図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 4
調査・分析の専門家
シンクタンクやコンサルティング会社で経済を予測・分析し、企業や国に提案する仕事です。大学院に進み、大学や研究機関で経済学の研究者になる道もあります。

ひとことで言うと
天気予報のように、景気の先を読む
天気予報は、気圧や気温のデータから明日の天気を予想します。エコノミストは、生産や消費、物価などのデータから、景気が良くなるか悪くなるかを予想します。予想を伝えて、企業や国がそなえられるようにする点も似ています。

01
どんな仕事?: エコノミスト・コンサルタント・研究者
エコノミストは、シンクタンクや金融機関などで経済の統計を分析し、景気や物価の見通しを発表します。新聞やテレビで、経済の動きを解説する人もいます。
コンサルタントは、企業や国・自治体から相談を受け、課題を分析して解決策を提案します。国や自治体から調査を任され、政策の効果を調べる仕事もあります。中小企業の経営の相談にのる専門家としては、国が登録する中小企業診断士の資格があります。
研究者は、大学や研究機関で、まだだれも答えを出していない問いに取り組みます。研究の成果は論文にまとめ、ほかの研究者の審査(査読)を経て学術誌にのります。
どの仕事も、データから「なぜ」と「これから」を考える点で共通しています。
図解3 つの仕事の違い
エコノミスト
- 統計から景気を読む
- 見通しを発表する
- ニュースで解説する
コンサルタント
- 相談を受けて課題を分析する
- 解決策を提案する
- 国や自治体の調査を受け持つ
研究者
- 新しい問いを立てる
- 論文で成果を発表する
- 大学で教える

02
景気を予測する: エコノミストの仕事道具
景気を予測するには、たくさんの統計を組み合わせます。代表的なのが、内閣府が 3 か月ごとに発表する GDP(国内総生産)の速報です。国内で一定の期間に新しく生み出された物やサービスの価値の合計で、経済の大きさを表す数字です。
日本銀行の「短観」も欠かせません。全国の約 9 千社に、毎年 3・6・9・12 月に、景気の実感や設備投資の計画などをたずねる調査です。結果は、原則として調査の翌月のはじめ(12 月の調査はその月の半ば)の午前 8 時 50 分に発表されます。
エコノミストは、こうした統計をもとに、経済のしくみを数式で表したモデルをつくります。原油の値段や海外の景気などの前提を置いて計算し、外れたときはどこが違ったのかを調べてモデルを改良します。
予測は当てることだけでなく、なぜそうなるかを説明することに価値があります。
図解来年度の景気を予測する
- 1最新の統計を集めて整える
- 2過去のデータから経済のしくみを式で表す
- 3原油の値段や海外の景気などの前提を置く
- 4計算した結果を確かめ、理由を言葉で説明する

03
研究者の道: 経済のしくみを新しく解き明かす
経済学の研究では、数式のモデルとデータの分析で、社会のしくみを確かめます。1949 年には、ニュージーランド出身の経済学者ビル・フィリップスが、水の流れで国の経済を表す機械 MONIAC を発表しました。色のついた水がお金を表し、家計や政府などのタンクの間をめぐるようすを目で見られます。
いまはコンピュータで、もっと複雑なモデルを計算します。2026 年のノーベル経済学賞は、アメリカの大学で研究するロバート・ホールとマイケル・ウッドフォードに贈られました。家計や企業の判断を土台にした経済のモデルをつくり、景気の山と谷をならす政策を打ちやすくした研究です。
研究で分かったことは、政府や中央銀行の政策にも生かされます。研究者が、国の審議会の委員として政策づくりにかかわることもあります。
研究は、教科書に新しい 1 ページを加え、政策を変える力を持っています。


04
シンクタンクのエコノミストの 1 日(例)
ここでは、シンクタンクで日本経済の予測を受け持つエコノミストの 1 日の例を紹介します。
大事な統計が発表される日は、朝から数字を読み込みます。予想と結果がずれたときは、その理由を探して、見通しを直すかどうかを考えます。
分析の結果は、レポートや講演で、企業や一般の人に伝えます。難しい内容を、だれにでも分かる言葉で話す力も大切です。
数字を読み、言葉にして伝えることのくり返しです。
図解シンクタンクのエコノミストの 1 日(例)
- 8:50統計の発表GDP や短観の新しい数字を確かめる
- 10:00データの分析予想とのずれの理由を調べる
- 12:00昼休み
- 13:00レポートの執筆景気の見通しを文章にまとめる
- 15:00取材への対応記者に数字の意味を説明する
- 17:00チームの会議来月の予測の前提を話し合う

05
向いている人と入り方・その先
シンクタンクやコンサルティング会社には、学部を卒業して新卒で入る人も、大学院を修了してから入る人もいます。研究者を目指す人は、大学院の修士課程(多くは 2 年)と博士課程(多くは 3 年)に進み、博士の学位を目指すのが一般的です。
大学では、マクロ経済学、計量経済学、統計学がとくに大事な科目です。ゼミや卒業論文でデータを集めて分析した経験は、そのまま仕事の練習になります。データを扱うためのプログラミング(R や Python など)も役に立ちます。
「なぜ?」を考え続けるのが好きな人、数字の裏にある人の動きを想像できる人に向いています。経験を積むと、チーフエコノミストや研究部門の責任者、大学の教授、国際機関のエコノミストなどへ進む道があります。
ゼミと卒業論文での分析が、研究と仕事の最初の一歩です。
図解研究者への道(例)
- 1学部で学ぶゼミと卒業論文で分析を経験
- 2修士課程研究の方法を身につける
- 3博士課程新しい成果を論文にまとめる
- 4大学・研究機関教えながら研究を続ける
高校生のうちに試せること
短観の結果を読んでみる
日本銀行のホームページで、短観の結果を見られます。景気が「良い」と答えた会社の割合から「悪い」の割合を引いた「業況判断 DI」が、前回からどう動いたかを確かめ、新聞の解説と比べてみましょう。
短観(日本銀行)統計ダッシュボードでグラフをつくる
総務省統計局の統計ダッシュボードでは、国や地域の主な統計をグラフで手軽に見られます。気になる数字を 2 つ選び、同じ時期に一緒に動いているかを見てみましょう。
統計ダッシュボード(総務省統計局)統計検定に挑戦する
日本統計学会が公式に認定する検定で、4 級から 1 級まであります。データを読む力を確かめる目標として、まずは 4 級や 3 級から始めましょう。
統計検定
「調査・分析の専門家」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 52 件から探せます。
園芸流通経済学研
千葉大学(千葉県)
園芸学部・園芸流通経済学
食料経済・政策学
神戸大学(兵庫県)
食料環境経済学・髙田 晋史 准教授
公共政策・実証経済学研究室
横浜国立大学(神奈川県)
都市科学部 環境リスク共生学科・実証経済学・公共政策・奥山 尚子 准教授
データ分析で災害や政策が人や企業の選択に与える影響を探る。
漁業経済学研究分野
九州大学(福岡県)
農業資源経済学・髙橋 義文 准教授
食料環境政策学
岡山大学(岡山県)
農学部 環境生態学コース・農業経済学・生方 史数 教授
国内外の食料・環境政策を社会科学の視点から研究する。
農業問題研究学研究分野
九州大学(福岡県)
農業資源経済学・渡部 岳陽 准教授
学生団体・機関はまだ掲載していません
よくある質問
エコノミストになるには資格が必要ですか?
決まった資格はありません。多くの人は、大学や大学院で経済学と統計学を学び、シンクタンクや金融機関で経験を積みます。証券アナリストなどの資格を取る人もいます。
研究者になるには、何年くらいかかりますか?
大学の 4 年間のあと、多くの場合は修士課程 2 年と博士課程 3 年を経て、博士の学位を目指します。その後、大学や研究機関の研究職に応募します。進み方は分野や人によって異なります。
予測が外れることはないのですか?
外れることもあります。経済は、人の行動や海外の出来事で大きく動くからです。だからこそエコノミストは、どんな前提で予測したかを示し、新しいデータが出るたびに見直します。

