています。

学費 国立の標準額と私立の例

国立大学の大学院の授業料と入学料は、「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」の第 2 条が標準額を定めています。大学院の研究科(法科大学院を除く)は、授業料が年 535,800 円、入学料が 282,000 円、検定料が 30,000 円です。法科大学院は授業料が年 804,000 円です。各大学は第 10 条の「特別の事情があるとき」に、標準額の 120% まで上げられます。大学院の授業料の 120% は 642,960 円です。

標準額を上げる大学は、学部が先で、大学院は遅れて上げることが多くなっています。東京大学は 2024 年 9 月 24 日に、学士課程を 2025 年 4 月入学者から、修士・専門職学位課程(法科大学院を除く)を 2029 年 4 月入学者から、年 642,960 円にすると発表しました。博士課程は現行どおりです。同じ大学でも課程と入学年度で額が変わるため、志望する研究科の募集要項で確かめてください。

私立大学は、文部科学省の調査に平均があります。令和 7(2025)年度の私立大学大学院(昼間部)の博士前期課程(修士課程を含む)の初年度は、次のとおりです(定員で加重平均、調査校 462 校、2025 年 12 月公表)。

研究科の分野授業料入学料施設設備費合計
人文・社会科学723,616 円202,636 円61,796 円988,048 円
理・工・農学884,047 円209,095 円59,598 円1,152,740 円
全平均811,006 円208,987 円70,721 円1,090,714 円

(文部科学省「令和 7 年度 私立大学大学院入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員 1 人当たり)の調査結果について」)

大学ごとの額の例として、2026 年度入学者の博士前期課程を、各大学の公式の学費の資料から並べます。

大学・研究科入学金1 年次の授業料など2 年次
明治大学 法学・商学・政治経済学・経営学・文学など200,000 円授業料 560,000 円・教育充実料 60,000 円など。年額の合計は入学金を含めて 823,000 円年額 623,000 円
明治大学 理工学(建築・都市学専攻の国際建築都市デザイン系を除く)など200,000 円授業料 760,000 円・教育充実料 90,000 円・実験実習料 70,000 円など。年額の合計は入学金を含めて 1,123,000 円年額 923,000 円
立命館大学 文学研究科 人文学専攻200,000 円授業料 836,000 円授業料 836,000 円
立命館大学 理工学研究科(数理科学コースを除く)200,000 円授業料 1,281,800 円授業料 1,281,800 円

(明治大学「大学院 学費等一覧(2026 年度入学者用)」、立命館大学「学費【立命館大学 大学院 2026 年度入学者】」。明治大学は、本学の学部卒業生の入学金を 2 分の 1 にし、本学の博士前期課程の修了者は入学金を免除します。立命館大学の資料は入学金と授業料を示しており、どちらの大学も学費は変更されることがあります。)

私立では、理系の研究科の授業料が文系より高いことが、平均の表と 2 校の例の両方から分かります。国立は研究科による差が小さい一方で、私立は同じ大学でも、研究科によって授業料が約 1.5 倍(立命館大学の例)違う場合があります。

生活費と収入 JASSO 令和 6 年度の調査から

JASSO の令和 6 年度学生生活調査(大学院各課程・試行、2026 年 3 月公表)は、2024 年 11 月に大学院生を調べたものです。通信制課程・休学者・外国人留学生は除かれ、仕事をしながら通う「社会人学生」と、それ以外の「一般の学生」に分けて集計されています。修士課程の 13.4% が社会人学生です。ここでは、大学卒業後すぐに進学する人に近い、一般の学生の数字を見ます。

修士課程の一般の学生の 1 年間の支出は、平均で学費が 760,100 円(授業料 572,700 円、その他の学校納付金 45,100 円、通学費 62,500 円、勉学・研究費 79,800 円)、生活費が 977,300 円(住居光熱費 313,500 円、食費 261,100 円、保健衛生費 69,600 円、娯楽・し好費 177,800 円、その他の生活費 155,300 円)で、合計 1,737,400 円です。学費には入学金は含まれません(JASSO「令和 6 年度学生生活調査結果 大学院各課程(試行)調査結果の概要等」)。

住まいで大きく変わります。同じ調査で、修士課程の一般の学生の学生生活費は、親と同居の平均が 1,417,300 円、下宿・アパート等が 1,978,700 円で、JASSO は差を 56 万円とし、生活費の差によるところが大きいとしています。設置者別では、国立が 1,662,000 円、公立が 1,538,600 円、私立が 1,909,900 円です。私立は学費が高い一方で、生活費は国立より低くなっていますが、調査の資料にはその理由は書かれていません。

収入は、修士課程の一般の学生の平均が年 1,893,200 円でした。

収入の種類年額(平均)割合
親・親戚からの支援851,600 円45.0%
アルバイト・パートタイムの収入418,300 円22.1%
日本学生支援機構の貸与奨学金383,000 円20.2%
TA・RA の報酬114,400 円6.0%
日本学生支援機構の奨学金以外の経済的支援79,700 円4.2%
その他の収入46,200 円2.4%

アルバイトをした人は 75.9%(TA・RA は含みません)、何らかの経済的支援を受けた人は 92.2% でした。奨学金の種類では、日本学生支援機構の第一種奨学金を受けた人が 37.8%、第二種が 4.7%、大学の給付型が 6.0%、民間団体・企業の給付型が 5.6% です(複数回答)。親・親戚からの支援を受けた人は 77.2% です。つまり修士では、多くの人が親の支援、アルバイト、奨学金を組み合わせています。

博士課程の一般の学生は、学生生活費が 2,077,900 円(学費 542,100 円・生活費 1,535,800 円)で、収入は 2,665,100 円でした。収入では、TA・RA の報酬が 268,800 円(10.1%)、「日本学生支援機構の奨学金以外の経済的支援」が 1,382,100 円(51.9%)と、修士より大きな割合を占めます。日本学術振興会(JSPS)や科学技術振興機構(JST)などの生活費相当額の支援(給付型)を受けた人は 43.2% でした。

修士 2 年間のお金を、学費の例(国立の標準額・私立の平均・明治大学と立命館大学)、JASSO 調査の 1 年の支出と収入の内訳、修士で使える支援の 4 つに分けてまとめた図

図: 大学院の修士 2 年間のお金(作成: 大学カタログ編集部 / もとの資料: JASSO「令和 6 年度学生生活調査 大学院各課程(試行)」、文部科学省、各大学の公式資料、JSPS、JST。2026 年 10 月 23 日確認)

修士 2 年間の合計の目安 編集部の計算

ここまでの数字から、修士 2 年間の合計の例を計算しました。公式の数字ではなく、次の式で出した計算の例です。「授業料と入学料」は上の学費の資料の額、「生活費 2 年」は JASSO の修士課程・一般の学生の生活費の平均 977,300 円の 2 年分、「通学費・勉学研究費」は同じ調査の 62,500 円と 79,800 円の 2 年分(284,600 円)です。

例授業料と入学料(2 年)生活費(2 年)通学費・勉学研究費(2 年)合計
国立大学(標準額)1,353,600 円1,954,600 円284,600 円3,592,800 円
明治大学 文系の研究科1,446,000 円1,954,600 円284,600 円3,685,200 円
明治大学 理工学研究科2,046,000 円1,954,600 円284,600 円4,285,200 円
立命館大学 文学研究科 人文学専攻1,872,000 円1,954,600 円284,600 円4,111,200 円
立命館大学 理工学研究科(数理科学コースを除く)2,763,600 円1,954,600 円284,600 円5,002,800 円

国立大学は、授業料 535,800 円の 2 年分と入学料 282,000 円で 1,353,600 円としました。明治大学は 1 年次と 2 年次の年額を足し(入学金を含む)、立命館大学は入学金 200,000 円と授業料の 2 年分を足しています。明治大学の年額には教育充実料などが入っています。生活費は全国の平均で、親と同居なら下がり、下宿やアパートなら上がります。この表は授業料の減免や奨学金の収入を引く前の額です。

使える支援 奨学金・授業料後払い・免除・TA

奨学金と授業料の後払い

高等教育の修学支援新制度(給付奨学金と授業料減免)は、「大学等における修学の支援に関する法律」の第 2 条で、対象の「学生」が大学の学部、短期大学の学科、高等専門学校、専門学校の課程などとされていて、大学院は含まれていません。そのため修士で使う国の奨学金は、JASSO の貸与型が中心になります。

種類月額・額利子特徴
第一種奨学金修士課程相当は 50,000 円か 88,000 円(博士課程相当は 80,000 円か 122,000 円)なし平成 30 年度以降の入学者の月額
第二種奨学金大学院は 50,000 円、80,000 円、100,000 円、130,000 円、150,000 円から選ぶあり法科大学院の法学を履修する課程は増額が可能
授業料後払い制度授業料支援金は国公立が年最大 535,800 円、私立が年最大 776,000 円。生活費奨学金は月 20,000 円か 40,000 円(受けないことも可)なし授業料は在学中に納めず、卒業後に所得に応じて機構へ返す

(JASSO「第一種奨学金の貸与月額(平成 30 年度以降入学者)」「第二種奨学金の貸与月額」「授業料後払い制度(大学院修士段階)」「授業料後払い制度の貸与額」)

授業料後払い制度は、大学院の修士課程(博士前期課程を含む)と専門職学位課程の在学者が対象で、授業料相当額の奨学金を機構が原則として学校に振り込みます。卒業後に、所得に応じて(大学にではなく)機構へ返します。申込資格・学力基準・家計基準は第一種奨学金と同じで、第二種奨学金とは併用できますが、第一種奨学金とは併用できません。機構と契約を結んだ学校だけが学校への振込を受けられ、契約校の一覧は JASSO のページ(2026 年 10 月 19 日時点)にあります。この制度は文部科学省の検討会議の報告(2022 年 12 月)で、2024 年度の実施が示されたものです。

大学院の第一種奨学金と授業料後払いの家計基準は、申込者本人と配偶者の収入で審査され、親の収入は審査の対象ではありません(JASSO「第一種奨学金の家計基準」予約採用・大学院へ進学予定の人)。学力基準は、大学や大学院での成績が特に優れていることです。

大学院の第一種奨学金には、返済の負担を軽くする仕組みもあります。「特に優れた業績による返還免除」は、貸与期間中に特に優れた業績を挙げた人の奨学金の全額または半額を免除する制度で、大学が推薦し、JASSO の認定委員会が決めます。2025 年度に貸与が終わった修士課程の人は 21,381 人で、このうち 7,039 人が免除になりました(全額 1,684 人・半額 5,355 人)。貸与が終わった人の約 3 分の 1(編集部の計算)です。申請は貸与が終わった年度にしかできず、修士課程と専門職学位課程は進学の前後に「内定」を受けられる制度もあります。令和 5 年度以降に博士課程で第一種奨学生に採用された人が、JST の SPRING などで生活費相当額の支援を受けると、対象外になります。授業料後払い制度を使った人が免除の対象になるかどうかは、確かめられた資料がないため、大学の窓口か JASSO に聞いてください。

大学の授業料免除と TA・RA

国立大学は、省令の第 13 条で、経済的な理由で納付が難しい人の授業料の免除や徴収の猶予などの措置をとることになっています。大学院生に対する免除は大学ごとの規則で決まります。たとえば東京大学は、修士・専門職学位課程(法科大学院を除く)について、現行は家計の総所得金額を世帯人数別の基準と比べて審査しています。2029 年 4 月入学者からは、世帯収入 600 万円以下の日本人学生は全額免除に、600 万円を超え 900 万円以下の学生には個別の状況に応じた一部免除にします(2024 年 9 月 24 日の発表)。

TA(ティーチング・アシスタント)や RA(リサーチ・アシスタント)の給与は、大学ごとの規程で決まります。東北大学の TA は、2026 年 4 月から時給が学部 5・6 年と博士前期課程で 1,700 円、博士後期課程で 1,900 円です。RA の額は、大学と事業ごとの規程で確かめてください。JASSO の調査では、TA・RA の報酬は修士課程の一般の学生の平均で年 114,400 円、博士課程では 268,800 円でした。

博士に進む人の支え

博士課程の支援は、修士より金額が大きくなります。日本学術振興会の特別研究員(DC1・DC2)は、令和 9(2027)年度の新規採用者の研究奨励金が月額 227,000 円(支給予定額)で、DC1 は 3 年間、DC2 は 2 年間です。研究費として科研費の特別研究員奨励費も受けられます。研究奨励金は税法上は給与所得として扱われ、JASSO の奨学金を受けている人が採用されたときは、奨学金を辞退します。令和 9 年度採用分は、大学から JSPS への提出期限が 2026 年 6 月 3 日で、すでに締め切られています。申請者から大学への期限は大学ごとに早く設定されるため、次の募集は JSPS の選考日程と大学の案内で確かめてください。

JST の次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)は、大学が設ける支援プロジェクトで選ばれた博士後期課程の学生に、生活費相当額と研究費を出します。令和 9 年度の公募要領では、研究奨励費(生活費相当額)は年 180 万円から 240 万円の範囲で大学が設定します。令和 9 年度は 86 件の支援プロジェクトが採択されました(JST、2026 年 10 月 14 日)。博士の先の研究費は、科研費の若手研究の記事で説明しています。

修士のあとの進路と、次にすること

「大学院 修士 就職」を気にする人は多くいます。文部科学省の学校基本統計(確定値、令和 7 年度調査・2025 年 12 月 26 日公表)では、2025 年 3 月の修士課程修了者 77,633 人のうち、就職者は 60,674 人(78.2%)、進学者は 8,670 人(11.2%)でした。就職者の割合は前年度より 0.3 ポイント低く、進学率は 0.3 ポイント高くなっています。この統計は大学院全体の数字で、研究科や専攻による違いは分かりません。志望する研究室の修了生の進路は、研究科や研究室の案内で確かめてください。研究室の選び方は研究室の選び方の記事と、研究室の一覧も参考にしてください。

次にすることは、時期の順に並べると次のとおりです。

  1. 志望する大学院と研究科の授業料・入学金・その他の納付金を、募集要項と大学の学費のページで確かめる(私立は研究科で差が大きい)
  2. 大学院の予約採用(進学前の申込み)を実施しているか、学部の奨学金窓口か進学先の大学院に聞く。JASSO によると、予約採用を行っていない大学院もあります。予約採用に間に合わなくても、進学後に春と秋の「在学採用」で申し込めます
  3. 第一種奨学金、授業料後払い制度、第二種奨学金のどれを使うかを決める。授業料後払いは契約を結んだ学校かどうかも確かめる
  4. 大学の授業料免除の申込みの時期と基準を、入学前に大学の学生支援のページで見ておく
  5. TA・RA の募集や、研究室の費用(学会参加・実験)の自己負担を、研究室や先輩に聞いておく
  6. 博士に進む予定なら、特別研究員 DC や SPRING などの生活費相当額の支援の日程を、修士 1 年のうちに調べる

志望する大学のページは、大学一覧から探せます。

よくある迷い

国立と私立、修士の費用はどれくらい違いますか?

この記事の計算の例では、2 年間の合計が国立の標準額で約 359 万円、明治大学の文系で約 369 万円、立命館大学の理工学研究科で約 500 万円でした。授業料の違いに、生活費と研究費の差が加わります。国立でも標準額の 120% まで上げる大学があるため、志望校の額を確かめてください。

授業料後払い制度と第一種奨学金は、どちらがよいですか?

どちらかだけを使う制度で、併用はできません。第一種奨学金は月 50,000 円か 88,000 円を借り、授業料後払い制度は授業料を学校へ振り込んでもらい、あわせて月 20,000 円か 40,000 円の生活費奨学金を受けられます。返還は授業料後払い制度では所得に応じた方式になります。返還の細かい条件は JASSO の申込みの案内で確かめ、必要な額に合う方を選んでください。第二種奨学金は、どちらとも併用できます。

働きながら大学院に通う場合の費用は?

JASSO の調査では、修士課程の社会人学生の学費は年 1,007,500 円(授業料 703,800 円)で、収入は本業が 3,861,300 円(91.7%)でした。ただし、社会人学生は住居や生活の形が人によって大きく違い、調査の平均は生活費が年 1,743,400 円と、一般の学生より大きくなっています。勤務先の支援や教育訓練給付の有無は、勤務先と大学に確かめてください。