図 1 経営学の広がり経営学の広がり 4
データと情報で改善
品質や売れ行きの記録、天気などのデータを集めて分析し、会社の仕事をよりよくしていく分野です。経営工学や経営情報学と呼ばれる領域で、コンピュータを使う場面がたくさんあります。

ひとことで言うと
記録ノートで、部活の練習を見直す
練習の記録をつけると、調子のよい日と悪い日の違いが見えてきます。会社も、売れ行きや不良品の数、天気などを記録して比べると、勘だけでは気づけない改善のヒントが見つかります。

01
品質管理: データで「ばらつき」を減らす
同じ機械で同じ部品を作っても、大きさや重さには少しずつばらつきが出ます。品質管理は、データでばらつきを見つけて原因を探し、不良品を減らす方法を考える分野です。
日本の品質管理を大きく変えたのが、アメリカの統計学者デミングです。1950 年、日本科学技術連盟(日科技連)の招きで来日し、約 70 日の滞在中に、技術者や経営者に向けた講習会を開きました。翌 1951 年には、その業績を記念してデミング賞が作られています。
1962 年には日科技連に QC サークル本部ができ、職場の小さなグループが自分たちで改善に取り組む活動が全国に広がりました。計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Act)をくり返す PDCA サイクルは、いまでは学校や病院の仕事の見直しにも使われています。
勘や経験に、データという確かめる道具を加えるのが品質管理です。
図解PDCA サイクル
- 1計画(Plan)目標と、確かめる数字を決める
- 2実行(Do)計画どおりにやってみる
- 3評価(Check)データで結果を確かめる
- 4改善(Act)うまくいった方法を次に生かす

02
経営情報システム: 世界で初めての「会社のコンピュータ」
経営情報学は、情報やコンピュータを、会社の判断や仕事にどう生かすかを研究する分野です。参照基準は、情報技術を活用して、素早い意思決定を後押しする分野と説明しています。
会社の仕事に初めてコンピュータを使ったのは、意外にも喫茶店で知られるイギリスの飲食の会社でした。J. ライオンズ社の LEO I は、1951 年 11 月にロンドンの本社で仕事を始めました。最初の仕事は、自社のパン工場で毎週作られたパンやケーキの価値を計算することです。
いまでは、コンビニのレジで商品のバーコードを読むと、売れた記録が本部に届き、在庫や発注、工場の生産計画にまでつながっています。会社のあちこちにある情報を1 つの流れにつなぐしくみを設計するのが、経営情報システムの仕事です。
情報が部署の間をすばやく流れると、会社全体の判断が速くなります。
図解レジから工場までつながる情報
- 1バーコードを読む何が、いつ、いくつ売れたかを記録
- 2本部に集まるたくさんの店の売れ行きが分かる
- 3発注を決める在庫と予測から仕入れる数を決める
- 4工場が作る注文に合わせて作る量を決める

03
需要予測: 天気とデータで作りすぎを防ぐ
需要予測は、商品がこの先どれだけ売れるかを、データから見積もることです。作りすぎれば捨てる量が増え、足りなければ売り逃しになります。2024 年度に日本で出た食品ロスは 461 万トンで、そのうち 237 万トンは食品の会社や店から出たものでした。
日本気象協会は 2014 年度から、食品メーカーや卸、小売の会社と協力して、気象データで売れ行きを予測する取り組みを進めました。冷やし中華のつゆでは、売れ行きの変化の 97% を気象のデータで説明できると分かりました。2015 年度には、つゆの在庫を約 20% 減らしています。
豆腐では、意外なことが分かりました。売れ行きには「何度か」よりも、どんな経過をたどってその気温になったかが大きく関わっていたのです。同じ 25℃ でも、前の週より暑くなったのか、涼しくなったのかで売れ方が変わるということです。
予測が当たるようになると、売り逃しと食品ロスを同時に減らせます。
図解冷やし中華のつゆを作る量を決める
- 1気温と売れ行きの関係を過去のデータで調べる
- 2数週間先の気温の予報から売れる量を見積もる
- 3見積もりに合わせて作る量と在庫を決める


04
データ分析: 勘と経験を、数字で確かめる
データ分析は、集めたデータから、判断に役立つ答えを取り出すことです。多くの大学では、統計学の基礎から始めて、表計算ソフトやプログラミング言語を使った分析まで学びます。
店の売上が先月より落ちたとき、「天気が悪かったから」と決めつけずに、曜日や天気、近くの店の動きなどのデータを並べて確かめます。ウェブサイトでは、2 種類の画面をお客さんに分けて見せ、どちらがよく使われるかを比べる A/B テストもよく行われます。
経営工学の研究室では、工場の生産計画や配送の順番を、数式とコンピュータで最もよい形に近づける研究も行われています。オペレーションズ・リサーチと呼ばれる方法で、物流や鉄道、病院の勤務表づくりにも使われています。
データは、思い込みを確かめ直すための道具です。
高校生のうちに試せること
気温とアイスの支出をグラフにする
総務省統計局の家計調査では、1 世帯がアイスクリームなどに毎月いくら使ったかが分かります。気象庁のサイトで同じ月の平均気温を調べて並べ、どれくらい一緒に動くかを見てみましょう。
過去の気象データ検索(気象庁)テスト勉強で PDCA を回す
次の定期テストで、教科ごとに目標点と勉強時間を決め、実行し、結果と見比べて、次のやり方を変えてみましょう。毎回記録を残すと、自分に合う勉強法がデータで分かってきます。
模擬店の売れ行きを時間ごとに記録する
文化祭の模擬店で、30 分ごとに売れた数を記録し、天気や人の流れのメモと並べてみましょう。次の年に材料をどれだけ用意するかを決める、立派な需要予測の材料になります。
「データと情報で改善」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 29 件から探せます。
よくある質問
プログラミングができないと、学べませんか?
入学の時点でできなくても大丈夫です。多くの大学では、表計算ソフトや統計の入門から始め、必要に応じてプログラミングを学びます。高校の情報 I で学ぶ内容が土台になります。
経営学部と、工学部の経営工学科は何が違いますか?
経営学部は、組織や市場の見方を広く学ぶ中で、データ分析も学びます。経営工学科は、数学やコンピュータを使った最適化や、生産システムの設計をより深く学びます。どちらも、データで経営をよくすることをめざしています。







