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図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 2

高 2: 生物で進化と分子を学ぶ

高 2 からは、4 単位の「生物」を選んで学べます。最初に生物の進化を学び、その目で細胞の中の分子、呼吸と光合成、遺伝子のはたらきと、遺伝子を扱う技術へと進む 1 年です。

高校の生物室で、赤い目と白い目の小さなハエが入ったガラス瓶をルーペで見比べる高校 2 年生たち、暗くした一角で黄緑色に光る試験管を囲む生徒、枝分かれした木の模型を指さして説明する生徒

ひとことで言うと

曲がった道は、昔の町の名残

古い町の道がくねくね曲がっているのは、昔の川や城の形の名残だと言われます。生き物の体や細胞のしくみにも、長い進化の歴史の名残があります。生物は、最初に進化を学び、その目で分子や遺伝子のしくみを読み解いていく科目です。

01

高 2 の科目: 4 単位の生物と、文系・理系の選び方

「生物」は標準 4 単位で、原則として生物基礎の後に学びます。内容は、生物の進化、生命現象と物質、遺伝情報の発現と発生、生物の環境応答、生態と環境の 5 つです。高 2 と高 3 に分けて学ぶ学校もあり、単元の順や時間数は学校によって異なります。

生物基礎との違いは、しくみを分子の動きまで追うことです。生物基礎で「呼吸で ATP ができる」と学んだことを、生物では解糖系・クエン酸回路・電子伝達系の流れで説明します。1 つの受精卵から、場所ごとに違う遺伝子がはたらいて体ができるしくみも学びます。

高 2 から文系・理系のコースに分かれる学校では、高 1 のうちに生物を選ぶかどうかを決めます。共通テストの令和 8 年度の受験者数を見ると、物理は 14 万 5,203 人、化学は 18 万 1,584 人でした。生物は 5 万 6,314 人です。理系では、化学と、物理か生物のどちらかを組み合わせて学ぶ学校もあります。

医学・薬学・農学・看護・心理学など、生き物や人の体を扱う学部はたくさんあります。ただし、入試で生物を選べるか、物理が必要かは、大学や学部によって異なります。志望する学部の募集要項で、理科の指定科目を確かめてから選ぶと安心です。

生物は、生物基礎で見た共通のしくみを、進化と分子の目で深める科目です。

図解生物基礎と生物で学ぶこと

生物基礎(2 単位)

  • 生物の共通性と多様性
  • 代謝と ATP・DNA のあらまし
  • 神経・ホルモン・免疫
  • 植生の遷移と生態系の保全

生物(4 単位)

  • 進化のしくみと生物の系統
  • 呼吸と光合成の詳しい流れ
  • 遺伝子の発現と発生・技術
  • 動植物の環境応答と生態

02

最初は進化から: 地球の空気を変えた小さな生き物

生物の授業は、進化から始まります。学習指導要領は「生物の進化」を科目の導入と位置付け、その後の単元でも進化の視点を意識させるよう求めています。最初に学ぶのは、生命の起源と細胞の進化です。

生命が生まれる前の地球では、アミノ酸などの有機物ができてたまり、生命の材料になったと考えられています。これを化学進化といいます。その後、光合成をするシアノバクテリアが現れたことが、大気中の酸素がふえる変化と関わったと考えられています。

私たちの細胞の中のミトコンドリアと、植物の葉緑体は、もとは別の生き物だったと考えられています。大昔の細胞に取り込まれ、共に生きるようになったという考えで、細胞内共生といいます。呼吸と光合成を担う部品が、もとは別の生き物だったという見方です。

進化のしくみでは、集団の中の遺伝子の割合(遺伝子頻度)が変わる理由を学びます。解説は、2 色のコインを遺伝子に見立て、無作為に選び直すことをくり返すモデル実験を例に挙げています。偶然だけでも割合が変わる遺伝的浮動と、自然選択の違いを確かめます。

進化の目を持つと、細胞の部品にも長い歴史が見えてきます。

図解細胞の進化と地球の変化(あらまし)

  1. 1化学進化アミノ酸などの有機物ができる
  2. 2最初の細胞核を持たない原核生物
  3. 3酸素がふえるシアノバクテリアの光合成
  4. 4細胞内共生ミトコンドリアと葉緑体の起源
  5. 5真核生物核を持つ細胞から多細胞の生物へ
遠浅の海岸に、黒っぽい丸い岩のようなかたまりが一面に並んでいる
オーストラリア西部の世界遺産シャーク湾(ハメリンプール)のストロマトライト。微生物の集まりが積み重なってできる、岩のようなかたまりです。写真: Paul Harrison(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

03

遺伝の計算: 組換え価で、遺伝子の並びを読む

中学で学んだメンデルの分離の法則は、1 つの形質に注目したものでした。生物では、同じ染色体の上にある 2 つの遺伝子がいっしょに子に伝わる連鎖を学びます。減数分裂のときに染色体の一部が入れかわって起こる組換えも学びます。性染色体にも触れます。

このしくみの研究を切り開いたのが、アメリカのモーガンです。1909 年にショウジョウバエの研究を始め、最初の論文では、目を白くする遺伝子が性染色体と結びついて伝わることを示しました。その後、遺伝子が染色体の中に一列に並んでいるという考えを打ち出し、1933 年にノーベル生理学・医学賞を受けています。

組換えの起こりやすさは、組換え価という割合で表します。潜性(劣性)の形質だけを持つ個体とかけ合わせる検定交雑を使い、生まれた子のうち、親と違う組み合わせの子の割合を求めます。組換え価が小さいほど、2 つの遺伝子は染色体の上で近いと考えます。

遺伝の計算でつまずく人は、記号を書く前に、親がどんな配偶子をどんな比でつくるかを表にすると整理できます。分数のまま計算し、最後に % に直すと、まちがいにも気付きやすくなります。

組換え価は、遺伝子の並びを数字で読む道具です。

図解組換え価を求める(例)

入力検定交雑で生まれた子が 1,000 匹。親と違う組み合わせの子が 50 匹と 50 匹いた
  1. 1組換えた子は 50 + 50 = 100 匹
  2. 2100 ÷ 1,000 = 0.1
  3. 30.1 × 100 = 10%
結果組換え価は 10%。値が小さいほど、2 つの遺伝子は近い
白い背景の上の 6 匹のショウジョウバエ。目の色が赤・茶・朱色・白などそれぞれ違い、体の色が違うものもいる
目の色が違うショウジョウバエ。モーガンは、白い目のハエを使って、目の色の遺伝子が性染色体と結びついて伝わることを示しました。写真: Ktbn(Public domain・Wikimedia Commons)

04

酵素と代謝: ホタルの光で、汚れや菌を見つける

生物では、タンパク質が生命現象を支えていることを、酵素を例に学びます。酵素のはたらきは、タンパク質の立体の形と結びついています。解説は、高温でタンパク質が元に戻らない形に変わることに、実験を通して気付く活動を挙げています。

解説が例に挙げる実験の 1 つが、ホタルの光です。ホタルは、ルシフェリンという物質と、酵素のルシフェラーゼの反応で光ります。この反応には ATP が必要です。生物基礎で学んだエネルギーの受け渡し役が、光として目に見えます。

この反応は、身近な所で使われています。名古屋大学の資料によると、ATP を高感度で測れることを利用して、食品工場や医療現場の衛生検査(ATP ふき取り検査)に使われています。ふき取った所の ATP を光らせて測り、病原菌などがいないかを手早く調べます。

光る生き物の研究は、遺伝子の研究も変えました。1962 年にオワンクラゲで見つかった緑色蛍光タンパク質(GFP)は、紫外線を当てると緑に光ります。クラゲから GFP を取り出した下村脩さんは、GFP の発見と発展で、2008 年のノーベル化学賞を 3 人で共同受賞しました。

酵素の反応は、ホタルの光から衛生検査まで、身近な所で使われています。

クイズ高 2 の生物クイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q1検定交雑で生まれた子 400 匹のうち、組換えた子が 40 匹。組換え価は?

  2. Q2食品工場などの ATP ふき取り検査で使われている、光る反応のもとは?

  3. Q3ミトコンドリアと葉緑体は、もとは別の生き物だったという考えを何という?

0 / 3 問に回答
夜の山あいの草むらの上を、たくさんの黄緑色の光の筋が飛び交っている
山口県下関市のゲンジボタル。ホタルは、ルシフェリンと酵素のルシフェラーゼの反応で光り、その反応には ATP が使われます。写真: nanamori(CC BY 3.0・Wikimedia Commons)

05

遺伝子を扱う技術: 細菌がつくる、ヒトのインスリン

遺伝子の単元の最後に学ぶのが、遺伝子を扱う技術です。学習指導要領は、制限酵素・ベクター・遺伝子を増やす技術に触れ、それらが実際にどう使われているかも扱うとしています。解説は、遺伝子組換えによる医薬品の製造と、PCR 法を使った DNA の解析を例に挙げています。

医薬品の代表例が、糖尿病の治療に使うインスリンです。アメリカの国立科学財団(NSF)の資料に、1923 年ごろの様子が紹介されています。動物のすい臓 1 万ポンドから、純粋なインスリンは 1 ポンド(約 450 g)しかつくれませんでした。

その後、研究者たちはヒトのインスリンの遺伝子を細菌に組み込み、ヒトと同じインスリンを細菌につくらせることに成功しました。1982 年 10 月にはアメリカの食品医薬品局(FDA)が承認し、アメリカで初めての遺伝子組換えの医薬品になりました。遺伝子を切って、つないで、運ぶ技術が、薬づくりを変えました。

教科書では、制限酵素で DNA を切り、ベクターにつないで細菌に入れる流れを図で学びます。下の図の順番を、それぞれの道具の役目と結びつけて説明できるようにしておくと、高 3 の入試の演習でも役立ちます。

遺伝子を扱う技術は、薬の安定した生産を支えています。

図解遺伝子組換えで薬をつくる流れ(あらまし)

  1. 1遺伝子を切り出す制限酵素で目的の DNA を切る
  2. 2ベクターにつなぐプラスミドなどの運び役に入れる
  3. 3細菌に入れる細菌がその遺伝子を持つ
  4. 4増やしてつくる細菌が増え、タンパク質をつくる
  5. 5取り出して精製薬として使える純度にする

高校生のうちに試せること

  • GFP のペーパーモデルを組み立てる

    PDBj(日本蛋白質構造データバンク)は、緑色蛍光タンパク質(GFP)のペーパーモデルの型紙を無料で公開しています。A4 の紙に印刷して組み立て、1 本のタンパク質の鎖がどんな立体の形に折りたたまれているかを手で確かめましょう。

    PDBj「緑色蛍光タンパク質(GFP)」ペーパーモデル
  • 仮の塩基配列を、アミノ酸に読みかえる

    教科書の遺伝暗号表を使い、自分で作った 12 個の塩基の並び(mRNA)を、3 つずつ区切ってアミノ酸に読みかえましょう。途中の塩基を 1 つ消したり、別の塩基に置きかえたりすると、その後の読みかえがどう変わるかも確かめてください。解説も挙げている活動です。

  • 組換え価の問題を自分で作る

    このページの例の数字を変えて、組換え価の問題を 3 つ作り、友だちと解き合いましょう。組換えた子がとても少ないときと、多いときで、2 つの遺伝子の位置について何が言えそうかも話し合ってみてください。

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よくある質問

生物を選ぶと、物理は学べませんか?

学校のコースの決まりによって異なります。理系で物理と生物の両方を学べる学校もあれば、どちらかを選ぶ学校もあります。医学部などで物理と生物のどちらで受験できるかも大学によって違うので、早めに募集要項を確かめてください。

遺伝の計算が苦手です。

親がつくる配偶子の種類と比を、先に表にしてから組み合わせると整理できます。分数のまま計算し、最後に % に直すと、まちがいに気付きやすくなります。組換え価は「組換えた子の数 ÷ 子の総数」と、言葉の式で覚えておくと迷いません。

生物は覚えることが多いと聞きました。

学習指導要領は、生物の重要用語を 500〜600 語程度(中学や生物基礎の用語を含む)とし、用語を数多く覚えることより主要な概念の理解を重視するとしています。進化の視点で「なぜこのしくみなのか」を考えながら学ぶと、用語どうしがつながって覚えやすくなります。