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図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 3

3 年: 実験と野外で確かめる

遺伝子組換えや細胞培養などの実験が週 2 日になり、臨海実習や野外実習で、海や山の生き物を自分の手で集めて調べる 1 年です。予定どおりにいかない自然の中で、生き物を見つけ、見分け、記録する力を身につけます。

夏の磯で潮だまりをのぞきこんでウニやヒトデを探す学生たち、海辺の実験所で顕微鏡をのぞく学生、雪の林で動物の足跡をたどる学生

ひとことで言うと

攻略本を読んだあとで、自分でプレーする

2 年までの講義は、ゲームの攻略本で地図や敵の動きを覚えるようなものでした。3 年の実験と野外実習は、自分でプレーする段階です。潮の時刻や天気、生き物の気まぐれで、攻略本どおりにいかない場面にたくさん出会います。

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3 年の科目: 実験が週 2 日、海や山へも

3 年では、専門の講義を選べるようになり、実験の時間が大きく増えます。東京理科大学の生命生物科学科の 3 年の応用生物科学実験 1 は、前期の火曜日と水曜日の 3〜5 限に行われます。哺乳類の細胞の培養、植物の細胞の観察、自然からの微生物の分離、遺伝子組換えなどを、数週間ずつ順に体験します。

講義では、神経や筋肉、ホルモンのはたらきを学ぶ生理学や神経科学など、専門の科目を選びます。科目の名前は大学によって異なります。学期中や休みの期間には、泊まりがけの臨海実習や野外実習で、海や山の生き物を自分の手で集めて調べます。

遺伝子組換えの実験は、遺伝子組換え生物の使い方を定めた法律の解説から始まります。組換えた生き物が、自然の生き物に影響を与えないための決まりです。決まりを学んでから手を動かすのが、3 年の実験の基本です。

講義で学んだしくみを、実験室と野外の両方で確かめる年です。

図解3 年で学ぶこと(例)

3 年の学び
  • 遺伝子組換え大腸菌に遺伝子を入れる
  • 細胞培養哺乳類の細胞を育てて数える
  • 微生物の分離自然から菌を取り出し種類を調べる
  • 生理学・神経科学神経や筋肉、ホルモンのはたらき
  • 臨海実習海の生き物を採集して観察する
  • 野外実習山や森で生き物とその痕跡を探す
  • 英語の論文研究の最前線を原文で読む
岩場の潮だまりと、沖に浮かぶ小舟や木の茂った小島が写る白黒写真。岩の上に人が腰かけている
1907 年に出版された本に載った、三崎(神奈川県)の磯と三崎臨海実験所のあたりの景色。三崎の海は、生き物の種類の多さで知られています。写真: David Starr Jordan(Public domain・Wikimedia Commons)

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遺伝子組換えの実験: 大腸菌に遺伝子を入れる

応用生物科学実験 1 の遺伝子組換え実験では、大腸菌からプラスミドという小さな環状の DNA を取り出して精製します。それを別の大腸菌に、温度を急に変える「ヒートショック法」で入れます。

遺伝子が入った大腸菌だけが育つ寒天にまいて培養すると、白い点のような集まり(コロニー)が現れます。1 つのコロニーは、もとは 1 個の大腸菌が増えたものです。目印になる遺伝子を使って、タンパク質がどれだけできたかを調べる回もあります。

コロニーの数から、DNA 1 μg あたり何個の大腸菌に遺伝子が入ったか(形質転換効率)を計算します。液の一部だけを寒天にまくので、どれだけ薄めたかを計算に入れるのがポイントです。

薄めた割合をたどると、目に見えない DNA の働きを数字で比べられます。

図解形質転換効率を計算する(例)

入力プラスミド 0.01 μg を大腸菌の液に入れ、全体を 1,000 μL にした。そのうち 100 μL を寒天にまくと、コロニーが 150 個できた
  1. 1寒天にまいたのは、全体の 100 ÷ 1,000 = 1/10
  2. 2まいた液に入っていた DNA = 0.01 μg × 1/10 = 0.001 μg
  3. 3形質転換効率 = 150 個 ÷ 0.001 μg
結果1 μg あたり 15 万個(1.5 × 10⁵ 個)。条件を変えた班どうしで、この数を比べる

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臨海実習: 磯で見つけて、顕微鏡でのぞく

臨海実習は、海辺の実験所に泊まりこみ、海の生き物を集めて調べる実習です。静岡大学の生物科学科では、毎年 3 年生が、東京大学の三崎臨海実験所(神奈川県三浦市)で 5 日間の臨海実習を行っています。2018 年度は 6 月 11〜15 日でした。

磯で岩の間を探す磯採集、干潟の泥を掘る泥掘り、船で海底の生き物を集めるドレッジと、方法を変えて生き物を集めます。夜には、明かりに集まる生き物をすくう灯下採集もします。採れた生き物は、硬い鉛筆でスケッチして種類を調べます。カメノテやウミウシ、タコノマクラ、ヤコウチュウなどが記録され、満潮の浜で群れて卵を産むクサフグも観察します。

顕微鏡の下の受精も見どころです。お茶の水女子大学の湾岸生物教育研究所の手引きでは、ウニの卵に精子を加えると、1 分もしないうちに卵のまわりに受精膜ができます。バフンウニなら 18℃ で約 1 時間後に最初の卵割が起き、48 時間を過ぎるとプルテウス幼生になります。ついさっきまで 1 個だった細胞が、目の前で 2 つに分かれるのです。

三崎臨海実験所は 1886 年に設立された、世界でも古い海洋生物の研究施設の 1 つです。1890 年には、初代所長の箕作佳吉が、のちに真珠の養殖に成功する御木本幸吉に、真珠のでき方などを 1 週間にわたって講義したと伝えられています。

海の生き物は、季節や潮の動きに合わせて、観察の機会がやってきます。

図解臨海実習の 1 日(例)

  1. 朝朝食・準備潮の時刻と天気を確かめる
  2. 午前採集磯・干潟・船で生き物を集める
  3. 昼仕分け採れた生き物を種類ごとに分ける
  4. 午後観察・スケッチ顕微鏡で見て、硬い鉛筆で描く
  5. 夕方発生の観察ウニの受精と卵割を追いかける
  6. 夜灯下採集明かりに集まる生き物をすくう
顕微鏡の視野いっぱいに、透明な膜に包まれた丸い卵が並び、いくつかは 2 つに分かれ始めている
受精したウニの卵(アメリカの海にすむウニのなかま)。卵のまわりの透明な輪が受精膜で、中では最初の卵割が始まっています。写真: Mikenish(CC BY 4.0・Wikimedia Commons)

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野外実習: 雪の上の足跡から、生き物を推理する

山や森で行う野外実習もあります。筑波大学の菅平高原実験所(長野県)では、2・3 年生向けの陸域生物学実習が、雪の季節に 5 日間開かれます。2026 年度の案内では 2 月 23〜27 日で、講義は英語で行われます。

下の図のように、3 日目までに冬の動物の見つけ方と見分け方を身につけ、4 日目からはグループで研究します。足跡などの痕跡から、そこにいた生き物と暮らしぶりを推理することが、この実習の目標の 1 つです。

目標には、野外で自分の研究を計画して実行できることも挙げられています。教わった方法を、自分たちで立てた問いに使う練習です。筑波大学の山岳科学センターは、こうした実習をほかの大学の学生にも公開しています。

姿の見えない生き物を、残された手がかりから推理する力が育ちます。

図解雪の季節の野外実習 5 日間(筑波大学の例)

  1. 11 日目冬の動物と痕跡の見分け方を学ぶ
  2. 22 日目雪の上の昆虫や冬越しを観察する
  3. 33 日目足跡をたどり、鳥を観察する
  4. 44 日目グループで問いを立てて調べる
  5. 55 日目調べた結果を発表してまとめる
一面の雪の上に、小さな動物の足跡が点々と続き、そばに枯れ草のかたまりがのぞいている
雪の上に残った動物の足跡(アメリカ・ユタ州)。足跡の形や並び方から、どんな動物がどちらへ歩いたかを推理します。写真: Jeremy T. Dyer(Public domain・Wikimedia Commons)

05

つまずきやすい点と乗り越え方

臨海実習や野外実習は、天気や潮に予定が左右されます。静岡大学の紹介でも、その日の天候や海の状況で、実習の内容を臨機応変に変えると書かれています。予定どおりにいかない日こそ、その場で見つけた生き物を記録しておくと、考察の材料になります。

海では、水の事故や危険な生き物にも注意が必要です。静岡大学の実習では、事前の説明で注意を呼びかけ、ライフジャケットの着用を徹底しています。慣れない集団生活で体調をくずさないよう、しっかり眠ることも大切です。

3 年になると、英語の論文を読む機会も増えます。最初は題と要旨、図だけを読み、何を調べて何が分かったかを 1 文でまとめる練習から始めると、続けやすくなります。

クイズ3 年の学びクイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q1ウニの卵に精子を加えると、受精膜ができるまでの時間はおよそ?

  2. Q21890 年、三崎臨海実験所の初代所長が、真珠のでき方などを講義した相手は?

  3. Q3筑波大学の雪の季節の野外実習で、動物の種類や暮らしぶりを推理する手がかりにするものは?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 海辺のワークショップに参加する

    お茶の水女子大学の湾岸生物教育研究所は、2026 年 11 月 15 日に、中学生・高校生とその家族向けの「海辺のワークショップ」を東京のキャンパスで開きます。学生が、夏の臨海実習で学んだ海の生き物や環境について紹介します。定員は 16 名で、締め切りは 11 月 6 日です。

    海辺のワークショップ(お茶の水女子大学)
  • 学校でウニの受精を観察する

    同じ研究所は、全国の小学校・中学校・高校に、ウニの未受精卵と精子を教材として提供しています(送料は学校の負担)。先生に相談して、受精膜ができる瞬間を顕微鏡で見てみましょう。

    小中学校・高校へのご案内(湾岸生物教育研究所)
  • 潮位表を調べて、磯の生き物を観察する

    気象庁の潮位表で、近くの海の干潮の時刻を調べましょう。潮が大きく引く日の干潮の前後は、ふだん水の中にいる生き物を観察しやすくなります。大人と一緒に行き、滑りにくい靴をはき、波の高い日は行かないようにしましょう。

    潮位表(気象庁)
  • 雪や土の上の足跡を記録する

    雪の日の翌朝や、雨上がりの公園の土の上で、動物や鳥の足跡を探しましょう。写真を撮り、指の数や歩幅を記録して、図鑑などでどんな動物の足跡かを推理してみてください。

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よくある質問

生き物の名前をたくさん知らなくても大丈夫ですか?

大丈夫です。臨海実習では、採った生き物を観察してスケッチし、種類を調べながら覚えていきます。静岡大学の実習では、同じなかまだけでなく、多くの種類の生き物を集めて観察するよう心がけています。

3 年の実験はどのくらい忙しいですか?

東京理科大学の応用生物科学実験 1 は、火曜日と水曜日の午後に 3 コマずつ行われます。成績は、取り組む態度と積極性が 20%、目的や原理の理解が 20%、レポートの内容が 60% です。予習した内容を実験ノートにまとめて臨みます。

自分の大学に臨海実験所がなくても、臨海実習を受けられますか?

受けられる場合があります。静岡大学の生物科学科は、東京大学の三崎臨海実験所で臨海実習を行っています。筑波大学の菅平高原実験所のように、ほかの大学の学生も受けられる公開実習を開く施設もあるので、大学の先生に相談してみてください。