図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 4
伝わる形にデザインする
Web ページやアプリの画面を、だれにとっても見やすく使いやすい形に設計する仕事です。情報 I で学ぶ情報デザインと、色を数で表すデジタル化の知識が、そのまま仕事の道具になります。

ひとことで言うと
信号機は、色だけでなく位置でも伝えている
信号機は、赤・黄・青の色に加えて、どの位置が光るかも決まっています。色が見分けにくい人でも、光る場所で意味が分かります。画面のデザインも同じで、1 つの手がかりだけに頼らず、色・形・文字・音を組み合わせて伝えます。

01
どんな仕事?: 画面の「見え方」と「使い方」を決める
UI デザイナーは、アプリや Web サービスの画面で、ボタンや文字をどこに・どんな大きさや色で置くかを決めます。Web デザイナーは、会社や自治体などの Web サイトの見た目と、ページのつながり方を設計します。どちらも、見た目の美しさと同じくらい、迷わず使えることを大切にします。
情報 I で学ぶ情報デザインの 3 つの方法は、画面づくりでそのまま使います。機能を小さなアイコンで示すのが抽象化、利用の記録をグラフで見せるのが可視化、メニューを階層に整理するのが構造化です。
画面を見ながら操作するいまの形は、1970 年代に研究が進みました。アメリカのゼロックスの研究所がつくった Alto が、その代表です。マウスや画面上の見た目で操作するしくみを、1 台の小さなコンピュータにまとめました。それまでは、多くの人が文字を打ち込んでコンピュータとやりとりしていました。
抽象化・可視化・構造化。情報 I の 3 つの方法が、画面づくりの基本です。
図解デザインの仕事で使う情報 I・II
- 抽象化機能をアイコンで一目で伝える(情報 I)
- 可視化記録や手順をグラフや図で見せる(情報 I)
- 構造化メニューや見出しを階層に整理する(情報 I)
- デジタル化色を 16 進数の色コードで指定する(情報 I)
- ペルソナ・試作使う人を思い描き、形にして試す(情報 I)
- アクセシビリティだれもが使えるかを確かめる(情報 II)


02
構造化が生きる場面: 画面を「耳で聞く」人にも伝える
目の見えない人や見えにくい人には、画面の文字を声で読み上げるソフト(スクリーンリーダー)を使う人がいます。多くのスマートフォンにも、この機能が備わっています。デザイナーは、目で見る人だけでなく、耳で聞く人にも伝わる画面を考えます。
デジタル庁のガイドブックは、意外な落とし穴を挙げています。見た目をそろえるために「日 時」と文字の間に空白を入れると、読み上げで「ひ、とき」と読まれることがあります。配置は空白で調整せず、レイアウトの設定で整えるのが基本です。
写真やグラフには、内容を言葉で説明する代替テキストを付けます。ガイドブックは、長さを 80 字ほどにする目安を示しています。見出しを正しく付けると、読み上げソフトで見出しだけをたどり、読みたい所へ飛べます。情報 I の構造化が、耳で聞く人の道しるべになります。
見た目の整え方ひとつで、耳で聞く人への伝わり方が変わります。
図解申し込みフォームを見直す(例)
- 1「日 時」の空白を消し、配置はレイアウトで整える
- 2必須の項目に、赤い色だけでなく「必須」と書く
- 3地図の画像に、場所を説明する代替テキストを付ける
- 4見出しを付け、読み上げで飛ばせるようにする

03
デジタル化の知識が生きる場面: 見やすさを数で決める
情報 I では、画面の色を、赤・緑・青の明るさを 0〜255 の数で表すしくみとして学びます。デザインの仕事では、この数を 16 進数 2 けたずつで書いた色コードを使います。赤 255・緑 0・青 0 の真っ赤は「#FF0000」、3 色とも 118 の灰色は「#767676」です。
文字の見やすさも、数で確かめます。文字と背景の明るさの比を、コントラスト比といいます。デジタル庁のガイドブックは、ふつうの文字で 4.5:1 以上、大きな文字で 3:1 以上を求めています。多くの Web サイトが参照する規格、JIS X 8341-3:2016 に沿った基準です。
比は、白と黒の組み合わせで最大の 21:1 になります。白い背景に灰色の文字を置く場合、#767676 なら約 4.54:1 で基準を満たします。ところが、1 段階だけ明るい #777777 では約 4.48:1 で、基準に届きません。真っ赤な #FF0000 の文字も、白い背景では約 4.0:1 で、ふつうの大きさの文字には足りません。
見やすさを数で確かめると、好みではなく根拠をもって色を選べます。

04
アプリの UI デザイナーの 1 日(例)
ここでは、市役所の手続きができるアプリをつくる会社で働く、UI デザイナーの 1 日の例を紹介します。使う人は、若い人から高齢の人まで幅広いのが特徴です。
午前中は、新しい申し込み画面の案をつくります。情報 I で学ぶペルソナの考え方を使い、「老眼鏡をかけて手続きをする 70 代の人」のような利用者を思い描きます。そのうえで、文字の大きさやボタンの位置を決めます。色を決めたら、コントラスト比を計算して確かめます。
午後は、エンジニアと画面の動きを相談したり、試作の画面を使ってもらった結果を見て直したりします。文字を大きく表示したときに、ボタンの文字がはみ出さないかも確かめます。デジタル庁のガイドブックは、文字を 200% まで大きくしても読み取れるようにすることを求めています。
使う人を思い描き、数と試作で確かめるくり返しです。
図解アプリの UI デザイナーの 1 日(例)
- 9:30朝会チームで今日の作業を共有する
- 10:00画面の案ペルソナを思い描いて配置を決める
- 11:30色の確認コントラスト比を計算する
- 12:30昼休み
- 13:30相談エンジニアとボタンの動きを決める
- 15:00読み上げの確認読み上げソフトで画面を聞いてみる
- 16:30拡大の確認文字を 200% にして崩れを見る

05
向いている人と入り方・その先
高校のうちは、情報 I の情報デザインとデジタル化の単元を大切にしてください。美術の授業で学ぶ色や構図も、そのまま生きます。情報 II を選べるなら、ユーザインタフェースやアクセシビリティを考えながらコンテンツをつくり、人に使ってもらって評価する流れを学べます。
大学は、情報系の学部でメディアやヒューマンインタフェースを学ぶ道と、芸術・デザイン系の学部で視覚のデザインを学ぶ道があります。どちらから入っても、もう一方を学び足すと強みになります。学べる内容は大学によって異なります。
資格がないと就けない仕事ではありません。国家検定の「ウェブデザイン技能検定」は、3 級ならウェブの仕事に就こうとしている人も受検できます。経験を積むと、サービス全体の使いやすさを決めるリーダーや、アクセシビリティの専門家へ進む道があります。
見た目と使いやすさの両方を、根拠をもって説明できる人が求められます。
図解高校から UI デザイナーへの道(例)
- 1高校で学ぶ情報デザイン・デジタル化・美術
- 2作品をつくる部活や文化祭のサイトを設計する
- 3大学で深めるインタフェース・視覚のデザイン
- 4会社に入るアプリや Web の制作チームへ
- 5専門を広げるデザインのリーダーや専門家へ
高校生のうちに試せること
学校のサイトを 200% に拡大して確かめる
パソコンのブラウザの拡大機能で、学校や好きなお店のサイトを 200% まで大きくしてみましょう。文字が重なったり、ボタンの文字が切れたりする所がないかを探します。デジタル庁のガイドブックが求めている確かめ方と同じです。
コントラスト比の基準を読んで確かめる
デジタル庁のガイドブックには、文字と背景のコントラスト比の基準と、良い例・悪い例が図で載っています。読んだあと、自分がよく使う色の組み合わせが 4.5:1 を満たすか調べましょう。
ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック(デジタル庁)色の見え方の違いを再現して見る
パソコンのブラウザの開発者ツールには、色の見え方の違いを再現する機能があるものがあります。自分でつくったグラフやポスターのデータをその機能で見て、区別しにくい所がないか探しましょう。
ウェブデザイン技能検定の過去問を見る
ウェブデザインの国家検定で、厚生労働大臣が指定した団体が行っています。公開されている過去の問題で、どんな知識が問われるかを確かめましょう。
ウェブデザイン技能検定
「伝わる形にデザインする」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 40 件から探せます。
ヒューマンインターフェース研究室
九州大学(福岡県)
情報知能工学・内田 誠一 教授
ハイブリッド・ソーシャル・インタラクション研究室
筑波大学(茨城県)
情報メディア・Yang Chi Lan
ヒューマン・ロボット・インタラクション研究室
筑波大学(茨城県)
知能機能システム・中内 靖 教授
ヒューマンインタフェース/実データ解析研究室
九州大学(福岡県)
実世界ロボティクス・内田 誠一 教授
インタラクション研究室
筑波大学(茨城県)
情報メディア・井上 智雄
フュージングインタラクション研究室
熊本大学(熊本県)
工学部 情報電気工学科 情報工学教育プログラム・ヒューマンインタフェース・嵯峨 智 准教授
VRや触覚センサ・ディスプレイを使い、人を中心にしたインタフェースを研究する。
よくある質問
絵が上手でないと、UI デザイナーになれませんか?
なれます。UI デザインで大切なのは、情報をどう整理し、どこに置くかを決める力です。上手な絵より、使う人を思い描いて筋道を立てて考える力が求められます。情報 I の情報デザインの考え方が、その出発点になります。
Web デザイナーは、プログラミングもしますか?
画面の見た目を Web ページの形にするため、HTML や CSS という言語を書くことがあります。職場によっては、エンジニアが受け持つこともあります。少しでも書けると、エンジニアと話が通じやすくなります。
文系と理系、どちらから目指せますか?
どちらからも目指せます。情報系の学部で画面のしくみやプログラミングを学ぶ人もいれば、芸術・デザイン系の学部で色や形を学ぶ人もいます。高校では、情報 I と美術の両方を大切にすると、選べる道が広がります。