図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 2
公務員・政策づくり
国や自治体で、住民の声と法律・予算のしくみをもとに、福祉・税・子育て・働く環境などの制度を考えて動かす仕事です。高校の公共・政治経済で学ぶ地方自治や財政、労働のルールが、毎日の判断の土台になります。

ひとことで言うと
給食の献立を、予算と栄養の基準でつくる
給食の献立は、決まった予算の中で栄養の基準を守り、子どもたちの好みも聞きながらつくります。公務員の政策づくりも同じで、法律という基準と予算の範囲の中で、住民の声を生かす方法を考えます。違うのは、対象が何万人もの暮らしで、1 年をかけて決めていく点です。

01
どんな仕事?: 教科書の単元が、そのまま役所の担当になる
国家公務員は、国の省庁などで法律や国全体の制度を担当します。地方公務員は、都道府県や市町村で住民に身近なサービスを受け持ちます。多くの役所では、窓口で住民と向き合う仕事から制度の案をつくる仕事まで、数年ごとに部署を移りながら経験を積みます。
役所の部署の名前を見ると、公共・政治経済の教科書の単元とよく重なっています。税を集める税務課、予算をまとめる財政課、年金や福祉の担当、選挙を行う選挙管理委員会の事務局。教科書の単元が、そのまま役所の担当の名前になっています。
下の図は、高校で学ぶことが公務員のどんな仕事で使われるかの例です。法律や予算の細かい手続きは働きながら学びますが、しくみの全体を知っていると、自分の仕事が社会のどこを支えているかが見えてきます。
役所の仕事は、公共・政治経済の単元ごとに担当が分かれています。
図解公務員の仕事で使う公共・政治経済
- 財政と税税の収入を見込み、予算の案をまとめる
- 地方自治住民の請求や議会の議決の手続きを進める
- 社会保障年金・医療・福祉の窓口で制度を説明する
- 雇用と労働会社に立ち入り、働くルールを守らせる
- 選挙投票所を用意し、選挙を公正に行う
- 国際社会条約や国際機関との交渉を受け持つ

02
住民の声を予算にする: 1 年がかりのくり返し
自治体の仕事の多くは、予算がなければ動きません。地方自治法は、知事や市町村長が毎年度の予算をつくり、年度が始まる前に議会の議決を受けるよう定めています。議会に出す期限は、都道府県と政令指定都市が年度の始まる 30 日前、ほかの市町村は 20 日前までです。
多くの自治体では、秋ごろに各課が翌年度の予算を要求し、財政課が中身を調べて調整します(査定)。住民の要望や議会での質問、国の補助金のしくみなどを照らし合わせ、限られたお金をどこに使うかを決めていきます。
使ったお金の確かめ方も法律で決まっています。出納は翌年度の 5 月 31 日に閉じ、決算は監査委員の審査を受けたあと、議会の認定にかけます。予算をつくり、使い、確かめ、次に生かす。このくり返しが、政治・経済で学ぶ「財政」の現場の姿です。
決算の要点は、住民に公表することも法律で決まっています。住民の要望や議会での質問を通じて届いた声を、次の年度の予算にどう生かすか。住民の声と法律と予算を結びつけるのが、政策づくりを担う公務員の仕事です。
予算は、つくって使い、確かめて次に生かす 1 年がかりのくり返しです。
図解自治体の予算の 1 年(例)
- 1予算を要求秋ごろ、各課が翌年度に必要な額を出す
- 2査定する財政課が中身と税収の見込みを調べる
- 3議会が議決年度が始まる前に、議会が予算を決める
- 4事業を行う4 月から、決まった予算で事業を進める
- 5決算を確かめる監査委員の審査のあと、議会が認定する


03
働く人の権利を守る: 予告なしに立ち入る労働基準監督官
公共では、働く人を守る労働基準法を学びます。その法律を守らせる国家公務員が、厚生労働省の労働基準監督官です。全国の労働基準監督署で、工場や事務所に立ち入って帳簿や機械を調べ、違反があれば正すよう指導します。
立ち入りは、原則として予告なしに行います。厚生労働省は、その根拠として ILO(国際労働機関)の第 81 号条約を挙げています。条約は、労働監督官が事業場に「昼夜いつでも、自由に且つ予告なしに」立ち入る権限を持つと定めています。
2023 年には、監督官による監督指導が約 17 万件行われました。働く人が違反を知らせる申告は約 2 万件で、賃金の不払いがいちばん多くなっています。重大で悪質な事件では、監督官は司法警察員として捜査し、検察庁に送ります(送検は約 800 件)。
公務員自身にも、働くルールがあります。国家公務員は、ストライキなどの争議行為が法律で禁じられています。その代わりに、人事院が民間の給与を調べ、国会と内閣に給与を勧告するしくみがあります。政治・経済で学ぶ「労働基本権」が、ここにも関わっています。
法律を学ぶだけでなく、守らせることも公務員の大切な仕事です。


04
市役所の財政課で働く若手職員の 1 日(例)
ここでは、予算の査定の時期に、市役所の財政課で働く若手職員の 1 日の例を紹介します。仕事の進め方や時期は、自治体によって異なります。
財政課の職員は、各課から出された予算の要求を読み、担当の職員から話を聞きます。前の年の決算や、国の補助金の条件と照らし合わせ、その事業が本当に必要か、もっと安い方法はないかを考えます。
子育て、道路、学校など、要求はどれも住民の暮らしに関わります。限られた税収の中で優先順位をつけるには、数字を読む力と、立場の違う意見を比べる力の両方が要ります。高校で、資料をもとに意見を比べて話し合った経験が生きる場面です。
数字を読む力と、意見を比べる力の両方で予算を組み立てます。
図解財政課の若手職員の 1 日(例)
- 8:30要求書を読む各課から届いた予算の要求を確かめる
- 10:00話を聞く子育ての担当課から、事業の目的と費用を聞く
- 12:00昼休み
- 13:00数字を比べる前年度の決算や国の補助金の条件と照らす
- 15:00課内で検討税収の見込みと合わせ、全体の額を調整する
- 17:00資料をまとめる市長の査定に向けて、論点を整理する

05
向いている人と入り方・その先
高校のうちは、公共や政治・経済で学ぶ地方自治や財政を、自分の住む町に当てはめてみてください。町の予算や決算は公開されていて、税の収入がどれくらいで、何に多く使っているかを調べられます。
大学では、法学・政治学・経済学・国際関係などが近い学びです。国家公務員には、人事院の総合職・一般職の試験のほか、労働基準監督官や国税専門官などの専門職の試験があります。地方公務員は、都道府県や市町村がそれぞれ採用試験を行い、高校卒業程度の区分を設けている自治体もあります。
人の話を聞くのが好きな人、決まりを守りながら工夫するのが好きな人に向いています。部署が変わるたびに、福祉・税・まちづくりなど幅広い仕事を経験できます。経験を積むと、制度の案をまとめる立場や、国と自治体をつなぐ仕事も任されます。
自分の町の予算を調べることが、公務員の仕事を知る最初の一歩です。
図解高校から公務員の仕事へ(例)
- 1高校で学ぶ地方自治や財政を自分の町で調べる
- 2大学で学ぶ法学・政治学・経済学・国際関係など
- 3試験に合格国家公務員試験や自治体の採用試験
- 4部署を経験窓口・福祉・税・企画などを数年ごとに
- 5制度を担う住民の声と法律・予算から制度を考える
高校生のうちに試せること
決算カードで、自分の町のお金を見る
総務省の「決算カード」には、都道府県や市町村ごとに、1 年間の収入と支出がまとめられています。自分の町のカードを開き、地方税の大きさや、福祉に使う民生費の大きさを隣の町と比べてみましょう。
決算カード(総務省)労働基準監督官の仕事を Q&A で読む
厚生労働省の「確かめよう労働条件」には、監督官がどのように会社を調べるかを説明した Q&A があります。どんなきっかけで立ち入るのか、違反が見つかったらどうなるのかを読んでみましょう。
労働基準監督官は、どのように会社を監督しているのでしょうか(厚生労働省)国家公務員の試験の種類を見比べる
人事院の採用情報のページでは、総合職・一般職・専門職などの試験が紹介されています。高校卒業程度の試験もあります。どの試験でどんな仕事に就けるのかを見比べてみましょう。
国家公務員の人材確保・採用試験情報(人事院)
「公務員・政策づくり」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 19 件から探せます。
よくある質問
公務員になるには、法学部に行かないといけませんか?
いいえ。採用試験の多くは学部を問わず受けられます。国家公務員の総合職試験には、法律のほかに政治・国際・人文や経済などの区分があります。地方公務員の試験も、自治体ごとに区分が分かれています。
国家公務員と地方公務員は、どう違いますか?
国家公務員は、国の省庁などで法律や国全体の制度を担当します。地方公務員は、都道府県や市町村で、子育て・福祉・税・まちづくりなど、住民に身近なサービスを受け持ちます。採用試験も別々に行われます。
公務員の給料は、どうやって決まるのですか?
国家公務員の給料は、人事院が民間の会社の給与を調べて国会と内閣に勧告し、それをもとに法律で決めます。都道府県や政令指定都市などの人事委員会も、同じように給与を勧告しています。
