図 1 公共・政治経済の広がり公共・政治経済の広がり 2
政治と民主主義
選挙と政治参加、議会制民主主義、地方自治、世論の形成を学ぶ分野です。投票日に部活の試合があっても投票できることや、署名を集めて条例の案を出せることなど、知るほど政治は「自分たちで動かせるしくみ」に見えてきます。

ひとことで言うと
文化祭の出し物の決め方
文化祭の出し物を決めるとき、全員で話し合うか、実行委員に任せるか、多数決にするかで、結果が変わることがあります。政治も同じです。選挙で代表を選んで任せるしくみと、住民が直接決めるしくみを、どう組み合わせるかが大切になります。

01
選挙: 投票日に部活の試合があっても、投票できる
公共と政治・経済では、選挙のしくみと、政治に参加する意味を学びます。選挙権は 2016 年 6 月から 18 歳以上になり、多くの人が高校 3 年生のうちに有権者になります。
投票日に用事がある人のために、期日前投票があります。公示日や告示日の翌日から投票日の前日まで、市区町村の期日前投票所で、原則として午前 8 時 30 分から午後 8 時まで投票できます。総務省と文部科学省の高校生向けの副教材も、投票日に部活動の試合がある場合の方法として紹介しています。
意外な決まりもあります。投票日に 18 歳になる人でも、投票しようとする日にまだ 17 歳なら、期日前投票はできません。この場合は、不在者投票という別の方法で投票できます。また、有権者が連れている 18 歳未満の子どもは、投票所に一緒に入れます(公職選挙法 58 条)。
日本の国政選挙では、候補者名や政党名を自分で書く「自書式」で投票します。衆議院議員総選挙の日には、小選挙区、比例代表、最高裁判所裁判官の国民審査の 3 つを投票します。
投票の方法を知っておくと、予定がある日でも 1 票を生かせます。
図解投票所での流れ(例)
- 1受付入場券や本人確認書類を見せる
- 2用紙を受け取る選挙ごとに投票用紙を受け取る
- 3記載台で書く候補者名や政党名を自分で書く
- 4投票箱へ投票用紙を投票箱に入れる

02
高校生と選挙運動: SNS で「この人に投票して」は?
18 歳未満の人は、選挙運動をすることができません(公職選挙法 137 条の 2)。選挙運動とは、特定の選挙で、特定の候補者を当選させるために投票を得たり得させたりする行為をいいます。違反すると、1 年以下の拘禁刑または 30 万円以下の罰金になることがあります。
2013 年の法改正で、インターネットを使った選挙運動が解禁されました。副教材の Q&A によると、18 歳以上の人は、選挙運動の期間中なら、SNS で候補者の選挙運動のメッセージを広めることもできます。一方、18 歳未満の人は、リポストやシェアで広めることもできません。同じ高校 3 年生でも、誕生日によってできることが違うのです。
意外なのは電子メールです。選挙運動のためのメールを送れるのは候補者や政党などに限られ、18 歳以上の人でも、選挙運動のメールは送れません。候補者から届いた選挙運動のメールを、ほかの人に転送することも禁止されています。
一方で、政治について学んだり、話し合ったりすることは自由です。授業でニュースを読んで意見を述べることや、政策を調べて発表することは、選挙運動ではありません。ルールを知っておくと、安心して政治の話ができます。
18 歳の前と後で、できることがはっきり変わります。
図解選挙運動でできること(選挙運動の期間中)
18 歳以上
- SNS で選挙運動のメッセージを広める
- 掲示板やブログに選挙運動の書き込み
- 選挙運動のメールを送ることはできない
18 歳未満
- 選挙運動はできない
- リポストやシェアで広めることもできない
- 政治を学び、話し合うことは自由

03
地方自治: 50 分の 1 の署名で、条例の案を出せる
学習指導要領の解説は、地方自治には、直接民主制の考え方にもとづくしくみが国の政治より多く取り入れられていると説明しています。その代表が直接請求です。首長と議員を、住民がそれぞれ選挙で選ぶのも特徴です。
代表的な直接請求が、条例の制定・改廃の請求です。有権者の 50 分の 1 以上の署名を集めると、首長に条例の案を出せます。首長は 20 日以内に議会を開き、議会が案を審議します。つまり、署名が集まっても、条例を決めるのは議会です。地方税や使用料・手数料についての条例は、この請求の対象外です。議会の解散や、首長・議員の解職の請求には、原則として 3 分の 1 以上の署名が必要です。
住民投票もあります。憲法 95 条は、1 つの地方公共団体だけに適用される特別法をつくるには、その住民の投票で過半数の同意が必要だと定めています。広島市によると、日本で最初の住民投票は、1949 年 7 月 7 日の広島平和記念都市建設法をめぐる投票です。投票率は 65%で、賛成が 9 割に及び、法律は 8 月 6 日に公布・施行されました。
この法律のもとで、広島市は平和記念施設の整備を進めました。市の中心を東西に走る幅の広い道路も、平和記念施設に位置づけられました。1951 年 11 月には、市民からの公募で「平和大通り」という愛称が決まっています。
地方自治には、住民が直接動かせるしくみが多く用意されています。
図解署名の数で変わる直接請求
有権者の 50 分の 1
- 条例の制定・改廃を首長に請求
- 事務の監査を監査委員に請求
原則 3 分の 1
- 議会の解散を選挙管理委員会に請求
- 首長や議員の解職を選挙管理委員会に請求

04
資料で考える: 年代別の投票率を、何回分も並べて読む
総務省によると、2026 年 2 月の第 51 回衆議院議員総選挙の投票率は、10 歳代が 43.45%、20 歳代が 39.01%でした。全体は 56.26%です。2025 年 7 月の第 27 回参議院議員通常選挙では、10 歳代が 45.29%、20 歳代が 47.30%、全体が 58.51%です。
2 つの選挙を並べると、10 歳代と 20 歳代のどちらが高いかが入れかわっています。年代別の投票率は、全国から標準的な投票区を選んで調べた数字だという点も大切です。1 回の選挙の数字だけで「若者は〜だ」と決めつけず、何回分ものグラフを並べ、調べ方まで確かめて読んでみてください。つまずきやすいのは、制度を用語として覚えるだけで終わることです。投票率が変わる理由として考えられる条件を挙げ、立場の違う意見を比べてみてください。
選挙のほかにも、意見を届ける方法があります。国の省庁は、政令や省令などを決める前に案を公表し、広く一般から意見を募ります。これをパブリックコメントと呼びます。e-Gov の説明によると、同じ意見がいくつ集まったかではなく、意見の中身が考慮されます。
大学では、法学部や政治経済学部などの政治学・行政学・地方自治論で、この続きを学びます。選挙や世論調査のデータを統計で分析するゼミもあります。学生が政治参加を呼びかける団体や、政治を研究するサークルも、各地の大学にあります。
高校生のうちに試せること
副教材の Q&A を読む
総務省と文部科学省の高校生向け副教材には、投票や選挙運動についての Q&A があります。「部活動の試合と投票日が重なったら」「17 歳の今できることは」など、気になる問いを 3 つ選んで読みましょう。
総務省「投票と選挙運動等についての Q&A」(PDF)年代別投票率のグラフを読む
総務省のサイトで、衆議院と参議院の選挙の年代別投票率のグラフを見ましょう。どの年代の線がいつ上がり、いつ下がったかを書き出し、理由を 3 つ考えて友だちと比べてみてください。
総務省「国政選挙の年代別投票率の推移について」広島市の Web 展示会を見る
広島市公文書館の Web 展示会で、1949 年の住民投票のポスターや投票所の写真を見ましょう。当時の人がどんな言葉で投票を呼びかけたかを読むと、地方自治と暮らしの結びつきが見えてきます。
広島市「全国初の住民投票と特別法制定」
「政治と民主主義」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 23 件から探せます。
よくある質問
高校生が政治の話をしてもよいのですか?
よいです。政治のニュースを調べたり、授業で意見を述べたりすることは自由です。18 歳未満の人ができないのは、特定の候補者への投票を呼びかけるなどの選挙運動です。学校によっては校則に決まりがあることもあるので、気になるときは先生に確かめてください。
政治学では何を学びますか?
選挙や議会、政党、行政、地方自治、国際政治などのしくみと歴史を学びます。法学部や政治経済学部、総合政策学部などで学べ、学部の名前は大学によって異なります。世論調査や選挙のデータを統計で分析する授業もあり、数学や情報の力も生かせます。

