図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 1
高 1: 地理総合で世界を見る
高 1 では、全員が「地理総合」を学びます。地図や GIS(地理情報システム)を道具に、世界の暮らしと地球の課題、自分の町の防災までを「なぜそこに」と問いながら見ていく 1 年です。

ひとことで言うと
雨雲レーダーを見て、傘を決める
雨雲レーダーは、雨の降っている範囲と自分のいる場所を、1 枚の地図に重ねて見せてくれます。地理総合は、こうして情報を地図に重ねて、世界や自分の町で起きていることの理由を考える科目です。

01
高 1 の科目: 全員が学ぶ「地理総合」
高 1 で全員が学ぶ地理の科目が「地理総合」です。標準は 2 単位で、2018 年告示の学習指導要領で新しくでき、2022 年度に入学した高校生から学んでいます。高 2 から選べる「地理探究」は、この地理総合を学んだあとに進む科目です。
中学の社会の地理的分野では、世界をアジア州やヨーロッパ州などの州ごとに学び、日本もいくつかの地域に分けて学びました。地理総合は州や地方の順ではなく、3 つのテーマで世界と日本をまとめて見ていきます。
3 つのテーマは、「地図や地理情報システムで捉える現代世界」「国際理解と国際協力」「持続可能な地域づくりと私たち」です。最初に地図と GIS の使い方を身につけ、それを使って世界の暮らしと地球の課題を考えます。最後に、自分の町の防災と地域の調査に取り組みます。前のテーマで身につけた力を、次のテーマで使う順番です。
地理総合は、地図と GIS を道具に、世界と自分の町を同じ見方で考える科目です。
図解中学の地理的分野と高 1 の地理総合
中学の地理的分野
- 世界を州ごとに学ぶ
- 日本をいくつかの地域に分けて学ぶ
- 身近な地域を調べる
高 1 の地理総合
- 地図と GIS で世界をつかむ
- 暮らしと地球の課題をテーマで考える
- 防災と生活圏の調査で町を歩く

02
地図と GIS: 日本の島は 6,852? それとも 14,125?
最初のテーマでは、いろいろな地図を読み、方位や時差、日本の位置と領域、国内や国どうしの結び付きを学びます。地図や GIS で情報を集め、読み取り、まとめる技能も、ここで身につけます。
地図や統計を読むときに大切なのが、数字の「数え方」です。日本の島の数は、長く 6,852 とされてきました。1987 年に海上保安庁が公表した数です。2023 年 2 月、国土地理院は細かなデジタルの地図「電子国土基本図」で数え直し、14,125 という結果を発表しました。
新しい島が見つかったわけではありません。国土地理院は、測量の技術が進み、地図の海岸線が細かくなった影響が大きいと説明しています。数えたのは、周りの長さが 0.1 km 以上の、自然にできた陸地です。埋め立ててできた陸地や、湖の中の島は数えていません。
都道府県別の表では、最も多いのが長崎県の 1,479 です。一方、海に面した大阪府は 0 です。大阪湾に浮かぶ関西国際空港の島のような、埋め立てでできた陸地を数えないためです。数字を見たら、まず「どう数えたのか」を確かめる習慣が、地理総合で身につきます。
数字は、数え方の決まりと組にして読みます。
図解島の数を読む(国土地理院の数え直しから)
- 1数えた地図を確かめる(電子国土基本図)
- 2条件を確かめる(周りの長さ 0.1 km 以上)
- 3数えない物を確かめる(埋め立て地・湖の島)
- 4都道府県別の表で、意外な数を探す


03
国際理解と国際協力: 牛肉 1 kg に、水 2 万リットル
2 つ目のテーマでは、世界の人々の暮らしと、地球規模の課題を学びます。前半は、衣食住や宗教などの生活文化が、気候や地形、歴史から影響を受けて多様になったことを学びます。日本との共通点や違いに目を向け、異なる文化をもつ人と共に生きる意味を考えます。
後半は、地球環境、資源・エネルギー、人口・食料、居住・都市の問題です。学習指導要領は、これらの課題が互いに関連し合い、地域によって現れ方が違うことを理解するよう求めています。
つながりが見える例が、バーチャルウォーター(仮想水)です。輸入した食料を、もし自分の国で育てたらどれだけの水が要るかを考えます。環境省の仮想水計算機では、牛肉 1 kg に約 2 万 600 リットルの水が必要とされています。パン 1 kg なら約 1,600 リットルです。
環境省によると、2005 年に日本が輸入した仮想水は約 800 億立方メートルで、国内で 1 年に使う水の量と同じくらいです。食料の輸入は、形を変えて水を輸入していることとも考えられます。海外の水不足は、日本の食卓と無関係ではありません。
地球的課題は、1 つを調べると、ほかの課題とのつながりが見えてきます。
図解つながり合う地球的課題
- 地球環境気候の変化や水不足
- 資源・エネルギー限られた資源をどう使うか
- 人口・食料食料の輸入は、水の輸入でもある
- 居住・都市都市に集まる人々の住まい
- 国際協力国連の SDGs などを手がかりに


04
防災と生活圏の調査: 学校のまわりを歩いて調べる
3 つ目のテーマは、自分たちの町です。前半の「自然環境と防災」では、ハザードマップや新旧の地形図を読み、地域の自然と災害への備えを学びます。解説は、学校のある市町村のハザードマップで、危険性が高いとされる場所を探す学習を例に挙げています。そこから「なぜその場所は危険性が高いと評価されているのか」と問います。
後半の「生活圏の調査と地域の展望」が、地理総合のまとめです。学校のまわりや通学圏で課題を見つけ、調べて、解決の方法を考えます。解説が挙げる主題の例は、買い物弱者の問題や住宅団地の空洞化、空き家の問題などです。
進め方は、下の図の順です。まず図書室の本や新聞、市町村史、統計で地域の全体像をつかみ、GIS で地図にして仮説を立てます。現地では、天気や交通に気を付けて、無理のない計画で歩きます。聞き取りをするときは、事前に電話や手紙で相手の都合を確かめ、聞きたいことを整理しておきます。
2026 年 1 月の共通テストには、地域調査の大問が出ました。青森県五所川原市の高校生が、津軽平野の農業や十三湖のシジミ漁を調べる場面です。統計の表、ため池のハザードマップ、新旧の空中写真、県庁の職員からの聞き取りと、野外調査で使う資料が一通りそろっていました。
野外調査は、歩く前の準備と、歩いたあとのまとめで深まります。
図解野外調査の進め方(解説の例から)
- 1課題を決める通学路や新聞から、地域の課題を選ぶ
- 2デスクワーク本・統計・市町村史で全体像をつかむ
- 3仮説と計画GIS で地図にし、調べる場所を決める
- 4フィールドワーク観察・写真・聞き取りで確かめる
- 5整理・分析地図やグラフにし、仮説を見直す
- 6発表・提言解決の方法を話し合い、地域に伝える


05
つまずきやすい点とコツ: 表は「飛び抜けた数字」から読む
つまずきやすいのは、地名や統計の 1 位を覚えることだけに追われることです。学習指導要領が重視するのは、位置や分布、自然と人の暮らしの関わりに注目して、「なぜそこでそうなっているのか」を考えることです。
表を読むときは、飛び抜けた数字を手がかりにします。共通テストの五所川原の大問では、3 つの市の農業産出額に占める米・野菜・果実の割合が、記号で伏せて示されました。弘前市で 89.0% を占める品目は、山のふもとでリンゴを大規模に育てる地域なので、果実だと分かります。
残りは、地形と結び付けて考えます。つがる市の 34.9% は、海岸近くの砂丘で 1970 年代に農地が造られたことと結び付く野菜です。五所川原市の 48.6% は、かつて腰まで沈むほどの低湿地だった岩木川の下流と結び付く米です。数字を、地図の上の場所と結び付けて説明するのがコツです。
標準 2 単位なので、授業は週に 2 回ほどです。授業で地名が出たら、地図帳で印をつけます。統計を見たら「なぜそこに」を 1 行で書いておくと、高 2・高 3 の地理探究の土台になります。
統計の数字は、地形や歴史と結び付けて「なぜそこに」を説明します。
高校生のうちに試せること
自分の都道府県の島の数を調べる
国土地理院のサイトで、都道府県別の島の数を見られます。自分の都道府県の数を確かめ、地図帳でその島々がどこにあるかを探しましょう。0 の都道府県が、なぜ 0 なのかも考えてみてください。
国土地理院「日本の島の数」仮想水計算機で、夕食の水を数える
環境省の仮想水計算機に、昨日の夕食の食材とおよその重さを入れましょう。どの食材の水がいちばん多いかを確かめ、その食材の主な産地を地図帳で探してください。
環境省「仮想水計算機」共通テストの「五所川原」の大問を解く
大学入試センターのサイトで、2026 年の『地理総合,地理探究』の第 2 問を見られます。地図・表・写真を、どの順番で見て答えを決めたかをメモしながら解きましょう。
大学入試センター 過去 3 年分の試験問題通学路で「なぜそこに?」を 3 つ集める
学校から駅やバス停まで歩き、気になった物を写真に撮りましょう。坂の上の古い家や川沿いの新しい住宅地など、「なぜそこに」と思った物を 3 つ選び、地図帳や地理院地図で場所と土地の高さを確かめてください。
「高 1: 地理総合で世界を見る」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 91 件から探せます。
環境・防災教育研究室
横浜国立大学(神奈川県)
都市科学部 環境リスク共生学科・防災教育・気候変動教育・タキナナ アヌアンタエカ 助教
南太平洋の気候変動教育が地域の耐性に与える影響を調べる。
地理学分野
広島大学(広島県)
人間社会科学研究科 人文学プログラム・地理学・後藤 秀昭 教授
活断層と地形学、経済地理学、農業地理学などを研究している。
植物科学研究室
横浜国立大学(神奈川県)
教育学部 学校教員養成課程 理科専門領域・植物系統進化学・植物地理学・倉田 薫子 教授

空間情報学分野
京都大学(京都府)
工学研究科社会基盤工学専攻・空間情報学
地理学研究室
熊本大学(熊本県)
文学部 地域科学コース・地理学
横矢研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻・画像解析・空間情報学・横矢 直人 教授
よくある質問
中学の地理を忘れてしまいました。大丈夫ですか?
大丈夫です。地理総合は、地図の読み方や GIS の基本から始まります。分からない地名が出たら、その場で地図帳を開いて場所を確かめる習慣をつければ、少しずつ追いつけます。
地理総合と歴史総合は、どちらも学ぶのですか?
はい。2 つとも全員が学ぶ科目で、標準はどちらも 2 単位です。高 2 からは、地理探究・日本史探究・世界史探究の中から選んで深めます。選べる科目は、高校によって異なります。
野外調査で、知らない人に話を聞くのが不安です。
解説は、聞き取りの前に電話や手紙で相手の都合を確かめ、聞きたいことを整理しておくよう求めています。調べる範囲は学校のまわりの狭い地域でもよく、学校の状況によっては、図書館やインターネットで調べる方法を中心にすることも想定されています。


