図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 3
高 3: 地域ごとに考える
高 3 の地理探究では、世界をいくつかの地域に分けて、地域ごとの特色と課題を考えます。最後に、これからの日本の国土の姿を自分で構想し、1 月の大学入学共通テストで、高 1 からの力を試します。

ひとことで言うと
班分けは、目的で変わる
クラスの班分けは、出席番号でも、部活でも、帰る方向でもできます。文化祭なら得意なことで、帰りの見守りなら住む方面で分けるように、目的によって分け方が変わります。地誌の学習も、世界を何で分けるかを決めるところから始まります。

01
地域区分: ロシアはアジア? それともヨーロッパ?
地理探究の 2 つ目の大項目「現代世界の地誌的考察」は、世界をいくつかの地域に分ける学習から始まります。学習指導要領は、自然、政治、経済、文化などの指標で、世界がさまざまに地域区分できることに着目するよう求めています。
解説が挙げる問いの 1 つが、「ロシア連邦はアジアなのだろうか、それともヨーロッパなのだろうか」です。中学の「世界の諸地域」では、ロシアをアジア州かヨーロッパ州のどちらかに入れて扱います。高校では、いろいろな指標で分けた地図を比べ、広い国土をもつロシアの多様さを踏まえて考えます。
アメリカ合衆国の本土を分ける例もあります。州をまとめて北東部・中西部・南部・西部の 4 つに分ける方法と、北緯 37 度と西経 100 度の線で分ける方法を比べます。西経 100 度は、1878 年に地質学者で探検家のパウエルが、湿った東部と乾いた西部の境として示した線です。
コロンビア大学の研究者たちは 2018 年、この境が東へ動いているようだと発表しました。1980 年ごろからのデータでは、西経 98 度付近まで、約 140 マイル(約 225 km)動いたとみられます。地域の境は決まった線ではなく、時代とともに動くこともあるのです。
地域の分け方は、目的と指標で変わります。
図解アメリカ本土の 2 つの分け方(解説の例から)
州をまとめて分ける
- 北東部・中西部・南部・西部
- 州の境に沿って線を引く
- 州ごとの統計をそのまま使える
緯線と経線で分ける
- 北緯 37 度と西経 100 度
- 西経 100 度は乾燥と湿潤の境の目安
- 境が動けば、区分も変わる


02
地誌の 3 つの方法: 項目で並べる・1 つから広げる・2 つを比べる
地域に分けたら、その地域の特色と課題を調べます。学習指導要領は、地誌の考え方として 3 つの方法を挙げています。1 つ目は、地域のさまざまな事象を項目ごとに整理する方法です。2 つ目は、特色ある事象を手がかりに、他の事象と関連付ける方法です。3 つ目は、性格が対照的か似ている 2 つの地域を比べる方法です。
解説には、それぞれの例も載っています。国家の結び付きで分けた東南アジア(ASEAN)は、政治や経済、人口、生活文化などを項目ごとに整理します。経済成長率で分けたインドは、急な経済成長を手がかりに、巨大な人口や経済政策、都市と農村の変化と結び付けます。
宗教で分けたイスラーム諸国からは、サウジアラビアとトルコを選んで比べ、政治や生活文化の共通点と違いを考えます。同じ地域でも、見る方法を変えると、別の顔が見えてきます。
2026 年の共通テストの第 6 問は、ドナウ川・ナイル川・メコン川という 3 つの国際河川の流域を取り上げました。気候、都市の景観、貨物の輸送、水資源、経済の格差を、流域ごとに比べて読む問題が続きました。
地誌は、項目・関連・比較の 3 つの方法で地域を読みます。
図解地誌の 3 つの方法(解説の例から)
項目ごとに整理
- 例: 東南アジア(ASEAN)
- 政治・経済・人口・文化を並べる
- 地域の全体像をつかむ
1 つから関連付け
- 例: インド
- 経済成長を人口や都市と結ぶ
- 地域の動きをつかむ
2 つを比べる
- 例: サウジアラビアとトルコ
- 共通点と違いを探す
- それぞれの特色を際立たせる

03
これからの日本の国土像: 森林を守る提案から、海へ
地理探究の最後は「これからの日本の国土像」です。系統地理と地誌で学んだことを生かし、日本が抱える地理的な課題の解決の方向や、将来の国土の姿を構想します。解説は、国連の SDGs などを参考に主題を選び、複数の立場や意見があることに気を付けるよう求めています。
解説には、ある生徒の探究の例が載っています。A さんは地球環境問題に興味をもち、「森林保全」を課題にしました。森林の面積や林業で働く人の年齢、手入れされない森林の実態を調べました。そして、「生産のコストを下げ、木材の新しい需要を掘り起こせば、林業を盛り上げられるのではないか」という仮説を立てます。
A さんは、県の林業の担当者や森林組合に聞き取りをし、林業のモデル地区も訪ねました。GIS で地図を作り、森林保全の広報が必要な地域の地図と、森林保全ツアーを提案します。探究の中で、山から川、海までの自然を一体で守る大切さに気付き、次はカキや海苔の養殖と森林の関係を調べることにしました。
国も、国土の将来像を計画にまとめています。2023 年 7 月に閣議決定された第三次国土形成計画は、「新時代に地域力をつなぐ国土」を目指す姿に掲げました。自分の構想を国の計画と見比べると、強みや足りない点が見えてきます。
国土像の探究は、調べて終わりではなく、提案と討論で深まります。
図解国土像の探究の進め方(解説の例から)
- 1課題を決めるSDGs を参考に「森林保全」を選ぶ
- 2事前に調べる森林の面積、林業で働く人の年齢など
- 3仮説を立てるコストを下げ、新しい需要を掘り起こす
- 4聞き取り・現地森林組合やモデル地区を訪ねる
- 5提案・討論広報が必要な地域の地図とツアー
- 6新しい問いへ森林と海の養殖とのつながり


04
共通テスト「地理総合,地理探究」: 地図と統計を 60 分で読み解く
大学入学共通テストの『地理総合,地理探究』は、60 分・100 点です。地理歴史と公民の 6 科目から、最大 2 科目を選んで受けます。2027 年 1 月の試験では、1 日目の 1 月 16 日(土)の午前に行われます。
問題作成方針は、地域をさまざまなスケールから捉える問題を検討するとしています。知識をもとに推論したり資料で確かめたりする問題や、系統地理と地誌を関連付けた問題も、検討の対象です。『地理総合/歴史総合/公共』という科目もあり、こちらは 3 つのうち 2 つを選んで答えます(各 50 点)。
2026 年の本試験は大問 6 つで、答える数は 30 でした。テーマは順に、乾燥・半乾燥地域の生活文化、青森県の津軽平野の地域調査、世界の自然環境と自然災害です。続いて、衣料品の探究、人口と都市、国際河川の流域でした。
第 5 問の最後の問いは、ある地方都市の 1980 年と 2020 年の地図でした。人口集中地区の人口は 52,920 人から 57,328 人に増えましたが、範囲はそれ以上に大きく広がっています。人口密度は、人口を面積で割った値です。「人口密度も高まった」という文が、適当でないものでした。
共通テストは、知識と地図・統計を結び付けて考える力を試します。

05
高 3 の 1 週間: 地域のカードと過去問を行き来する
高 3 では、地誌と国土像の授業に加えて、共通テストの演習が増えます。授業の進み方は、高校によって異なります。下の図は、高 3 の 1 週間の例です。
地誌の復習では、地域ごとに 1 枚のカードを作り、自然・産業・人口・文化を同じ順で書き込むと、ほかの地域と比べやすくなります。過去問を解いたら、正解の根拠が地図・表・写真のどこにあったかを書き残してください。
共通テストは、地理総合で学んだことも問います。2026 年の第 2 問のような地域調査の大問に備えて、高 1 で町を調べたときのノートも見直しておくと、資料の読み方を思い出せます。
地域カードで比べる練習をすると、初めて見る地域の問題にも強くなります。
図解高 3 の 1 週間(例)
- 月地理探究の授業地域区分を 2 通り比べる
- 火地域カード1 地域の自然・産業・人口・文化を書く
- 水国土像の探究提案の根拠になる地図を 1 枚作る
- 木地理探究の授業2 つの地域を比べて話し合う
- 金大問を 1 つ正解の根拠に線を引く
- 土・日過去問を 60 分大問ごとにかかった時間を記録する
高校生のうちに試せること
共通テストの「人口集中地区」の問いを解く
大学入試センターのサイトで、2026 年の『地理総合,地理探究』第 5 問の問 6 を見られます。1980 年と 2020 年の地図を比べ、大型店舗がどこに増えたかも確かめましょう。
大学入試センター 過去 3 年分の試験問題ロシアを 3 通りに分けてみる
地図帳の主題図から、気候・人口の分布・宗教の 3 つを選びましょう。それぞれの図でロシアのどこに境の線が引けそうかを白地図に書き込み、3 枚を重ねて比べてください。
国土形成計画の「目指す国土の姿」を読む
国土交通省のページで、第三次国土形成計画の概要を読みましょう。自分の住む地域にとって大切だと思う考え方を 1 つ選び、その理由を書いてください。
国土交通省「第三次国土形成計画(全国計画)」
「高 3: 地域ごとに考える」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 75 件から探せます。
よくある質問
共通テストの地理は、どちらの科目で受ければよいですか?
志望校が求める科目によって決まります。『地理総合,地理探究』は 60 分・100 点、『地理総合/歴史総合/公共』は 3 つのうち 2 つを選んで各 50 点です。必要な科目は、志望校の募集要項で確かめてください。
地誌では、世界の国を全部覚えないといけませんか?
全部ではありません。解説は、この学習のねらいは羅列的な知識を身に付けることではなく、世界全体をくまなく取り上げるものではないとしています。いくつかの地域を、項目・関連・比較の方法で深く読む練習をすると、初めて見る地域にも応用できます。
国土像の探究のテーマが決まりません。
解説は、例として「首都機能の分散」「ツーリズムによる持続可能な社会づくり」「防災・減災と地域の活性化」などの主題を挙げています。高 1 の生活圏の調査で気になった課題を、日本全体の規模で考え直すのも 1 つの方法です。



