図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 2
2 年: 設計の基本を学ぶ
設計製図の課題が本格的に始まる 1 年です。住宅や小さな集合住宅の案をエスキスで練り、図面と模型にまとめて講評会で発表します。建築計画や構造力学、環境工学の講義が、その設計を支えます。

ひとことで言うと
練習試合と、そのあとの振り返り
部活の練習試合のあと、監督や仲間と動画を見返すと、次に何を直せばよいかが分かります。設計製図も同じです。エスキスで案を見てもらい、講評会で意見をもらうたびに、案が少しずつ良くなっていきます。

01
設計製図: 半年かけて 1 つの建物を仕上げる
2 年になると、設計製図が学びの中心になります。東京理科大学では、設計製図 1・2 が 2 年の必修です。信州大学の 2 年後期の「建築・デザイン工学設計製図Ⅱ」(2026 年度)は、金曜の 3〜5 限に続けて開かれます。前半で住宅、後半でオフィスを設計します。
早稲田大学の 2 年後期の「設計製図Ⅰ」は、本格的な建築設計の入口と位置づけられ、半期をかけて段階的に進みます。課題は 3〜5 世帯の集合住宅です。学年を 45 人ほどのグループ 4 つに分け、数人の教員が指導します。
課題では、敷地と使う人の条件が示されます。誰がどう暮らすのか、敷地のまわりに何があるのかを読み、部屋の並びや光の入り方を考えます。頭の中のアイデアが図面と模型になっていくのは、設計製図ならではの手ごたえです。
図解2 年の設計の課題(例)
信州大学
- 2 年後期・金曜の 3〜5 限
- 前半は住宅、後半はオフィス
- 課題ごとに講評会で発表
早稲田大学
- 2 年後期の設計製図Ⅰ
- 3〜5 世帯の集合住宅
- 45 人ほどの 4 グループで指導


02
エスキスと講評会: 案が磨かれていく
設計の授業では、案のスケッチや模型を教員に見せ、助言を受けながら進めます。この回を「エスキス」と呼びます。信州大学の設計製図Ⅱでは、住宅の課題だけでエスキスが 4 回あります。
回を追うごとに、検討する図が増えていきます。1 回目はテーマとゾーニング(部屋の大まかな配置)、2 回目は建物の配置と平面、3・4 回目は断面と立面まで進みます。毎回の授業の最後に次の回までの課題が出て、次の回にその出来を確かめます。
最後は講評会です。図面と模型を並べて発表し、教員から意見を受けます。信州大学の評価の基準は、提案があること、図面と模型が正確なこと、独創的で敷地に合うこと、表現が魅力的なことの 4 つです。それに加えて「全体的に教員を感心させるレベル」なら、最も高い評価になります。
講評では、厳しい指摘を受けることもあります。指摘は人ではなく案に向けられたものです。メモを取り、次のエスキスで 1 つずつ直していくと、講評を重ねるほど案が良くなります。
図解エスキスのくり返し(住宅の課題で 4 回)
- 1テーマを決める何を大事にするかを 1 文で
- 2ゾーニング部屋の大まかな配置を描く
- 3図面と模型平面・断面・立面で確かめる
- 4エスキス教員に見せて助言を受ける
- 5直す次の回までに 1 つずつ


03
設計を支える講義と実験: 測って確かめる
2 年は、設計を支える講義も増えます。東京理科大学の 2 年の必修には、建築計画Ⅱ・都市デザイン・建築構造力学 2・建築環境工学 1・建築設備・建築施工 1・建築法規が並びます。設計の課題で出てきた疑問に、講義が答える関係です。
早稲田大学の 2 年には「建築工学実験」があり、施工・構造・測量・環境の 4 つから 1 つのコースを選びます。構造のコースでは、鉄筋コンクリートの梁の性質を調べ、骨組みの模型を揺らして振動の特性を確かめ、実際の建物の揺れも測ります。
測量のコースでは、キャンパスを実際に測ります。人工衛星を使う GPS、光で距離を精密に測る光波距離計、建物の配置を 3 次元で測るトータルステーション、3 次元スキャナーを使います。図面の 1 本の線が現実のどこにあたるのかを、自分の手で確かめる練習です。
講義と実験で確かめた知識が、設計の課題の案を支えます。
図解建築工学実験の 4 つのコース(早稲田大学)
- 施工木・コンクリート・鉄を JIS の方法で試す
- 構造梁の性質や、骨組みの揺れを調べる
- 測量GPS や 3 次元スキャナーで測る
- 環境室内の空気や光、災害時の避難

04
提出前の製図室: 図面と模型を仕上げる
設計の課題は、授業の時間だけでは終わりません。提出が近づくと、授業のあとも製図室に残って図面を描き、模型をつくる日が続きます。
製図室は、学生どうしが学び合う場所でもあります。神奈川大学の建築の学生誌『RAKU』vol.20 は、「製図室は自由の地」という特集を組んでいます。24 時間開放された製図室で、学生が議論し、図面を描いて互いに磨き合ってきた歴史を紹介しています。同じ特集は、感染症の流行でその環境が一変したことも伝えています。
徹夜を続けると、体調を崩して講評会で力を出せません。エスキスの段階で案を早めに固め、模型の材料や印刷の段取りを前もって決めておくと、提出前の作業がぐっと楽になります。
図解提出前日の 1 日(例)
- 9:00講義構造力学の授業に出る
- 13:00製図平面図と断面図を清書する
- 16:00模型外壁と屋根を切り出して組む
- 19:00夕食同級生と模型を見せ合う
- 21:00仕上げ模型の写真を撮り、配置を整える
- 23:00帰宅印刷は翌朝、提出は昼まで

05
つまずきやすい点と乗り越え方
2 年でつまずきやすいのは、案がなかなか決まらないことです。何案も考えるうちに時間がなくなり、図面と模型の時間が足りなくなります。エスキスのたびに良い点と直す点を 1 枚にまとめ、次の回までに直す点を 1 つに絞ると前に進めます。
構造力学の計算で迷う人もいます。梁にかかる力は、高校の物理で学んだ力のつり合いと力のモーメントが出発点です。分からない式が出たら、物理の教科書の該当する章に戻ると、つながりが見えてきます。
講評で厳しい意見を受けて、落ち込むこともあります。同級生の作品の講評も聞き、ほかの人の案のどこが評価されたかを知ると、自分の案を直すヒントになります。
高校生のうちに試せること
歩幅で校舎の長さを測る
10 歩で進んだ距離をメジャーで測り、1 歩の長さを出しましょう。その歩幅で校舎の端から端までを歩けば、おおよその長さが分かります。学校の配置図があれば、図面の長さと比べてどのくらい合っているかを確かめます。
家の間取りに動線を描き込む
自分の家の間取りを方眼紙に描き、朝起きてから家を出るまでの動き(動線)を色ペンで描き込みましょう。家族の線が何度も交わる場所は、間取りを考え直すヒントになります。
家族に聞いて「使う人の条件」をつくる
家族に、今の家で困っていることと、こうだったらいいなと思うことを聞き、1 枚のメモにまとめましょう。設計の課題で最初に読む「使う人の条件」を、自分でつくる練習になります。
「2 年: 設計の基本を学ぶ」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 41 件から探せます。

建築設計学
岡山大学(岡山県)
工学部 環境・社会基盤系 都市環境創成コース・建築設計・川西 敦史 准教授
変化する暮らしや働き方に応じた建築空間と設計手法を考え、地域に根ざした建築デザインを実践する。

建築計画研究室
横浜国立大学(神奈川県)
都市科学部 建築学科・建築計画・藤岡泰寛 教授
住宅や施設、まちの空間の使われ方を考え計画に生かす。
建築計画学講座
神戸大学(兵庫県)
建築学
藤本研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 土木建築学科 建築学教育プログラム・建築意匠・建築設計・藤本 章子 助教
建築設計学分野
京都大学(京都府)
工学研究科建築学専攻・建築設計学
大西研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 土木建築学科 建築学教育プログラム・建築情報・建築設計・大西 康伸 教授
BIMやVR、自動設計などデジタル技術を使った設計の方法を研究する。
よくある質問
建築計画と設計製図は、何が違いますか?
建築計画は、使う人の動きや部屋の広さなど、設計の根拠になる考え方を学ぶ講義です。設計製図は、それを使って実際に建物の案をつくり、図面と模型にまとめる演習です。東京理科大学では、2 年で両方が必修です。
1 つの設計の課題に、どのくらい時間をかけますか?
大学によって異なります。信州大学の 2 年後期の設計製図Ⅱは、半期で住宅とオフィスの 2 つの課題に取り組みます。早稲田大学の 2 年後期の設計製図Ⅰは、半期をかけて 1 つの集合住宅の課題を段階的に進めます。


