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図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 3

理科の先生・博物館

中学・高校で理科を教えたり、博物館・動物園・水族館で標本や生き物を守り、展示や調査をしたりする仕事です。生き物の面白さを、次の世代や多くの人に手渡します。

博物館の吹き抜けにつるされた首長竜の骨格の下で、標本の引き出しを開ける学芸員、水槽の前で説明する飼育員、顕微鏡を囲む先生と生徒が 1 つの場面に集まる様子

ひとことで言うと

100 年後の人へ、手紙を残す

標本は、いつ、どこに、どんな生き物がいたかを未来に伝える手紙のようなものです。博物館の学芸員はその手紙を集めて守り、理科の先生や飼育員は、生き物を読み解く楽しさを今の人に伝えます。

01

どんな仕事?: 教室・博物館・動物園と水族館

生物学を学んだ人が「伝える」仕事に就く場所は、大きく 3 つあります。中学校・高校の教室、自然史系の博物館、そして動物園や水族館です。

法律では、動物園や水族館、植物園も博物館の仲間です。博物館法は、博物館を、資料を収集し、保管(育成を含む)し、展示する機関と定めています。生きた動物を育てることも、標本を守ることも、どちらも博物館の大切な仕事なのです。

博物館で専門の仕事をするのが学芸員です。資料の収集・保管・展示・調査研究にかかわる専門的な仕事を受け持つと、法律で決められています(博物館法)。動物園や水族館では、飼育員が毎日の世話と健康の管理を担い、来園者に生き物の姿を伝えます。

生き物を育てることも、標本を守ることも、博物館の仕事です。

図解生物学を伝える 3 つの場所

中学・高校

  • 理科・生物の授業を受け持つ
  • 観察や実験で「なぜ?」を育てる
  • 生物部などの顧問をする

自然史の博物館

  • 標本を集めて守る
  • 調査・研究をして論文を書く
  • 展示や観察会を企画する

動物園・水族館

  • 生きた動物を育てる
  • 繁殖や健康を管理する
  • 来園者に解説する
木の引き出しの中に、針で留められた甲虫の標本が種類ごとに整然と並んでいる
オランダの自然史博物館の収蔵庫にある、甲虫の標本の引き出し。研究者は、たくさんの標本を見比べて、種類の違いを確かめます。写真: Henk Caspers(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

02

標本は未来の研究の材料: 「いつ・どこで・だれが」を残す

国立科学博物館の動物研究部は、200 万点以上の動物の標本を持っています。体長 1 mm に満たないダニのプレパラートから、数 m のクジラの全身の骨格まで、ほとんどすべての動物の仲間がそろっています。その数は、毎年数万点ずつ増えています(国立科学博物館)。

標本は、ただの「物」ではありません。採った場所と日付、採った人を記したラベルがあってはじめて、研究に使える記録になります。何十年もあとの研究者が、昔の標本と今の標本を比べて、生き物のすむ場所の変化を調べたり、新しい種を見つけたりすることもあります。

標本を守るための建物もあります。茨城県つくば市にある国立科学博物館の自然史標本棟は、2011 年の春に完成しました。地震のときにも標本を守る免震のしくみを取り入れ、大きな液浸標本の部屋も備えています。展示室に並ぶのは、集めた標本のほんの一部です。

ラベルのついた標本は、100 年後の研究者にも使える記録になります。

図解押し葉標本のつくり方(例)

  1. 1採る根・茎・葉・花がそろった株を選ぶ
  2. 2記録する場所・日付・採った人をメモ
  3. 3押して乾かす新聞紙にはさみ、紙を替える
  4. 4台紙に留めるラベルをはって保管する
黄ばんだ台紙に、花と葉のついたユリの押し葉が留められ、右下に手書きのラベルと色見本が置かれている
ルクセンブルクの国立自然史博物館にある、カノコユリの押し葉標本。ラベルには、学名や採集の情報が書かれています。写真: Musée national d'histoire naturelle Luxembourg(CC BY 4.0・Wikimedia Commons)

03

標本が語る物語: フタバスズキリュウとサメの歯

1968 年、福島県いわき市の川岸で、首長竜の化石が見つかりました。見つけたのは、当時高校生だった鈴木直さんです。この化石はのちにフタバスズキリュウと呼ばれ、日本を代表する化石の一つになりました。

新しい種として学名がついたのは、発見から 38 年後の 2006 年です。学名のフタバサウルス・スズキイには、化石が見つかった地層(双葉層群)と、発見者の名字が入っています。国立科学博物館に展示されている標本は大人の個体で、全長は 6〜9 m と推定されています。

この化石には、もう一つの物語があります。化石と一緒に 80 個以上のサメの歯が見つかり、骨にも歯のかけらが刺さっていました。歯を詳しく調べた結果、少なくとも 6〜7 匹の大きさの違うサメに食べられていたことが分かりました(国立科学博物館)。1 つの標本から、白亜紀の海の食物連鎖が見えてくるのです。

1 つの標本が、遠い昔の生き物の暮らしまで教えてくれます。

クイズ標本と博物館のクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q1フタバスズキリュウの化石を 1968 年に見つけたのは?

  2. Q2フタバスズキリュウの化石と一緒に見つかったサメの歯は、およそいくつ?

  3. Q3法律(博物館法)で、博物館の仲間に入るのはどれ?

0 / 3 問に回答
博物館の天窓の下に、首の長い海の爬虫類の全身骨格が、泳ぐような姿でつるされている
国立科学博物館(東京・上野)の日本館にある、フタバスズキリュウの全身骨格の復元。泳ぐ姿で天窓の下につるされています。写真: Joyofmuseums(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

04

自然史博物館の学芸員の 1 日(例)

ここでは、自然史系の博物館で、昆虫を専門にする学芸員の 1 日の例を紹介します。

学芸員の仕事は、展示室の外にもたくさんあります。収蔵庫では、標本が虫やカビで傷まないように点検します。寄贈された標本を受け入れ、番号をつけてデータベースに登録するのも大事な仕事です。

週末には、親子向けの観察会や講座を開くこともあります。自分の研究で分かったことを、子どもにも伝わる言葉で話す。研究者と先生の両方の顔を持てるのが、学芸員の仕事の面白さです。

標本を守る、研究する、伝える。3 つの仕事がつながっています。

図解自然史博物館の学芸員の 1 日(例)

  1. 9:00収蔵庫の点検標本に虫やカビがいないか見る
  2. 10:00標本の登録寄贈された標本に番号をつける
  3. 12:00昼休み
  4. 13:00研究顕微鏡で昆虫の種類を調べる
  5. 15:00展示の準備次の企画展の解説文を考える
  6. 16:30問い合わせ対応見つけた虫の名前の質問に答える

05

免許と資格・向いている人

中学校・高校の理科の先生になるには、大学で教職課程の科目を取り、教育実習を経て教員免許を取ります。そのうえで、公立なら都道府県などの採用試験を受けます。生物学科で、中学・高校の理科の免許を取れる大学は多くあります。

学芸員の資格は、大学で博物館に関する科目の単位を修めると得られます(博物館法)。ただ、学芸員の募集は博物館ごとに行われ、人数も多くありません。自然史系の博物館では調査研究も学芸員の仕事なので、大学院で専門を深めてから応募する人もいます。

動物園や水族館の飼育員になるのに、決まった資格はありません。生物学や獣医学、水産学などを学んだ人が働いています。生き物の世話を毎日続けられる人、気づいたことを記録して人に伝えるのが好きな人に向いています。

教員免許と学芸員の資格は、在学中に両方を目指すこともできます。

高校生のうちに試せること

  • 押し葉標本をつくる

    採ってよい場所で草花を 1 本採り、新聞紙にはさんで重しをのせ、毎日紙を替えて乾かしましょう。台紙に留めて、採った場所・日付・自分の名前をラベルに書けば、立派な標本です。公園などには植物を採ってはいけない場所もあるので、必ず確かめましょう。

  • 自然史標本棟の見学スペースをのぞく

    茨城県つくば市の筑波実験植物園から入れる見学スペースでは、クジラやゾウなどの大きな骨格標本が収められている様子を、ガラス越しに見られます。入るには、植物園の入園料が必要です。

    自然史標本棟(国立科学博物館)
  • 全国の標本を検索してみる

    サイエンスミュージアムネットでは、全国の博物館や大学が持つ生き物の標本の情報を検索できます。好きな生き物の名前で探し、どこで採られた標本があるかを地図で見てみましょう。

    サイエンスミュージアムネット(国立科学博物館)

「理科の先生・博物館」に関連するコミュニティ

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よくある質問

理科の先生と学芸員、両方の資格を取れますか?

教職課程と博物館の科目の両方を開いている大学なら、在学中に両方を目指せます。取らなければならない科目が多くなるので、1 年生のうちに時間割の計画を立てておくと安心です。

動物園や水族館で働くには、どんな学部がよいですか?

生物学科のほか、獣医学部や水産学部、農学部の動物系の学科で学んだ人が働いています。動物の体のしくみや行動、病気の知識が生かせます。採用は園や館ごとに行われるので、志望する施設の募集を早めに確かめておくと安心です。

学芸員の資格を取れば、博物館に就職できますか?

資格は応募の条件の一つです。学芸員の募集は博物館ごとに行われ、人数は多くありません。在学中に博物館の実習やボランティアで経験を積み、専門の分野を深めておくことが大切です。