図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 3
3 年: 実験と本格的な設計
設計の課題は学校のような規模の大きな建物になり、構造・環境・設備まで考えて図面にまとめます。コンクリートを練って壊す材料の実験も始まり、後期から進む分野を選ぶ大学もあります。

ひとことで言うと
文化祭の企画を、本番まで詰める
文化祭の出し物は、アイデアだけでは形になりません。予算や教室の広さ、安全の決まり、当日の人の流れまで考えて、初めて実現します。3 年の設計も同じで、意匠に加えて構造・設備・法規まで考え合わせ、実際に建てられる案に近づけていきます。

01
設計製図: 出身小学校を、もう一度設計する
3 年の設計の課題は、使う人が多く、機能も複雑な建物になります。早稲田大学の 3 年の「設計製図Ⅱ」では、アートと作家をテーマにした課題と、学校建築の課題に取り組みます。指導には専任の教授に加えて、第一線で活躍する建築家が非常勤講師として加わります。東京理科大学でも、設計製図Ⅲが 3 年の必修です。
同じ 3 年の「設計製図Ⅲa」では、各学生の出身小学校を敷地にして、これからの小学校を設計する「ハイパースクール」の課題が出題されています。自分が通った場所を、建築を学んだ目でもう一度見直す課題です。
もう 1 つの「設計製図Ⅲb」は、意匠に加えて構造・環境・設備・生産を総合する課題です。避難の計画や室内の環境を検討し、建物の一部の構造を計算して構造図を描きます。図面は鉛筆で描いて青焼きにし、手で描くことで図面に集中する力を養います。
3 年の設計は、それまでに学んだ分野を 1 つの建物にまとめる練習です。
図解3 年の設計製図(早稲田大学の例)
設計製図Ⅲa
- 計画・デザインを志す人向け
- 都市的で複合的な建物
- 出身小学校の敷地に小学校
設計製図Ⅲb
- 構造・環境・設備・生産を総合
- 避難の計画と構造の計算
- 鉛筆で描いて青焼きで提出

02
実験: コンクリートを自分で練って壊す
3 年は実験が増える学年です。東京理科大学の履修モデルは 3 年を「徹底した実験実習教育」の学年とし、建築材料実験と建築環境実験 1 を必修にしています。構造実験や材料防災実験も選択必修です。
日本文理大学の建築材料実験(2025 年度・2 年後期)では、班ごとに水とセメントの割合(水セメント比)を変えてコンクリートを練ります。練るのは機械を使わず、人の力です。固まる前にスランプ試験で流れやすさを調べ、練ってから 28 日目(材齢 28 日)に押しつぶして強さを測ります。
鉄筋を組んで型枠をつくり、鉄筋コンクリートの梁も自分たちで打ちます。最後は梁を曲げて壊し、調合や鉄筋の違いで強さがどう変わるかを比べます。教科書の数字が、自分で練ったコンクリートの割れ方として目の前に現れます。実験を置く学年は大学によって異なり、日本文理大学のように 2 年で行う大学もあります。
図解コンクリートの実験の流れ(日本文理大学の例)
- 1骨材を調べる砂と砂利の粒の大きさを測る
- 2調合を決める水セメント比を班ごとに変える
- 3練って打つ人の力で練り、型枠に流す
- 4スランプ試験固まる前の流れやすさを測る
- 528 日後の試験押しつぶして強さを測る
- 6梁の曲げ試験鉄筋コンクリートの梁を壊す


03
構造と設備の図面: 見えない部分を描く
3 年は、建物を実際に建てるための知識も深めます。東京理科大学では、鉄骨構造と鉄筋コンクリート構造が 3 年の必修です。柱や梁をどんな材料で、どんな形に組むかを学びます。
早稲田大学の 3 年の「建築構造製図」では、実在する中規模の建物を題材に、鉄筋コンクリート造と鉄骨造の構造図を学びます。授業時間中に、平行定規を使って A2 判のケント紙に描きます。設計全体の中での構造設計の役割を理解し、正確に伝わる図面の描き方を身につける授業です。
「環境設備製図」では、空調や衛生などの設備を初歩から設計して図面にします。ダクトや配管、設備の機械は建物の見えない部分に置かれることが多く、講義だけでは分かりにくいため、設備の機械室も見学します。ふだん見えない部分の設計の出来が、建物の質や使い勝手を大きく左右します。
図解1 つの建物を描き分ける図面(例)
- 間取りと仕上げ人が見て触れる部分。意匠の図面
- 設備空調のダクトや配管の通り道
- 骨組み柱・梁・床と鉄筋。構造の図面


04
コース選びとコンペ: 自分の得意を見つける
3 年は、進む分野を考える時期でもあります。東京理科大学では、3 年の後期から計画・設計系、構造系、環境系、材料・防災系の 4 コースに分かれます。4 年の研究室選びにもつながる選択です。
授業の外では、設計競技(コンペ)に挑戦する学生もいます。日本建築学会の 2026 年度の設計競技は、課題「新しい時代の住まい」に 388 作品の応募がありました。各地の支部の審査で 89 作品が入選し、全国の一次審査で入選候補が選ばれました。
全国の二次審査は公開で開かれ、入選候補の 12 作品が、1 作品 8 分(発表 4 分・質疑 4 分)で審査員に案を説明しました。入選候補には、学部生だけのチームの作品も並んでいます。授業の課題と違い、テーマを自分で読み解いて提案する経験になります。
図解3 年後期からのコース(東京理科大学の例)
- 計画・設計系建物と都市を設計する
- 構造系地震に耐える骨組みを考える
- 環境系熱・光・音・空気を整える
- 材料・防災系材料を知り、火災や災害に備える

05
つまずきやすい点と乗り越え方
3 年でつまずきやすいのは、設計の課題と実験のレポートの締め切りが重なることです。週ごとの締め切りを 1 枚の表にまとめ、実験のレポートは実験した週のうちに下書きを始めると、設計の時間を守れます。
構造や設備を考えるうちに、最初のアイデアが崩れてしまうこともあります。そのときは、案のどこがいちばん大事かを 1 文で書き出し、そこを残す形で構造や設備を組み直します。条件を満たしながらアイデアを守ることが、この学年の大きな練習です。
コースや分野の選び方に迷う人もいます。先輩の卒業設計や卒業論文の発表会に足を運ぶと、それぞれの分野で何をするのかが具体的に見えてきます。
高校生のうちに試せること
家の中の見えない設備を探す
家の天井や壁にある換気口や点検口、エアコンの配管の出口を探しましょう。ダクトや配管がどこを通っているかを想像して、間取り図に色ペンで描き込むと、設備の図面の考え方が分かります。
ストローで骨組みをつくって押してみる
ストローとモールで柱と梁だけの骨組みをつくり、横から指で押して変形を見ましょう。次に、斜めの材(筋かい)を足して同じように押すと、どれだけ変形しにくくなるかが分かります。
コンクリートの表面を観察する
通学路の塀や建物で、打ちっぱなしのコンクリートの表面を観察しましょう。型枠の板の継ぎ目の跡や、小さな穴の数を見比べると、固まる前のコンクリートを型枠に流し込んでつくったことが分かります。
「3 年: 実験と本格的な設計」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 63 件から探せます。
建築材料学
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 建築学プログラム・建築学・森 拓郎 教授
木質材料、木質ラーメン構造、中大規模木造などを研究している。

健康建築環境学研究室
九州大学(福岡県)
都市・建築学・尾崎 明仁 教授
建築環境工学講座
神戸大学(兵庫県)
建築学

コンクリート構造設計学
岡山大学(岡山県)
工学部 環境・社会基盤系 都市環境創成コース・コンクリート工学・綾野 克紀 教授
コンクリート構造物の診断・補修技術や、副産物を活用した高性能コンクリートの開発を行う。
黒岩研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 土木建築学科 建築学教育プログラム・建築構造・黒岩裕樹 准教授
空間構造の設計や接合部のリユース、版築壁、耐火設計などを研究する。

都市・建築環境学
岡山大学(岡山県)
工学部 環境・社会基盤系 都市環境創成コース・建築環境工学・鳴海 大典 教授
快適な都市環境と環境負荷の低減を両立するエネルギーシステムとその使い方を研究する。
学生団体・機関はまだ掲載していません
よくある質問
3 年で研究室は決まりますか?
大学によって異なります。東京理科大学では、3 年の後期から 4 つのコースに分かれ、4 年で研究室に所属して卒業研究に取り組みます。
設計が得意でなくても、建築学科でやっていけますか?
建築学には、構造・環境・材料など、設計の課題とは違う形で力を発揮できる分野が多くあります。東京理科大学のように、3 年から構造系や環境系、材料・防災系のコースを選べる大学もあります。

