厚生労働省は 2026 年 10 月 23 日に、令和 5 年(2023 年)3 月に卒業して就職した人の離職の状況を公表しました。大学を卒業して就職した人のうち、3 年以内に最初の就職先を離れた人は 31.2% で、前年(令和 4 年 3 月卒)の 33.8% より 2.6 ポイント低くなりました(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)を公表します」2026 年 10 月 23 日)。これから就職活動をする大学生と保護者に向けて、数字の中身と、会社ごとに確かめる方法を、国の資料で確かめてまとめます。

令和 5 年 3 月卒の結果は、大学卒 31.2%

発表では、就職後 3 年以内の離職率は次のとおりです。年目ごとの内訳は、別添の表「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」によります。

卒業した学校3 年以内1 年目2 年目3 年目前年との差
大学卒31.2%11.0%10.9%9.3%2.6 ポイント低下
短大等卒43.1%18.4%13.2%11.5%1.4 ポイント低下
高校卒36.9%17.4%11.0%8.5%1.0 ポイント低下
中学卒54.5%34.0%13.0%7.6%0.4 ポイント上昇

(厚生労働省の発表と別添の表、2026 年 10 月 23 日)

大学卒は、別添の表で就職者 456,908 人のうち 142,415 人が 3 年以内に離職したことになります。およそ 10 人のうち 3 人です。年目ごとに見ると、1 年目から 3 年目までほぼ同じ程度で、高校卒や短大等卒のように 1 年目に集中してはいません。ただ、辞めた理由は、資料には書かれていません。

就職後 3 年以内の離職率の令和 5 年 3 月卒の結果を 1 枚にまとめた図。大学卒 31.2%、短大等卒 43.1%、高校卒 36.9%、中学卒 54.5%と年目ごとの内訳、大学卒の事業所の規模別と産業別の離職率の棒グラフ

図: 就職後 3 年以内の離職率(作成: 大学カタログ編集部 / もとの資料: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)を公表します」と別添の表)

事業所の規模と産業で、離職率はここまで違う

大学卒の 3 年以内の離職率は、働く事業所の規模と産業で大きく違います。発表の数字は次のとおりです(かっこ内は前年との差)。

事業所の規模大学卒の 3 年以内離職率
5 人未満58.2%(0.7 ポイント上昇)
5〜29 人50.6%(1.4 ポイント低下)
30〜99 人39.7%(2.2 ポイント低下)
100〜499 人31.7%(2.2 ポイント低下)
500〜999 人29.0%(2.5 ポイント低下)
1,000 人以上24.2%(2.8 ポイント低下)

(厚生労働省の発表、2026 年 10 月 23 日)

産業別では、離職率の高い上位 5 産業が発表に載っています。「その他」は除いた数字です。

産業大学卒の 3 年以内離職率
宿泊業、飲食サービス業49.9%(5.5 ポイント低下)
生活関連サービス業、娯楽業49.8%(4.9 ポイント低下)
教育、学習支援業42.3%(1.9 ポイント低下)
医療、福祉39.1%(1.7 ポイント低下)
小売業38.1%(2.3 ポイント低下)

(同上)

低いほうは発表に載っていないので、別添の表(新規大学卒業就職者の産業別離職状況)の離職者数を就職者数で割って計算しました(編集部の計算・小数第 1 位に四捨五入)。電気・ガス・熱供給・水道業が 11.8%、製造業が 18.8%、金融業・保険業が 21.5%、情報通信業が 25.5% です。就職者が最も多い医療、福祉は 69,844 人で、離職率は 39.1% でした。

規模の大きい事業所ほど離職率が低い傾向は、表から読み取れます。一方で、なぜ規模や産業で差が出るのかは、発表と別添の資料に説明がありません。賃金、労働時間、仕事の内容、配属の仕組みなど、思いつく理由はいくつもありますが、この統計だけでは確かめられません。同じ産業の中にも離職率の低い会社と高い会社があるはずです。産業や規模は、会社を調べはじめる前の手がかりにとどめ、決め手にしないほうが安全です。

この数字を会社選びに使うときの注意

数字の読み方で、資料に書かれていることを 3 つ確かめておきます。

  • 雇用保険の記録から出した数字です。 厚生労働省は「事業所からハローワークに対して、雇用保険の加入届が提出された新規被保険者資格取得者の生年月日、資格取得加入日等、資格取得理由から学歴ごとに新規学卒者と推定される就職者数」を出し、離職日から離職者数を出しています(厚生労働省「資料出所及び離職率の集計の考え方」)。アンケートではなく、新卒者と推定した人の記録です。
  • 離職の理由は問いません。 令和 5 年 3 月卒の大学卒の場合、令和 5 年 3 月から 6 月までに新規学卒として雇用保険に加入した人のうち、令和 8 年 3 月 31 日までに、その事業所を離れた人を離職者とします。資料には「離職理由や離職後の就業の状態に関わらず離職者として算出している」とあります。転職した人も、進学や留学のために辞めた人も、病気で辞めた人も、同じように数えられます。
  • 会社ごとの数字ではありません。 全国の就職者の集計です。規模別の「事業所」も、雇用保険の適用事業所設置届を出している事業所のことで(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」)、会社全体の規模とは限りません。

また、この数字は 2023 年 3 月に卒業した人の結果です。これから就職する人が働きはじめるのはもっとあとなので、同じ割合になる保証はありません。「離職率が低い会社に入れば安心」「高い会社は避ける」と決めるための数字ではなく、離職を数字で見るときの目安として使います。

会社ごとに確かめる 3 つの方法

気になる会社の離職の状況は、国の制度で確かめられます。

会社ごとの離職の状況を確かめる 3 つの方法を 1 枚にまとめた図。会社に青少年雇用情報を求める、しょくばらぼで比べる、ユースエール認定の企業を見るの 3 つと、その調べ方と基準

図: 会社ごとに確かめる 3 つの方法(作成: 大学カタログ編集部 / もとの資料: 厚生労働省「職場情報の提供制度」「ユースエール認定制度」、しょくばらぼ、青少年の雇用の促進等に関する法律)

1. 会社に「青少年雇用情報」を求める

青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法)では、新卒として募集する会社などは、卒業見込みの学生に対し、青少年雇用情報を提供するように努めなければならず、募集に応じようとする学生が求めたときは、提供しなければなりません(同法第 13 条・e-Gov 法令検索で 2026 年 10 月 23 日に確認)。厚生労働省の「職場情報の提供制度」のページでは、提供される項目を次のように示しています。

分野項目
募集・採用の状況直近 3 事業年度の新卒採用者数・離職者数、新卒採用者数の男女別人数、平均勤続年数
職業能力の開発・向上の取組研修の有無と内容、自己啓発支援、メンター制度、キャリアコンサルティング制度、社内検定等の制度
職場定着の取組前事業年度の月平均所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業の取得対象者数・取得者数(男女別)、役員と管理的地位にある者に占める女性の割合

(厚生労働省「職場情報の提供制度」)

このうち「直近 3 事業年度の新卒採用者数・離職者数」と「平均勤続年数」は、その会社に新卒で入った人の実態を見る情報です。全国の統計と違い、会社ごとの数字で確かめられます。

求め方も同じページにあります。会社が公表していない場合は、プレエントリーしたうえで、氏名・連絡先・所属学校名と在学年(または卒業年月)・情報提供を希望する旨を、メールか書面で会社に伝えます。説明会や面接の場では、「情報提供を希望する」ことだけを口頭で伝えてもかまいません。国の指針では、情報提供を求めたことを理由に不利益な取扱いをしないこととされています(厚生労働省「若者の募集・採用等を行う際は若者雇用促進法に基づく指針を確認してください」)。もらった情報を SNS などに投稿しないよう、同ページは注意しています。

2. 「しょくばらぼ」で調べる

厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」は、残業時間や有給休暇取得率、平均年齢などの職場情報を検索・比較できるサイトです。掲載企業数は 2026 年 10 月 1 日時点で 152,380 件です(しょくばらぼ「しょくばらぼについて」「トップ」)。トップページには「新卒向け」などの区分があり、企業を比べられます。載っているのは、情報を登録した企業です。気になる会社が載っていなければ、1 の方法で会社に求めます。

3. 「ユースエール認定」の企業を見る

ユースエール認定は、若者の採用・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業(常時雇用する労働者が 300 人以下)を、厚生労働大臣が認定する制度です。認定の要件には、直近 3 事業年度の新卒者などの離職率が 20% 以下であること、前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が 20 時間以下であること、有給休暇の取得率が平均 70% 以上か年間取得日数が平均 10 日以上であることなどがあります(厚生労働省「ユースエール認定制度」)。採用者数が少ない場合の扱いも決まっています。直近 3 事業年度の採用者数が 3 人または 4 人なら、離職者が 1 人以下であれば基準を満たします。

認定は中小企業が対象で、会社が申請して認められるものです。大企業はこの制度の対象ではなく、認定がない会社の離職が多いとは言えません。また、ユースエールの離職率は会社ごとに出す数字で、この記事の統計と数え方が同じとは資料に書かれていません。数字を並べて優劣をつけず、確かめる手がかりとして使います。

大学のキャリアセンターで聞けること

数字からは、辞めた理由までは分かりません。理由に近いことは、その会社で働く卒業生に聞くのが確かです。たとえば関西大学のキャリアセンターは、2025 年 4 月から OB・OG 訪問ネットワークサービス「ビズリーチ・キャンパス」と連携し、連絡先を開示せずに専用アプリ内で卒業生に訪問を依頼できるようにしています。キャリアセンターのスタッフと 1 対 1 で話す「キャリア相談」もあります(関西大学キャリアセンター「OB・OG訪問」)。大学によって仕組みは違うので、自分の大学のキャリアセンターのページで、卒業生に会える方法を確かめてください。大学は大学の一覧から探せます。

次にやること

就職活動の日程は、就活の時期と動き方の記事で確かめられます。そのうえで、気になる会社が出てきたら、次の順に進めます。

  1. しょくばらぼで、その会社の職場情報を見る。
  2. 載っていない項目や、新卒の採用者数と離職者数、平均勤続年数は、会社説明会やプレエントリーのときに青少年雇用情報として求める。
  3. 数字で気になったことは、大学のキャリアセンターや OB・OG、説明会の社員に、辞める理由や働き方を直接聞く。

よくある迷い

離職率が高い産業は避けたほうがよいですか。

産業別の数字は産業全体の平均です。同じ産業の中でも会社によって状況は違います。資料も、産業や規模で差が出る理由を示していません。産業の数字だけで選ばず、会社ごとの情報で確かめるのが確実です。

3 年以内に辞めるのは、よくないことですか。

資料は、辞めた理由を問わず数えています。転職や進学、病気など、人によって事情はさまざまです。国の発表は、辞めることの良し悪しを判断するものではありません。自分に合う職場かどうかを、入る前によく確かめる材料としてください。

青少年雇用情報を求めると、選考で不利になりませんか。

国の指針は、事業主に対し、情報提供を求めたことを理由とする不利益な取扱いをしないよう求めています(厚生労働省の指針の資料)。それでも不安なときは、説明会や面接で口頭で求める方法や、大学のキャリアセンターに相談する方法があります。

離職率が低ければ、働きやすい会社ですか。

離職率は、辞めた人の割合を表すだけです。働き方の中身は、月平均所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、研修の有無など、青少年雇用情報の他の項目も合わせて確かめてください。