図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 3
経営企画・コンサルティング
会社の数字と市場の動きを分析して、どの事業に力を入れるかを考え、経営者に提案する仕事です。会社の中で考えるのが経営企画、外から手伝うのがコンサルタントで、中小企業を支える国家資格の中小企業診断士もあります。

ひとことで言うと
試合の前に作戦を練るマネージャー
相手チームの試合の記録を集め、自分たちの強みと弱みを書き出し、次の試合の作戦を監督に提案する。経営企画やコンサルタントは、会社という「チーム」のために、これを数字と市場の分析で行います。決めるのは経営者で、決めやすい材料をそろえるのが仕事です。

01
どんな仕事?: 会社の「作戦」を考える
経営企画は、社長などの経営者のすぐそばで、会社全体の作戦を考える部署です。数年先を見通した計画づくりや、来年の予算の取りまとめを受け持ちます。新しい事業を始めるか、ほかの会社を買うかといった大きな判断の材料も用意します。
コンサルタントは、会社の外から課題の解決を手伝う専門家です。相談を受けた会社のデータを集めて原因を探り、解決策を提案します。売上をのばす作戦、仕事の進め方の見直し、IT の導入など、扱うテーマはさまざまです。
中小企業診断士は、中小企業の経営を診断して助言する専門家として、経済産業大臣の登録を受ける国家資格です。町工場や商店街のお店、地域の旅館など、身近な会社の相談にのります。
どの仕事も、経営者が「決める」ための材料をそろえる仕事です。
図解3 つの仕事の違い
経営企画
- 会社の中から作戦を考える
- 計画と予算をまとめる
- 経営者の判断を支える
コンサルタント
- 会社の外から課題を解く
- データで原因を探る
- 解決策を提案する
中小企業診断士
- 中小企業の経営を診断する
- 国に登録される国家資格
- 身近な会社の相談にのる

02
経営学が生きる場面: 数字を分けて原因を探す
コンサルタントがよく使うのが、大きな数字を小さな要素に分けて考える方法です。たとえばお店の売上は、「お客さんの数(客数)× 1 人あたりの買い物の金額(客単価)」に分けられます。売上が落ちたとき、どちらが減ったのかが分かれば、打つべき手が見えてきます。
客数が減ったなら、新しいお客さんに知ってもらう工夫が必要です。客単価が下がったなら、もう 1 品買いたくなる商品や組み合わせを考えます。こうした考え方の土台は、大学の経営戦略論やマーケティング論、管理会計で学びます。
分析では、先に「たぶんこれが原因だ」という仮説を立て、それを確かめるデータを集めます。何もかも調べるより、早く答えに近づけるからです。仮説が外れたら、立て直して確かめ直します。数字だけでは分からないこともあるので、現場で話を聞く ことも欠かせません。
数字を分けて仮説を立てると、原因と打ち手が見えてきます。
図解商店街の和菓子店の売上を立て直す(例)
- 1売上を「客数 × 客単価」に分けて調べる
- 2客数は変わらず、客単価が下がったと分かる
- 3店で話を聞き、手みやげ用の箱が売れていないと知る
- 4季節の詰め合わせと予約の受け付けを提案する

03
中小企業を支える国家資格: 中小企業診断士
中小企業診断士になるには、まず 1 次試験に合格します。科目は、経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策の 7 つです。会社の作戦からお金、法律、IT まで、経営に必要な知識を広く問われます。
1 次試験に合格すると、中小企業の事例をもとに考える 2 次試験(筆記)に進めます。合格したあと、実際の会社を診断する実務補習か実務に 15 日以上 取り組むと、登録を受けられます。
国は、中小企業の経営相談の窓口として、47 都道府県に「よろず支援拠点」を置いています。経営のあらゆる相談に、何度でも無料で応じる窓口です。地域の会社を支える専門家が、こうした場所でも活躍しています。
経営の知識を広く身につけ、地域の会社を支える資格です。


04
独立した中小企業診断士の 1 日(例)
ここでは、独立して働く中小企業診断士の 1 日の例を紹介します。1 日のうちに、業種の違う何社もの会社とかかわるのが、この仕事の特徴です。
午前中は、地域の支援機関の窓口で、開業を考えている人の相談にのったあと、商店街のお店を訪ねます。午後は、取引のある町工場で、社長と一緒に来年の計画を考えます。
夕方は、訪問で聞いた話と決算書の数字をもとに、提案の資料をまとめます。夜には、経営者向けのセミナーで講師をつとめることもあります。
いろいろな業種の会社にかかわれるのが、この仕事の面白さです。
図解独立した中小企業診断士の 1 日(例)
- 9:00窓口で相談開業したい人の話を聞く
- 11:00お店を訪問売り場を見て店主と話す
- 12:00昼休み
- 13:30工場で打ち合わせ社長と来年の計画を考える
- 16:00資料づくり決算書を読み、提案をまとめる
- 18:30セミナーの講師経営者に売上の分析を教える


05
向いている人と入り方・その先
経営企画の部署には、営業や経理などで会社の仕事を経験してから移ることが多くあります。コンサルティング会社には、新卒で入る人も、ほかの会社で経験を積んでから移る人もいます。どちらも、決まった資格は必要ありません。
大学では、経営戦略論や経営組織論、会計(とくに管理会計)、統計学が直接役立ちます。ゼミで実在の会社の事例を分析し、改善の案を発表する経験は、そのまま仕事の練習になります。
人の話を聞くのが好きな人、ものごとを「なぜ?」と分解して考えるのが好きな人に向いています。経験を積むと、経営企画の責任者から役員や社長に進む人がいます。コンサルタントとして独立する人や、業績が悪くなった会社を立て直す専門家になる人もいます。
大学のゼミでの事例研究が、仕事の進め方の練習になります。
図解コンサルタントの仕事の進め方(例)
- 1話を聞く経営者と現場の悩みを聞く
- 2数字を集める売上や費用のデータを調べる
- 3原因を絞る数字を分けて仮説を立てる
- 4提案する打ち手と効果の見込みを示す
- 5一緒に進める実行を手伝い、結果を確かめる
高校生のうちに試せること
身近なお店の売上を分けて考える
よく行くお店を 1 つ選び、平日と休日で、客数と客単価がどう違いそうかを予想してみましょう。お店の人に話を聞けたら、予想と比べてみてください。
会社の決断の理由を考える
新聞やニュースで、会社が新しい事業を始めた、または事業をやめたという記事を 1 つ選びましょう。なぜその判断をしたのかを、記事に出てくる数字を手がかりに考え、自分なら経営者にどう説明するかを書いてみてください。
経営相談の事例を読む
国が全国に置く無料の経営相談の窓口「よろず支援拠点」のサイトでは、全国の支援事例を公開しています。どんな悩みが、どんな工夫で解決したのかを読んでみましょう。
よろず支援拠点(中小企業基盤整備機構)
「経営企画・コンサルティング」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 10 件から探せます。
よくある質問
コンサルタントになるには、どの学部がよいですか?
決まった学部はありません。経営学部や経済学部のほか、法学部や理工学部から進む人もいます。どの学部からでも、数字を読む力と、相手の話を聞いて考えを整理する力が求められます。
中小企業診断士の試験は、大学生でも受けられますか?
受けられます。法令が定める受験の条件は、2 次試験を受けられるのが「1 次試験に合格した人」に限られることだけです。1 次試験には、年齢や学歴の条件がありません。
経営企画とコンサルタントは、何が違いますか?
経営企画は 1 つの会社に深くかかわり、決めたことを最後まで見届けられます。コンサルタントは、いろいろな会社や業界の課題にふれられます。経営企画からコンサルタントへ、またはその逆へ移る人もいます。