大学カタログ

図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 2

高 2: 古代から近世へ

高 2 からは、選んで学ぶ「日本史探究」が始まります。原始・古代から近世までの日本を、時代ごとの資料をもとに「問い → 仮説 → 説明」の順で深めていく 1 年です。

古い五重塔の前で木の輪切りの年輪を数える学生、夜空の赤い光を見上げる鎌倉時代の貴族、江戸の本屋で料理の本を手に取る町人が、1 つの風景の中に並ぶ様子

ひとことで言うと

試合の録画を見直して、次の作戦を立てる

負けた試合の録画を見て「なぜ後半に点を取られたのか」と考え、「足が止まっていたのでは」と見当をつけます。そして走った距離の記録で確かめます。日本史探究も、資料から問いを立て、仮説を確かめていく科目です。

01

高 2 の科目: 選んで学ぶ「日本史探究」

日本史探究は、歴史総合の後に選んで学ぶ科目です。標準は 3 単位で、授業は週に 3 回ほどです。内容は「原始・古代」「中世」「近世」「近現代」の 4 つの時代に分かれています。このページでは、高 2 で近世まで、高 3 で近現代を学ぶ流れの例で紹介します。学年の割りふりは、高校によって異なります。

どの時代も、同じ段階で進みます。まず時代の転換をつかみ、その時代全体を貫く「時代を通観する問い」を立てます。次に資料を読んで仮説を立てます。最後に、仮説をもとに出来事を解釈し、根拠を示して説明します。

読む資料は、時代によって変わります。学習指導要領は、原始・古代では遺構や遺物、編纂された歴史書、公家の日記を挙げています。中世では武家や公家、寺社の記録や絵画、近世では幕府や藩の法令、村や町に残る文書、浮世絵や出版物です。

学習指導要領は、歴史の出来事には複数の解釈が成り立つことに気付くよう求めています。答えが 1 つに決まらないからこそ、根拠を示して説明する力が大切になります。

日本史探究は、どの時代も「問い → 仮説 → 説明」の順で深めます。

図解日本史探究の進め方(どの時代も同じ)

  1. 1時代の転換前の時代から何が変わったかをつかむ
  2. 2通観する問い時代全体を貫く問いを立てる
  3. 3仮説資料を読み、答えの見当をつける
  4. 4解釈・説明根拠を示して、文章で説明する

02

原始・古代: 法隆寺の心柱は、594 年に切られた木だった

奈良県斑鳩町の法隆寺には、金堂や五重塔が建っています。『日本書紀』には、670 年に法隆寺が全焼したという記事があります。そのため、今の建物は焼けた後に建て直したものだという説が、ほぼ通説になっています。

ここに、自然科学の方法が加わりました。木の年輪の幅は、年ごとに違います。その並び方を、年代の分かっている基準と照らし合わせると、木が切られた年まで分かります。この方法を年輪年代法といいます。

1941〜1952 年の解体修理のとき、五重塔の中心を貫く心柱の根元から、円盤の標本が切り取られていました。奈良文化財研究所がこの標本の年輪 351 層を測り、外側の年輪まで数えると、594 年に切られた木と分かりました。全焼した 670 年より、70 年以上も前の木だったのです。

2004 年に発表された調査では、金堂の天井板が 667・668 年、五重塔の部材が 673 年ごろに切られた木と分かりました。研究所は、法隆寺の論争に「新たな謎が加わった」と書いています。なぜ心柱だけが古いのか。「前の建物の木を使ったのでは」「長く保管していた木では」などの仮説を立て、資料で確かめるのが日本史探究の学び方です。

自然科学の方法も、歴史の資料を読むための道具です。

図解年輪年代法で分かった、木が切られた年

金堂の天井板

  • 667・668 年
  • 金堂・五重塔・中門の順に造営

五重塔の部材

  • 673 年ごろ
  • 670 年の全焼の後に切られた木

五重塔の心柱

  • 594 年
  • ほかの部材より約 80 年古い
白い砂の広場に建つ、二重の屋根の大きな木造の建物と、その右に立つ五重塔
奈良県斑鳩町の法隆寺。左が金堂、右が五重塔です。年輪年代法の調査から、金堂、五重塔、中門の順に造られたことが分かりました。写真: Saigen Jiro(CC0・Wikimedia Commons)

03

中世: 鎌倉時代の日記に書かれた「赤気」の正体

中世の資料には、公家や武家、寺社が残した記録があります。鎌倉時代の初めの歌人、藤原定家の日記『明月記』もその 1 つです。1204 年 2 月 21 日の記事には、日が暮れてから、京都の北と北東の空に「赤気」が現れたと書かれています。

定家はその光を「遠くの火事の光のようだ」「雲ではない」と書き、恐ろしいと記しました。23 日にも、また赤気が現れています。2017 年、国立極地研究所や国文学研究資料館、京都大学などの研究グループは、この赤気をオーロラと考えました。何晩も続いた赤いオーロラの記録としては、これまでに調べられた中で日本で最古のものです。

中国の歴史書『宋史』には、同じ 2 月 21 日に、太陽に大きな黒点が見えたという記事があります。研究グループは、太陽から噴き出したプラズマのかたまりが何度も地球に届き、大きな磁気嵐が続けて起きたと考えています。大きな磁気嵐は、今では停電や人工衛星の故障を起こすことがあります。約 800 年前の日記が、これからの磁気嵐を予測する手がかりになっているのです。

日記の一文が、理系の研究にも使われる資料になります。

図解『明月記』の一文を読む(例)

入力秉燭以後、北并艮方有赤気 … 如焼亡遠光 … 非雲
  1. 1「秉燭以後」は、明かりをともすころ(日暮れ後)
  2. 2「北并艮方」は、北と北東の方角(艮は北東)
  3. 3「如焼亡遠光」は、遠くの火事の光のよう
  4. 4「非雲」は、雲ではない
結果日暮れ後、北と北東の空に、遠くの火事のような赤い光が出た。雲ではない
横に長い紙に、筆で書いた文字がびっしりと並ぶ古い日記の一部
藤原定家が自分で書いた『明月記』の一部(東京国立博物館所蔵)。写真は 1233 年の記事で、オーロラの記事とは別の部分です。写真: 藤原定家(Public domain・Wikimedia Commons)

04

近世: 豆腐料理だけを集めた、評判の料理本を読む

近世の資料には、幕府や藩の法令、村や町に残る文書のほか、浮世絵や出版物があります。1782 年(天明 2 年)には、豆腐料理だけを集めた料理本『豆腐百珍』が大坂で出ました。評判がよく、翌年には続編、その次の年には「余禄」も出ています。

国立国会図書館の紹介によると、『豆腐百珍』には「真の八杯豆腐」という料理があります。水六杯と酒一杯をよく煮立て、しょうゆ一杯を足してさらに煮立て、絹ごしのすくい豆腐を入れて大根おろしをのせます。水と酒としょうゆを足すと、ちょうど 8 杯です。料理の名前の「八杯」と、数が合います。

当時は、相撲の番付に見立てた、いろいろな番付も作られました。節約できるおかずの番付では、精進の側の大関に「八杯豆腐」が挙がっています。豆腐でキジやアユに見せかけた「もどき料理」も、『豆腐百珍』に載っています。

ここから、「なぜ江戸時代に、料理本が売れるほど本を読む人が増えたのか」という問いが立ちます。学習指導要領の解説は、出版が盛んになった理由を考える学習を例に挙げています。商売で読み書きや計算が必要になったことや、寺子屋が広がったことなどから仮説を立て、資料で確かめていきます。

料理本や番付も、当時の人々の暮らしを伝える資料です。

クイズ高 2 の日本史クイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q1年輪年代法で分かった、法隆寺五重塔の心柱の木が切られた年は?

  2. Q2『明月記』に書かれた、1204 年の京都の夜空の「赤気」。正体と考えられているのは?

  3. Q3『豆腐百珍』の「真の八杯豆腐」。煮汁に使う水・酒・しょうゆの杯数は?

0 / 3 問に回答

05

高 2 の 1 週間: 前後の時代と比べて覚える

日本史探究は標準 3 単位なので、授業は週に 3 回ほどです。人物や用語が一気に増えるのが、高 2 でつまずきやすい点です。下の図は、高 2 の 1 週間の例です。

覚える量が多いときこそ、比べることが助けになります。学習指導要領も、前後の時代を比べて移り変わりを考える学習を大切にしています。たとえば中世と近世で「村は誰がまとめたか」を表にすると、用語が理由と一緒に頭に入ります。

古文や漢文で書かれた資料も出てきますが、授業や問題では、現代語訳や注が添えられることが多くあります。2026 年 1 月の共通テストでも、資料の多くは現代語に直したものか、注をつけたものでした。

用語は、前後の時代と比べた表にすると、理由と一緒に覚えられます。

図解高 2 の 1 週間(例)

  1. 月日本史探究の授業時代を通観する問いを立てる
  2. 火教科書を 1 節出来事を原因と結果の矢印でつなぐ
  3. 水日本史探究の授業資料を読み比べ、仮説を書く
  4. 木比べる表づくり前の時代と今の時代を 1 枚の表に
  5. 金日本史探究の授業仮説を根拠つきで説明し合う
  6. 土・日資料を 1 つ見るデジタルコレクションか博物館で

高校生のうちに試せること

  • 『明月記』のオーロラの記事を、現代語訳と読み比べる

    国立極地研究所の研究成果のページには、『明月記』の原文と現代語訳が並んでいます。「赤気」「艮」などの漢字が、現代語訳のどの言葉にあたるかを線で結びましょう。

    国立極地研究所「『明月記』と『宋史』の記述から、連発巨大磁気嵐の発生パターンを解明」
  • 『豆腐百珍』の原本をめくる

    国立国会図書館デジタルコレクションでは、1782 年に出た『豆腐百珍』を無料で見られます。くずし字が読めなくても、1 ページずつめくって、江戸時代の本の作りを見てみましょう。

    国立国会図書館デジタルコレクション『豆腐百珍』
  • 前後の時代を比べる表をつくる

    教科書の中世と近世の章から、「土地」「村」「外国とのつきあい」の 3 つの項目を選び、1 枚の表に書き分けましょう。変わったところに印をつけ、「なぜ変わったのか」を 1 行で書いてください。

  • 近くの古い建物の「建てた年」を確かめる

    近くの寺社や古い建物の説明板から、建てた年を書き写しましょう。市町村の文化財のページで、その年が記録から分かったのか、調査から分かったのかを確かめると、年代の確かさの違いに気付けます。

「高 2: 古代から近世へ」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 42 件から探せます。

部活・サークルをすべて見る(42 件)

よくある質問

日本史探究は、暗記が多いですか?

覚える用語は増えますが、学習指導要領は、資料から仮説を立て、根拠を示して説明する学び方を求めています。前後の時代と比べる表をつくったり、出来事を原因と結果でつないだりすると、用語は理由と一緒に身についていきます。

古文や漢文が苦手でも、資料を読めますか?

読めます。授業や問題で使う資料には、現代語訳や注が添えられることが多くあります。まずは訳と原文を並べて、知っている漢字を探すところから始めてください。『明月記』のオーロラの記事のように、短い一文から読むのがおすすめです。

理系に進みたいのですが、日本史は役に立ちますか?

役に立ちます。法隆寺の心柱の年代を決めた年輪年代法や、『明月記』のオーロラの研究のように、自然科学と歴史の資料を組み合わせる研究があります。どの科目を選ぶかは、志望校の入試科目も確かめて決めてください。