図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 1
法律の仕事
相談に来た人の話を聞き、法のルールに当てはめて、もめごとを解決する仕事です。高校の公共で学ぶ「契約」「働くルール」「裁判を受ける権利」が、そのまま仕事の道具になります。

ひとことで言うと
取扱説明書の「故障かな?と思ったら」
家電が動かなくなったら、取扱説明書の「故障かな?と思ったら」の表で、症状に合う項目を探します。法律の仕事も、相談の中身を法の決まりに照らして、どのルールが使えるかを探します。違うのは、表の代わりに何千もの条文があり、人の暮らしや財産がかかっている点です。

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どんな仕事?: 公共の教科書が、そのまま相談の中身になる
法律の仕事というと、法廷で弁論する弁護士を思い浮かべるかもしれません。実際には、相談に答える、書類をつくる、裁判の手続きを進めるなど、場面はさまざまです。弁護士・裁判官・検察官・司法書士のほか、裁判所で記録や手続きを受け持つ裁判所書記官もいます。
どの立場でも、出発点は高校の公共で学ぶテーマです。契約と消費者の権利、アルバイトの働くルール、家族と相続、裁判への参加、基本的人権。教科書の目次が、そのまま法律相談の中身になっています。
下の図は、公共・政治経済で学ぶことが、法律の仕事のどんな場面で使われるかの例です。条文の細かい読み方は大学で学びますが、「どのルールの話か」を見分ける入り口は高校の授業にあります。
法律の仕事は、公共で学ぶテーマを、目の前の相談に当てはめる仕事です。
図解法律の仕事で使う高校の公共
- 契約と消費者18 歳からの契約のトラブルを整理する
- 働くルールアルバイトの給料や休憩の相談に答える
- 家族と相続遺産の分け方を、民法に照らして考える
- 裁判を受ける権利費用が払えない人も裁判を使えるようにする
- 法の下の平等法律が憲法に反しないかを裁判で問う
- 司法参加裁判員と裁判官がいっしょに話し合う

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当てはめる: 給料から「レジの不足分」を引かれたら
法律の仕事で多いのは、相談に答えることです。たとえば、アルバイトの大学生が「レジのお金が合わなかった分を、給料から引かれた」と相談に来たとします。まず、いつ、いくら、どんな説明で引かれたのかを順に聞き取ります。
次に、話を法のルールに当てはめます。労働基準法 24 条は、賃金は「その全額を支払わなければならない」と定めています。差し引けるのは、税金や社会保険料など法令で決まったものと、働く人の代表と書面で協定を結んだものです。厚生労働省も、会社が損害の賠償を求める場合でも、賃金から差し引くことは原則としてできないと説明しています。
ここで使っているのは、公共で学ぶ「働くルール」と「契約」の知識です。アルバイトも、店と結んだ労働契約の 1 つです。弁護士や司法書士は、こうした当てはめを毎日くり返し、話し合いや手続きで解決の道を示します。
相談の費用が心配な人のためには、国の法律にもとづいてつくられた法テラス(日本司法支援センター)があります。収入が少ない人に、弁護士や司法書士による無料の法律相談や、費用の立て替えを行っています。憲法 32 条の「裁判を受ける権利」を、お金の面から支えるしくみです。
相談の中身を、条文の決まりに 1 つずつ当てはめていきます。
図解相談をルールに当てはめる(例)
- 1いつ、いくら、どんな説明で引かれたかを聞く
- 2労働基準法 24 条の「全額払い」に照らす
- 3法令や書面の協定による差し引きかを確かめる
- 4店に説明を求め、引かれた分の支払いを求める

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憲法を使う: 相続の規定を「法の下の平等」で問う
政治・経済では、裁判所が法律を憲法に照らして調べる「違憲審査権」を学びます。これが実際に使われた例の 1 つが、相続をめぐる 2013 年の最高裁判所の決定です。
当時の民法には、結婚していない父母から生まれた子の相続分を、結婚した父母の子の 2 分の 1 とする規定がありました。遺産の分け方を争う手続きでこの規定が問われ、最高裁判所の大法廷が判断しました。2013 年 9 月 4 日の決定は、この規定が憲法 14 条 1 項(法の下の平等)に違反するとしました。違反していたのは、遅くとも 2001 年 7 月の時点からと判断しています。
決定を受けて、国会は同じ年の 12 月 5 日に民法を改正し、規定のその部分を削りました。改正法は 12 月 11 日に施行されています。裁判所が判断し、国会が法律を改める。教科書で学ぶ三権の関係が、3 か月ほどで目に見える形になりました。
裁判では、憲法の主張を組み立てるのが弁護士の、それにこたえて判断を書くのが裁判官の仕事です。法律の仕事では、民法の細かい条文と、憲法の大きな原則の両方を行き来して考えます。
憲法の原則は、裁判で主張されることで、法律を変える力になります。

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裁判所で働く: 書記官がいないと法廷は開けない
裁判所では、裁判官のほかにも、法律の知識を使う職員が働いています。その 1 つが裁判所書記官です。裁判所のサイトによると、書記官が立ち会わないと法廷を開くことができません。
書記官は、法廷での手続きを調書という記録にまとめ、事件の進み具合を管理します。法令や判例を調べ、弁護士や検察官、裁判の当事者と打ち合わせもします。手続きが分からない人に、分かりやすく説明するのも大切な仕事です。
書記官になるには、まず裁判所事務官などとして採用され、一定の期間働きます。そのあと裁判所職員総合研修所の入所試験に合格し、法学部を出た人などは約 1 年、それ以外の人は約 2 年の研修を受けます。研修では、憲法・民法・刑法などの法律と、調書づくりなどの実務を学びます。
下の図は、民事裁判を担当する書記官の 1 日の例です。担当する事件や裁判所によって、仕事の流れは異なります。
法廷の記録と手続きの進み具合を支えるのが、裁判所書記官です。
図解裁判所書記官の 1 日(例)
- 8:30記録を確かめるその日の期日の記録と書類をそろえる
- 10:00法廷に立ち会う民事裁判の手続きを、調書に記録する
- 12:00昼休み
- 13:00問い合わせに答える当事者に、次の手続きの流れを説明する
- 14:30打ち合わせ弁護士と、次の期日の予定を調整する
- 16:00調書をつくる法廷でのやりとりを整理して仕上げる


05
向いている人と入り方・その先
高校のうちは、公共や政治・経済で学ぶ契約・労働・人権の単元を、ニュースや自分のアルバイトに当てはめてみてください。気になる言葉があれば、e-Gov 法令検索で条文を開くと、教科書の説明と法律の言葉のつながりが見えてきます。
大学では法学部が近道ですが、政治や経済の学部から法律の仕事に進む人もいます。弁護士・裁判官・検察官になるには、法科大学院の修了か予備試験の合格を経て、司法試験に合格します。司法書士は、司法書士試験に合格してなります。
裁判所の職員の採用試験には、大学卒業程度の区分のほか、高校を卒業して 2 年以内の人や卒業見込みの人が受けられる区分もあります。人の話を最後まで聞ける人、筋道を立てて考えるのが好きな人に向いています。経験を積むと、弁護士なら得意な分野を持つ専門家に、書記官ならほかの書記官をまとめる立場になる人もいます。
公共で学ぶテーマを、身近な出来事に当てはめることが最初の一歩です。
図解高校から法律の仕事へ(例)
- 1高校で学ぶ公共の契約・労働・人権をニュースで確かめる
- 2大学で学ぶ法学部の民法・憲法・労働法など
- 3試験に合格司法試験・司法書士試験・裁判所職員試験
- 4実務を学ぶ司法修習や裁判所の研修で経験を積む
- 5専門家になる得意な分野で相談や裁判を担う
高校生のうちに試せること
2013 年の最高裁の決定を読む
裁判所のサイトの裁判例検索で、相続分についての 2013 年 9 月 4 日の決定を開いてみましょう。「判示事項」と「裁判要旨」の 2 か所だけでも、何が争われ、どう判断されたかが分かります。
最高裁判所 平成 25 年 9 月 4 日 大法廷決定(裁判所)給料のルールを Q&A で確かめる
厚生労働省の「確かめよう労働条件」には、働く人向けの Q&A があります。賃金の払い方の Q&A を読み、自分や家族のアルバイトの給料明細と見比べてみましょう。
賃金の額や支払方法の Q&A(厚生労働省)裁判所の業務説明会を調べる
裁判所では、職員の仕事を紹介する説明会や体験会を各地で開いています。予定は採用情報のページに載っています。対象や申し込み方法を確かめ、近くの裁判所で開かれていないか見てみましょう。
説明会・ワークショップ・インターンシップ情報(裁判所)
「法律の仕事」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 56 件から探せます。
よくある質問
法律の仕事は、弁護士にならないとできませんか?
できます。司法書士や裁判所書記官、会社で法律を扱う部署の社員など、法律の知識を使う仕事はたくさんあります。裁判所の職員の採用試験には、高校の卒業見込みの人が受けられる区分もあります。
公共の授業で習う内容は、本当に仕事で使いますか?
使います。契約、働くルール、裁判を受ける権利、法の下の平等は、法律相談や裁判で毎日のように出てくるテーマです。大学では、これを条文と判例を使ってさらに細かく学びます。
法テラスは、高校生や大学生も使えますか?
無料の法律相談や費用の立て替えには、収入などの条件があります。2022 年 4 月に成年年齢が 18 歳になってからは、費用の立て替えの申し込みや契約も 18 歳から本人ができるようになりました。

