大学カタログ

図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 1

1 年: 基礎をかためる

高校で学んだ細胞と遺伝を出発点に、化学・物理・数学と並べて生命科学の基礎を組み立て直す 1 年です。生物学実験では顕微鏡の使い方から始め、植物・動物・菌類の細胞を自分の目で見て、見たとおりに描き残す練習をします。

大学の生物学実験室で、顕微鏡をのぞく新入生たちと、硬い鉛筆で細胞をスケッチする学生、緑の水草や小さな培養皿が並ぶ実験台

ひとことで言うと

カメラの使い方を覚えてから、撮りに出かける

新しいカメラを手にしたら、まずピントの合わせ方や明るさの調整を覚えます。大学 1 年の生物学実験も同じで、顕微鏡のピント合わせと、見たものを正確に描く練習から始まります。道具を自在に使えるようになると、2 年からの実験で撮りたいものを狙えます。

01

1 年の科目: 生物と化学・物理・数学を並べて学ぶ

多くの大学では、1 年の専門の科目は、生命科学の基礎と生物学実験です。千葉大学の生物学科では、1 年に生命科学 1〜6 と生物学実験が並びます。少人数で学ぶ生物学セミナーもあります。

東京理科大学の生命生物科学科の 1 年には、生物学概論や基礎生物学 1・2、基礎生物学実験が並びます(2025 年 4 月 1 日現在)。同時に、数学・物理学・化学の講義と、物理学と化学の実験も受けます。生命のしくみの多くは分子の反応なので、化学や物理は 2 年からの授業の土台になります。

日本学術会議の参照基準は、生物学が扱う対象を、分子から細胞・個体・生態系までの「階層」として説明しています。高校では、細胞・遺伝・生態系を別々の単元として学びました。大学では、同じ生き物を、いくつもの階層から見る練習が始まります。

1 年は、生き物を見る目と、それを説明する道具をそろえる時期です。

図解高校の生物と大学 1 年の生物学

高校の生物

  • 細胞・遺伝・生態系を単元ごとに学ぶ
  • 観察の結果を教科書の図と見比べる
  • 化学や物理は別の科目として学ぶ

大学 1 年

  • 分子から生態系までの階層でつなぐ
  • 見たとおりに描き、記録から考える
  • 化学・物理・数学を生物の道具に使う

02

生物学実験: 顕微鏡の中で生き物が動く

1 年の生物学実験は、顕微鏡の使い方から始まります。広島大学で 1 年前期に開かれる「生物学実験法・同実験 I」(2026 年度)は、水曜日の 1〜4 限で、全 8 回です。植物の表皮の細胞、動物の組織、体細胞分裂、減数分裂と、見る対象を広げていきます。

2 回目には、植物の細胞の中の粒が流れるように動く「原形質流動」を観察します。後半は、DNA を電気泳動で調べる実験や、ハエやカのなかまの幼虫のだ腺染色体の観察へ進みます。

東京理科大学の生命生物科学科の基礎生物学実験は、1 年の前期か後期(組によって異なる)の木曜日に、2〜5 限の 4 コマ続きで行われます。顕微鏡の原理を学んだあと、植物プランクトンや、細菌・粘菌・カビ・酵母・キノコのなかまを観察します。ホウレンソウ・海苔・ワカメなどの光合成の色素を分けて比べ、植物の系統進化を考える回もあります。

視野の中で小さな藻が泳ぎ回ったり、細胞の中の粒が流れたりする瞬間は、図鑑の写真では味わえません。動いているものを見つけて、ピントを追いかけるのが、生物学実験の最初の楽しさです。

動く生き物を見つけてピントを合わせ続けることが、観察の第一歩です。

図解1 年の生物学実験の流れ(広島大学の例)

  1. 1顕微鏡の使い方ピント合わせと明るさの調整
  2. 2植物と動物原形質流動と動物の組織を見る
  3. 3細胞分裂体細胞分裂と減数分裂を観察
  4. 4DNA を調べる電気泳動で DNA の大きさを見る
  5. 5染色体幼虫のだ腺染色体を観察する
黒い背景の中の丸い視野に、緑の粒が詰まった細長い細胞が、れんがのように並んでいる
顕微鏡で見たカナダモのなかま(エロデア)の葉の細胞。緑の粒が葉緑体で、生きた細胞では、細胞の中をゆっくり流れるように動く様子が見られることがあります。写真: Cimice50(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

03

視野の広さから、細胞の大きさを見積もる

顕微鏡の倍率は、接眼レンズと対物レンズの倍率のかけ算です。10 倍の接眼レンズと 40 倍の対物レンズなら 400 倍です。倍率を上げるほど、一度に見える範囲(視野)はせまくなります。

接眼レンズに書かれた「視野数」を対物レンズの倍率で割ると、実際に見えている範囲の直径(mm)が分かります。その直径に沿って細胞がいくつ並ぶかを数えれば、1 個の大きさを見積もれます。下の図は、その計算の例です。

大学の実験では、こうした見積もりや数えた結果を、実験ノートに数字で残します。東京理科大学の基礎生物学実験のシラバスは、テキストを予習し、実験ノートにまとめて来るよう求めています。数字で残すと、ほかの人の結果と比べられます。

見えたものを数字にすると、ほかの人と結果を比べられます。

図解視野から細胞の大きさを見積もる(例)

入力接眼レンズは 10 倍(視野数 18)、対物レンズは 40 倍。視野の直径に沿って、細胞が 9 個並んで見えた
  1. 1倍率 = 10 × 40 = 400 倍
  2. 2視野の直径 = 18 ÷ 40 = 0.45 mm
  3. 3細胞 1 個の長さ = 0.45 mm ÷ 9 個 = 0.05 mm
  4. 41 mm = 1,000 μm なので、0.05 mm = 50 μm
結果細胞 1 個の長さは約 50 μm。0.1 mm の半分ほどの大きさだと分かる
赤紫に染まった丸い細胞がすき間なく並び、いくつかの細胞の中に、糸やひものような形の染色体が見える
タマネギの根の先の細胞を染めて、顕微鏡で見たもの。細胞分裂のいろいろな段階の染色体が見えます。1 年の実験で、根の先の細胞の分裂を観察する大学もあります。写真: staticd(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

04

1 年生の 1 週間(例)

下の図は、生物学科の 1 年生の後期の 1 週間の例です。科目の名前や曜日は大学によって異なります。実験の日は、午後いっぱいを実験室で過ごします。

広島大学の生物学実験では、初回から H か 2H の硬い鉛筆と、B5 のケント紙を用意します。成績は、テーマごとに出すレポートで評価されます。生物のスケッチは影をつけず、線と点で、見えたものだけを描くのが基本です。

講義では、化学や物理、数学も並行して学びます。空きコマにスケッチの清書やレポートを進めておくと、週末に余裕が生まれます。

図解1 年生の 1 週間(例)

  1. 月基礎生物学・英語細胞と遺伝のしくみを学び直す
  2. 火化学・数学分子の反応と微分積分を学ぶ
  3. 水物理学・情報データの扱い方も身につける
  4. 木生物学実験午後いっぱい顕微鏡で観察
  5. 金生物学概論・教養生き物の多様さを広く学ぶ
  6. 土・日レポート・サークルスケッチを清書し、考察を書く

05

つまずきやすい点と乗り越え方

1 年でつまずきやすいのは、生物以外の科目の多さです。「生き物が好きで入ったのに」と感じる人もいます。2 年からの分子生物学や生化学では化学の考え方を使うので、つながりを意識すると身が入ります。

顕微鏡では、最初はピントが合わなかったり、目当ての細胞が視野から逃げたりします。低い倍率で探してから倍率を上げる、という順番を守ると見つけやすくなります。分からないときは、その場で TA や先生に聞くのが近道です。

東京理科大学の基礎生物学実験は、最後の 3 回で、12 回分の観察で出会った生き物の特徴をまとめて話し合います。なぜ地球上にこれほど多くの種類の生き物がいるのか、多様さの中の共通点は何かを考えるためです。ばらばらの観察が、1 つの問いにつながるのが、1 年の実験の締めくくりです。

クイズ1 年の学びクイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q110 倍の接眼レンズと 40 倍の対物レンズを組み合わせると、倍率は何倍?

  2. Q2直径 0.45 mm の視野に、細胞が 9 個並んで見えた。1 個の長さはおよそいくつ?

  3. Q3ホウレンソウ・海苔・ワカメなどの光合成の色素を分けて比べる実験で、理解を深めることは?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 水草の細胞を顕微鏡で見る

    先生に相談して学校の顕微鏡を借り、金魚の水草として売られているオオカナダモの葉を 1 枚、水と一緒にスライドガラスにのせて見ましょう。葉緑体が細胞の中を流れるように動いていないか、しばらく見続けてください。

  • 視野の広さから大きさを見積もる

    学校の顕微鏡の接眼レンズに書かれた視野数を確かめ、本文の式で視野の直径を出しましょう。視野に並ぶ細胞の数から、1 個の大きさを見積もってみてください。視野数が書かれていなければ、先生に聞いてみましょう。

  • 硬い鉛筆でスケッチする

    H か 2H の鉛筆で、観察した細胞を見えたとおりに描きましょう。影をつけず、線と点だけで描くのが生物のスケッチの基本です。描いた横に、倍率と日付を書いておきます。

  • 志望校の 1 年の実験を調べる

    多くの大学はシラバスを公開しています。東京理科大学のシラバスでは、学科ごとに授業の計画を読めます。志望校で 1 年の生物学実験を探し、何を観察するかを比べてみましょう。

    東京理科大学 2026 年度シラバス(生命生物科学科)

「1 年: 基礎をかためる」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 93 件から探せます。

研究室をすべて見る(52 件)

よくある質問

高校で生物を選んでいなくても大丈夫ですか?

日本学術会議の参照基準は、高校で生物を選ぶ生徒と選ばない生徒の間で、学ぶ時間に差があることに留意するよう求めています。多くの大学では、1 年に生命科学の基礎を学ぶ授業があります。入学までに、生物基礎の教科書で細胞と遺伝の章を読んでおくと安心です。

絵が苦手でも、スケッチはできますか?

生物のスケッチは、上手な絵を描くことではなく、見えたものを正確に記録することが目的です。広島大学の 1 年の実験では、初回から硬い鉛筆とケント紙を用意し、テーマごとにレポートを出します。回数を重ねると、どこを見ればよいかが分かってきます。

1 年から生き物を扱う実験がありますか?

あります。東京理科大学の基礎生物学実験では、植物プランクトンや菌類などを顕微鏡で観察し、葉の気孔の開き方を調べる実験もあります。どんな生き物を扱うかは、大学によって異なります。