図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 2
データで考える
売上やアンケートのデータを集めて整え、分けて比べることで、商品やサービスの改善につなげる仕事です。情報 I で学ぶデータの整理・分析・可視化が、そのまま仕事の手順になります。

ひとことで言うと
購買のパンの売れ方を、曜日ごとに分けて見る
購買のパンの売れ方を 1 か月まとめて見ると、どのパンも同じくらい売れているように見えます。曜日ごとに分けると、部活の多い日だけ大きなパンが早く売り切れる、といった違いが見えるかもしれません。データで考える仕事は、この「分けて比べる」を、何千件もの記録で行います。

01
どんな仕事?: 「なんとなく」を数で確かめる
データサイエンティストは、記録を分析して、仕事の判断に役立つ発見を探します。マーケターは、だれにどんな商品を届けるかを考え、広告や売り場づくりに生かします。2 つの仕事は、データを読むという点でつながっています。
仕事の手順は、情報 I の「データの活用」の流れと同じです。データを集め、まちがいや抜けを直して整え、表やグラフにして分析します。情報 I では、アンケートの答えのような数でないデータ(質的データ)と、数のデータ(量的データ)の違いも学びます。
データをグラフで見せる考え方は、240 年ほど前に生まれました。スコットランド生まれのウィリアム・プレイフェアは、2 冊の本でグラフの形を考え出しました。1786 年の本で折れ線グラフと棒グラフを、1801 年の本で円グラフを示しています。貿易などの数字を、一目で伝えるためでした。
集める・整える・分析する・伝える。情報 I の流れが、そのまま仕事の流れです。
図解データの仕事で使う情報 I・II
- データの収集アンケートや売上の記録を集める(情報 I)
- データの整理表記のゆれや抜けを直す(情報 I)
- 尺度水準平均してよいデータかを見分ける(情報 I)
- 可視化グラフで傾向を一目で見せる(情報 I)
- データベース会員と購入の記録の表をつなぐ(情報 I)
- 回帰・クラスタリング売上を予測し、似た客をまとめる(情報 II)


02
データの分析が生きる場面: アンケートを「分けて」数える
水族館の来館者アンケートを例に考えます。1,200 人の答えを集計すると、「満足」と答えた人は全体の 8 割でした。一見、問題はなさそうです。
そこで、年代ごとに分けて数えるクロス集計をします。年代を行、満足度を列にした表をつくると、70 代以上だけ「満足」が 5 割にとどまっていると分かりました。全体の数字だけでは見えなかった違いです。
次に、自由に書いてもらった感想を、情報 I で学ぶテキストマイニングで調べます。よく出る言葉を数えると、「案内」「文字」「階段」が目立ちました。案内の文字を大きくし、エレベーターへの道順を示したうえで、次の調査で満足の割合が上がるかを確かめます。
表計算ソフトには、クロス集計の表をつくる機能があります。分け方を変えて何度も集計し直すことで、改善のきっかけが見つかります。
全体の数字を分けて見直すと、改善の手がかりが見えてきます。
図解来館者アンケートをクロス集計する(例)
- 1全体では「満足」が 8 割で、問題がなさそうに見える
- 2年代 × 満足度の表をつくる
- 370 代以上だけ「満足」が 5 割と分かる
- 4自由記述で多い言葉は「案内」「文字」「階段」

03
集計の前に: データを整え、尺度を見分ける
集めたデータは、そのままでは使えないことがよくあります。学年の欄に「1」「1」「一年」が混ざっていると、表計算ソフトは別々の答えとして数えます。全角の「1」と半角の「1」は、コンピュータの中では違う文字コードだからです。
表記のゆれをそろえ、空欄や「年齢 250 歳」のような入力のまちがいを直す作業を、データクリーニングといいます。情報 I でも学ぶ作業で、分析の前に欠かせません。
情報 I で学ぶ尺度の考え方も、仕事でそのまま使います。アンケートの満足度「1〜5」は、順番に意味がある順序尺度です。1 と 2 の差と、4 と 5 の差が同じとは限りません。
そのため、満足度は平均の値だけで判断するのは危険です。全員が 3 と答えても、1 と 5 が半分ずつでも、平均は同じ 3 になります。マーケターは、答えごとの人数の割合をグラフにして、散らばり方まで確かめます。
整えて、種類を見分けてから集計すると、結論のまちがいが減ります。

04
レジャー施設のマーケターの 1 日(例)
ここでは、水族館や遊園地を運営する会社で、データを受け持つマーケターの 1 日の例を紹介します。
朝は、前の日の入場者数とチケットの売れ方を確かめます。雨の日や連休の前後など、いつもと違う動きがあれば理由を考えます。昼前は、届いたアンケートの表記をそろえ、年代ごとの満足度を比べます。
データを読む仕事ですが、人と話す時間も長くあります。分かったことを、展示や売り場の担当者に、グラフと短い言葉で伝えます。数字を見て「次に何をするか」まで提案できると、仕事の幅が広がります。
数字から次の一手を考え、現場の人と一緒に確かめるのが仕事の中心です。
図解レジャー施設のマーケターの 1 日(例)
- 9:00数字の確認前の日の入場者とチケットを見る
- 10:00データの整理アンケートの表記のゆれを直す
- 11:30クロス集計年代ごとの満足度を比べる
- 12:30昼休み
- 13:30打ち合わせ展示の担当者と改善案を話す
- 15:00企画づくり夏のイベントの来場者を見積もる
- 17:00報告グラフにまとめて伝える

05
向いている人と入り方・その先
高校のうちは、情報 I の「データの活用」と、数学 I の「データの分析」を大切にしてください。表計算ソフトでの集計やグラフづくりは、仕事で毎日のように使います。情報 II を選べるなら、回帰分析やクラスタリング、機械学習のしくみまで学べます。
大学は、データサイエンスや情報系の学部のほか、経済学・経営学・社会学など、データを扱う多くの学部から目指せます。マーケティングは経営学部や商学部で学ぶことが多く、統計と組み合わせると強みになります。科目の名前や内容は大学によって異なります。
「なぜだろう」と気になると調べずにいられない人、数字を言葉に直して人に伝えるのが好きな人に向いています。経験を積むと、分析チームのリーダーや、データをもとに事業の方針を決める仕事へ進む道があります。
身近なデータを分けて比べることが、データの仕事の最初の一歩です。
図解高校からデータの仕事への道(例)
- 1高校で学ぶデータの活用・データの分析
- 2大学で深める統計・マーケティング・機械学習
- 3会社に入る分析や企画の部署へ
- 4専門を広げるチームのリーダーや事業の企画へ
高校生のうちに試せること
クラスでアンケートをとって、分けて数える
「朝ごはんを食べたか」と「1 時間目に眠いか」のような 2 つの質問で、クラスにアンケートをとりましょう。表計算ソフトで 2 つを組み合わせた表をつくり、全体で見たときと分けたときで、見え方がどう変わるかを確かめます。
表記をそろえてから数え直す
部活の名前や学年を自由に書いてもらった答えを、そのまま数えた場合と、全角・半角や書き方をそろえてから数えた場合で比べましょう。集計の前のひと手間で、結果が変わることが分かります。
統計ダッシュボードで自分の県を調べる
総務省統計局の「統計ダッシュボード」では、人口や物価などの国の統計を、グラフで見られます。自分の住む県と全国の数字を比べて、気づいたことを書き出しましょう。
統計ダッシュボード(総務省統計局)
「データで考える」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 61 件から探せます。
駒木研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科数理情報学専攻・統計学・予測理論・ベイズ理論・駒木 文保 教授
統計科学
熊本大学(熊本県)
工学部 機械数理工学科 数理工学教育プログラム・数理統計学・岩佐学 准教授
データサイエンスの土台となる統計手法の理論と応用を研究する。

都市とデータサイエンス研究室
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 理工学融合プログラム・都市計画・FENG TAO 教授
都市、モビリティ、交通などを研究している。
鈴木研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科数理情報学専攻・機械学習・数理統計学・学習理論・鈴木 大慈 教授
学習データ分析
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 情報科学プログラム・情報科学・隅谷 孝洋 教授
学習支援システム、アクセスログ、学習データなどを研究している。
ベイズ統計学・推論
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 情報科学プログラム・情報科学・NUNES TENDEIRO JORGE 教授
ベイズ推定、仮説検定、ベイズ因子(ベイズファクター)などを研究している。
よくある質問
表計算ソフトが使えれば、データの仕事はできますか?
表計算ソフトは、多くの職場で使う基本の道具です。ただ、データが何十万件にもなると、データベースやプログラミングを使って集計します。情報 I で学ぶデータベースやプログラミングが、次の一歩になります。
マーケターとデータサイエンティストは、どう違いますか?
マーケターは、だれにどう商品を届けるかを考えて決める側の仕事です。データサイエンティストは、データを分析して判断の材料をつくる側の仕事です。会社によっては、1 人が両方を受け持つこともあります。
個人のデータを扱うときに、気をつけることはありますか?
名前や住所など、個人を特定できる情報の扱いには、個人情報保護法の決まりがあります。分析では、必要のない情報は使わない、集計した数字で伝える、といった配慮をします。情報 I で学ぶ情報モラルと法律の知識が、ここで生きます。



