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図 1 経営学の広がり経営学の広がり 1

組織と戦略

どの事業で、どうやってお客さんに選ばれるかを決める「戦略」と、人を集めて力を出せるようにする「組織」を考える分野です。人の育て方や、品物の作り方の工夫もここで学びます。

流れ作業の模型、カードを線でつないだホワイトボード、絵札が並ぶ机を囲んで、会社の作戦を話し合う大学生たち

ひとことで言うと

文化祭のクラスの出し物を成功させる

何をやるかを決め、ほかのクラスとどう違いを出すかを考えるのが戦略です。係を分けてみんなが動きやすくし、準備を当日に間に合わせるのが組織と生産の管理です。経営学は、これを何千人もの会社で考えます。

01

経営戦略: どこで、どうやって選ばれるか

経営戦略は、会社が「どの事業で」「どうやってお客さんに選ばれるか」を決めることです。アメリカの経営学者マイケル・ポーターは、1980 年の著書『競争の戦略』で、選ばれ方を大きく 3 つに分けました。

1 つ目は、ほかより安く作って安く売る方法です。2 つ目は、品質やデザイン、サービスで違いを出す方法です。3 つ目は、特定のお客さんや地域に絞って強みを出す方法です。駅前の大きなチェーン店と近所の小さな専門店が両方生き残れるのは、選ばれ方が違うからです。

戦略には、事業そのものを変える決断も含まれます。任天堂は 1889 年に京都で花札を作り始めた会社で、1902 年には日本で初めてトランプの製造に乗り出しました。家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」を発売したのは 1983 年です。何を強みにして、次にどこへ進むかを考えるのが、戦略の面白さです。

戦略は、お客さんに選ばれる理由と、進む方向を決めることです。

図解お客さんに選ばれる 3 つの方法

安さで選ばれる

  • たくさん作って費用を下げる
  • 同じ品質なら安い方が選ばれる

違いで選ばれる

  • 品質やデザインで勝負する
  • 高くても買いたい理由をつくる

絞って選ばれる

  • 特定のお客さんや地域に集中する
  • 小さな会社でも強みを出せる
季節の花や鳥が描かれた手描きの花札が、何列にも並べられている様子
江戸時代後期に手描きされた花札。花札を作っていた会社が、のちにゲーム機の会社へと事業を大きく変えた例もあります。写真: 作者不詳(Public domain・Wikimedia Commons)

02

経営組織: 人をどう分けて、どうつなぐか

人が集まって仕事をするとき、だれが何を受け持ち、だれが決めるかを形にしたものが組織です。会社が大きくなるほど、組織の作り方で仕事の速さや働きやすさが変わります。

よく比べられるのが 2 つの形です。1 つは、開発・製造・営業といった仕事の種類で分ける機能別組織です。もう 1 つは、商品や地域ごとにまとまりを作り、開発から販売までを任せる事業部制組織です。

日本で早く事業部制を取り入れたのが、1933 年の松下電器(いまのパナソニック)です。ラジオ、ランプと乾電池、電熱器と配線器具の 3 つの事業部を置き、開発から生産、販売、収支までを一貫して任せました。ねらいは、責任をはっきりさせ、経営を任せられる人を育てることでした。

アメリカの経営史学者チャンドラーは、1962 年の著書で、会社の戦略が変わると組織の形も変わっていくことを示しました。「組織は戦略に従う」という言葉で知られています。

組織の形は、会社の戦略に合わせて作り直されていきます。

図解組織の 2 つの形

機能別組織

  • 開発・製造・営業などで分ける
  • 同じ仕事の専門家が育ちやすい
  • 全体の調整は経営者が受け持つ

事業部制組織

  • 商品や地域ごとに分ける
  • 開発から販売までを任せる
  • 経営を任せられる人が育ちやすい

03

人的資源管理: 人が力を出せるしくみ

人的資源管理は、人を採用し、育て、評価し、給料や働き方を決める分野です。会社の人事部の仕事がその代表で、働く人一人ひとりの力をどう引き出すかを考えます。

この分野の出発点の一つが、ホーソン実験です。1924 年から 1933 年にかけて、アメリカのシカゴ近くにあった大きな工場で行われました。照明の明るさと作業の効率の関係などを調べ、ハーバード・ビジネス・スクールの研究者も加わりました。

研究を通じて、働く人の気持ちや職場の人間関係が、仕事の成果と深く関わることが注目されるようになりました。部活でも、練習の量だけでなく、仲間との関係でやる気が変わることがあります。人は給料だけで動くわけではないという見方は、いまの人事の仕事にも生きています。

人の気持ちや関係に目を向けると、組織の力は大きく変わります。

図解人事の仕事のくり返し

  1. 1採用する会社に合う人を選んで迎える
  2. 2配置する力を生かせる部署に割り当てる
  3. 3育てる研修や仕事の経験で力を伸ばす
  4. 4評価する成果と成長を確かめて伝える
  5. 5処遇を決める給料や役割に結果を反映する
青空の下に立つ、とがった屋根をもつれんが造りの高い塔と、隣の低いれんがの建物
ホーソン工場の跡に、ただ 1 つ残る塔(アメリカ・イリノイ州シセロ、2012 年)。工場は 1983 年に閉じられ、跡地はショッピングセンターになりました。写真: MrHarman(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

04

生産管理: 速く、むだなく、よい品質で

生産管理は、品物をどの順番で、どれだけ、どうやって作るかを考える分野です。工場だけでなく、飲食店の調理場や物流の倉庫でも使われています。

大きな転機は、1913 年にアメリカのフォードが始めた、部品や車体を動かしながら組み立てる流れ作業です。止まった場所で組み立てていたころは 1 台に 12 時間半かかりました。1914 年のはじめには、93 分ごとに 1 台が完成するようになりました。車の値段も 850 ドルから、最も安いときで 260 ドルまで下がりました。

日本では、トヨタ自動車が「トヨタ生産方式」を作り上げました。必要なものを、必要なときに、必要なだけ作る「ジャスト・イン・タイム」と、異常があれば止めて不良品を作らない「自働化」が 2 本の柱です。人偏のついた「自働化」と書くのが特徴で、その考え方は豊田佐吉が発明した自動織機にさかのぼります。

作り方を工夫すると、同じ人数でも作れる量と品質が大きく変わります。

クイズ組織と戦略のクイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q11914 年のはじめ、フォードの工場では流れ作業で、完成した車が何分ごとにできあがった?

  2. Q21889 年、任天堂が京都で作り始めたものは?

  3. Q3商品ごとにまとまりを作り、開発から販売までを任せる組織の形は?

0 / 3 問に回答
長い作業台に沿って並んだ働く人たちが、円い部品を組み立てている白黒写真
1913 年のフォードの工場。作業を細かく分け、部品を流しながら組み立てるしくみが、車の作り方を大きく変えました。写真: 作者不詳(Public domain・Wikimedia Commons)

高校生のうちに試せること

  • 流れ作業と 1 人作業を比べる

    友だち 4 人で、折り紙の箱を 1 人で全部折る方法と、工程を分けて順に渡す方法で、10 分間に何個できるかを比べてみましょう。速さだけでなく、出来ばえやミスの数も記録してください。

  • 会社の沿革と組織図を読む

    知っている会社の公式サイトで「沿革」と「組織図」を探してみましょう。どの年に何を始め、どんな部署に分かれているのかを見ると、その会社の戦略が見えてきます。

  • 身近な職場の工夫を聞く

    家族や知り合いに、職場で仕事をどう分けているか、やる気を出すためにどんな工夫があるかを聞いてみましょう。組織や人的資源管理の考え方が、ぐっと身近になります。

「組織と戦略」に関連するコミュニティ

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よくある質問

経営学は、社長になる人だけが学ぶものですか?

いいえ。戦略や組織の考え方は、部署のリーダーや、チームで働くすべての人に役立ちます。日本学術会議の参照基準は、経営学の対象を会社だけでなく、学校・病院・NPO・家庭にまで広げています。

経営戦略や経営組織は、何年生で学びますか?

多くの大学では、1 年生で経営学入門を学び、2 年生で経営戦略論や経営組織論を学びます。3 年生のゼミで、実際の会社の事例を分析することもあります。科目名や時期は大学によって異なります。

生産管理は、工学部で学ぶものではないのですか?

工学部の経営工学科でも学びますが、経営学部でも生産管理論などの科目で学べます。工場だけでなく、飲食店やサービスの現場の改善にも使われる考え方です。