図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 3
記者・報道
選挙や国会、予算や景気、国際情勢を取材し、数字と立場の違う意見を添えて、だれにでも分かるニュースにする仕事です。高校の公共・政治経済で学ぶ選挙や財政のしくみ、「知る権利」の考え方が、取材と記事の土台になります。

ひとことで言うと
学級会で決まったことを、休んだ友だちに伝える
学級会を休んだ友だちに何が決まったかを伝えるとき、賛成と反対の両方の意見と、決まった理由を添えると、話がよく伝わります。記者の仕事も同じで、決まったことに数字と立場の違う意見を添えて伝えます。違うのは、伝える相手が何十万人、何百万人もいる点です。

01
どんな仕事?: 政治・経済・社会、どの部にも公民がある
新聞社や放送局の報道の部署は、多くの場合、政治部・経済部・社会部・国際部などに分かれています。政治部は国会や選挙、経済部は予算や景気、社会部は事件や裁判、国際部は海外の出来事を取材します。番組のディレクターは、こうした取材をもとにニュース番組や特集を組み立てます。
どの部の名前も、公共・政治経済の教科書の章とよく重なっています。しくみを知っていると、ニュースの「なぜ」を説明できるからです。予算の記事を書くには財政の知識が、判決の記事を書くには司法のしくみの知識が欠かせません。
日本新聞協会の新聞倫理綱領は、国民の「知る権利」は民主主義社会を支える普遍の原理だと述べています。政治・経済で「新しい人権」として学ぶ知る権利を、毎日の取材と記事で支えるのが報道の仕事です。
ニュースの「なぜ」を説明する道具が、公共・政治経済のしくみです。
図解報道で使う高校の公共・政治経済
- 選挙投票率や開票の結果を、数字で伝える
- 国会法律案が審議され、成立するまでを追う
- 財政と税国や県の予算の中身を分かりやすく示す
- 景気と金融物価や金利の発表の意味を解説する
- 裁判判決のどこが新しい判断なのかを書く
- 国際社会条約や国際会議の結果を背景とともに

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数字で根拠を示す: 「2 ポイント増えた」は本当に増えた?
世論調査の結果を伝えるのも、記者の大切な仕事です。たとえば、ある問題について「賛成」と答えた人が、先月の 48% から今月は 50% になったとします。見出しで「賛成が増えた」と書いてよいのでしょうか。
一部の人に聞く世論調査の数字には、標本誤差という幅があります。内閣府の説明では、1,000 人が答えて回答の割合が 50% のとき、誤差の目安は ±3.1 ポイントです。全員に聞いた場合の本当の値は、約 95% の確からしさで 46.9% から 53.1% の間にあると考えます。2 ポイントの違いは、この幅の中に収まってしまいます。
回答者が 3,000 人なら、誤差の目安は ±1.8 ポイントに縮まります。そこで記者は、何人に、どんな方法で聞いた調査かを記事に書き添えます。数字に出どころと誤差の幅を添えることは、政治・経済の授業で資料を読むときと同じ作業です。
数字は、出どころと誤差の幅を確かめてから伝えます。
図解世論調査の数字を記事にする(例)
- 1何人に、どの方法で聞いた調査かを確かめる
- 2回答者の数から、誤差の目安を調べる
- 3変化が誤差の幅に収まるかを確かめる
- 4賛成と反対、それぞれの理由も取材する

03
両方の主張を伝える: 事実と意見を分けて書く
新聞倫理綱領は「正確と公正」の項で、報道は正確かつ公正でなければならず、記者個人の立場や信条に左右されてはならないとしています。「独立と寛容」の項では、自らと異なる意見でも、正確・公正で責任ある言論には紙面を提供すると定めています。
そのため新聞では、出来事を伝えるニュースの記事と、新聞社の考えを述べる社説を分けています。法律案のニュースなら、賛成と反対それぞれの主張と理由を並べて書きます。放送局には放送法で、意見が対立している問題について、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることが求められています。
選挙のときのルールもあります。公職選挙法 148 条は、新聞や雑誌が選挙について報道し、論評する自由を認めています。そのうえで、うその事実を書いたり事実をゆがめて書いたりして、選挙の公正を害してはならないと定めています。
事実と意見を分け、立場の違う主張を並べて伝えます。
図解ニュースの記事と社説の違い
ニュースの記事
- 起きた事実を正確に伝える
- 記者の立場や信条を入れない
- 立場の違う主張を並べて示す
社説
- 新聞社としての考えを述べる
- 根拠と理由をはっきり示す
- 世の中の流れにおもねらない

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国会を担当する記者の 1 日(例)
ここでは、国会を担当する新聞社の若手記者の 1 日の例を紹介します。担当や会社によって、仕事の流れは大きく異なります。
国会の会期中は、委員会での質疑や法律案の採決を取材します。発言の正確な言葉は、あとから国会会議録検索システムで確かめられます。このシステムは、国立国会図書館が衆議院・参議院と共同で提供していて、1947 年 5 月に開かれた第 1 回国会からの会議録を読めます。
記事を書く前には、法律案に賛成する議員と反対する議員の両方に話を聞きます。夕方にはデスクと見出しや記事の長さを相談し、締め切りまでに原稿を仕上げます。公共で学ぶ「法律ができるまで」の流れを知っていると、1 日の取材の段取りを立てやすくなります。
発言の確認から両方への取材まで、国会のしくみに沿って 1 日が進みます。
図解国会担当の記者の 1 日(例)
- 8:30今日の予定委員会の日程と、審議する法律案を確かめる
- 10:00委員会を取材質疑のやりとりを、要点を絞ってメモする
- 12:00昼休み
- 13:00両方に聞く賛成と反対、それぞれの議員に理由を聞く
- 15:30会議録で確かめる過去の国会での発言を検索して確かめる
- 17:00原稿を書くデスクと見出しを相談し、記事を仕上げる

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向いている人と入り方・その先
高校のうちは、公共や政治・経済で学んだことを、ニュースを読むときに使ってみてください。選挙や予算の記事で、数字の出どころが書いてあるか、立場の違う意見が並んでいるかを確かめるだけでも、記者の目の練習になります。新聞部や放送部で、学校の出来事を取材して伝えるのもよい経験です。
大学では、法学・政治学・経済学・社会学などが近い学びです。ただ、記者になる人の学んだ分野はさまざまで、文学や理系の学問を学んだ人もいます。全国に支局を持つ新聞社や放送局では、地方の支局などで経験を積んでから、政治部や経済部などに移ることがよくあります。
女性の記者も増えています。日本新聞協会の調べでは、新聞社・通信社の記者のうち女性の割合は、2002 年の 11.4% から 2026 年には 27.7% になりました。経験を積むと、デスクとして記事をまとめる立場や、論説委員・解説委員として社の考えを書く立場もあります。
ニュースを読むときに、数字の出どころと両方の意見を確かめることから始められます。
高校生のうちに試せること
国会会議録で、言葉が初めて出た日を探す
国会会議録検索システムで「成年年齢」など気になる言葉を検索し、いちばん古い発言を探してみましょう。どの委員会で、どんな話の流れで出てきたのかを読むと、法律ができるまでの道のりが見えてきます。
国会会議録検索システム(国立国会図書館)世論調査のニュースで、誤差の幅を確かめる
世論調査のニュースを 1 つ選び、何人が答えた調査かを確かめましょう。内閣府の「世論調査結果を読むに当たって」の表で誤差の目安を調べ、見出しの「増えた」「減った」が、その幅をこえているかを確かめてみます。
世論調査結果を読むに当たって(内閣府)新聞倫理綱領を読んで、記事を分けてみる
日本新聞協会の新聞倫理綱領は、5 つの項目からなる短い文章です。読んだあと、新聞の 1 面の記事と社説を 1 本ずつ選び、事実を伝える文と考えを述べる文に、色ペンで線を引いて分けてみましょう。
新聞倫理綱領(日本新聞協会)
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よくある質問
記者になるには、政治や経済に詳しくないといけませんか?
入社の時点で専門家である必要はありません。多くの記者は、取材しながら学んでいきます。ただ、公共・政治経済で学ぶ選挙・国会・財政のしくみを知っていると、取材の最初の段階で迷いにくくなります。
ニュースでは、なぜ賛成と反対の両方の意見を載せるのですか?
読み手が自分で判断できるようにするためです。新聞倫理綱領は、報道は正確かつ公正でなければならず、記者個人の立場に左右されてはならないとしています。放送局には放送法で、意見が対立する問題は多くの角度から論点を明らかにすることが求められています。
番組のディレクターも、記者と同じ仕事ですか?
重なる部分はありますが、役目は違います。記者は主に取材して原稿を書き、ディレクターは取材した内容を映像や構成にまとめて番組をつくります。ニュース番組では、記者とディレクターが組んで 1 本の特集をつくることもあります。



