図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 1
高 1: 生物基礎で共通点を学ぶ
高校の生物は、2 単位の「生物基礎」から始まります。細胞と DNA、体の調節と免疫、植生と生態系を通して、どの生き物にも共通するしくみを見つけ、顕微鏡や野外の観察で確かめる 1 年です。

ひとことで言うと
機種は違っても、中の部品は同じスマートフォン
スマートフォンは、メーカーや形が違っても、電池・画面・記憶装置という共通の部品で動いています。生き物も、ゾウとキノコと大腸菌では見た目がまったく違いますが、細胞からでき、DNA を持ち、エネルギーを使う点は同じです。生物基礎は、この「違うのに同じ」を探す科目です。

01
高 1 の科目: 2 単位の生物基礎で、3 つの内容を学ぶ
高校の理科では、物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎のうち 3 科目を学ぶのが基本です。「科学と人間生活」を含めて 2 科目を学ぶ形もあります。生物基礎は標準 2 単位で、1 年で学ぶなら授業は週 2 時間ほどです。学ぶ学年は、学校によって異なります。
内容は 3 つです。「生物の特徴」では、細胞、エネルギーと ATP、DNA と遺伝情報を学びます。「ヒトの体の調節」では、神経とホルモンによる調節と免疫を学びます。「生物の多様性と生態系」では、植生の移り変わりと生態系の保全を学びます。
最初の単元は、科目の導入と決められています。学習指導要領の解説は、顕微鏡で微生物・動物・植物・菌類を観察して比べ、どれも細胞からできていることに気付く活動を例に挙げています。肝臓やブロッコリーから DNA を取り出す実験も、例に挙がっています。
ニュースで聞く言葉も多く出てきます。食事の後に血糖濃度が元に戻るしくみ、花粉症や予防接種と免疫の関係、外来生物と生態系のバランスなどです。言葉の意味が分かると、ニュースの見え方が変わります。
生物基礎は、生き物の共通点を、細胞から生態系まで 3 つの内容で学ぶ科目です。
図解生物基礎で学ぶこと
- 共通性と多様性細胞・DNA・エネルギーの共通点
- 代謝と ATP光合成と呼吸・酵素のはたらき
- DNA と遺伝情報塩基の相補性と DNA の複製
- タンパク質の合成転写と翻訳・遺伝子とゲノム
- 神経とホルモン自律神経・血糖濃度の調節
- 免疫食作用・抗体・予防接種
- 植生と遷移裸地から森林へ・バイオーム
- 生態系と保全捕食と被食・外来生物

02
中学の理科から: 体細胞分裂の観察を、細胞周期の時間につなげる
生物基礎は、中学の理科の続きです。中 1 では生物の分類、中 2 では細胞のつくり、光合成と呼吸、刺激と反応を学びました。中 3 では、細胞分裂と生殖、遺伝の規則性、生物の進化、自然界のつり合いを学んでいます。
中 3 では、植物の根の先などで体細胞分裂を観察し、染色体が複製されて 2 つの細胞に分かれる順序を確かめました。生物基礎では、これを細胞周期として見直します。間期に DNA が複製され、分裂期に等しく分けられるので、どの細胞も同じ遺伝情報を持ちます。
顕微鏡の視野には、細胞周期のいろいろな段階の細胞が混ざって見えます。細胞がばらばらの時期に分裂しているなら、ある段階の細胞の数の割合は、その段階にかかる時間の割合とほぼ同じと考えられます。下の例のように、数えるだけで目に見えない時間を見積もれます。
中学で習った「遺伝子の本体は DNA」という一言も、大きく広がります。DNA の 2 本の鎖では、A と T、G と C の塩基が向かい合って結びつきます。この相補性があるので、片方の鎖をもとに、もう片方を正確に写し取れます。
数えた細胞の割合から、見えない時間を見積もれます。
図解分裂期の長さを、細胞の数から見積もる(例)
- 1分裂期の細胞の割合は 20 ÷ 200 = 0.1
- 2時間の割合も同じ 0.1 と考える
- 320 時間 × 0.1 = 2 時間

03
観察と記録: 落ち葉の下の小さな生き物を数える
生態系の単元では、校内の植物調査や土の中の動物の採集が、解説に例として挙がっています。環境の違う場所で、どんな動物が何種類いるかを予想してから調べます。その結果から、種の多様さと環境の関係を考えます。
土の中の小さな動物を集めるのに使うのが、ツルグレン装置です。漏斗に網を張って土をのせ、上から電球で照らします。熱や光、乾燥を嫌う動物が下へ逃げ、下に置いた容器に落ちてきます。お茶の水女子大学の教材は、ペットボトルで作る方法を紹介しています。
集まるのは、トビムシ類やダニ類、クモ類などです。双眼実体顕微鏡で見ると、肉眼では点のように見える体にも、脚や触角が見えます。照らしている間は、枯れ葉が熱で燃えたり容器が溶けたりしないよう、その場を離れないことが大切です。
観察は、記録して初めて結果になります。日付・場所・天気、土を取った広さと深さを書き、見つけた生き物はスケッチと数で残します。比べる場所どうしで、土を取る広さと深さをそろえると、違いが環境によるものかを考えやすくなります。
条件をそろえて数えると、場所による生き物の違いが見えてきます。
図解土の中の動物の調べ方(例)
- 1場所を選ぶ林の落ち葉の下と、踏まれた土
- 2土を取る同じ広さと深さで集める
- 3電球で照らす20〜30 分。その場を離れない
- 4数えて描く実体顕微鏡で種類ごとに数える
- 5比べて考える種類の数の違いを環境と結びつける


04
つまずきやすい点: 用語の多さは、つながりで覚える
生物基礎で最初に戸惑うのが、用語の多さです。学習指導要領は、用語の意味を数多く覚えることより、主要な概念の理解を重視するよう求めています。中心となる重要用語は 200〜250 語程度で、中学で学んだ用語も含みます。
背景には、用語が増えすぎたことへの反省があります。日本学術会議の 2017 年の報告によると、当時の教科書「生物」では、延べ 2,000 を超える用語が重要と指定されていました。学術会議は 2025 年に、高校の生物で学ぶ重要用語を 489 語に整理したリストを公表しています。
この報告は、生物が暗記科目ではないというメッセージを伝えることをねらいにしています。コツは、用語を 1 つずつ覚えるのではなく、矢印でつないだ図にすることです。例えば免疫なら「病原体が入る → 抗体がつくられる → 記憶細胞が残る → 2 度目は早く強く反応」とつなげます。
免疫の単元では、1 度かかった病気に 2 度目はかかりにくい理由を、抗体の量の変化のグラフで考えます。予防接種が効くしくみも、この 2 度目の反応(二次応答)で説明できます。グラフは、縦軸と横軸が何かを先に確かめる習慣をつけると読み違えません。
用語は矢印でつないで、流れとして覚えると忘れにくくなります。

05
高 1 の 1 週間: 授業は週 2 回、観察は季節に合わせて
生物基礎を 1 年で学ぶなら、授業は週 2 回ほどです。単位数や時間割は、学校によって異なります。下の図は、高 1 の 1 週間の例です。
観察に使う生き物は、季節や地域で手に入るものが変わります。解説も、教材の生き物が季節や地域で限られる場合は、それに合った順序で学ぶことを求めています。お茶の水女子大学の教材によると、土の中の動物は、踏み固められた所より落ち葉の積もった所の方が見つけやすいそうです。
家での復習は、1 日 10 分でも続けることが大切です。授業で出た用語を 3〜4 個選び、矢印でつないだ図にしてノートにまとめます。図にできなかった所が、次に先生に質問する所です。
高 2 から文系・理系のコースに分かれる学校では、高 1 のうちに次の年の理科を選びます。生物基礎の手ごたえは、選ぶときの材料の 1 つです。選び方は、高 2 のページで紹介します。
観察は季節に合わせ、復習は用語を図でつなぐ形で毎日少しずつ進めます。
図解高 1 の 1 週間(例)
- 月生物基礎(授業)DNA の複製と細胞周期を学ぶ
- 火10 分の復習用語 4 つを矢印でつなぐ
- 水中学の復習中 3 の細胞分裂のページを読む
- 木生物基礎(実験)顕微鏡で細胞を観察してスケッチ
- 金観察記録日付・倍率・気付いたことを書く
- 土・日身近な観察公園の落ち葉の下を探す

高校生のうちに試せること
ペットボトルでツルグレン装置を作る
お茶の水女子大学の教材は、2 L のペットボトルと水切りネット、白熱灯で作る方法を紹介しています。林の落ち葉の下の土と、人が歩く所の土を同じ量ずつ取り、出てくる動物の種類と数を比べましょう。家で試すときは大人と一緒に行い、照らしている間はその場を離れないでください。
お茶の水女子大学「ツルグレン装置」(PDF)重要用語のリストで、つながりの図を描く
日本学術会議は、高校の生物で学ぶ重要用語のリスト(2025 年版)を公開しています。リストから生物基礎で習った語を 5 つ選び、矢印と短い言葉でつないだ図を描きましょう。うまくつなげない所は、教科書を読み直す目印になります。
日本学術会議「高等学校の生物教育における重要用語の選定について(2025 年版)」(PDF)体細胞分裂の写真で、分裂期の割合を数える
教科書や資料集にある、タマネギの根の先の顕微鏡写真を使いましょう。写っている細胞を、分裂期とそれ以外に分けて数えます。分裂期の割合に細胞周期の時間をかけて、分裂期の長さを見積もってみてください。
「高 1: 生物基礎で共通点を学ぶ」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 55 件から探せます。
理科教育学研究室
横浜国立大学(神奈川県)
教育学部 学校教員養成課程 理科専門領域・理科教育学・和田 一郎 教授
理科の授業論やカリキュラム論を研究する。
土壌生物化学
名古屋大学(愛知県)
応用生命科学・浅川 晋 教授
水田生態系にすむ生物群集の構造・機能と相互作用を研究する。

土壌生物学研究室
横浜国立大学(神奈川県)
都市科学部 環境リスク共生学科・土壌生態学・中森 泰三 教授
土の中の生き物の多様性や生態を調べ、新種の発見にも取り組む。
理科教育研究室
石巻専修大学(宮城県)
初等理科教育研究室
岡山理科大学(岡山県)
理科教育研究室
近畿大学(大阪府)
学生団体・機関はまだ掲載していません
よくある質問
生物基礎は、何年生で学びますか?
学習指導要領は学ぶ学年を決めていないため、学校によって異なります。高 1 で学ぶ学校もあれば、高 2 で学ぶ学校もあります。自分の学校の教育課程表で確かめてください。
中学の理科で生物が苦手でした。ついていけますか?
生物基礎は、中学の細胞・遺伝・生態系の内容を土台にしています。不安な人は、中 2 の「生物の体のつくりと働き」と、中 3 の「生命の連続性」を読み返しておくと安心です。細胞・染色体・遺伝子の区別がつけば、最初の単元に入りやすくなります。
生物基礎に計算はありますか?
細胞周期の時間を見積もる問題など、割合や比を使う計算があります。使う数学は、分数や割合の計算が中心です。何と何の割合なのかを言葉で書いてから数字を入れると、迷いにくくなります。
