大学カタログ

図 4 学ぶために必要な科目・学問学ぶために必要な科目 1

英語

スペイン語やタイ語を専攻しても、英語の力は大学のあちこちで生きます。英語は世界の共通語であると同時に、フランス語やドイツ語など、ほかの言語を学ぶときの手がかりにもなります。

大学のラウンジで、色違いの辞書を広げて単語カードを並べる学生、家畜と肉の絵を線で結ぶ学生、窓の外の空港の管制塔と飛行機を指さす学生たち

ひとことで言うと

2 つ目の楽器を始めるとき

ピアノで楽譜の読み方を覚えた人は、ギターを始めても楽譜で迷いません。高校の英語で身につけた「主語」「時制」といった言葉のしくみの知識は、2 つ目、3 つ目の言語を学ぶときの楽譜の読み方になります。

01

英語以外を専攻しても、英語の力が生きる

外国語学部には、スペイン語やアラビア語など、英語以外の言語を専攻する学生が大勢います。それでも多くの大学では、専攻語と並んで英語の授業が続きます。言語学や地域研究の文献を読む場面、留学先で授業を受ける場面、ほかの国の学生と話す場面で、英語を使うからです。

英語は、仕事の現場でも共通の言葉として使われています。例えば国際民間航空機関(ICAO)は、操縦士の英語の力についての決まりを設けました。2008 年 3 月 5 日以降、国際線を飛ぶ操縦士は、英語の力の証明を受けることになっています。日本でも、国の「航空英語能力証明」の制度が 2006 年 4 月に始まっています。

英語には、もう 1 つの役割があります。ほかの言語を学ぶときの手がかりになることです。日本学術会議の参照基準(言語・文学分野)によると、外国語を学ぶときは、決まった用語で言葉のしくみが説明されます。例に挙がっているのは「音節」「主語」「時制」です。

高校の英文法で覚えた用語は、そのまま 2 つ目、3 つ目の言語を学ぶ道具になります。下の図のように、高校の英語のそれぞれの力が、大学の外国語学のどこかで使われます。

英語は世界の共通語であり、ほかの言語を学ぶ手がかりでもあります。

図解高校の英語が生きる場面

高校の英語
  • 英語コミュニケーション英語の文献や資料の要点をつかむ
  • 論理・表現ゼミの発表や留学先のレポート
  • 英文法の用語主語・時制で第二外国語を学ぶ
  • 英単語フランス語やドイツ語の手がかり
  • 英語の歴史英語学の授業で「なぜ」を解く
夕日に照らされて金色に光る円筒形の管制塔と、その横の空を飛ぶ小さな飛行機
夕暮れの羽田空港の管制塔。国際線を飛ぶ操縦士には、国際的な決まりで英語の力の証明が求められています。写真: Takayuki Suzuki(CC BY-SA 2.0・Wikimedia Commons)

02

beef はフランス語から: 英語の中のフランス語

1066 年、フランスのノルマンディー公ウィリアムがイングランドに攻め込み、イングランドの王になりました。「ノルマン・コンクエスト(ノルマン征服)」と呼ばれる出来事です。支配する側の言葉は、ノルマン人が話すフランス語になりました。

英語が再び社会の表に出てくるのは、13 世紀の後半です。そのころには、古い英語の単語の約 85% が失われ、フランス語を中心とする外来の言葉に置きかわっていたとされます。table、city、country、peace、war なども、フランス語から入った言葉です。

面白いのは、家畜と肉の呼び方です。生きている牛は古い英語から続く cow、牛肉はフランス語から来た beef です。豚の swine と豚肉の pork、羊の sheep と羊肉の mutton も同じ組み合わせです。今のフランス語では、bœuf は牛と牛肉、porc は豚と豚肉、mouton は羊と羊肉の両方を表します。英語では古い英語の言葉とフランス語から来た言葉が両方残り、動物と肉で使い分けるようになったのです。

つまり英語を学んだ人は、知らないうちにフランス語の単語を数多く知っているのです。フランス語を専攻したり、第二外国語に選んだりすると、英語の知識に助けられる場面がたくさんあります。

英語の単語を知っていると、フランス語の単語が近く見えてきます。

図解生きている動物と食卓の肉

動物(古い英語から)

  • cow(牛)
  • swine(豚)
  • sheep(羊)

肉(フランス語から)

  • beef ← bœuf
  • pork ← porc
  • mutton ← mouton
半円形のテーブルを囲んで座る人々と、料理を運ぶ人を、色の糸で縫い表した古い刺繍の布
1066 年のノルマン征服を刺繍で描いた「バイユーのタペストリー」の一場面。イングランドに渡ったノルマンディー公ウィリアムたちの食事の様子です。写真: Myrabella(Public domain・Wikimedia Commons)

03

三単現の s は、昔の英語の名残

中学で習う「三人称単数現在の s」は、He speaks English. の speaks に付く s です。なぜ he や she のときだけ s が付くのか、不思議に思った人もいるかもしれません。

実は、古い英語では、動詞は主語の人称と数に合わせて、すべての人称で語尾が変わっていました。その語尾が長い時間の中で消えていき、今の英語には三人称単数現在の -s だけが残りました。百科事典では、古い英語は語尾の変化が豊かな点で、今のドイツ語に似ていたと説明されています。

スペイン語では、今も動詞が主語に合わせて形を変えます。「話す」の hablar は、現在形で次のように変わります。hablo(私は)、hablas(君は)、habla(彼は)、hablamos(私たちは)、habláis(君たちは)、hablan(彼らは)です。英語の 2 通りに対して、6 通りの形があるのです。

三単現の s を通して、「人称によって動詞の形が変わる」という考え方はもう身についています。それがあれば、スペイン語やフランス語、ドイツ語の動詞の変化表も怖くありません。英語は、ヨーロッパの言語の文法への入口になります。

三単現の s で覚えた「人称」が、ほかの言語の動詞の入口になります。

図解「話す」の形を比べる

入力主語を変えながら「話す」と言ってみる
  1. 1今の英語: speak と speaks の 2 通り
  2. 2古い英語: すべての人称で語尾が違った
  3. 3スペイン語: hablo・hablas・habla など 6 通り
結果三単現の s は、昔の豊かな語尾の名残

04

英語学: foot が feet になるわけ

大学の英語学の授業では、高校で「例外」として覚えたことの理由を学びます。例えば、foot(足)の複数形は feet、goose(ガチョウ)は geese、mouse(ネズミ)は mice です。s を付けるのではなく、母音が変わります。

理由は、昔の英語の発音の変化にあります。foot の複数形には、もともと i の音を含む語尾が付いていました。その i の音に引っぱられて前の母音が変わり、のちに語尾が消えて、母音の違いだけが残りました。この変化を「ウムラウト」と呼びます。

同じ変化は、英語の親戚のドイツ語にも見られます。ドイツ語では、足の Fuß の複数形が Füße、ガチョウの Gans が Gänse、ネズミの Maus が Mäuse です。英語とドイツ語で、同じ単語が同じように形を変えるのです。

英語学では、ほかにも英語の歴史や音声学、文のしくみを学びます。they・their・them は、もとは北欧の言葉から入った言葉です。sky も北欧の言葉から入り、もとは「雲」という意味でした。どちらも英語の歴史の授業で出会う話です。

英語の「例外」には、歴史の中に理由があります。

図解foot が feet になるまで

入力foot(足)の複数形は、なぜ feet なのか
  1. 1昔は複数の語尾に i の音があった
  2. 2i の音に引っぱられて前の母音が変わった
  3. 3語尾が消え、母音の違いだけが残った
結果ドイツ語の Fuß → Füße も同じしくみ

05

苦手でも大丈夫: どこから学び直すか

英語が苦手でも、心配はいりません。英語以外の言語を専攻する場合、多くの大学では、専攻語を文字と発音の基礎から学び始めます。英語の授業も続くので、英語の力は大学に入ってからも伸ばしていけます。

学び直すなら、文の骨組みと動詞の形を確かめるのが近道です。主語と動詞の関係、三単現の s、過去形や完了形の作り方を見直すと、英語だけでなく、第二外国語の動詞の変化表も読みやすくなります。

英語以外の言語を専攻する人は、英語と専攻語の似た単語を並べてみる方法もあります。beef と bœuf、foot と Fuß のように並べると、単語どうしのつながりが見えてきます。2 つの言語を行き来する楽しさも分かります。

高校の「英語」の科目のページもあわせて読むと、高校 3 年間で学ぶことと、大学の学びのつながりが分かります。

文の骨組みと動詞の形から確かめれば、英語はほかの言語の入口になります。

クイズ英語と外国語のクイズ

答えを選ぶと、正解と解説が表示されます。

  1. Q1英語の beef(牛肉)は、もとはどの言語から入った言葉?

  2. Q2foot → feet と同じしくみで複数形をつくる英単語は?

  3. Q3英語の they・their・them は、もとはどこから入った言葉?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 英語・フランス語・ドイツ語の辞書を引き比べる

    ケンブリッジ大学出版の無料のオンライン辞書では、英語からフランス語・ドイツ語・スペイン語の訳を引けます。beef、foot、table などを引いて、英語と似ている単語、似ていない単語を探しましょう。

    Cambridge Dictionary
  • 不規則な複数形の理由を確かめる

    教科書から foot と feet のような不規則な複数形を集めましょう。ドイツ語の辞書 Duden で Gans(ガチョウ)を引くと、ドイツ語でも母音が変わる複数形 Gänse が見つかります。

    Duden「Gans」
  • 英語の歴史の入門書を 1 冊読む

    図書館で、英語の歴史(英語史)の入門書を探しましょう。三単現の s や不規則な動詞など、高校で例外として覚えたことの理由が見つかります。

「英語」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 204 件から探せます。

研究室をすべて見る(3 件)

よくある質問

英語が苦手でも、英語以外の言語を専攻できますか?

できます。多くの大学では、専攻語を文字と発音の基礎から学び始めます。入試で課される英語の範囲や配点は、大学や入試の方式によって異なるので、志望校の募集要項で確かめてください。

第二外国語を学ぶとき、英語の知識は役に立ちますか?

役に立ちます。フランス語やドイツ語には英語と似た単語が多く、主語や時制などの文法の用語もそのまま使えます。一方、韓国語のように、英語より日本語に近い語順の言語もあり、選ぶ言語によって英語の生き方は変わります。

英語学と英米文学は、どう違いますか?

英語学は、英語の音・文法・意味・歴史など、言葉そのもののしくみを調べます。英米文学は、英語で書かれた小説や詩、劇を読み解きます。どちらも高校の英文法と読む力が土台になります。