大学カタログ

図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 1

1 年: 経営の基本を知る

経営学入門・簿記・マーケティング入門・統計学入門と、少人数の演習から始まる 1 年です。会社やお店を「組織」「お金」「お客さん」「データ」の 4 つの面から見る目を育てます。

春のキャンパスで、商品の試作品と帳簿を囲み、チームで企画を話し合う経営学部の新入生たち

ひとことで言うと

野球のスコアブックをつける

スコアブックをつけておくと、試合が終わってから、どの回に何が起きたかを再現できます。簿記は、会社のお金の動きのスコアブックです。1 年で記録の付け方を覚えると、会社の 1 年間の成績を自分で読めるようになります。

01

1 年の専門科目: 会社を 4 つの面から見る

1 年の専門科目は、経営学入門・簿記・マーケティング入門・統計学入門が中心です。東京理科大学の経営学科では、経営学入門・マーケティング入門・会計学入門・ファイナンス入門の 4 つが 1 年の必修科目です。どの科目にも演習が付き、講義で聞いたことをすぐに問題で確かめます。

法政大学の経営学部では、組織論入門・戦略論入門・マーケティング入門・ファイナンス入門・簿記入門・統計学入門などを 1 年から学べます。科目の名前は違っても、組織・お金・お客さん・データという 4 つの面から会社を見る点は共通しています。

コンビニのお弁当の棚を例にすると、4 つの面の違いが分かります。誰が発注を決め、誰が棚に並べるかという役割分担は組織の問題です。仕入れと売上の記録は会計、どんなお客さんが何を選ぶかはマーケティング、曜日や天気による売れ方の違いは統計で考えます。

これが分かると、毎日立ち寄るお店の棚が、会社の判断の積み重ねに見えてきます。

1 年の科目は、2 年からの経営戦略論や財務会計の土台になります。

図解1 年で学ぶ専門の科目(例)

1 年の専門科目
  • 経営学入門組織と戦略の基本
  • 簿記入門取引を記録して決算書を作る
  • マーケティング入門お客さんに選ばれるしくみ
  • ファイナンス入門株式・債券と、お金の時間の価値
  • 統計学入門データを整理し、傾向をつかむ
コンビニの冷蔵の棚に、何種類ものお弁当とサンドイッチが段ごとに並んでいる
コンビニのお弁当の棚。何を何個仕入れて、どこに並べるかは、お店と会社の判断です。経営学の 1 年は、こうした判断を見る目を育てます。写真: Martin Lewison(CC BY-SA 2.0・Wikimedia Commons)

02

簿記の授業: お金の動きを左右に分けて書く

1 年に手を動かして学ぶ科目の代表が、簿記です。法政大学の簿記入門は、初めて学ぶ学生を対象に、帳簿の付け方と決算書(財務諸表)の作り方を教える科目です。日商簿記検定 3 級の合格と、2 級の準備を目標にしています。

簿記では、1 つの取引を左と右に分けて記録します。これを仕訳といいます。文化祭の模擬店で材料を現金 5,000 円で買ったら、左に「仕入 5,000 円」、右に「現金 5,000 円」と書きます。何が増えて何が減ったかを 2 つの面から書くので、記録の間違いに気づきやすくなります。

日本で最初に出版された西洋式の簿記の本は、福澤諭吉が訳した『帳合之法』(1873 年)です。題名のとおり、福澤は Book-keeping を「帳合」と訳しました。簿記の用語を初めて日本語にすることに苦心したと、後に述べています。

日本学術会議の参照基準は、簿記では勘定科目を覚えるだけでなく、伝票を処理して決算書を作れるまでの技能が求められるとしています。記録から決算書まで、自分の手で作れることが、1 年の簿記の目標です。

簿記は、2 年からの財務会計・管理会計の入口です。

図解仕訳の例: 文化祭の模擬店

入力材料を現金 5,000 円で買い、焼きそばを 1 皿 200 円で 60 皿売った
  1. 1買う: 左に仕入 5,000 円、右に現金 5,000 円
  2. 2売る: 左に現金 12,000 円、右に売上 12,000 円
  3. 3左右の合計が同じになっているか確かめる
  4. 4売上から仕入を引いて、もうけを出す
結果もうけは 7,000 円。お金の動きを記録だけで説明できる
「大福帳」などと書かれた古い和とじの帳簿が、何冊も積み重ねられている
長野県諏訪市の酒蔵に残る古い帳簿。大福帳は、江戸時代の商家が取引を記録した帳簿の一つです。明治に入ると、西洋式の簿記が広まっていきました。写真: ひずみ(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

03

演習とチームの課題: 1 年から企業に提案する

1 年には、少人数で調べて発表する演習も始まります。法政大学の入門演習は、大学での勉強に欠かせないアカデミック・スキルの基礎を身につけ、具体的なテーマを実際に調べて発表する授業です。

企業から出された課題に、1 年生がチームで答える授業もあります。立教大学の経営学部では、入学してすぐの 1 泊 2 日のキャンプから、連携企業の課題に取り組む授業が始まります。2025 年度は、ビームスから「BEAMS らしい“Happy な体験”を生み出す新たな店舗の形を提案せよ」という課題が出ました。

授業では、業界を調べ、会社の強みと弱みなどを整理する「SWOT 分析」で課題を深めます。ポスターの中間発表で意見をもらって案を直し、90 チームが出る学内コンテストに挑みます。代表に選ばれたチームは、企業を訪ねて直接提案します。

教室でビジネスを体験する授業には、長い歴史があります。今の一橋大学のはじまりは、1875 年にできた商法講習所です。1876 年には教室の中に「バンク帳場」(銀行の窓口)や郵便局などを設け、取引を模擬で体験させました。頭で覚えた知識を、手と口を使って試すのが、経営学の学び方です。

図解企業の課題に答える流れ(例)

  1. 1業界を調べるチームで役割を決めて情報を集める
  2. 2強みと弱みSWOT 分析で会社の特徴を整理する
  3. 3中間発表ポスターで案を見せて意見をもらう
  4. 4案を直す講評をもとに企画を練り直す
  5. 5本番の発表学内コンテストや企業で提案する

04

1 年生の 1 週間: 講義・演習・検定の勉強

下の図は、経営学部の 1 年生の 1 週間の例です。専門の入門科目に、英語などの外国語、教養の科目、少人数の演習が加わります。実際の科目や曜日は大学によって異なります。

法政大学の情報学入門のように、表計算ソフトで表やグラフを作り、発表の資料にまとめる授業もあります。売上の表を作る、アンケートを集計するといった作業は、2 年からの授業やゼミで何度も使います。

授業の予習・復習に加えて、簿記の検定に向けて問題集を進める学生もいます。サークルやアルバイトの予定も合わせて、1 週間の計画を自分で立てることが、大学生活の第一歩です。

図解1 年生の 1 週間(例)

  1. 月経営学入門・英語身近な会社の戦略を例で学ぶ
  2. 火簿記入門仕訳と決算書の問題を解く
  3. 水入門演習チームで業界を調べて発表する
  4. 木統計学・情報学表計算で売上の表とグラフを作る
  5. 金マーケティング入門商品が選ばれる理由を考える
  6. 土・日検定・サークル簿記の問題集を進める

05

つまずきやすい点と乗り越え方

1 年でつまずきやすいのは、簿記の用語です。「仕入」「売掛金」「減価償却」など、初めて見る言葉が一度に出てきます。用語を暗記するより、家計簿やお小遣い帳の記録を仕訳に書き直してみると、意味が早くつかめます。

数学に不安を感じる人もいます。経営学部でも数学を使う大学はあり、東京理科大学の経営学科は、統計学・線形代数学・微分積分学から選んで学ぶ形です。一方で、法政大学の統計学入門のように、データの整理と要約から始める授業もあります。

高校の数学 I で学ぶ「データの分析」は、統計学入門の入口です。教科書の例題を、身近な数字に置き換えて解き直すと、理解が定着します。

クイズ1 年の学びクイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q1福澤諭吉が『帳合之法』(1873 年)で、Book-keeping に当てた訳語は?

  2. Q21876 年、商法講習所(今の一橋大学のはじまり)が教室の中に設けたものは?

  3. Q3簿記で、1 つの取引を左と右の 2 つに分けて記録することを何という?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • お小遣い帳を仕訳で書き直す

    1 週間分のお小遣いの出入りを、左右 2 列の表に書き直しましょう。「お菓子を現金で買った」なら、左にお菓子代、右に現金です。左右の合計がそろうか確かめると、簿記の考え方がつかめます。

  • 日商簿記で何ができるかを確かめる

    日本商工会議所のサイトでは、簿記初級・3 級・2 級などで、どんなことができるようになるかが紹介されています。気になる級の説明を読み、図書館で入門の教科書を 1 冊選んで、最初の章を読んでみましょう。

    日商簿記検定(日本商工会議所)
  • コンビニの棚を 4 つの面から観察する

    近くのコンビニで、お弁当やお菓子の棚を見てみましょう。並べる量を誰が決めるか(組織)、値段はいくらか(会計)、どんな人が買うか(マーケティング)、時間帯で売れ方は変わるか(統計)を、メモにまとめます。

  • 好きな会社を SWOT 分析で整理する

    好きなお店や会社を 1 つ選び、強み・弱み・追い風(機会)・向かい風(脅威)を 4 つのマスに書き出しましょう。企業の課題に答える 1 年生の授業でも、最初に使う方法です。

「1 年: 経営の基本を知る」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 92 件から探せます。

研究室をすべて見る(33 件)

よくある質問

簿記は、高校で習っていなくても大丈夫ですか?

大丈夫です。法政大学の簿記入門は、初めて簿記を学ぶ学生を対象に、帳簿の付け方から教えています。2 年からは、日商簿記 2 級の範囲を学ぶ授業を置く大学もあります。

1 年から企業と関わる授業はありますか?

ある大学もあります。立教大学の経営学部では、入学してすぐに、連携企業の課題にチームで取り組む授業が始まります。企業と組む授業の時期は大学によって異なるので、カリキュラムで確かめてください。

経営学部でも数学は必要ですか?

使う場面はあります。統計学では売上やアンケートのデータを扱い、東京理科大学の経営学科のように、線形代数学や微分積分学を学ぶ大学もあります。高校の数学 I の「データの分析」に慣れておくと、授業が分かりやすくなります。