図 1 経営学の広がり経営学の広がり 2
お金の流れと会計
会社のお金の出入りを決まったルールで記録し、決算書にまとめて、経営の判断や投資に生かす分野です。会計の数字が読めると、ニュースに出てくる会社の姿がぐっと具体的に見えてきます。

ひとことで言うと
決算書は、会社の健康診断の結果表
身長や体重、血圧の数字を見ると、体の調子が分かります。会社も、売上や利益、借金の数字を見ると、元気かどうかが分かります。会計学は、その数字の付け方と読み方を学ぶ学問です。

01
簿記: 1 つの取引を 2 つの面から記録する
会計の土台は、取引を記録する簿記です。いまの会社が使うのは複式簿記で、1 つの取引を必ず 2 つの面から記録します。パン屋が小麦粉を現金 3,000 円で仕入れたら、「小麦粉を仕入れた」と「現金が減った」を同時に書きます。
代金を月末に払う約束なら、現金の代わりに「あとで払う借り(買掛金)が増えた」と書きます。2 つの面から書くので左右の合計がいつもそろい、合わなければ記録のまちがいに気づけます。
この方法を初めて本で詳しく紹介したのは、イタリアの数学者ルカ・パチョーリです。1494 年にヴェネツィアで出版した数学の本の中で、商人たちが使っていた「ヴェネツィアの方法」を説明しました。
日本では 1873 年から翌年にかけて、福沢諭吉がアメリカの商業学校の簿記の教科書を訳し、『帳合之法』として出しています。
2 つの面から書くことで、お金とものの動きをまちがえずに追えます。
図解代金をあとで払う約束で仕入れたとき
- 1左側(借方)に「仕入 3,000 円」と書く
- 2右側(貸方)に「買掛金 3,000 円」と書く
- 3現金はまだ減っていないことが記録で分かる


02
財務会計: 決算書で会社の成績を伝える
財務会計は、会社の外の人に向けて、会社の状態を決算書で伝えるための会計です。株主やお金を貸す銀行、取引先は、決算書を見て、その会社とつき合うかどうかを判断します。
主な決算書は 3 つです。決算の日に何をどれだけ持ち、どれだけ借りているかを示す貸借対照表。1 年間にいくら売って、いくらもうけたかを示す損益計算書。現金の出入りを示すキャッシュ・フロー計算書です。
上場している会社は、有価証券報告書という書類で決算書を公開しています。金融庁の EDINET を使えば、だれでも無料で読めます。決算書が正しく作られているかは、公認会計士が監査で確かめます。
利益が出ているのに、手元の現金が足りずに支払いができなくなる「黒字倒産」もあります。売った代金を受け取るのが数か月先になる取引も多いためです。利益と現金の両方を見ることが大切です。
決算書は、会社の外の人と信頼をつなぐための共通の言葉です。
図解3 つの決算書
貸借対照表
- 決算の日の財産と借金
- 会社の体つきが分かる
損益計算書
- 1 年間の売上と利益
- もうける力が分かる
キャッシュ・フロー計算書
- 1 年間の現金の出入り
- 支払いを続ける力が分かる

03
管理会計: 会社の中で判断に使う数字
管理会計は、会社の中で経営の判断に使うための会計です。決まった形式で外に出す財務会計とちがい、どの商品がもうかっているか、来年の予算をどう組むかなど、目的に合わせて数字を作ります。
基本になるのが、1 つの品物を作るのにいくらかかったかを計算する原価計算です。原価は、材料の費用、作る人の給料、電気代や家賃などの費用を合わせて計算します。原価が分かると、値段の付け方や作り方の見直しを、根拠をもって考えられます。
管理会計の数字を現場で使う例として知られるのが、京セラの創業者・稲盛和夫が作り出した「アメーバ経営」です。会社を小さなグループに分け、それぞれのリーダーに採算の管理を任せます。部門ごとの採算をはっきりさせ、経営者の意識を持つ人を育て、全員が経営に加わることをめざす方法です。
原価が分かると、どこを直せばもうけが増えるかが見えてきます。
図解パン 1 個の原価を計算する(例)
- 13 つを合わせて、1 個の原価は 90 円
- 2売り値 150 円から引くと、1 個 60 円の利益
- 3材料や作り方を見直すと、原価を下げられる

04
ファイナンス: お金を集めて、未来に投資する
ファイナンスは、事業に必要なお金をどう集め、何に使うかを考える分野です。会社がお金を集める方法には、銀行などから借りる方法と、株式を発行して出資してもらう方法があります。
借りたお金は、利息をつけて返す約束です。株式で集めたお金には返す約束がない代わりに、株主は会社の持ち主の一人になります。利益の一部を配当として受け取ったり、株主総会で意見を言ったりできます。
日本で株式を売り買いする場ができたのは 1878 年です。取引所が日本に必要だと考えていた渋沢栄一のもとに人が集まり、東京株式取引所が設立されました。渋沢は生涯に約 500 の企業の育成に関わったとされ、2024 年 7 月に発行が始まった一万円札の肖像になっています。
その前の一万円札の肖像は、『帳合之法』を出した福沢諭吉です。お札の顔の 2 人は、どちらも日本の会計とファイナンスの始まりに関わった人なのです。
どうやってお金を集めるかで、返す約束や持ち主との関係が変わります。

高校生のうちに試せること
EDINET で知っている会社の決算書を見る
金融庁の EDINET では、上場している会社の有価証券報告書をだれでも無料で読めます。好きな食品やゲームの会社を検索し、売上と利益が前の年からどう変わったかを見てみましょう。
EDINET(金融庁)東京証券取引所を見学する
東京・日本橋兜町の東証 Arrows は、無料で見学できます。予約のいらない自由見学もあります。土日祝日は休みで、休みの日が変わることもあるので、出かける前に公式サイトで確認してください。
東証 Arrows 見学(日本取引所グループ)お小遣い帳を 2 つの面からつける
1 か月のお小遣いの出入りを、「増えたもの」と「減ったもの」の 2 つの面から記録してみましょう。月末に左右の合計がそろえば、簿記の考え方が身についています。
「お金の流れと会計」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 72 件から探せます。
学生団体・機関はまだ掲載していません
よくある質問
数学が苦手でも、会計学は学べますか?
学べます。簿記で使う計算は、ほとんどが足し算・引き算・かけ算・割り算です。大事なのは、取引を正しく 2 つの面に分けて考えることです。多くの大学では、1 年生の簿記の入門から始めます。
大学生のうちから、公認会計士をめざせますか?
めざせます。公認会計士試験は、年齢・学歴・国籍にかかわらず、だれでも受けられます。合格したあと、実務の経験などを積んで登録すると公認会計士になれます。在学中に勉強を始める人もいます。
会計とファイナンスは、どう違いますか?
会計は、すでに起きた取引を記録して報告することが中心です。ファイナンスは、これからのお金の集め方や使い方を考えることが中心です。2 つはつながっていて、多くの大学で両方を学べます。
