大学カタログ

図 1 経営学の広がり経営学の広がり 3

市場と顧客

お客さんが何を求めているかを知り、商品を作って、知らせて、届けるまでを組み立てる分野です。商品が店に並ぶまでの流通や、広告とブランドも学びます。

商店街の店先、配送の段ボール箱、ポスターの試作を囲み、買い物をする人の気持ちを話し合う大学生たち

ひとことで言うと

友だちへのプレゼントを選ぶ

相手の好きなものを思い出し、予算を決め、どの店で買うか、どう渡すかを考えます。マーケティングは、これを会ったことのない何万人ものお客さんを相手に、調査やデータを使って行うものです。

01

マーケティング: だれに、何を、どう届けるか

マーケティングは、お客さんに選ばれ続けるしくみを作る活動です。日本学術会議の参照基準は、マーケティング論を、取引に関わる組織の活動を一つひとつの企業の経営の目で研究する分野と説明しています。

考える順番の基本は、市場をいくつかのグループに分け、ねらう相手を決め、ほかの商品とのちがいをはっきりさせることです。それぞれ英語の頭文字をとって、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)と呼ばれます。

そのうえで、製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・販売促進(Promotion)の 4 つを組み合わせます。1960 年にアメリカのマーケティング学者マッカーシーが示した考え方で、4P と呼ばれます。どれか 1 つが欠けても、商品はお客さんに届きません。

だれに届けたいかが決まると、作り方も値段も売り方も決まってきます。

図解新しいパンを売り出すまで(例)

  1. 1市場を分ける年代や買う時間帯でグループに分ける
  2. 2相手を決める部活帰りの高校生にねらいを定める
  3. 3立ち位置を決める量が多く、片手で食べやすいパンに
  4. 44P を組み立てる値段・売る店・知らせ方を決める

02

消費者行動: 人はどうやって買う物を決めるのか

消費者行動論は、人が商品を知り、比べて、買い、使ったあとにどう感じるかを調べる分野です。心理学や社会学、統計学の方法も使います。

スマートフォンを買うときを思い出してください。友だちが使っているのを見て気になり、レビューや動画で調べ、店で実物を触って比べてから決める人が多いはずです。買ったあとの感想は、SNS や口コミを通じて、次に買う人の情報になります。

この流れのどこでお客さんが迷い、どこで離れてしまうのかが分かれば、企業は商品の説明や売り場を直せます。反対に、買う側も自分の決め方のくせを知ると、広告に流されずに選べるようになります。

買う人の気持ちの流れを追うと、売り方のどこを直せばよいかが分かります。

図解買い物の流れ

  1. 1気づく友だちや広告で商品を知る
  2. 2調べるレビューや動画で情報を集める
  3. 3比べる値段や使い勝手をほかと比べる
  4. 4買う店やネットで買う
  5. 5感想を伝える口コミが次に買う人の情報になる

03

流通・小売: 商品が手元に届くまで

工場で作られた商品は、卸売業者や小売店を通ってお客さんに届きます。これが流通です。参照基準は商学を、作る人と使う人の間をつなぐための取引・輸送・在庫・金融・保険などを扱う学問と説明しています。

ネット通販は、この流れを大きく変えました。経済産業省によると、2024 年の日本の消費者向けの電子商取引は 26.1 兆円です。ただ、物の買い物のうちネットで買われた割合(EC 化率)は 9.78% で、9 割ほどはまだ店で買われています。

分野によって差もあります。本や映像・音楽ソフトでは 56.45% がネットで買われ、家電やパソコンなどでも 43.03% です。商品ごとに、店とネットをどう組み合わせるかを考えるのも、流通の研究の大事なテーマです。

どこで、どう売るかを決めることは、何を売るかと同じくらい大切です。

図解店で売る・ネットで売る

店で売る

  • 実物を見て触って選べる
  • その場で持ち帰れる
  • 店の場所や広さに限りがある

ネットで売る

  • 家にいながら注文できる
  • たくさんの品をそろえられる
  • 届けるまでの物流が要になる
アーケードの下に小さな店が並び、のぼりや看板が下がった商店街の通り
日本の商店街。小さな専門店が集まり、地域の人の買い物を支えてきました。店の並び方や品ぞろえにも、流通のしくみが表れています。写真: Dandy1022(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

04

広告とブランド: 知ってもらい、選び続けてもらう

どんなによい商品でも、知られなければ買ってもらえません。日本では江戸時代から、引札と呼ばれる広告のちらしが、得意先や街頭で配られていました。江戸では引札、京都や大阪などの上方では「散(ちらし)」と呼ばれました。

いまの広告の中心はインターネットです。電通の推計では、2021 年にインターネット広告費が、テレビ・新聞・雑誌・ラジオを合わせた広告費を初めて上回りました。2025 年には、日本の広告費 8 兆 623 億円のうち、インターネット広告費が初めて半分を超えて 50.2% になりました。

ブランドは、名前やマークが「この会社の商品なら安心」という信頼の印になったものです。一度の広告ではできず、品質やサービスの約束を守り続けることで育ちます。そのため、ブランドは会社の大切な財産として扱われます。

知らせる工夫と約束を守り続けることの両方が、選ばれ続ける力になります。

クイズ市場と顧客のクイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q12025 年の日本の広告費のうち、インターネット広告費が占めた割合は?

  2. Q22024 年、物の買い物のうちネット通販で買われた割合(EC 化率)は?

  3. Q3マーケティングの 4P のうち「Place」が指すものは?

0 / 3 問に回答
川を進む外輪の蒸気船を描き、上の部分に文章を刷った、横長の明治時代のちらし
1877 年(明治 10 年)、蒸気船「通運丸」の運航の始まりを知らせた引札。引札は江戸時代に登場し、昭和の初めごろまで作られました。写真: 山崎年信(Public domain・Wikimedia Commons)

高校生のうちに試せること

  • 同じ種類の商品を 3 つ選んで STP を考える

    飲み物やお菓子など、同じ種類の商品を 3 つ選び、パッケージや値段、売っている場所から「だれに向けた商品か」を考えてみましょう。友だちと答えを比べると、ポジショニングのちがいが見えてきます。

  • 「日本の広告費」をグラフで読む

    電通が毎年公表している「日本の広告費」は、だれでも無料で読めます。テレビ、新聞、インターネットなど、媒体ごとの広告費が年ごとにどう変わったかを確かめてみましょう。

    2025 年 日本の広告費(電通)
  • 友だち 5 人に、最近買った物を聞く

    最近買った物について、どこで知り、何と比べ、なぜ決めたかを 5 人に聞いてみましょう。答えを「気づく・調べる・比べる・買う」に分けて並べると、消費者行動の研究の入口になります。

「市場と顧客」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 64 件から探せます。

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よくある質問

マーケティングは、広告の仕事のことですか?

広告はマーケティングの一部です。マーケティングは、だれに何を売るかを決め、商品・値段・売る場所・知らせ方を組み合わせて考える、もっと広い活動です。

マーケティングでも、数字やデータは使いますか?

よく使います。アンケートの集計や売れ行きのデータの分析には、統計学の知識が欠かせません。多くの大学では、マーケティング・リサーチや統計学の授業で、表計算ソフトなどを使った分析を学びます。