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図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 3

情報を守る

会社や学校のネットワークとアカウントを管理し、不正なアクセスや情報の漏えいを防ぐ仕事です。情報 I で学ぶネットワークのしくみと情報セキュリティが、毎日の判断の土台になります。

通信機器の棚が見える明るい部屋で、建物をつなぐ線と鍵や盾の形が光る画面を囲み、スマートフォンの指紋の確認を試しながら話し合う学生たち

ひとことで言うと

合鍵の管理と、玄関での確認を引き受ける

家の合鍵は、だれに何本渡したかを覚えておき、なくしたらすぐに鍵を替えます。玄関に来た人が本当に宅配の人かは、のぞき窓で確かめます。情報を守る仕事は、これをネットワークの世界で、何百人分ものアカウントについて行います。

01

どんな仕事?: 社内 SE とセキュリティエンジニア

社内 SE は、会社や学校の中のパソコン・ネットワーク・アカウントを管理する仕事です。新しく入った人にアカウントを渡し、辞めた人のアカウントを止め、困りごとの相談に乗ります。セキュリティエンジニアは、攻撃を防ぐしくみを考え、怪しい動きを見張る専門家です。

どちらの仕事でも、情報 I で学ぶ内容が土台になります。ネットワークの単元では、データが届くしくみや、IP アドレスとドメイン名を学びます。情報セキュリティの単元では、本人かどうかを確かめる個人認証や、暗号化、デジタル署名を学びます。

情報モラルと法律の知識も欠かせません。他人の ID とパスワードを無断で使う行為は、不正アクセス禁止法で禁じられています。守る仕事には、こうした決まりを社員や生徒に分かりやすく伝えることも含まれます。

守る仕事は、しくみ・人・決まりの 3 つを同時に見ます。

図解2 つの仕事の違い

社内 SE

  • パソコンとアカウントを管理する
  • 社員の困りごとに答える
  • 決まりを分かりやすく伝える

セキュリティエンジニア

  • 攻撃を防ぐしくみを考える
  • 怪しい通信を見張る
  • 被害が出たら原因を調べる
壁ぎわの棚に通信機器が積まれ、オレンジ色のケーブルが何百本も束になってつながっている
ハンガリーのセゲド大学の図書館にあるネットワーク機器。建物の中のパソコンは、こうした機器を通ってつながっています。社内 SE は、この配線と設定を管理します。写真: Xbspiro(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

02

ネットワークの知識が生きる場面: フィッシングを見分ける

フィッシングは、銀行や通販サイトなどを装ったメールや SMS で偽のサイトに誘い、ID やパスワードを盗む手口です。フィッシング対策協議会に寄せられた報告は、2025 年に 245 万 4,297 件でした。2019 年の 5 万 5,787 件から、6 年で約 44 倍です(警察庁)。

見分けるときに役立つのが、情報 I で学ぶドメイン名の知識です。ドメイン名は、右に行くほど大きなまとまりを表します。「◯◯bank.co.jp.△△△.com」のような URL なら、持ち主を示すのは右側の「△△△.com」です。左側の「◯◯bank.co.jp」は、本物らしく見せる飾りにすぎません。

鍵マークにも注意が必要です。総務省は、鍵マークが表示される偽サイトが増えているとして、鍵マークだけで安心しないよう呼びかけています。数字の 0 とアルファベットの o、大文字の I と小文字の l を入れ替えて、見間違いをねらう手口もあります。

社内 SE は、こうした見分け方を、訓練のメールや研修で社員に伝えます。いちばん確かなのは、メールのリンクを使わず、公式のアプリやブックマークから開き直すことです。

ドメイン名を右から読む。授業の知識が、だまされない力になります。

図解届いたメールを確かめる(例)

入力「口座が止まりました。こちらから手続きを」というメール
  1. 1急がせる文面になっていないかを見る
  2. 2リンクの URL のドメイン名を右から読む
  3. 3公式のアプリやブックマークから開き直す
  4. 4怪しければ、社内 SE に報告する
結果偽のサイトに ID とパスワードを入力せずに済む

03

情報セキュリティが生きる場面: 多要素認証を職場に広げる

社内 SE が、社員全員のアカウントに広げようとしているのが多要素認証です。認証の要素には、知っているもの(パスワード)、持っているもの(スマートフォンなど)、本人の体の特徴(指紋や顔)の 3 つがあります。総務省は、このうち 2 つ以上を組み合わせる方法を紹介しています。

気をつけたいのは、要素の種類です。パスワードと「秘密の質問」は、どちらも知っているものなので、2 つ重ねても多要素にはなりません。社内 SE は、こうした違いを社員に説明し、スマートフォンの設定を一人ずつ手伝います。

それでも安心はできません。警察庁によると、偽サイトに入力させた使い捨てのパスワードをすぐに本物のサイトで使い、二段階認証を突破する手口が広がっています。2025 年には、証券口座への不正アクセスが 1 万 7,668 件にのぼりました。証券会社では、パスキーのような、フィッシングに強い多要素認証の必須化が進められています(金融庁)。

違う要素を組み合わせ、さらにフィッシングに強い方法へ。守り方は進化を続けています。

クイズ情報を守るクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q1「◯◯bank.co.jp.△△△.com」という URL。このサイトの持ち主を示すのは、どの部分?

  2. Q22025 年に、フィッシング対策協議会に寄せられたフィッシングの報告は約何件?

  3. Q3多要素認証になるのは、どの組み合わせ?

0 / 3 問に回答
ログイン画面の前で、利用者名とパスワードに加えて、手に持った小さな機器に表示された 8 けたの数字を入力しようとしている
パスワードに加えて、手元の機器に表示される使い捨ての数字を入力するログインの例。知っているものと持っているものを組み合わせた多要素認証です。写真: Brian Ronald(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

04

メーカーの社内 SE の 1 日(例)

ここでは、社員 500 人ほどのメーカーで、社内のシステムを守る社内 SE の 1 日の例を紹介します。

朝は、夜の間の警告やログインの記録を確かめます。ふだんと違う国からのログインがあれば、本人に確かめてアカウントを止めます。午前中には、新しく入った社員のアカウントを用意し、多要素認証の設定を手伝います。

午後は、社員向けの訓練メールの準備や、ソフトの更新の計画です。困りごとの電話にも答えます。「怪しいメールを開いてしまった」という相談には、すぐ知らせてくれたことに感謝し、パソコンをネットワークから外して調べます。

失敗をすぐに報告できる職場をつくることも、守りの大事な仕事です。

図解メーカーの社内 SE の 1 日(例)

  1. 8:45記録の確認夜の間のログインと警告を見る
  2. 9:30アカウント新しい社員の多要素認証を設定する
  3. 11:00相談の対応怪しいメールの報告を調べる
  4. 12:00昼休み
  5. 13:00訓練の準備見分け方を学ぶ訓練メールをつくる
  6. 15:00更新の計画パソコンのソフトの更新日を決める
  7. 17:00記録対応したことを手順書に残す

05

向いている人と入り方・その先

高校のうちは、情報 I のネットワークと情報セキュリティ、情報モラルと法律の単元を大切にしてください。ドメイン名や IP アドレス、暗号化のしくみは、仕事で毎日のように使う知識です。自分や家族のアカウントの設定を見直すことも、よい練習になります。

国家試験では、IPA の IT パスポート試験で、セキュリティを含む IT の基礎を確かめられます。高校生でも受けられ、全国の会場でコンピュータを使って受験します。大学では、情報系の学部でネットワークやセキュリティの授業をとるのが近道です。

人の困りごとを聞くのが苦にならない人、小さな違和感を見逃さない人に向いています。経験を積むと、会社全体の情報システムの責任者や、国家資格「情報処理安全確保支援士」をもつ専門家へ進む道があります。

授業の知識は、自分と家族のアカウントを守るところから使えます。

図解高校から情報を守る仕事への道(例)

  1. 1高校で学ぶネットワーク・セキュリティ・法
  2. 2力を確かめるIT パスポート試験
  3. 3大学で深めるネットワーク・暗号・運用
  4. 4会社に入る社内 SE や守りの専門部署へ
  5. 5専門を広げる情報処理安全確保支援士など

高校生のうちに試せること

  • 家族のアカウントに多要素認証を設定する

    メールや SNS の設定画面で、多要素認証(2 段階認証)を使えるかを家族と確かめましょう。使えるものは設定し、パスワードを使い回していないかも一緒に見直します。

  • フィッシングの最新の例を見る

    フィッシング対策協議会のサイトには、実際に出回っているフィッシングの例が載っています。どこが怪しいかを、ドメイン名を右から読んで確かめましょう。

    フィッシング対策協議会
  • 総務省のサイトで守り方を学ぶ

    「国民のためのサイバーセキュリティサイト」では、パスワードの決め方やフィッシングの見分け方が、基礎からまとめられています。気になった項目を 1 つ選び、家族や友だちに説明してみましょう。

    国民のためのサイバーセキュリティサイト(総務省)
  • IT パスポート試験を受ける

    IPA の国家試験で、セキュリティやネットワーク、法律まで広く問われます。2027 年度から新しい試験制度に移る予定なので、受ける前に最新の情報を確かめましょう。

    IT パスポート試験(IPA)

「情報を守る」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 85 件から探せます。

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よくある質問

社内 SE は、どんな職場にいますか?

パソコンやネットワークを使う職場なら、業種を問わず必要とされます。メーカー、病院、学校、市役所など、職場はさまざまです。大きな会社では情報システムの部署に、小さな会社ではほかの事務の仕事と兼ねていることもあります。

怪しいメールを開いてしまったら、どうすればよいですか?

あわてずに、学校なら先生、会社なら担当の部署にすぐ知らせます。偽のサイトにパスワードを入力してしまったときは、本物のサイトから、すぐにパスワードを変えます。困ったときは、正規の連絡先で確かめることが大切です。

数学が苦手でも、守る仕事はできますか?

できます。暗号の理論を研究するには数学が欠かせませんが、社内 SE やセキュリティの運用では、しくみを正しく理解し、手順どおりに確かめる力が大切です。情報 I の内容をしっかり押さえることが出発点になります。