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図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 3

分析・品質管理・環境

製品や食品、水や空気に含まれる目に見えない物質を測り、安全で決まりどおりにできているかを確かめる仕事です。1 L の水の中の、1 億分の数グラムという、ごくわずかな物質まで見分ける技術が、暮らしの安心を支えています。

川辺で水を採る大学生と、分析装置が並ぶ明るい検査室で、試料の小瓶のラックとグラフの画面を確かめる白衣の若い分析技術者たち

ひとことで言うと

試合を支える審判とビデオ判定

スポーツの試合は、審判が決まりどおりに判定するから成り立ちます。きわどい場面ではビデオで確かめ、判定の記録も残します。分析の仕事も、測った値を決まりと比べて合否を判断し、その根拠をデータで残す、社会の審判のような役目です。

01

どんな仕事?: 見えない物質を測り、安全を確かめる

工場でつくる製品は、決まった成分と品質でなければなりません。品質管理の担当者は、原料や製品を毎日のように分析し、成分の量や不純物が基準の中に収まっているかを確かめます。基準から外れた物は出荷しません。

食品や水、空気も分析の対象です。食品に残る農薬、水道水に含まれる物質、川や海の水質、空気の汚れには、国が基準を定めています。検査機関や、測定を仕事にする会社の分析技術者が、こうした物質を測っています。

分析の結果は、製品の回収や工場の改善、国や自治体の対策を決める根拠になります。まちがった値は、社会の判断をまちがえさせることになるため、正確さと記録が何より大切にされます。

分析の値は、社会が安全を判断するための根拠になります。

図解分析が活躍する 3 つの場面

品質管理

  • 原料と製品の成分を測る
  • 不純物が基準内かを確かめる
  • 工場の工程の改善につなげる

食品・水道

  • 食品に残る農薬などを調べる
  • 水道水が基準に合うかを測る
  • 結果を記録し、証明書にする

環境

  • 川や海、地下水の水質を測る
  • 空気の汚れを見守る
  • 工場の排水や排ガスを調べる

02

1 兆分の 1 グラムを見分ける

分析の世界では、ごくわずかな量を表す単位を使います。1 ng(ナノグラム)は 10 億分の 1 g、1 pg(ピコグラム)は 1 兆分の 1 g です。濃さを表す ppm は 100 万分の 1、ppb は 10 億分の 1 を表します。

2026 年 4 月から、水道水の基準に、PFOS と PFOA という有機フッ素化合物が加わりました。2 つを合わせて 1 L あたり 50 ng 以下という基準です。水道事業者には、おおむね 3 か月に 1 回以上の検査が義務づけられました(環境省)。

空気中のダイオキシン類の基準は、1 年の平均で 1 m³ あたり 0.6 pg-TEQ 以下です(TEQ は毒性の強さで換算した量)。これほど小さな値を正しく測るには、大量の空気や水から目当ての物質だけを集め、ほかの物質と分けてから測る技術が欠かせません。

測る量が小さいほど、集める・分ける・比べる技術が大切になります。

図解ごくわずかな量を表す単位

  1. mg(ミリグラム)1 g の 1,000 分の 1
  2. μg(マイクログラム)1 g の 100 万分の 1
  3. ng(ナノグラム)10 億分の 1 g。水道水の PFOS・PFOA の基準
  4. pg(ピコグラム)1 兆分の 1 g。大気のダイオキシン類の基準

03

化学が生きる場面: 川の水が、1 つの値になるまで

川の水を測る仕事を例に、分析の流れを見てみます。まず、決められた方法で水を採り、変化しないよう冷やして運びます。測る物質によって、使う容器や加える薬品まで決まっています。

実験室では、測りたい物質だけを取り出して濃くする「前処理」をします。次に、クロマトグラフィーなどで成分を分け、質量分析計などで量を測ります。濃さの分かっている標準の液と比べることで、はじめて正しい値が出ます。

大学の分析化学で学ぶ誤差の扱いや、標準の液を使った検量線、何も入っていない試料(ブランク)を測る考え方は、そのまま現場の技術です。2024 年度、国や自治体は全国の 7,055 地点で、川や湖、海の水質を測りました。湖の汚れの指標(COD)で環境基準を満たした水域は、50.8% にとどまっています(環境省)。

採水から記録まで決まった手順を守ることで、値の信頼が生まれます。

図解川の水を測る流れ(例)

入力川の水に、基準を超える物質が含まれていないか?
  1. 1決められた方法で水を採り、冷やして運ぶ
  2. 2測りたい物質を取り出して濃くする
  3. 3成分を分け、標準の液と比べて量を測る
  4. 4値を確かめ、計量証明書にまとめる
結果基準と比べた結果が、自治体や会社の対策の根拠になる
木々に囲まれた静かな川の岸辺で、2 人の研究者がかがんで水を調べている
オーストラリアの研究機関(CSIRO)の研究者が、川で採った水を調べている様子。まちづくりが川の水に与える影響を知るため、水質を続けて測っています。写真: David McClenaghan, CSIRO(CC BY 3.0・Wikimedia Commons)

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環境分析の技術者の 1 日(例)

ここでは、水や空気の測定を仕事にする会社で働く分析技術者の 1 日の例を紹介します。濃度などを測って証明書を出す会社は、計量法にもとづいて都道府県の登録を受けた「計量証明事業者」です。

午前は、川や工場の排水口で水を採ることもあります。午後は実験室で前処理をし、分析装置で測ります。装置は試料を自動で次々に測れますが、標準の液で毎回きちんと測れているかを確かめるのは人の仕事です。

計量証明事業者は、事業所ごとに、環境計量士などに計量の管理を受け持たせる決まりです。出てきた値に不自然な点がないかを経験のある技術者が確かめてから、証明書が発行されます。

測る・確かめる・記録する、を毎日正確にくり返します。

図解環境分析の技術者の 1 日(例)

  1. 8:30準備採水の道具と保冷箱を確かめる
  2. 9:30採水川の決まった地点で水を採る
  3. 12:00昼休み
  4. 13:00前処理ろ過や濃縮で測る物質を取り出す
  5. 14:30測定標準の液と試料を装置で測る
  6. 16:30データの確認値に不自然な点がないかを見直す
  7. 17:15報告書計量証明書の下書きをつくる

05

向いている人と入り方・その先

化学科や応用化学科、環境系の学科、農芸化学科、薬学部などから目指せます。分析装置のしくみやデータの扱いを深く学ぶため、修士課程まで進んでから就職する人もいます。

関係する資格もあります。環境計量士(濃度関係)は経済産業省の国家試験で、2025 年 12 月の試験では 1,789 人が受けて 300 人が合格しました。合格率は 16.8% です。毒物や劇物を扱う事業所に置く責任者には、大学などで応用化学に関する学課を修めると、試験を受けずになれます(毒物及び劇物取締法)。

細かい数字の違いに気づける人、決まった手順をていねいに守れる人に向いています。経験を積むと、新しい分析の方法をつくる仕事や、会社全体の品質を守る品質保証の責任者、検査機関の研究員などへ進む道があります。

正確さを積み重ねた先に、専門家として頼られる道があります。

クイズ分析と環境のクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q12026 年 4 月から、水道水の PFOS と PFOA の合計は 1 L あたり何以下と決まった?

  2. Q22024 年度、国や自治体が川や湖、海の水質を測った地点は、全国でおよそいくつ?

  3. Q32025 年 12 月の環境計量士(濃度関係)の国家試験。合格率はおよそ?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 近くの川の水質を調べる

    環境省の「水環境総合情報サイト」では、国や自治体が測った川や湖、海の水質を地図から探せます。家の近くの川の測定地点を探し、上流と下流で値を比べてみましょう。

    水環境総合情報サイト(環境省)
  • 「まぜるな危険」の理由を考える

    塩素系の漂白剤やカビ取り剤には、「まぜるな危険」の表示があります。酸性タイプの製品とまざると、有毒な塩素の気体が出るためです。実際にまぜることはせず、表示を読んで、どんな反応が起きるのかを調べてみましょう。

  • 簡易水質検査で川の水を比べる

    理科の先生に相談して、試薬の色の変化で水質を調べる簡易水質検査キットを使ってみましょう。川の上流と下流、雨の前と後の水を比べて表にし、違いの理由を考えると、分析の仕事の入口に立てます。

「分析・品質管理・環境」に関連するコミュニティ

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よくある質問

分析は、機械が自動でやってくれるのではありませんか?

装置は試料を自動で次々に測れますが、何をどの方法で測るか、前処理をどうするか、出てきた値が正しいかを判断するのは人です。分析化学の知識があるからこそ、おかしな値に気づけます。

環境計量士の試験は、学生のうちに受けられますか?

国家試験は、学歴や年齢の制限なく受けられます。ただし、計量士として登録するには、試験の合格に加えて、1 年以上の実務の経験か、決められた講習の修了などが必要です(経済産業省)。

品質管理と品質保証は、どう違いますか?

品質管理は、製品を基準どおりにつくり、検査で確かめる活動です。品質保証は、それも含めて、お客さんに約束した品質を会社全体で守るしくみをつくる仕事です。呼び方や分け方は会社によって異なります。