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建築学(耐震設計・地盤・防災まちづくり)

新潟地震でほぼ無傷のまま横倒しになった 4 階建てのアパート、活断層の真上を避けて建てる決まり、斜面の傾きで決まる土砂災害の区域。建築学では、高校の地学で学ぶ地層や断層、地形の知識が、安全な建物とまちを計画する土台になります。

大学の建築学の研究室で、砂と水を入れた透明な箱を揺らして小さな建物の模型の傾きを確かめる学生、断層の線が入った地形の模型に建物の模型を並べる学生、斜面の模型に分度器を当てて傾きを測る学生たち

ひとことで言うと

波打ち際に立つと、足が砂に沈む

海の波打ち際に立っていると、足もとの砂が水と一緒に動き、足がずぶずぶと沈んでいきます。水を含んだ砂は、揺すられると支える力を失うことがあるのです。建物も同じで、どんな地面の上に、どんな場所に建てるかを知ることが、設計の出発点になります。

01

地層と地盤 → 地盤工学: 新潟地震で、アパートが無傷のまま横倒しになった

1964 年 6 月 16 日の午後 1 時 1 分、新潟県下越沖を震源とするマグニチュード 7.5 の新潟地震が起きました。新潟市では、地面から砂を含んだ水が噴き出し、建物が沈んだり傾いたりする被害が相次ぎました。

信濃川沿いの川岸町では、4 階建ての鉄筋コンクリートのアパートが、ほぼ無傷のまま横倒しになりました。建物が弱かったのではなく、支えていた地面が液体のようになったのです。この姿をきっかけに、地震の被害と地盤の液状化の関係が注目され、液状化は防災の大きな課題として知られるようになりました。

液状化は、水を多く含んだゆるい砂の層で起こります。ふだんは、砂の粒どうしが支え合っています。強く揺すられると支え合いが崩れ、水と砂が一体になって液体のようになるのです。気象庁の資料によると、起こりやすいのは地表から深さ 15〜20 m までの砂の層です。粒の大きさが 1/8〜1/2 mm ほどで、そろっているほど起こりやすくなります。海岸の埋め立て地や昔の川の跡、砂丘のふもとなどが当てはまります。

地学基礎では、粒の大きさで礫・砂・泥を分け、地層のでき方を学びます。この見方は、大学の地盤工学でそのまま使います。対策の考え方は、液状化の条件を 1 つずつ取り除くことです。気象庁の資料は、防災科学技術研究所の整理として 5 つの方法を紹介しています。砂の層を入れ替える、地下水を抜く、砂を固める、砂や水の噴き出しを防ぐ、水を抜けやすくする、です。建物の基礎の設計と組み合わせて選びます。

地層の粒の大きさと地下水を知ることが、液状化に強い建物の第一歩です。

図解液状化が起きるしくみ(気象庁の資料から)

入力地下水を多く含んだ、ゆるい砂の層
  1. 1ふだんは、砂の粒どうしが支え合っている
  2. 2強い揺れで、粒の支え合いが崩れる
  3. 3水と砂が一体になり、液体のようになる
結果砂と水が噴き出し、地面が沈んだり建物が傾いたりする
灰色の砂の干潟に、真ん中がくぼんだ小さな山が盛り上がっている。山のまわりには、砂が流れ出した筋が放射状に広がっている
2016 年 2 月の地震のあと、ニュージーランドのクライストチャーチの干潟に現れた噴砂の跡。液状化した砂が水と一緒に噴き出し、小さな火山のような形に積もりました。写真: Martin Luff(CC BY-SA 2.0・Wikimedia Commons)

02

断層と地殻変動 → 耐震設計・土地利用: 活断層の真上には、学校や病院を建てない

地学では、断層がずれて地震が起きることを学びます。中でも、最近の地質時代に繰り返し動き、これからも動くと考えられる断層を活断層と呼びます。活断層は、繰り返しずれた跡が地形や地層に残っていることで見つかります。大きな地震では、地表までずれが現れることがあります。その真上に建物があると、揺れに強くつくっていても、地面のずれで大きな被害を受けてしまいます。

アメリカのカリフォルニア州では、1971 年にマグニチュード 6.6 のサンフェルナンド地震が起きました。地表に現れた断層のずれが、多くの建物を壊しました。州は翌 1972 年に法律をつくり、人が住んだり働いたりする建物を、活断層の線をまたいで建てることを禁じました。断層の線から約 15 m(50 フィート)以内には、原則として建てられません。

日本では徳島県が、震災に強い社会づくりのための条例で、同じ考え方を取り入れました。2013 年 8 月 30 日には、中央構造線断層帯(讃岐山脈南縁)に沿って「特定活断層調査区域」を指定しています。この区域で、学校や病院など多くの人が使う建物や、危険物をためる施設を建てるとします。そのときは事業者が活断層の位置を調べ、真上を避けて配置しなければなりません。

面白いのは、どれくらい最近動いた断層を「活断層」とするかが、場所によって違うことです。カリフォルニア州の法律は、およそ最近 1 万 1,000 年の間に動いた跡がある断層を対象にしています。日本の『新編日本の活断層』は、第四紀(約 200 万年前から今まで)に動いたとみなされる断層を活断層としています。さかのぼるのは数十万年前までとする研究者もいます。地学で学ぶ地質時代の物差しが、建物の決まりに関わっているのです。

断層がどこを通り、いつ動いたかを知ることが、建物の配置を決める手がかりになります。

図解活断層の真上を避ける決まり

カリフォルニア州

  • 1972 年に法律ができた
  • 人が使う建物は、断層をまたげない
  • 断層から約 15 m 以内は原則禁止

徳島県

  • 2013 年に調査の区域を指定
  • 学校・病院や危険物の施設が対象
  • 断層の位置を調べ、真上を避ける
空から見た乾いた平原。奥へまっすぐ続く線のような谷があり、その片側には、しわのように削られた丘が並んでいる
空から見た、カリフォルニア州のカリゾ平原を通るサンアンドレアス断層。断層に沿って、地面が長い線のように食い違っています。写真: John Wiley(CC BY 3.0・Wikimedia Commons)

03

地形の変化 → 防災まちづくり: 斜面の傾き 30 度と高さの 2 倍で、警戒する範囲を決める

1999 年 6 月 29 日、広島県で大雨による土砂災害が 325 件起き、24 人が亡くなりました。これをきっかけに、2000 年 5 月に土砂災害防止法がつくられ、2001 年 4 月から施行されました。危ない場所を地図に示して住む人に知らせ、危ない場所に新しい建物が増えないようにする法律です。

区域の決め方には、地学で学ぶ地形の見方が使われています。たとえば「急傾斜地の崩壊」は、傾きが 30 度以上の斜面が崩れる現象です。その土砂災害警戒区域は、斜面の上の端から 10 m、下の端からは斜面の高さの 2 倍(最大 50 m)までの範囲です。地すべりでは、すべる土地の長さの 2 倍(最大 250 m)まで、土石流では、土地の傾きが 2 度以上の範囲が目安になります。

都道府県は、地形や地質、土地の使われ方を調べる基礎調査を行います。地形図や航空写真で危ない場所を探し、現地で確かめてから区域を決めるのです。特に危険が大きい土砂災害特別警戒区域では、開発に許可が必要になり、建物の構造にも決まりがかかります。流れてくる土砂に耐えられるつくりにすることが求められるのです。

防災まちづくりでは、こうした区域の地図をもとに、避難の道や避難場所、建物の建て方を、地域の人と一緒に考えます。土砂を受け止める砂防えん堤などの工事とも組み合わせて、まち全体の安全を計画します。地形を読む力は、まちの未来の姿を描く力にもなります。

斜面の傾きや高さを読むことが、安全な土地の使い方を決める土台です。

図解急傾斜地の警戒区域の目安(例)

入力高さ 20 m・傾き 35 度の斜面のそばの土地
  1. 1傾きが 30 度以上なので、急傾斜地に当たる
  2. 2斜面の上の端から 10 m までを含める
  3. 3下の端から高さの 2 倍、40 m までを含める
結果斜面の上 10 m から下 40 m までが、警戒区域の目安になる
紅葉した木々に囲まれた山あいの谷に、階段のように何段も重なったコンクリートの堰堤があり、白い水が流れ落ちている
富山県の常願寺川の上流にある白岩堰堤(1939 年完成)。山から流れ出す土砂を受け止める施設で、2009 年に砂防施設として初めて国の重要文化財に指定されました。写真: Hiroshi Nakai(CC BY 2.0・Wikimedia Commons)

04

建築学に進むなら: 高校で選んでおきたい科目

地盤や耐震、防災まちづくりは、多くの大学で工学部の建築学科や、土木と建築をあわせた学科で学べます。たとえば名古屋大学工学部の環境土木・建築学科(建築学プログラム)には、「建築基礎構造」(2026 年度)があります。授業は「地形・地質と地盤、地盤災害」から始まります。続いて土の性質、地盤調査、土のせん断強度と液状化、地盤の支持力を学び、建物の基礎の設計へ進みます。科目の名前や学年は大学によって異なります。

工学部や理工学部の建築学科の多くは、数学と理科などで入試を行います。数学は数学 III・C まで、理科は物理を選んでおくと、地盤の強さや建物の揺れを計算する授業に入りやすくなります。入試の科目は大学によって違うので、志望校の募集要項で確かめてください。

地学基礎は、入試の科目にしなくても学んでおく価値があります。地層の重なりや断層、地形のでき方は、大学の地盤の授業で最初に出てくる内容だからです。地学基礎を学べないときは、地理の地形の単元や、ハザードマップを読む練習で補えます。

勉強のコツは、地図を見たら「この地面の下には何があるか」を考えることです。埋め立て地か、昔の川の跡か、山すその斜面か。土地の成り立ちから建物の弱点を想像する習慣が、設計の目を育てます。

数学・物理に地学基礎を組み合わせると、地盤と防災の学びにつながります。

クイズ地学と建築学のクイズ

答えを選ぶと、正解と解説が表示されます。

  1. Q11964 年の新潟地震で、川岸町の 4 階建てのアパートが横倒しになった。おもな原因は?

  2. Q2カリフォルニア州の 1972 年の法律。活断層の線から、原則として建物を建てられない範囲は?

  3. Q3土砂災害防止法で「急傾斜地の崩壊」と呼ぶのは、傾きが何度以上の斜面が崩れる現象?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • ペットボトルで液状化を再現する

    ペットボトルに砂を入れ、砂がひたるまで水を注ぎます。砂の上に重いナット、砂の中に発泡スチロールの小さな玉を入れて、ボトルの横を何度もたたきましょう。ナットが沈み、玉が浮き上がってくる様子を観察します。

  • 重ねるハザードマップで、自分の町を調べる

    国土交通省のハザードマップポータルサイトでは、土砂災害警戒区域や土地の成り立ちを地図に重ねて見られます。家や学校のまわりの区域を確かめ、斜面や昔の川の跡と見比べましょう。

    国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
  • 活断層の決め方を読む

    地震調査研究推進本部の用語集では、活断層の決め方や、地形に残るずれの跡について説明しています。読んだあと、自分の県にどんな活断層があるかを調べましょう。

    地震調査研究推進本部「用語集 活断層」
  • 大学の建築基礎構造のシラバスを読む

    名古屋大学の「建築基礎構造」のシラバスでは、地形・地質から基礎の設計までの授業の流れを読めます。地学基礎で学んだ言葉がいくつ出てくるか数えましょう。

    名古屋大学 シラバス「建築基礎構造」(2026 年度)

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よくある質問

地盤のことは、建築学科と土木工学科のどちらで学べますか?

どちらでも学べます。建築学科では建物を支える基礎の設計と合わせて、土木工学科では堤防や道路、斜面の対策などと合わせて地盤工学を学ぶことが多くあります。名古屋大学の環境土木・建築学科のように、土木と建築を 1 つの学科で学べる大学もあります。

地学を学んでいないと、建築学科の授業で困りますか?

困ることはありません。大学の地盤の授業は、地形や地質の基本から説明されることが多いからです。ただ、地学基礎で地層や断層のイメージをつかんでおくと、地盤や耐震の授業が分かりやすくなります。