図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 1
1 年: 建築の全体を知る
建築学入門や建築史、数学と物理で建築学の全体を見渡しながら、デッサン・製図・模型づくりで「見て、描いて、つくる」練習を始める 1 年です。

ひとことで言うと
初めての街では、まず地図を広げる
初めての街では、地図で駅や大通りの位置をつかんでから歩くと迷いません。建築学の 1 年も同じです。計画・構造・材料・歴史といった分野の位置をつかみ、2 年から始まる設計の課題で、自分の足で歩き回る準備をします。

01
1 年の科目: 建築学の地図を手に入れる
東京理科大学の建築学科は、1 年のテーマを「建築学の全体像を把握する」としています。1 年の必修には、建築学入門・近現代建築史・建築計画 1・建築構造力学 1・建築材料 1・建築防災概論が並びます。計画・構造・材料・防災という主な分野に、1 年のうちにひと通り触れる組み立てです。
早稲田大学の建築学科では、「建築と建築工学」「建築・都市と環境」「建築と社会」が 1 年の必修です。どれも複数の教員が交代で話すオムニバス形式で、すべての教員の専門と建築との関わりを学びます。
数学と物理も、1 年の大事な柱です。東京理科大学では数学・物理学・線形代数学が 1 年の必修で、構造力学や環境工学の計算の土台になります。分野の全体が見えてくると、街の建物を見たときに、誰が何を考えてこの形にしたのかを想像できるようになります。
1 年の科目は、2 年から本格的に始まる設計製図の課題を支える土台になります。
図解1 年で学ぶ専門の科目(例)
- 建築学入門建築学の分野をひと通り知る
- 近現代建築史近代から今までの名作を知る
- 建築計画使う人と部屋の関係を考える
- 構造力学柱や梁にかかる力の入口
- 建築材料木・鉄・コンクリートの性質
- 数学・物理構造や環境の計算の土台

02
デッサンと製図: 見たものを正確に描く
建築学科の 1 年では、手で描く練習が始まります。名古屋大学の建築学プログラムの「造形演習第1」(2026 年度・選択)は、鉛筆デッサンから始まります。続いて「箱の 6 態」や「この椅子であってこの椅子でないもの」といった課題に取り組み、最後はグループで作品をつくって発表します。
早稲田大学の 1 年の「建築表現Ⅰ」では、キャンパスを観察してデッサンし、国内外の代表的な建築物の図面を写します。平面図や立面図の描き方に加え、CAD を使った製図の基礎もここで学びます。
製図の基本は、立体を決まった方法で紙に表すことです。信州大学の 1 年の「設計基礎Ⅰ」(2026 年度)は、基準線とグリッドから始めます。続いて平面図・立面図・断面図、アイソメ図、透視図(パース)へと進みます。採点の基準には、線の種類の使い分けや、汚れのないきれいな仕上げが挙がっています。
アイソメ図は、立体を斜め上から見た形を、縦・横・奥行きの長さが測れるように描く図です。透視図は、遠くの物ほど小さく描き、人の目に見えるとおりに表します。奥へ向かう線が 1 つの点に集まるのが 1 点透視、2 つの点に集まるのが 2 点透視です。
図解立体を図に表す練習の順番(信州大学の例)
- 1基準線・グリッド図面の骨組みになる線を引く
- 2平面図水平に切って上から見る
- 3立面図・断面図外から見る・縦に切って見る
- 4アイソメ図立体を斜め上から表す
- 5透視図(パース)人の目に見えるとおりに描く
- 6発表描いた図を並べて説明する

03
名作の図面を写して、模型にする
図面を読んで模型にする力は、名作を写すことで身につけます。早稲田大学の 1 年の「建築表現Ⅱ」では、2 つの建物の図面を写し、そこから模型や CG をつくります。1 つはフィンランドの建築家アルヴァ・アアルトが設計したセイナッツァロの町役場、もう 1 つは今井兼次が設計した大多喜町役場です。
模型は、決まった縮尺でつくります。縮尺が 1/100 なら実物の 1 m が 1 cm、1/50 なら 2 cm です。部屋の模型に同じ縮尺の人の模型を置くと、天井の高さや通路の幅がちょうどよいかを目で確かめられます。
早稲田大学の 1 年には「設計演習 A」もあります。建築や都市を見る・測る・記述する演習で、教員ごとのスタジオを 3 週ずつ回り、その日のうちに仕上げる即日課題を原則にしています。自分の手で測って描くと、写真だけでは分からない寸法の感覚が身につきます。
図解縮尺の計算(例)
- 11/100 の図面: 部屋は 3.6 cm × 2.7 cm
- 21/50 の模型: 部屋は 7.2 cm × 5.4 cm
- 31/50 の模型: 人は 3.4 cm


04
1 年生の 1 週間(例)
下の図は、建築学科の 1 年生の 1 週間の例です。数学・物理・英語などの講義に、建築学入門や建築史、製図やデッサンの演習が加わります。実際の科目や曜日は大学によって異なります。
演習の課題は、授業の時間内に終わらないこともあります。信州大学の「設計基礎Ⅰ」は、毎回の授業の最後に次の回につながる課題を出し、次の回で理解の度合いを確かめる進め方です。空きコマや放課後に課題を進める時間も、時間割と一緒に考えておくと安心です。
週末に、課題のために建物を見に行く人もいます。図面で見た建物の中を歩くと、天井の高さや光の入り方が、紙の上とは違って感じられます。
図解1 年生の 1 週間(例)
- 月建築学入門・数学計画・構造・環境の話を順に聞く
- 火物理学・英語力のつり合いを式で表す
- 水製図の演習平面図と断面図を描き分ける
- 木建築史・線形代数近代の名作の図面を見る
- 金造形・デッサン鉛筆で立体の陰影を描く
- 土・日課題・建物見学模型の続きと、街の建物の観察

05
つまずきやすい点と乗り越え方
1 年でつまずきやすいのは、頭の中の立体を紙に描くことです。平面図と断面図を見比べても形が浮かばないときは、厚紙で簡単な模型をつくってから描くと、図と立体の対応がつかめます。
「絵が苦手でも大丈夫か」と心配する人もいます。デッサンや製図は、入学してから基礎を学ぶ科目です。信州大学の設計基礎Ⅰの採点の基準も、線の種類の使い分けやレイアウト、仕上げのていねいさで、画家のような上手さではありません。
数学と物理でつまずく人もいます。構造力学の式が分からなくなったら、高校の物理で学んだ力のつり合いに戻ると、大学の式とのつながりが見えてきます。
高校生のうちに試せること
自分の部屋を測って平面図を描く
メジャーで部屋の壁の長さと、窓やドアの位置を測り、方眼紙に 1/50 の平面図を描きましょう。1 m が 2 cm です。家具も同じ縮尺で描き込むと、通路の幅が足りているかが分かります。
厚紙で部屋の模型をつくる
描いた平面図をもとに、厚紙で 1/50 の部屋の模型をつくりましょう。3.4 cm の人の形を置くと、身長 170 cm の人から見た天井の高さや窓の大きさが実感できます。カッターは、カッターマットの上で使いましょう。
早稲田大学の「空間表現」の問題を見る
早稲田大学の建築学科は、一般選抜で「空間表現」という描く試験を課しています(この学科だけの科目)。入学センターのサイトで 2026 年度の問題が公開されているので、どんな力が問われるかを見てみましょう。
2026 年度の入試問題(早稲田大学)高校生向けの建築設計競技に挑戦する
日本大学の 4 学部が開く「日本大学全国高等学校・建築設計競技」は 1953 年に始まり、2026 年度で第 73 回でした。高校生が個人で応募でき、A1 の用紙 1 枚に配置図・平面図・断面図などをまとめます。2026 年度の締め切りは 8 月 31 日でした。
2026 年度の募集要項(日本大学)
「1 年: 建築の全体を知る」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 37 件から探せます。
吉武研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 土木建築学科 建築学教育プログラム・西洋建築史・吉武 隆一 准教授
古代ギリシアやヘレニズム期の建築を研究する。

建築意匠学研究室
九州大学(福岡県)
都市・建築学・末廣 香織 教授
藤本研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 土木建築学科 建築学教育プログラム・建築意匠・建築設計・藤本 章子 助教

都市・建築史研究室
九州大学(福岡県)
都市・建築学・堀 賀貴 教授

建築史・意匠学
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 建築学プログラム・建築学・水田 丞 准教授
平和建築・都市デザイン、景観デザイン、近代建築史などを研究している。

建築デザイン系 (AD系)
横浜国立大学(神奈川県)
都市科学部 建築学科・建築意匠・建築デザイン・西沢立衛 教授
建築から都市までのデザインを扱い、大学院ではY-GSAで建築家を育てる。
よくある質問
1 年から設計の授業はありますか?
多くの大学では、1 年はデッサンや製図の基礎、名作の図面を写す練習が中心で、2 年から本格的な設計製図の課題に進みます。早稲田大学のように、1 年に即日課題の設計演習を置く大学もあります。
1 年で CAD は使いますか?
大学によって異なります。早稲田大学の 1 年の「建築表現Ⅰ」では、手で描く製図と一緒に、CAD を使った製図の基礎も学びます。信州大学の設計基礎Ⅰのように、製図の道具の使い方から始める授業もあります。
デッサンをしたことがなくても大丈夫ですか?
大丈夫です。名古屋大学の造形演習第1は、鉛筆デッサンから始まります。この授業の目標は、自分の目で観察し、自分の頭で考え、発見したことを自分の手で表現することです。



